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東京地方裁判所 平成8年(特わ)3893号 判決 1997年3月24日

本店所在地

東京都足立区島根四丁目一一番一三号

株式会社北川建設

(右代表者代表取締役 北川正)

本籍

東京都北区豊島三丁目三番

住居

同都同区豊島三丁目三番一四号

会社役員

北川正

昭和一一年五月二六日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖原史康、弁護人葛西宏安各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社北川建設を罰金二〇〇〇万円に、被告北川正を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人北川正に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社北川建設(以下「被告会社」という)は、東京都足立区島根四丁目一一番一三号に本店を置き、水道管の新設及び維持工事等を目的とする資本金二〇〇〇万円の株式会社であり、被告人北川正(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、被告会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空外注費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  平成三年一一月一日から同四年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億九三三九万六二四五円(別紙1(1)の修正損益計算書及び修正工事原価報告書参照)であったにもかかわらず、同年一二月二五日、同都同区栗原三丁目一〇番一六号所在の所轄西新井税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九五四一万〇九三三円で、これに対する法人税額が三三九九万七六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成九年押第一八三号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額七〇七四万二三〇〇円と右申告税額との差額三六七四万四七〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  同四年一一月一日から同五年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億九八一七万九七八一円(別紙1(2)の修正損益計算書及び修正工事原価報告書参照)であったにもかかわらず、同年一二月二八日、前記西新井税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九七七八万九三〇五円で、これに対する法人税額が三七〇九万六〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額七四一七万九一〇〇円と右申告税額との差額三七〇八万三一〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  同五年一一月一日から同六年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億五八一九万五五二三円(別紙1(3)の修正損益計算書及び修正工事原価報告書参照)であったにもかかわらず、同年一二月二八日、前記西新井税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億六四六二万〇三九三円で、これに対する法人税額が六〇一八万七七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額九五二七万八三〇〇円と右申告税額との差額三五〇九万〇六〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

〔括弧内の甲乙の番号は、証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。〕

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書七通(乙一ないし七)

一  北川はつ(二通)、栗又恵子及び長谷川重机の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の工事収入調査書、賞与(工事原価)調査書、支払手数料(工事原価)調査書、外注費(工事原価)調査書、期首仕掛工事(工事原価)調査書、期末仕掛工事(工事原価)調査書、賞与調査書、租税公課調査書、接待交際費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、支払利息割引料調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書及び交際費等の損金不算入額調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲一九、二〇、二七)

判示冒頭の事実について

一  登記官作成の登記簿謄本

判示第一及び第二の各事実について

一  米ノ井健雄の検察官に対する供述調書

判示第一の事実について

一  被告人の検察官に対する供述調書(乙八)

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲二、一五)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成九年押第一八三号の1)

判示第二及び第三の各事実について

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲三三)

判示第二の事実について

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲二一)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の材料費(工事原価)調査書及び保険料(工事原価)調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

2  被告人

判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、いずれも懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下、同様)四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、水道管の新設及び維持工事等を目的とする被告会社が、三事業年度にわたり合計一億〇八〇〇万円余の法人税を免れた事案である。右のとおりほ脱税額は高額で、ほ脱率も通算約四五・三パーセントに及んでいる上、その主たる手口は、工事収入の一部を簿外の預金口座に振込送金させて除外し、外注先の名称を無断で使用して外注費を架空計上し、あるいは、期末仕掛工事金額を除外するなど、多岐にわたっており悪質である。また、脱税の動機をみても、被告人は、自社ビルを建築するための資金や将来の事業資金を確保しておきたかったなどと述べているが、たとえそのような事情があったにせよ脱税が許容されるはずもなく、格別斟酌するに値しないものである。このほか、被告人及び被告会社が、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反罪により、それぞれ二回にわたり罰金刑を受けていることなども併せ考えると、被告人及び被告会社の刑事責任は重いというべきである。しかしながら、他方、被告会社はその後修正申告の上本件に関する本税、延滞税等を完納していること、被告会社は本件を機に経理体制を改善していること、被告人が本件各犯行を深く反省していること、その他被告人の家庭環境など、被告人及び被告会社のために酌むべき諸事情も認められる。そこで、当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金三〇〇〇万円、被告人・懲役一年)

(裁判官 平木正洋)

別紙1(1)

修正損益計算書

<省略>

修正工事原価報告書

<省略>

別紙1(2)

修正損益計算書

<省略>

修正工事原価報告書

<省略>

別紙1(3)

修正損益計算書

<省略>

修正工事原価報告書

<省略>

別紙2

ほ脱税額計算書

株式会社北川建設 (1) 自 平成3年11月1日

至 平成4年10月30日

<省略>

(2) 自 平成4年11月1日

至 平成5年10月30日

<省略>

(3) 自 平成5年11月1日

至 平成6年10月30日

<省略>

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