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東京地方裁判所 平成8年(行ウ)91号 判決

原告

後藤雄一

被告

(東京都議案課長) 會田紳次(Y1)

(前同) 中村正彦(Y2)

右両名訴訟代理人弁護士

伊東健次

今井克治

事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  被告會田に対する請求について

1  被告會田に対する本件訴えが適法な監査請求を経たものといえるか否か、すなわち、原告が、被告會田が支出負担行為を行った本件会議<1>及び本件会議<2>に係る経費の支出に関し、監査請求期間経過後に監査請求をしたことについて正当な理由があるか否かについて

(一)  法二四二条の二に規定する住民訴訟については、適法な監査請求を経ていることがその要件となるところ、前記第二の一3及び5に記載のとおり、本件会議<1>及び本件会議<2>に係る支出負担行為は、平成五年又は平成六年中に行われたものであり、他方、本件監査請求が行われたのは平成八年二月二一日であるから、本件監査請求のうち右各会議の支出に係る部分は、当該行為があった日から一年を経過した後に行われたものであって、監査請求期間経過後にされたものであることは明らかである。したがって、本件訴えが適法な監査請求を経たものといえるためには、原告が、右支出負担行為に係る支出に関し、監査請求期間後に監査請求をしたことについて法二四二条二項ただし書に定める「正当な理由」がなければならない。

(二)  この点に関し、原告は、都の会議費文書全体が非公開とされていたため、本件各会議に係る経費が支出されていることを知ることができなかったものであり、原告は、平成七年一〇月一三日に都が情報開示基準を策定して右会議費文書の公開に踏み切り、新聞報道等により右各支出ないし右各支出の違法性を知ることができたときから相当期間内に本件監査請求を行ったものであるから、本件会議<1>及び本件会議<2>に係る支出負担行為に関しては、監査請求期間を経過した後に監査請求をすることにつき右の「正当な理由」がある旨主張する。

しかしながら、原告の右主張は採用することができない。その理由は次のとおりである。

(1) 法二四二条二項本文は、監査請求について、当該行為のあった日又は終わった日から一年を経過したときは、これをすることができないと規定しているところ、法が監査請求についてこのような期間制限を設けたのは、普通地方公共団体の執行機関又は職員の財務会計上の行為がたとえ違法・不当な場合であっても、いつまでもこれを監査請求ないしは住民訴訟の対象となり得るものとしておくことは、法的安定性を損ない好ましくないという理由によるものである。しかし、普通地方公共団体の執行機関又は職員により当該行為の存在自体が秘匿され、あるいは当該行為自体は公然とされたものであっても、その内容を偽るなど当該行為について仮装、隠ぺい行為が行われ、右仮装、隠ぺい行為の存在が当該行為があった日又は終わった日から一年を経過した後に初めて明らかになった場合などにおいても、右の趣旨を貫くことは相当でないことから、法二四二条二項ただし書は、「正当な理由」があるときは、例外として、当該行為のあった日又は終わった日から一年を経過した後にあっても、その住民において監査請求をすることができるものとしたのである。

したがって、右のように当該行為について仮装、隠ぺい行為が行われた場合、同項ただし書にいう「正当な理由」があるかどうかは、特段の事情がない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて右隠ぺいされた当該行為の存在を知ることができ、又は右仮装行為が行われたことを疑うべき相当の事情があることを知ることができたかどうか、また、当該行為の存在を知ることができ、又は右仮装行為が行われたことを疑うべき相当の事情があることを知ることができたと認められるときから相当な期間内に監査請求がされたかどうかによって判断すべきものというべきである。

他方、普通地方公共団体の執行機関又は職員が行う財務会計上の行為は、内部的にされるものが多くあり、このような行為については、普通地方公共団体の住民がその存在及び内容を知らないことが通常であり、これらのすべてについて単に住民が当該行為の存在及び内容を知り得なかったということのみで、監査請求期間経過後に監査請求することにつき「正当な理由」があるとすることは、法が監査請求について期間制限を設けた趣旨を没却することになるのであって、法が監査請求について期間制限を設けた趣旨や監査請求期間の始期を「当該行為のあった日又は終わった日」とし、これを住民が当該行為のあったことを知ったか否か又は知ることができたか否かにかからしめていないことに照らしてみれば、普通地方公共団体の執行機関又は職員が行った財務会計上の行為について前示のような仮装、隠ぺい行為が行われていない場合において、監査請求期間経過後に監査請求をすることにつき「正当な理由」があるというためには、単に当該普通地方公共団体の住民が当該行為の存在及び内容を知り得なかったということのみでは足りず、天災地変等による交通途絶のため監査請求期間を経過したなど、他に監査請求期間経過後においても監査請求を認めることを相当とする特別の事情が存することを要するものと解するのが相当である。

(2) 原告は、本件会議<1>及び本件会議<2>に係る支出負担行為の原議、支出命令書等によれば、本件会議<1>の場合のお土産は洋酒セット、単価は二万円であり、また、本件会議<2>の場合のお土産は牛肉佃煮詰め合わせ、単価は一万五〇〇〇円であるとされているが、被告會田は、実際にはこれらのお土産を贈呈しないか、又は全く別の安価なものを贈呈する予定であるのに、右原議に記載されたとおりのお土産を購入する旨の契約を締結するように装い、その内容の契約締結手続をさせた上、議案課の担当職員に市販の用紙を使用して右契約に見合う請求書等を偽造させ、右お土産代相当額の公金を支出させたものであるとか、あるいは、被告會田は、右各会議に係る料理代等に関し、出席者数を水増しするなどした右各会議に係る支出負担行為の原議を作成し、右原議に記載されたとおりの内訳の料理等の提供に係る契約を締結するように装い、その内容の契約締結手続をさせた上、議案課の職員に市販の用紙を使用して出席者等を水増しするなどした請求書等を偽造させ、右料理代等相当額の公金を支出させたものであるとか主張している。そして、〔証拠略〕によれば、平成八年二月八日付けの東京新聞は、「都が議長接待書類ねつ造?」「出席者数水増しで高額支出隠す」との見出しで、「東京都知事による都議会正副議長の「接待」で、一人当たり最高の高額な懇談費用を低く見せるため出席者数を水増しして会計処理するなど、会議費書類がズサンに作成されている疑いのあることが、七日までのTOKYO発の調べでわかった。」との記事、及び「最高一人九万円の例も」「市販の請求書に明細なく」との小見出しで、「開示された資料から一つの「会議」が浮かび上がった。……辛うじて読み取れたのは、日付や出席日数、経費内訳など。「接待客二名、都側十二名」「一人当たりの料理代は税金込みで五万五千二百円」「お土産は二万円の輸入洋酒セット」とあり、総費用はしめて約八十一万三千円だった。」「判明した懇談内容を会議資料と突き合わせたところ、新たな事実が浮かび上がった。正副議長を招いた宴席に出席できるのは知事や副知事、財務局長クラスに限られ、実際の人数は鈴木知事以下七、八人程度だったという。公開資料にある「都側から十二名が出席」と食い違うのだ。」との記事を掲載し、本件会議<1>に係る経費の支出に関し、関係書類がねつ造され、出席者数の水増し等が行われた疑いがあることを指摘したこと、また、同年二月二〇日付けの同新聞は、「都議会へのお土産も不正経理?」との見出しで、「東京都知事らが都議会議員との懇談の際に手渡した「牛肉みそ漬け」「ハム詰め合わせ」など高額な手土産の一部が、実際には存在しなかったり、全く別の安価なものだった疑いのあることが、一九日までにTOKYO発の調べでわかった。」「主要会派の幹部らは「洋菓子は懇談したホテルのクッキーだったが、四千百二十円もしないはず」「一万五千四百五十円の牛肉みそ漬けとあるが、実際は五千円程度のものだったと思う」と説明。また九三年度の会議資料を見た別の幹部は「記載されているようなハムの詰め合わせはもらっていない」と話した。」などの記事を掲載し、議案課が所管して開催した議会対策会議の際に出席議員に手渡したお土産代の支出に関し不正経理が行われた疑いのあることを指摘したこと、右各会議に係る料理代等の請求書は市販の用紙を使用して作成されていることが認められる。

しかしながら、右東京新聞の記事の内容については、そのように認定判断した根拠として関係者の供述、会議資料が挙げられているにすぎないところ、いずれも確たる裏付けを欠く曖昧なものであり、単に疑いがあるというに止まるものと解するほかはない。また、〔証拠略〕によれば、料理代等の請求書が市販の用紙を使用して作成されているのは、会議経費の支払手続を行う出納長官は、公金の支出を書面審査のみで行うため厳格な審査を行っており、業者の提出した書類が不備と指摘されて、再提出せざるを得なくなることが少なくないことから、そのような事由による事務の渋滞を回避するため、当時は、債権者の承諾を得て、所管課の職員が市販の用紙を使用して見積書や請求書の内訳の記入を代行することが慣例となっていたことによるものであること、本件会議<1>及び本件会議<2>に係る料理代等の請求書の内容は、債権者の意思に基づくものであり、記名捺印は債権者が行ったものであることが認められる。右によれば、東京新聞の記事の内容や請求書が市販の用紙を使用して作成されていることから、直ちに、右各会議に係る支出負担行為に関して、原告主張の仮装、隠ぺい等の不正行為が行われたと認めることはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

原告は、右以外には、右各会議に係る支出負担行為について仮装、隠ぺい行為が行われたとの主張はしておらず、単に右支出負担行為に係る右各会議に係る経費の支出自体、あるいはその支出の違法であることを知ることができなかったと主張するのみである。

そして、他に、右各会議に係る支出負担行為について監査請求期間経過後においても監査請求を認めることを相当とする特別な事情が存するとは認められないから、右支出負担行為については、法二四二条二項ただし書に定める、監査請求期間経過後に監査請求をすることについての「正当な理由」があるものということはできない。

2  そうすると、本件監査請求は、本件会議<1>及び本件会議<2>に係る支出負担行為の関係では、法二四二条二項に定める監査請求期間を経過した不適法なものというべきであるから、被告會田に対する請求に係る本件訴えは、適法な監査請求を経ていない不適法な訴えというべきである。

二  被告中村に対する請求について

1  被告中村が議案課長としてした本件会議<3>ないし本件会議<8>に係る支出負担行為が違法であり、被告中村が都に対し損害賠償責任を負うかどうかについて

(一)  普通地方公共団体の長又はその他の執行機関が、当該普通地方公共団体の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程において、社会通念上儀礼の範囲に止まる程度の接遇を行うことは、当該地方公共団体も社会的実体を有するものとして活動している以上、右事務に随伴するものとして、許容されるというべきである。しかし、それが公的存在である普通地方公共団体により行われるものであることからすれば、対外的折衝等をする際に行われた接遇であっても、それが社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものである場合には、右接遇は当該普通地方公共団体の事務に当然に伴うものとはいえず、これに要した費用を公金により支出することは許されないというべきである。

この理は、普通地方公共団体の長が、当該普通地方公共団体の議会の議員を接遇する場合においても妥当するというべきである。すなわち、普通地方公共団体の執行機関である長と議会とは、法に定められた諸種の権限を行使することによって相互に牽制し合う立場にあるが、その間においても、普段から十分な意思の疎通を図るべき必要があることは否定できないから、普通地方公共団体の執行機関が、そのような目的のために当該普通地方公共団体の議会の議員を招いて意見交換を行い、あるいは、当該普通地方公共団体の円滑な行政運営を図るため、その運営について理解と協力を求めることは、当該執行機関の事務の遂行上必要なことであり、その際にできるだけ率直に話し合いができるように飲食等を伴う接遇を行うことは、それが社会通念上の儀礼の範囲に止まる程度のものである限り、法上許されるものと解するのが相当である。

さらに、議会の中で枢要な地位を占める正副議長、主要な会派の役員として活躍し、円滑な議会運営に功績のあった者が交代する場合において、普通地方公共団体の長が、その機会をとらえ、その者に対し、謝意を表明し、社会通念上儀礼の範囲内にとどまる程度の接遇を行うことも、当該普通地方公共団体の円滑な行政の執行に寄与するものとして許容されるものと解される。

そして、右のような接遇が社会通念上儀礼の範囲内のものであるか否かは、<1>接遇の趣旨、目的、<2>出席者、出席人数、<3>接遇の場所、<4>接遇の内容、程度及び費用等を総合的に考慮して判断すべきである。

(二)  本件会議<3>ないし<8>に係る支出負担行為の適法性

(1) 前記第二の一4に〔証拠略〕及び弁論の全趣旨を併せると、次の事実が認められる。

ア 議案課は、都における執行機関と議決機関である議会との各種の交渉、協議の統一的な窓口となっており、予算案や条例案など重要議案の提出、審議、議決を円滑にする目的で、双方の協議及び意見交換の場を設営することが議案課長の一つの主要な職務内容となっている。

右の場合、協議等の当事者は、執行機関側が知事、副知事及び局長など幹部職員であり、議会側は、いずれも公職選挙法に基づく選挙で選ばれた都議会議員であり、その中でも議会を代表する議長、副議長や各会派の役員となっており、また、協議事項も必然的に重要な案件で、秘匿すべき事項が多くなることから、議案課長において協議等の場を設定するに当たっては、出席者の身の安全性や場所的な近さのほか、協議内容等がほかへ漏れることがないようにするためこれまでに実績のある業者を中心とし、その中から協議等の内容、その出席者の地位、立場を考慮し、しかるべき立場にある都議会議員に相応の敬意を払い、さらに過去の例とも比較して失礼のないように配慮して選定を行っている。

イ 本件会議<3>は、第一回定例会において、信用組合の経営破綻に伴う都の対応策について、各会派の思惑が微妙に交錯し、円滑な議会運営に困難を来していたところ、正副議長の精力的な協力により、議会運営の促進が図られ、無事に対応策が議決されたことから、執行機関側が、正副議長との間で当該議会運営について総括を行うとともに、かかる正副議長の活動に対し謝意を表する目的で開催されたものである。

被告中村は、右会議の目的、相手方が正副議長であること等を考慮し、前記ア記載の選定基準により、右会議を京王プラザホテルで開催することとした。右会議の出席者は、正副議長と都知事を含む執行部側職員一四名であり、この会議における料理等の単価は二万八八五〇円であった。その結果、料理代等として五三万八二二四円が公金から支出された。

ウ 本件会議<4>は、第一回定例会において、信用組合の経営破綻に伴う東京都の対応策等を中心とする困難な議案について慎重な審議のもとに議決等が行われ、同定例会が無事に閉会し、また、都知事の任期満了が間近に迫ったこともあり、都知事が当該定例会提出議案に係る審議及び議決に対し謝意を表すること、及びこれまでの都政運営に対する支援と協力に謝意を表すること等を目的とし、執行機関と都議会議長との共催として開催されたものである。右会議の出席者は、全都議会議員一二八名と都知事を含む執行部側職員四六名であった。

被告中村は、右会議の性格、出席者数等を考慮し、右会議を都議会第一会議室で開催することとした。右会議における料理等の単価は四八〇〇円であったが、会議を共催する議会局がその半分を負担することとなったため、議案課の予算からは、右料理代等として四三万〇一二八円が支出された。

エ 本件会議<5>は、都議会自民党の役員が改選されたことに伴い、執行機関側が、旧役員に対し謝意を表するとともに、今後の議会審議及び都政運営に引き続き理解と協力を得る目的で開催されたものである。右会議の出席者は、都議会自民党旧役員一〇名と都知事を含む執行部側職員一〇名であった。

被告中村は、右会議の目的、相手方が都議会自民党旧役員であること等を考慮し、前記ア記載の選定基準により、右会議を京王プラザホテルで開催することとし、料理の単価は二万九五五〇円とした。その結果、料理代等として六八万九一〇六円が公金から支出された。

オ 本件会議<6>は、第三回定例会において、正副議長が交代したことに伴い、執行機関側が、旧正副議長に対し、過去二年間にわたり議会運営を行ってきたことに対する謝意を表するとともに、今後の議会審議及び都政運営に引き続き理解と協力を得る目的で開催されたものである。右会議の出席者は、旧正副議長と都知事を含む執行部側職員七名であった。

被告中村は、右会議の目的、相手方が旧正副議長であること等を考慮し、前記ア記載の選定基準により、右会議を美濃吉で開催することとし、料理の単価は四万二〇〇〇円とした。その結果、右料理代等として四八万〇八一六円が公金から支出された。

カ 本件会議<7>は、第三回定例会において、正副議長が交代したことに伴い、執行機関側が、新正副議長に対し、困難な議会運営に取り組むことに敬意を表するとともに、今後の円滑な議会審議及び都政運営に対する協力を得ることを目的として開催されたものである。右会議の出席者は、正副議長と都知事を含む執行部側職員四名であった。

被告中村は、右会議の目的、相手方が正副議長であること等を考慮し、前記ア記載の選定基準により、右会議を美濃吉で開催することとし、料理の単価は四万七四〇〇円とした。その結果、右料理代等として三六万一七五六円が公金から支出された。

キ 本件会議<8>は、都議会自民党の役員が改選されたことに伴い、執行機関側が、新役員に対し、今後の都議会の円滑な運営を依頼するとともに、都政の運営について理解と協力を求める目的で開催されたものである。右会議の出席者は、都議会自民党役員一一名と都知事を含む執行部側職員一一名であった。

被告中村は、右会議の目的、相手方が自民党役員であること等を考慮し、前記ア記載の選定基準により、右会議をヒルトンホテルで開催することとし、料理の単価は二万五五〇〇円とした。その結果、右料理代等として六五万四一二六円が公金から支出された。

ク 右各会議に出席した執行機関側の職員は、知事、副知事、総務局長、財務局長等の幹部職員であった。

右各会議に係る支出負担行為の原議には、右イないしキに記載した各会議の趣旨、目的等が記載されているところ、右のような会議においては、実際には右の原議に記載された事項だけが協議の対象となるのではなく、政策形成過程中の調整事項について随時協議が行われるが、事柄の性質上秘匿が要請されるので、右の原議等の書類にはその内容は記載しない扱いとなっている。

(2) 原告は、被告中村は、本件会議<3>ないし本件会議<8>に係る料理代等に関し、出席者数を水増しするなどした右各会議に係る支出負担行為の原議を作成し、右原議に記載されたとおりの内訳の料理等の提供に係る契約を締結するように装い、その内容の契約締結手続をさせた上、議案課の担当職員に市販の用紙を使用して出席者等を水増しするなどした請求書等を偽造させ、右料理代等相当額の公金を支出させたものである旨主張する。そして、〔証拠略〕によれば、平成八年二月八日付けの東京新聞は、「都が議長接待書類ねつ造?」「出席者数水増しで高額支出隠す」との見出しで、「東京都知事による都議会正副議長の「接待」で、一人当たり最高の高額な懇談費用を低く見せるため出席者数を水増しして会計処理するなど、会議費書類がズサンに作成されている疑いのあることが、七日までのTOKYO発の調べでわかった。」との記事、及び「最高一人九万円の例も」「市販の請求書に明細なく」との小見出しで、「開示された資料から一つの「会議」が浮かび上がった。……辛うじて読み取れたのは、日付や出席日数、経費内訳など。「接待客二名、都側十二名」「一人当たりの料理代は税金込みで五万五千二百円」「お土産は二万円の輸入洋酒セット」とあり、総費用はしめて約八十一万三千円だった。」「判明した懇談内容を会議資料と突き合わせたところ、新たな事実が浮かび上がった。正副議長を招いた宴席に出席できるのは知事や副知事、財務局長クラスに限られ、実際の人数は鈴木知事以下七、八人程度だったという。公開資料にある「都側から十二名が出席」と食い違うのだ。」との記事を掲載し、本件会議<1>に係る経費の支出に関し、関係書類がねつ造され、出席者数の水増し等が行われた疑いがあることを指摘したこと、本件会議<3>、本件会議<4>、本件会議<6>ないし本件会議<8>の各会議に係る料理代等の請求書は市販の用紙を使用して作成されていることが認められる。

しかしながら、右東京新聞の記事の内容については、本件会議<1>に係る経費の支出に関する記事である上、そのように認定判断した根拠として会議資料が挙げられているにすぎず、その内容は不明であり、単に疑いがあるというに止まるものと解するほかはない。また、〔証拠略〕によれば、料理代等の請求書が市販の用紙を使用して作成されているのは、会議経費の支払手続を行う出納長室は、公金の支出を書面審査のみで行うため厳格な審査を行っており、業者の提出した書類が不備と指摘されて、再提出せざるを得なくなることが少なくないことから、そのような事由による事務の渋滞を回避するため、当時は、債権者の承諾を得て、所管課の職員が市販の用紙を使用して見積書や請求書の内訳の記入を代行することが慣例となっていたことによるものであること、本件会議<3>、本件会議<4>、本件会議<6>ないし本件会議<8>の各会議に係る料理代等の請求書の内容は、債権者の意思に基づくものであり、記名捺印は債権者が行ったものであることが認められる。右によれば、東京新聞の記事の内容や請求書が市販の用紙を使用して作成されていることから、直ちに、右各会議に係る支出負担行為に関して、原告主張のような不正行為が行われたと認めることはできない。なお、〔証拠略〕によれば、本件会議<5>に係る料理代等の請求書は、債権者である京王プラザホテルの請求書用紙を使用して作成されていることが認められるのであって、右請求書に関して、議案課の職員が市販の用紙を使用して偽造したかのようにいう原告の主張は当たらない。

他に原告の前記主張事実を認めるに足りる証拠はない。

(3) そこで、前記(1)に認定した事実に基づき検討するに、本件会議<3>、本件会議<5>ないし本件会議<8>は、都議会の定例会の閉会、都議会の正副議長の交代、都議会の主要会派の役員の交代が行われた機会をとらえ、執行機関側が、正副議長、新・旧の正副議長、主要会派の新・旧の役員を招き、円滑な議会運営により難題が処理されたことについて、あるいは日ごろの都政の円滑な運営への協力に謝意を表し、また、今後の都政の運営について意見交換を行い、理解と協力を得ることを目的として開催され、その趣旨に沿うべく一定の接遇を行ったものであり、右によれば、右各会議は、都知事を初めとする執行機関側と都議会議員との意思疎通を十分に図り、都政運営への理解と協力を求めることを主たる目的として行われたものであり、都知事の事務遂行上必要な範囲内のものと認められる。なお、右各会議のうちには、都議会の中で枢要な地位を占める正副議長、主要な会派の役員として活躍し、円滑な議会運営に功績のあった者がそれぞれ交代する機会をとらえ、その者に対し、謝意を表明すべく接遇を行う趣旨が含まれているものがあるが、そのような接遇が円滑な都政の執行に寄与するものとして一定の限度で許容されるべきことも前述したとおりである。そして、右各会議の出席者は、正副議長、関係の都議会議員と執行機関側は都知事を含む幹部職員であって、右各会議の趣旨、目的に照らして相当な範囲のものに限定されていたものと認められる。

もっとも、右各会議は、ホテル、料亭で開催され、一人当たり四万七四〇〇円ないし二万五五〇〇円の飲食が提供されており、公費による飲食は必要最小限に止めるべきであるとの法の趣旨に照らし問題がないわけではないが、都議会の正副議長、あるいは正副議長であった者、主要会派の役員、あるいは役員であった者など議会で枢要な地位を占める議員を招いて、その労苦に報い、都政運営への協力に対し謝意を表し、あるいは今後の都政運営への理解と協力を求めるに当たり、それなりの格式のある場所で会議を開催し、接遇を行うことは、執行機関側の配慮として理解できないわけではなく、右の程度の接遇を行うことをもって、被告中村がこの種の会議に係る費用の支出負担行為者としてその裁量の範囲を逸脱したものであると断ずることはできない。

また、本件会議<4>は、第一回定例会の閉会後に、都議会議員に対し、各当該定例会提出議案に係る審議及び議決に対し謝意を表し、また、任期満了が迫っている都知事がこれまでの都政運営に対する支援と協力に謝意を表すること等を目的として都議会議長との共催により開催されたものであり、都知事の事務遂行上必要な範囲内のものと認められる。また、その場所、出席者、出席者数、接遇の内容も、右会議の趣旨、目的に照らして相当な範囲のものであると認められる。

原告は、本件会議<4>は、前都知事鈴木俊一氏の単なるお別れ会であり、その料理代等は参加者の各自が負担するのが原則であり、右会議に係る料理代等を公金から支出するのは違法である旨主張するところ、右会議が鈴木前都知事とのお別れ会の性格を有していたことは否定できない。しかし、右会議は、単なるお別れ会に止まるものではなく、右のとおりの目的を有していたと認められるのであって、右認定を覆し、原告の右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

右のとおり、本件会議<3>ないし<8>及びこれらに伴う接遇は、都知事を含む執行機関側が、議会の正副議長、関係議員との十分な意思疎通を図り、今後の都政運営への理解と協力を得ることを主たる目的として行われた事務遂行上必要な範囲内のものと認められ、本件会議<4>の場合を除き、その費用がやや高すぎるのではないかという問題があるものの、右各会議の目的、出席者、接遇の内容等を総合的にみれば、これをもって社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものとまでいうことはできず、また、法一条、地方財政法四条に違反するものということもできない。

2  そうすると、原告の本件請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないというべきである。

三  結論

以上の次第で、原告の被告會田に対する請求に係る本件訴えは不適法であるから、これを却下し、また、被告中村に対する請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官 増田稔 篠田賢治)

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