東京地方裁判所 平成9年(ワ)2481号 判決 1998年10月30日
アメリカ合衆国 ニュージャージー州 〇八五四〇
プリンストン ローレンスビループリンストン ロード
原告
イー アール スクイブ アンド
サンズ インコーポレイテッド
(以下「原告スクイブ」という。)
右代表者
ドナルド ジェイ バラック
東京都中央区日本橋本町三丁目五番一号
原告
三共株式会社
(以下「原告三共」という。)
右代表者代表取締役
河村喜典
右両名訴訟代理人弁護士
中村稔
同
熊倉禎男
同
富岡英次
同
辻居幸一
同
田中伸一郎
同
宮垣聡
右両名補佐人弁理士
小川信夫
富山県富山市新庄町二三七番地
被告
株式会社陽進堂
右代表者代表取締役
下村健三
右訴訟代理人弁護士
浦崎威
同
久保精一郎
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 原告スクイブ
被告は、平成一二年における後発品の薬価基準収載日の翌日まで別紙イ号物件目録記載の製剤を製造し又は販売してはならない。
二 原告ら
被告は、原告らそれぞれに対し、各金六八九〇万円及びこれに対する平成九年三月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 原告スクイブは、特許権の満了した後記特許権を有していた。また、原告三共は、右特許権につき実施許諾を受けていた。原告らは、被告において右特許権存続期間中に医薬品の製造承認申請のために試験をした行為等が、右特許権を侵害するものであるとして、原告スクイブが被告に対し、不法行為による医薬品製造販売の差止を、また、原告らが被告に対し、不法行為による損害賠償をそれぞれ請求した。
二 基礎となる事実(証拠を示した事実を除き、当事者間に争いはない。)
1 原告スクイブの特許権
原告スクイブは、左記の特許権(以下、「本件特許権」といい、その特許請求の範囲第七項の発明を「本件特許発明」という。)の特許権者である。
(一) 登録番号 特許第一二八一一三三号
(二) 発明の名称 プロリン誘導体
(三) 出願日 昭和五二年二月一二日(特願昭五二-一四五四二号)
(四) 優先権主張 国名 アメリカ合衆国
出願年月日 一九七六年(昭和五一年)二月一三日
(五) 登録日 昭和六〇年九月一三日
(六) 特許請求の範囲 別紙特許公報該当欄記載のとおり
(七) 特許請求の範囲第一項のR1がメチル、R2及びR4が水素、nが1のとき、同第七項の発明に係る物質をカプトプリル(化学名1-〔(2S)-3-メルカプト-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリン)といい、その化学構造式は別紙化合物目録記載のとおりである。
2 原告ら製造に係る薬品名
原告スクイブは、日本において、カプトプリルを有効成分として含有する医薬品(商品名「カプトリル」。以下「原告製剤」という。)の製造を原告三共に許諾し、原告三共は、原告製剤を製造し、これを原告三共のほか原告スクイブの関連会社が販売している(前半については弁論の全趣旨)。
3 被告の行為
(一) 被告は、別紙イ号物件目録記載の製剤(以下「本件製剤」という。)につき、いわゆる後発品として、医薬品製造承認を申請した。被告は、右製造承認申請に必要な資料を得るため、カプトプリル原末を使用して本件製剤を製造し、「規格及び試験方法に関する資料」、「加速試験に関する資料」及び「生物学的同等性に関する資料」を得るための各種試験を行い、これによって得た資料を添付して、後発品の製造承認を申請し、平成七年一月二三日、厚生大臣の製造承認を得た。そして、平成九年七月に本件製剤につき薬価基準収載を受けた。
(二) 本件製剤は、カプトプリルを有効成分とするものであり、本件製剤の有効成分は本件特許発明の技術的範囲に属する。
三 争点
1 本案前の主張
(一) 被告の主張
原告らの差止請求及び損害賠償請求の前提として、被告が侵害しているという原告の現在の権利が特定されなければならないところ、原告の本件特許権は平成九年二月一二日に存続期間が満了している。よって、被告により原告が現在侵害されていると主張する権利が不明であり、主張自体失当である。
よって、本訴訴えは却下されるべきである。
(二) 原告らの反論
差止請求は、不法行為を根拠とするものであり、損害賠償請求は、本件特許権存続期間中における、被告による本件特許権の侵害行為に対する損害賠償請求であって、原告らの主張の法的根拠は明確である。
2 「業としての実施」該当性
(一) 原告らの主張
特許法六八条にいう「業としての実施」とは、産業とはおよそ関係のない個人的又は家庭的な実施を単に除外する趣旨と解されている。被告は、業務の一環として製造承認申請のための準備行為を行ったのであるから、「業としての実施」に該当する。
(二) 被告の反論
本件のような製造承認申請のための準備行為は、当該医薬品を患者に投与するのではなく、健康な人間に投与し、先発医薬品と比較して有効成分の血中濃度を測定する試験であり、先発医薬品と競合して当該医薬品を患者に投与して治療する行為ではないから、市場競争に参入するものではなく、この点において個人的な実施と変わるところがない。したがって、製造承認申請のための準備行為は、特許法六八条にいう「業としての実施」に当たらない。
3 特許法六九条一項所定の「試験又は研究」該当性
(一) 被告の主張
(1) 特許法の目的が、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって、産業の発達に寄与する(特許法一条)ことにあることからすれば、独占権である特許権の効力も、特許権者の利益と発明を利用する第三者ないし社会一般の利益との調和を図るという産業政策上の見地から制限されることがある。
また、特許法六九条一項は、試験又は研究のためにする特許発明の実施について特許権の効力が及ばない旨規定するが、その立法趣旨は、特許権の効力を試験又は研究のためにする特許発明の実施にまで及ぼすことは、かえって技術の進歩を阻害し、産業の発達を損なう結果になるため、それを制限すべきであるとの産業政策上の判断によるものと解されている。したがって、特許法六九条一項にいう「試験又は研究のためにする特許発明の実施」に該当するか否かについては、特許権者の利益と第三者ないし社会一般の利益の調整を図るという観点から考慮して決定すべきものと解されている。
(2) この観点からすれば、純粋に技術の発展を目的とする試験、研究のみが特許法六九条一項所定の試験、研究に該当すると解するのは狭きにすぎ、次の諸点を考えあわせると、被告が行った本件製剤の製造承認申請のための試験は、特許法六九条一項所定の「試験又は研究」に該当し、本件特許権の効力は及ばない。
<1> 被告は、本件特許権の存続期間満了後直ちに本件製剤を製造販売するため、医薬品の製造承認に必要な資料を得ようとして、カプトプリル原末を入手し、カプトプリルを含有する医薬品を製造した上、前記(第二、二3(一))のとおり各種試験を行い、これによって得た資料を添付して、本件製剤の製造承認を申請し、医薬品の製造承認を得た。
<2> 被告は、右試験の際、有効性を十分発揮させ、本件特許発明と同等以上の効能が認められるよう、製剤の過程で独自の技術を磨き、研究を重ねたのであって、これらの製剤技術は、医療品技術の進歩にも寄与する。
<3> 特許法が、後発品の製造者に対し、医薬品製造承認に当たり、各種試験の実施及びその資料の添付を求め、審査を行うのは医薬品の有効性や安全性を確保し、国民の保健衛生の向上を図る目的を達成するためであり、特許権者の独占的地位を保護することを目的とするものではない。
<4> 仮に、被告が本件特許権の存続期間満了後に医薬品製造承認申請に必要なデータを得るための試験を開始すべきものとすると、原告は本件特許権の存続期間満子後も、試験期間及び審査に要する期間、本件特許権の独占的実施権を有することになる。
したがって、被告が行った前記試験は、特許法六九条一項所定の「試験又は研究」に該当するので、適法である。
(3) なお、被告は、本件特許権の存続期間満了前に工業化検討のためのカプトプリル原末の購入、本件製剤の製造は行っていない。
(二) 原告らの反論
(1) 特許法の目的は、発明を公開させて技術の発達を促すことにあるが、試験又は研究のためにする実施が特許権により禁じられてしまうのでは、かかる特許法の目的の実現が妨げられてしまうため、特許法六九条一項は、試験又は研究のためにする実施を、極めて例外的に特許権の効力の範囲外としたものである。
したがって、特許法六九条一項にいう「試験又は研究」の意義は、このような同項の趣旨に沿い、限定して解釈されるべきである。すなわち、試験あるいは研究と名が付けばすべての実施が適法となるものではなく、専ら純粋に技術の発展を目的とする試験、研究のみが適法となる。医薬品の試験の場合、当該医薬品が新有効成分を含有しない後発品であるときは、医薬品の本質である有効成分の有効性、安全性は既に分かっており、当該発明の真の有用性を知るという意義は失われている。このような医薬品の試験は、後発品の製造販売を目的とするものであり、純粋に医薬分野の技術の進歩を目的とするものではないから、特許法六九条一項の「試験又は研究」に当たらないことは明白である。
(2) 製薬メーカーは、まず実生産の一〇分の一のスケールでの生産を行い、徐々に生産のスケールアップを図り、最終的に工場生産のスケールでの生産を行い、当該処方の製剤を自社の設備で工場生産できることを確認するという工業化検討を行った上で、製造承認のための試験を行い、製造承認申請を行っている。被告においても、本件製剤の製造承認申請に際して、また、その後も特許権存続期間満了に伴う工場生産開始に向けて、工業化検討を行っていたものと考えられる。工業化検討は、特許発明の対象である化合物についての検討ではなく、かかる化合物を含有する医薬品の商業生産に関する検討であり、商業的製造行為である。したがって、工業化検討におけるカプトプリル原末の使用が、特許法六九条一項の「試験又は研究」に該当する余地はないものであり、本件特許権を侵害するものである。
製造承認申請に必要な試験に用いる製剤の生産は、工業化検討における製剤の生産と、実際には一連の行為として行われるものであり、後発品の商業生産を企図した一連の行為として、一体的にみるべきものであり、違法行為であることは明白である。
4 実質的違法性の有無
(一) 被告の主張
特許権者が独占の利益を享受するのは権利存続期間中における市場競争の場においてであり、本件の場合には、被告製剤が特許期間中に市場の原告製剤と競合することはないから、原告に何ら損害は生ぜず、被告の行為は実質的違法性を欠く。
(二) 原告らの反論
本件特許権存続期間中に被告が適法にカプトプリル原末を使用して、製造承認のための試験を行おうとすれば、被告は、原告スクイブから実施許諾を受けなければならず、実施料を支払うべき義務を負う。被告が、原告スクイブの許諾を得ることなく製造承認申請のための試験を行ったことにより、原告スクイブは、当然得べかりし実施料の支払いを受けられなかったのであるから、原告スクイブが損害を被ったことは明らかである。よって、被告の行為は実質的にみても違法である。
5 差止請求権の存否
(一) 原告スクイブの主張
(1) 被告は、本件製剤の製造承認申請の際提出すべき資料作成のために、本件特許発明の技術的範囲に属するカプトプリル原末を輸入又は生産し、使用して、本件製剤の製造承認を申請したものであるが、平成九年七月の薬価基準収載に基づく本件製剤の製造販売は、このような特許権侵害行為によって初めて、可能となったものである。
すなわち、本件特許権の存続期間の満了日である平成九年二月一二日より後に、剤型の検討のための試験を行い(少なくとも、三か月程度は必要である。)、その上でカプトプリル製剤の製造承認のための試験(六か月の安定性試験を含む。)をし、その試験結果をまとめ(少なくとも、一か月程度必要である。)、製造承認申請を行うとすれば、通常、製造承認を得るまでには申請後約一年半を要するので、カプトプリル製剤の薬価基準収載を得るのは、早くとも平成一二年度の後発品の薬価基準収載、すなわち、平成一二年七月とならざるを得ない(七月の薬価基準収載のための申請は、通常三月末ないし四月初旬までに行われる必要がある。)。この場合には、カプトプリル製剤の製造販売の開始は、早くても平成一二年七月以降にならざるを得ない。
よって、被告が、本件特許権の存続期間中の侵害行為に基づき、平成九年に薬価基準収載を受けて本件製剤の製造販売を開始する行為は、民法七〇九条の不法行為を構成する。そして、かかる不法行為に対しては、特許権者に差止請求権を認めるのが相当である。
(2) 本件においては、本件製剤の製造販売自体は本件特許権の存続期間満了後の行為であるから、本件特許権の侵害行為そのものではないが、本件特許権の侵害行為により初めて可能となった製造承認申請に基づくものであり、この点において、本件製剤の製造販売行為は、特許権侵害存続期間中の侵害行為に起因する、右侵害行為と不可分一体の行為と解される。もし、被告による平成九年七月からの本件製剤の製造販売が許されるとすれば、それはまさしく本件特許権の侵害を放任することに等しいものであり、本件特許権の価値を実質的に減じてしまうことになる。
また、本件特許権存続期間内になされた工業化検討も、本件特許権存続期間満了後直ちになされる工場生産を円滑に進めるためになされたものであるから、同様に本件特許権存続期間満了後の行為と不可分一体と考えるべきである。
よって、本件においては、原告スクイブに、平成一二年における後発品の薬価基準収載日の翌日まで、本件製剤の製造販売に対する差止請求権を認めるのが相当である。
(二) 被告の反論
原告の主張は争う。
なお、厚生省における平成九年度以降の新しい取扱いを前提とすると、仮に、本件特許権の存続期間満了日より後に、剤型の検討試験等に着手した場合には、カプトプリルの販売開始は平成一一年七月ころになる。
6 損害賠償額
(一) 原告らの主張
原告スクイブは、原告三共に対し、本件特許権の独占的通常実施権を許諾するとともに、両者間では、本件特許権に関連して発生した損害賠償請求権、不当利得返還請求権等、一切の金員の支払請求権を共有する旨の合意が成立している。よって、原告らは被告に対し、被告の右特許侵害行為につき、通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた最低の損害として、その賠償を請求することができる。
後発品の製造承認申請のための試験に関する本件特許権の実施許諾について通常受けるべき金銭の額の算定については、以下のように考えるべきである。
すなわち、前記のとおり、後発品メーカーが、特許法を遵守して、特許権の存続期間満了後に試験を行えば、薬価基準収載が可能となるのは平成一二年七月である。これに対し、被告は、平成九年七月に薬価基準収載をし、本件製剤を販売している。原告ら及び被告間で後発品の製造承認のための試験に関する本件特許権の実施許諾についての交渉を仮想すると、被告が市場に早期に参入できることによって得られる三年間の利益を基礎として実施料の額を算定し、これを支払うことを条件とすることで合意したであろうとみるのが、合理的かつ公平であり、本件においては、この額を、「通常受けるべき金銭の額に相当する額」と認めるのが相当である。
被告は、本件製剤の販売を開始した後、少なくとも一か月につき本件製剤を一〇〇万錠製造販売していると考えられる。平成八年四月におけるカプトプリル製剤の薬価は、本件製剤対応の「カプトリル」製剤が三四・八円であるが、後発品の場合、薬価は先発品の八〇パーセント程度とされ、実売価格は更にその五〇パーセントと考えられる。よって、被告は、一年間に本件製剤を一億六七〇四万円販売するものと合理的に推測される。また、被告は、研究開発費を一切投じていないことから、少なくとも本件製剤の販売額の五〇パーセントに当たる八三五二万円の利益を一年間に得るものと推測される。かかる利益のうち、少なくとも二分の一に相当する四一七六万円、三年間の合計一億二五二八万円は、通常受けるべき実施料額であると考えられる。
また、本件訴訟の特質から、原告らは本件訴訟の遂行を弁護士に依頼せざるを得ず、そのために支出すべき弁護士費用は一二五二万円を下らない。これは、被告の前記不法行為と相当因果関係を有する損害である。
よって、原告らは被告に対し、一億三七八〇万円の損害賠償請求権を有する。
(二) 被告の反論
被告が、製造承認申請のための資料の作成に際して、カプトプリル原末を用いて本件製剤を製造していること、被告は、平成九年七月に薬価基準収載をし、本件製剤を販売していることを認め、原告スクイブが原告三共に対し、本件特許権の独占的通常実施権を許諾するとともに、両者間で、本件特許権に関連して発生した一切の金員の支払請求権を共有する旨の合意が成立していることは知らない。その余の事実は否認する。
第三 争点に対する判断
一 被告は、本件特許権の存続期間中に、前記第二、二3(一)のとおり、カプトプリル原末を使用して、医薬品製造承認申請に必要な「規格及び試験方法に関する資料」、「加速試験に関する資料」及び「生物学的同等性に関する資料」を得るための各種試験を行った。
したがって、被告は、本件特許権の存続期間中に、特許法二条三項一号所定の実施行為をしたことになる。なお、被告は、医薬品の製造販売を業とする会社であり(争いがない。)、右試験は、被告の経済活動の一環として、最終的には本件製剤の製造販売を目的として行われたものであり、「業としての実施」に該当する。
しかし、被告の右行為は、特許法六九条一項に規定する「試験又は研究のためにする特許発明の実施」に該当するので、本件特許権を侵害しないものと解するのが相当である。その理由は以下のとおりである。
二1 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有し(特許法六八条本文)、特許権は、独占的排他権であるから、第三者が、特許権者の許諾なく、特許発明を業として実施することは原則としてできない。他方、特許法の目的が、発明の保護及び利用を図ることにより発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することにある(同法一条)ことからすれば、独占権である特許権の効力も、特許権者の利益と特許発明を利用する第三者ないし社会一般の利益との調和を図るという産業政策上の理由から、法令等により、一定の制限を受けることがあることがあり得るのは当然である。
特許法六九条一項は、「特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。」旨、特許権の効力の制限について定めているが、同条同項の立法趣旨は、特許権の効力を、試験又は研究のためにする特許発明の実施にまで拡大することは、かえって技術の進歩を阻害し、産業の発展を損なう結果になり得ることから、これを制限すべきであるとの産業政策的な立法目的によるものと解される。
右の立法趣旨に鑑みると、同条項にいう「試験又は研究のためにする特許発明の実施」を解釈、適用するに当たっては、特許権の効力が制限されることによって被る特許権者の不利益と、試験又は研究が禁止されることによって受けることがある第三者ないし社会一般の不利益とを比較検討して、判断するのが相当である。
このような観点に照らすならば、<1>特許発明の明細書により開示された技術等を基礎にして、新規の発明ないし利用発明をもたらし得るような、技術の進歩を目的として行われる試験又は研究が、特許法六九条一項所定の「試験又は研究」に該当することは明らかであるが、これのみに限定されるものではなく、<2>特許発明の実施が可能であるか否か、また、いかなる条件の下で可能であるかについて、有用な資料を得るために追試をしたり、実施上の問題点を探求したり、解決したりするために行われる試験又は研究も、右「試験又は研究」に該当すると解されるし、更に、<3>直接的には、技術の進歩を目的とするものではないが、特許発明の新規性や進歩性の有無を確認、調査するために行われる試験又は研究も、特許法の趣旨に沿ったものとして、右「試験及び研究」に該当するものと解するのが相当である。
2 そこで、被告の行った本件製剤の製造承認申請のための前記各試験の性質等について検討する。
薬事法は、医薬品等を製造しようとする者は、厚生大臣の承認を受けなければならないこと(同法一二条一項、一三条一項、一四条)、厚生大臣は、医薬品等につき、これを製造しようとする者から申請があったときは、品目ごとにその製造についての承認を与えること(同法一四条一項)、その承認は、申請に係る医薬品等の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用等を審査して行うこと(同法一四条二項)、右承認を受けようとする者は、厚生省令で定めるところにより、申請書に臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならないこと(同法一四条三項)等を規定する。また、同法は、後発品の製造承認申請についても、右申請書に添付する「規格及び試験方法に関する資料」、「加速試験に関する資料」及び「生物学的同等性に関する資料」を得るための各種試験、及び製造承認のための審査を要求しているが、これは、後発品が、既に充分な資料による審査を経て、有効性、安全性の面で承認を与えられた先発品と、品質において同等であることを客観的に担保するための措置であって、これによって、安全な医薬品を提供し、国民の保健衛生の向上を図る趣旨で設けられた規制と理解することができる。
このように、同法に基づく医薬品の製造承認に係る審査は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うこと等により、保健衛生の向上を目的とする同法の趣旨・目的に沿って、医薬品の有効性や安全性の確保を図るために実施されるものであり、したがって、右製造承認申請に添付する資料を得るために実施が義務付けられている各種試験についても、医薬品の品質、有効性及び安全性を確保するという、公益的な要請に基づくものであるということができる。
3 以上のとおり、特許法六九条一項の定める「試験又は研究」は、純然たる技術の進歩、改良を目的とする試験又は研究に限られるものではなく、広く、特許発明の実施が可能であるか否か、また、いかなる条件の下で可能であるかについて、有用な資料を得るために追試をしたり、実施上の問題点を探求したり、解決したりするために行われる試験又は研究も含まれると解すべきである。そして、<1>被告の前記行為は、存続期間満了後に医薬品を製造販売する目的で、後発品の製造承認申請に必要な薬事法に義務付けられた所定の資料を得るために行われる各種試験行為であり、直接的には、技術の進歩を目的として行われるものではないが、広い意味では、特許発明の実施が可能であるか否か、また、いかなる条件の下で可能であるかについて、有用な資料を得るために追試をしたり、実施上の問題点を探求したり、解決したりするために行われる試験又は研究であるということができ、後発品の有効性及び安全性を確保するという公益目的に沿ったものであるといえること、<2>被告の行為は、本件特許権の存続期間内において、本件製剤の販売を意図した行為ではなく、専ら、本件特許権の存続期間満了後の販売を目的としているところ、特許権の存続期間満了後は何人もその発明を実施できるにもかかわらず、右各種試験が許されないとすると、事実上特許期間満了後も特許権者に独占的地位を与える結果となること等を比較検討するならば、被告の行った後発品の製造承認申請に添付する資料を得るための各種試験は、特許法六九条一項の定める「試験又は研究」に該当するものと解するのが相当である。
よって、被告の右各種試験の実施には本件特許権の効力は及ばず、右行為が違法であることを前提とした本件製剤の製造販売の差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がない。
なお、被告が本件特許権の存続期間中に工業化検討を行ったと認めるに足りる証拠はなく、工業化検討が違法であることを前提とした請求も理由がない。
三 原告らの主張に係る行為は、本件特許権を侵害したものということはできず、右行為が違法であることを前提とした本件製剤の製造販売の差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がない。なお、被告は、本件訴えは不適法である旨主張するが、右被告の主張は理由がない。
以上のとおりであるので、原告らの本件請求を棄却する。
(裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 八木貴美子 裁判官 沖中康人)
イ号物件目録
「オンフルール錠一二・五mg」を品名とする一錠につきカプトプリル一二・五mgを含有する錠剤
<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告
<12>特許公報(B2) 昭60-4815
<51>Int.Cl.4C 07 D 207/16 //A 61 K 31/40 識別記号 ABU AEQ 庁内整理番号 7242-4C <24><44>公告 昭和60年(1985)2月6日
発明の数 1
<54>発明の名称 プロリン誘導体
<21>特願 昭52-14542 <55>公開 昭52-116457
<22>出願 昭52(1977)2月12日 <43>昭52(1977)9月29日
優先権主張 <32>1976年2月13日<33>米国(US)<31>657792
<32>1976年6月21日<33>米国(US)<31>698432
<32>1976年12月22日<33>米国(US)<31>751851
<72>発明者 ミゲール・エンジエ アメリカ合衆国ニユージヤージー・ブリンストン・ヘムロル・オンデツテイ ツク・サークル79番
<72>発明者 デイビツト・ダブリ アメリカ合衆国ニユージヤージー・トレントン・レイク・ユ・クツシユマン シヨア・ドライブ20番アール・デイ1
<71>出願人 イー・アール・スクイ アメリカ合衆国ニユージヤージー州08540・ブリンストブ・アンド・サンズ・ ン、ローレンスビル・ブリンストンロード(番地の表示なインコーポレイテツド し)
<74>代理人 弁理士 青山葆外1名
審査官 谷口浩行
<57>特許請求の範囲
1 式:
<省略>
〔式中、R1およびR4はそれぞれ水素または低級アルキルを表わす。R2は水素または式:
<省略>
で示される基を表わす。nは0、1または2を表わす。〕
で示される化合物およびその塩類。
2 R4が水素である特許請求の範囲第1項記載の化合物。
3 nが1である特許請求の範囲第2項記載の化合物。
4 R2が水素である特許請求の範囲第2項記載の化合物。
5 R1が水素またはメチルである特許請求の範囲第2項記載の化合物。
6 式〔Ⅰ〕におけるプロリンがL-異性体である特許請求の範囲第1項記載の化合物。
7 1-(3-メルカブト-2-D-メチルプロバノイル)-L-プロリンである特許請求の範囲第1項記載の化合物。
8 1、1'-〔ジチオビス(2-D-メチル-3-プロバノイル)〕-ビス-L-プロリンである特許請求の範囲第1項記載の化合物。
発明の詳細な説明
本発明はプロリン誘導体、更に詳しくは薬理学的活性を有する新規プロリン誘導体およびその塩類に関する。
本発明の新規プロリソ誘導体は次の一般式で示される化合物およびその塩類を包含する。
<省略>
本発明化合物はアンギオテンシン変換酵素抑制剤として有用であつて、血圧降下薬として使用することができる。本発明化合物を更に明確化すれば次式で示すことができる。
<省略>
上記式中の記号は下記の意義を有する。R1およびR4はそれぞれ水素または低級アルキルを表わす。R5は水素または式:
<省略>
で示される基を表わす。nは0、1または2を表わす。
式中の※印は不整炭素原子を表わす。ただしR1およびR4置換基を保持する炭素原子はそれぞれの置換基が水素以外の基であるときに不整である。
本発明化合物〔Ⅰ〕の内、特に好ましい化合物は式:
<省略>
(R1、R2およびnは前記と同意義。)で示される化合物である。
上記範囲の化合物〔Ⅱ〕の内、下記化合物は特に好ましい態様を示す本発明化合物〔Ⅰ〕の下位概念に属する化合物であつて、記載する順序(a~g)でその好ましさを増大する。
(a)nが1、(b)R2が水素、(c)R1が水素またはメチル、(d)R1およびR2がそれぞれ水素、nが0、(c)R1およびR2がそれぞれ水素、nが1、(f)R1がメチル、R2が水素、nが1、(g)R2が式:
<省略>
(基中、R1が水素または低級アルキル(特にメチル)、nが0~2(特に1))で示される基である化合物。
上記好ましい基を組合わせて得られる化合物も好ましい化合物に包含されることは当然である。
プロリン核がL-型である立体異性体は特に好ましい化合物である。
種々の記号により表わされる低級アルキルはメチルないしへブチルの直鎖もしくは分枝状炭化水素基、たとえばメチル、エチル、プロビル、イソプロビル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ベンチル、イソベンチルなどを包含する。上記の基はC1~C4の基(特にC1~C2の基)が好ましい。
本発明化合物〔Ⅰ〕(およびその好ましい下位概念の化合物を含む。)は次の方法により製造することができる。
一般にR2が水素である本発明化合物〔Ⅰ〕は式:
<省略>
〔式中、Rはヒドロキシまたは低級アルコキシを表わす。〕
で示される化合物を式:
<省略>
〔式中、R1、R4およびnは前記と同意義。〕
で示される酸でアシル化し、Rは低級アルコキシである時これを離脱することにより得ることができる。
しかし酸〔Ⅵ〕でアシル化することにより直接、本発明化合物〔Ⅰ〕が得られるばかりでなく、中間体を経由して本発明化合物〔Ⅰ〕を得ることができる。すなわち、前記化合物〔Ⅲ〕を(a)式:
<省略>
〔式中、Xはハロゲン(好ましくはブロモ、クロロまたはヨウド)を表わす。R1、R4およびnは前記と同意義。〕
で示される-ハロアルカン酸、または(b)式:
<省略>
〔式中、R1、R4およびnは前記と同意義。〕
で示されるトシルオキシアルカン酸(Xがトシルオキシである化合物〔Ⅴ〕)、または(c)式:
<省略>
〔式中、R1およびR4は前記と同意義。〕
で示される置換アクリル酸でアシル化し、次いでこのアシル化生成物を式:
R5CO-SH 〔Ⅶ〕
〔式中R5は低級アルキル、フエニルまたはフフエニル低級アルキルを表わす。〕
で示されるチオ酸のアニオンで置換もしくは付加することにより本発明化合物〔Ⅰ〕の中間体を得ることができる。
またR2が水素である本発明化合物〔Ⅰ〕またはそのエステルは出発物質〔Ⅲ〕を式:
<省略>
〔式中、n'は1または2を表わす。R1およびR4は前記と同意義。〕
で示されるチオラクトンでアシル化することにより得ることができる。あるいは出発物質〔Ⅲ〕を式:
<省略>
〔式中、YはR5COもしくは保護基(たとえば
<省略>
<省略>
(c)CH3-CONHCH2-
<省略>
または他の硫保護基)であつてよい。R、R1、R4、R5およびnは前記と同意義。〕
で示されるメルカプトアルカン酸でアシル化することにより中間体を得ることができる。
Yが上記のごとき保護基である化合物はR2が水素である目的化合物〔Ⅰ〕またはそのエステル製造のための出発物質であつて、かかる出発物質〔Ⅸ〕で化合物〔Ⅲ〕をアシル化することによりYが保護された化合物〔Ⅰ〕の中間体を得、次いでこれを熱トリフルオロ酢酸、冷トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸第二水銀、液体アンモニア中ナトリウム、亜鉛と塩酸などと処理する常套方法で脱保護基反応によりR2が水素である本発明化合物〔Ⅰ〕またはそのエステルを得ることができる(保護基の離脱処理についてはメトーデン・デア・オルガニツシエン・ヘミー(Methodender、Organishen Chernie (Houben-Weyl))第ⅩⅤ巻パートⅠ第736頁および以降参照)。
出発物質〔Ⅲ〕のアシル化剤として酸〔Ⅳ〕または〔ⅩⅠ〕を用いるときはジシクロヘキシルカルボジイミドなどのようなカツプリング試薬を用いるかまたは該酸の混合無水物、対称性無水物、酸ハライド、酸エステル体を形成せしめるかもしくはウツドワード試薬K、N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1、2-ジヒドロキノリンなどを使用して該酸〔Ⅵ〕または〔Ⅸ〕を活性化することによりアシル化処理を効果的に行なうことができる(アシル化処理についてはメトーデン・デア・オルガニツシエン・ヘミー(Methoden der Organishen Chemie (Houben-Weyl))第ⅩⅤ巻バートⅡ第1頁および以降参照)。
出発物質〔Ⅲ〕はプロリンおよびその低級アルキルエステル類を包含する。出発物質〔Ⅲ〕のアシル化処理については以下に詳述する。
YがR5-CO-である化合物〔Ⅰ〕の中間体を製造するための好ましい方法は出発物質〔Ⅲ〕(酸またはそのエステル類)と式:
<省略>
〔式中、Xはハロゲン(好ましくはクロロまたはブロモ)を表わす。R1、R4およびnは前記と同意義。〕
で示されるハロアルカン酸をカツプリング処理する。この反応処理は酸〔Ⅴ〕と酸〔Ⅲ〕を反応させる前に酸〔Ⅴ〕の混合酸無水物、対称性無水物、酸ハライド、活性エステルを形成せしめるかまたはウツドワード試薬K、EEDQ(N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1、2-ジヒドロキシキノリン)などを用いることにより該酸〔Ⅴ〕を活性化した後、これと化合物〔Ⅲ〕をカツプリング処理することにより行なうことができる。
この操作により式:
<省略>
〔式中、R、R1、R4、nおよびXは前記と同意義。〕
で示される化合物が得られる。
この化合物〔Ⅹ〕を式:
RSCO-SH 〔Ⅶ〕
〔式中、R5は前記と同意義。〕
で示されるチオ酸のアニオンとの置換反応に付することにより式:
<省略>
〔式中、R、R1、R4、R5およびnは前記と同意義。〕
で示される本発明化合物の中間体を得ることができる。
上記化合物〔ⅩⅠ〕をアンモノリンス処理することにより、これを式:
<省略>
〔式中、R、R1、R4およびnは前記と同意義。〕
で示される本発明化合物またはそのエステルに変換することができる。
Rが低級アルコキシ基であるとき、たとえばRがt-ブトキシまたはt-アミルオキシであるとき、本発明化合物の中間体〔ⅩⅠ〕または〔ⅩⅡ〕のエステル体をトリフルオロ酢酸およびアニソールで処理することにより低級アルコキシ基を離脱せしめて対応する遊離酸を得ることができる。以上のアルコキシが存在するとき、これをアルカリ加水分解することにより対応する酸生成物を得ることもできる。
以上に説明した本発明化合物を得るための種々の製造法を更に詳細に説明すれば次のとおりである。式:
<省略>
〔式中、R1およびR4け前記と同意義。〕
で示されるアクリル酸出発物質をその酸ハライド型に変形し、次いでこれと化合物〔Ⅲ〕を反応させて式:
<省略>
式中R、R1およびR4は前記と同意義。〕
で示される化合物を製し、これを前記式R5CO-SH〔Ⅵ〕で示されるチオ酸との付加反応に付することにより本発明化合物の中間体〔ⅩⅠ〕を得ることができる。
また前記のように式:
<省略>
〔式中、R1、R4およびnは前記と同意義。〕
で示されるトシルオキシアルカン酸をアシル化剤として出発物質〔Ⅲ〕をアシル化し、このアシル化生成物を前記のごとき置換反応などに付することにより本発明化合物の中間体〔ⅩⅠ〕を得ることができる。
またアクリル酸〔Ⅵ〕とチオ酸〔Ⅶ〕を反応させて式:
<省略>
〔式中、n、R1、R4およびR5は前記と同意義。〕
で示される化合物を製し、これをたとえば塩化チオニルで処理してその酸ハライドに変換した後、これと出発物質〔Ⅲ〕をカツプリング処理し、更に前記のように処理することにより本発明化合物の中間体〔ⅩⅠ〕を得ることができる。
酸またはそのエステル出発物質〔Ⅲ〕を式:
<省略>
〔式中、R4は保護基(前記同様の保護基であつてよい。)を表わす。n、R1およびR4は前記と同意義。〕
で示されるω-メルカプトアルカン酸の保護型化合物でアシル化することができる。この場合にはアシル化処理後、前記のような常套の脱保護基処理することにより本発明化合物〔Ⅰ〕を得ることができる。
また出発物質〔Ⅲ〕のアシル化剤としてチオラクトン型化合物(たとえばβプロビオチオラクトン、α-メチル-β-プロビオチオラクトンなど)を使用することができる。
本発明化合物の好ましい製造法については後記実施例にその詳細を説明する。
本発明化合物を得るための特に好ましい製造法の代表例を挙げれば次のとおりである。
酸またはそのエステル出発物質〔Ⅲ〕を式:
<省略>
〔式中、Xはそれぞれ個別にハロゲン(好ましくはクロロまたはプロモ)、R1、R4およびnは前記と同意義。〕
で示されるハロアルカノイルハライドでアシル化する。この反応操作はアルカリ性媒体(たとえば希水酸化アルカリ金属溶液、炭酸水素アルカリ金属溶液または炭素アルカリ金属溶液)中、低温(たとえば約0~15℃)で行なうことができる。このアシル化反応生成物をチオ酸〔Ⅶ〕のアニオンによる置換反応に付することにより中間体を得ることができる。この処理はアルカリ性媒体(好ましくは炭酸アルカリ金属溶液)中、常法により行うことができる。この反応生成物をアンモノリシス処理(たとえばアルコール性アンモニアまたは浸水酸化アンモニウム溶液処理)またはアルカリ性加水分解(たとえば水酸化金属水溶液で処理)することによりR2が水素である本発明化合物を得ることができる。
また本発明化合物の特に好ましい製造法の代表例としてエステル出発物質〔Ⅲ〕(好ましくはt-ブチルエステル体)を式:
<省略>
〔式中、R1、R4、R5よびnは前記と同意義。〕
で示されるチオアルカン酸で処理する方法を挙げることができる。この操作はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのような無水媒体中、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N、N'-カルボニルビスイミダゾール、エトキシアセチレン、ジフエニルホスホリルアジドまたは同様のカツプリング剤の存在下、約0~10℃で行なうことができる。この反応生成物を上記のようにアンモノリシス処理することによりR2が水素である化合物を得る。Rが低級アルコキシ基であるとき、これをたとえばトリフルオロ酢酸およびアニソール(室温)で処理することにより低級アルコキシ基を離脱せしめ、対応する遊離酸を得ることができる。
エステル体〔Ⅲ〕(Rが低級アルコキシ(特にt-ブトキシ)である化合物)をチオラクトン(たとえばβ-プロビオチオラクトン、α-メチルーβ-プロビオチオラクトンなど)でアシル化するとき、この反応はテトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレンなどのような無水溶媒中、約0℃ないし室温で処理することにより達成される。このエステル生成物を前記のとおりアニソールとトリフルオロ酢酸で処理することにより、そのエステル基を離脱せめることができる。
R2が式:
<省略>
〔式中、R1、R4およびnは前記と同意義。〕
で示される基である本発明化合物はR2が水素である化合物〔ⅩⅡ〕をヨウ素で直接酸化することにより得ることができる。
本発明化合物〔Ⅰ〕は1個またはそれ以上の不整炭素原子を有する。R1およびR4が水素以外の基であるとき、これらを結合する炭素原子は不整である。これらの炭素原子は式〔Ⅰ〕中、※印で示した。このように本発明化合物は立体異性体またはそのラセミ化合物として存在する。これらはいずれも本発明化合物の範囲に包含される。前記製造法における出発物質としてラセミ化合物または光学的対掌体を用いることができる。ラセミ出発物質を本発明の製造法で使用するとき、生成物中の立体異性体はこれを通常のクロマトグラフイまたは分別結晶法により分離することができる。一般にアミノ酸の炭素原子に関するL-異性体は好ましい異性型化合物を構成する。また本発明化合物のアシル側鎖中のα-炭素(すなわちR1を結合する炭素原子)に関するD-異性体が好ましい。
本発明化合物〔Ⅰ〕は種々の無機塩基または有機塩基との塩基性塩を形成し、この塩もまた本発明化合物の範囲内に包含される。かかる塩はたとえばアンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩などが例示され、これらが好ましい。)、アルカリ土類金属塩(たとえばカルシウム塩、マグネシウム塩)、有機塩基との塩としてたとえばジシクロヘキシルアミン塩、ベンザチン塩、N-メチル-D-グルカミン塩、ヒドラバミン塩、アルギニンまたはリジンのようなアミノ酸との塩などを包含する。生理学的に許容される無毒性塩が好ましいが、他の塩も有用であつて、たとえば後記実施例で説明するようにジシクロヘキシルアミン塩の場合にはこれを単離、精製するために他の塩が有用である。
かかる塩類はこれを溶解せしめない溶媒または媒体または水中、所望のカチオンを供結する適当な塩基当モル量またはそれ以上と遊離酸型生成物を反応させ、凍結乾燥法で脱水する通常の処理法により製造することができる。次いでH型カチオン交換樹脂(たとえばダウエツクス50のようなポリスチレンスルホン酸樹脂)のごとき不溶性酸または酸水溶液で上記塩を中和し、有機溶媒(たとえば酢酸エチル、ジクロロメタンなど)で抽出することにより遊離酸型化合物を得ることができる。遊離酸から所望により対応する他の塩を製造することもできる。
本発明の詳細な製造法については後記実施例において詳述する。実施例は好ましい実施態様を示すものであつて、実施例に記載されていない本発明化合物も同様に製造し得ることを示唆するものである。
本発明化合物はデカベプチドアンギオテンシンⅠのアンギオテンシンⅡへの変換を抑制し得るので、アンギオテンシンに関連する高血圧を軽減または救済するために有用である。アンギオテンシノーゲン(血漿中のシユードグロブリン)に関する酵素レニンの作用はアンギオテンシンⅠを産生するにある。アンギオテンシンⅠはアンギオテンシン変換酵素(ACE)によりアンギオテンシンⅡに変換される。後者は哺乳動物(たとえばラツト、イヌ)の種々の型の高血圧症にいける原因物質として連座する血圧上昇活性物質である。本発明化合物はアンギオテンシン変換酵素を抑制し、アンギオテンシンⅡ(血圧上昇物質)を生成を減少または阻止することによりアンギオテンシン(レニン)→アンギオテンシンⅠ→アンギオテンシンⅡ変換系に介在する。それ故アンギオテンシンに依存する高血圧の影響を受ける哺乳動物に対して本発明化合物またはその生理学的に許容される塩の1種もしくはその混合物を投与することによりその高血圧症状を阻止することができる。エンゲルらにより記載された典型的動物実験で示されるように、本発明化合物の血圧を降下せしめ得る適当量は約0.1~100mg/kg/日、好ましくは約1~50mg/kg/日を基準とする1日当1回、好ましくは2~4回分割投与量である(動物実験についてエンゲル(S.L.Engel)、シエーフア(T.R.Schaeffer)、ウオー(M.H.Waugh)、ルービン(B.Rubin):Proc.Soc.Exp.Biol.Med.143第483頁(1973年)参照)。本発明の好ましい投与方法は経口投与であるが、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内のような非経口的投与法で投与してもよい。
本発明化合物はこれを経口投与のための錠剤、カプセル剤、エリキシル剤のような組成物または非経口投与のための減菌溶液もしくは懸濁液に製剤することにより血圧減少効果を達成するために使用することができる。このために本発明化合物〔Ⅰ〕またはその生理学的に許容される塩もしくはその混合物を薬理学的に許容される慣行に適合するような単位投与剤形中に生理学的に許容される媒体、担体、賦形剤、結合剤、保存剤、安定剤、香味料と共に配合することができる。これら組成物または薬剤中の活性化合物の量は上記のごとき範囲の投与量を服用し得る量としなければならない。
錠剤、カプセル剤などに配合することができる佐剤として次のものが例示される。トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチンのような結合剤、リン酸ジカルシウムのような賦形剤、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸などのような崩壊剤、ステアリン酸のような滑沢剤、シユクロース、ラクトース、サツカリンのような甘味剤、ペパーミント、冬緑油、チエリー香料のような香味剤など。投与単位剤形がカプセル剤であるとき、このものに上記物質に加うるに脂肪油のような液体担体を含有せしめることができる。投与単位剤形をコーテング処理するコーテング剤として、あるいはその外形を改良するため他の種々の物質を使用することができる。たとえば錠剤をセラツク、砂糖またはその双方でコーテング処理することができる。シロツプ剤、エリキシル剤、活性化合物、甘味剤としてシユクロース、保存剤としてメチルおよびプロビルパラベン、着色剤、香味料としてチエリー香料、オレンジ香料を含有せしめてもよい。
注射用減菌組成物は注射用減菌水のような担体中に活性物質および天然植物油(たとえばゴマ油、ヤシ油、落花生油、棉実油など)または合成樹脂性担体(たとえばオレイン酸エチルなど)を溶解もしくは懸濁し、通常の薬物学的慣行に従つて製剤することができる。要すれば緩衝剤、保存剤、抗酸化剤などを配合することができる。
次に実施例および参考例を挙げて本発明の好ましい化合物の具体的製造法について詳述する。
参考例 1
1-(2-ベンゾイルテオアセチル)-L-プロリンの製造法:-
L-プロリン5.75gを1N水酸化ナトリウム50mlに溶解し、溶液を氷水溶中で冷やす。2N水酸化ナトリウム26mlおよび塩化クロロアセチル5.65gを加え、混合物を室温で3時間強く撹拌する。水50ml中チオ安息香酸7.5gおよび炭酸カリウム4.8gの懸濁液を加え、室温で18時間撹拌後、混合物を酸性にし、酢酸エチルで抽出する。酢酸エチル層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸する。残留物14.6gを酢酸エチル150mlに溶解し、ジクロロヘキシルアミン11mlを加える。生成した結晶を〓別してこれを酢酸エチルから再結晶し、生成物5.7gを得る。融点151~152℃。この結晶性塩を5%硫酸水素カリウム水溶液100mmと酢酸エチル300mlの混合物に溶解する。有機層を1回水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸して酸生成物3.45gを得た。
実施例 1
1-(2-メルカブトアセチル)-L-プロリンの製造:-
参考例1で得た1-(2-ベンゾイルチオアセチル)-L-プロリン3.4gを水10.5mlおよび濃アンモニア6.4mlの混合物に溶解する。1時間後、混合物を水で希釈して〓過する。〓液を酢酸エチルで抽出し、濃縮酸で酸性にした後、塩化ナトリウムで飽和し、酢酸エチルで2回抽出する。酢酸エチル抽出物を飽和塩化ナトリウムで洗い、濃縮乾涸して生成物1.5gを得る。これを酢酸エチルから結晶化して1-(2-メルカプトアセチル)-L-プロリンを得た。融点133~135℃。
参考例 2
1-(2-ベンゾイルチオプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
L-プロリン5.75gを1N水酸化ナトリウム水溶液50mlに溶解し、溶液を氷浴中で撹拌しながら冷やす。2N水酸化ナトリウム25mlおよび2-ブロモブロピオニルクロリド8.57gをその順序で添加し、混合物を氷浴から取出し、室温で1時間撹拌する。チオ安息香酸7.5g、炭酸カリウム4.8gおよび水50mlの混合物を加え、この混合物を室温で一夜撹拌する。濃塩酸で酸性にした後、水溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗、乾燥して濃縮乾涸する。残留物14.7gをシリカゲル440gカラム上、ベンゼンー酢酸(7:1)混合物を溶出液とするクロマトグラフイに付する。所望の物質を含有する分画を合して濃縮乾涸し、残渣をエーテルーヘキサンで2回沈澱させてエーテルーヘキサン中でジシクロヘキシルアミン塩に変換し、生成物9.4gを得る。融点(142℃)、148~156℃。このジシクロヘキシルアミン塩を参考例1と同様に処理してその遊離酸5.7gを得た。
実施例 2
1-(2-メルカプトプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
水12mlおよび濃縮酸化アンモニウム9mlの混合物を撹拌しながらこれに参考例2で得た1-(2-ベンゾイルチオプロパノイル)-L-プロリン5.7gを溶解する。1時間後、混合物を水10mlで希釈して〓過する。〓液を酢酸エチルで2回抽出してこれを原容量の1/3に濃縮し、濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和塩化ナトリウムで洗い、乾燥後、減圧下に濃縮乾涸する。残留物を酢酸エチルーヘキサンから結晶下して1-(2-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン3gを得た。融点(105℃)116~120℃。
参考例 3
1-(3-ベンゾイルチオプロパノィル)-L-プロリンの製造:-
L-プロリン5.75gを1N水酸化ナトリウム50mlに溶解し、溶液を氷浴中で冷やす。3-プロモプロビオニルクロリド8.5gと2N水酸化ナトリウム27mlを加え、混合物を氷浴中で10分、室温で3時間撹拌する。チオ安息香酸7.5g、炭酸カリウム4.5gおよび水50mlの懸濁液を加え、混合物を室温で18時間撹拌する。濃塩酸で酸性にした後、水層を酢酸エチルで2回抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸して1-(3-ベンゾイルチオプロパノイル)-L-プロリン7.1gを得た。融点101~102℃(酢酸エチルーヘキサン)。
参考例 4
L-プロリン・t-ブチルエステルの製造:-
L-プロリン230gを水1000mlおよび5N水酸化ナトリウム400mlの混合物に溶解する。溶液を氷浴中で冷やし、強く撹拌しながら5N水酸化ナトリウム460mlとベンジルオキシカルボニルクロリド340mlを5等分に分けて0.5時間に渡つて添加する。室温で1時間撹拌後、混合物をエーテルで2回抽出し、濃塩酸で酸性にする。沈澱を〓過してこれを乾燥する。収量442g。融点78~80℃。
得られたベンジルオキシカルボニル-L-プロリン480gをジクロロメタン300ml、液体イソブチレン800mlおよび濃硫酸7.2mlの混合物に溶解する。溶液を圧力ビン中で72時間振する。圧力を解除してイソブチレンを蒸発させた後、溶液を5%炭酸ナトリウムおよび水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸してベンジルオキシカルボニル-L-プロリン-t-ブチルエステル205gを得る。
ベンジルオキシカルボニル-L-プロリン・t-ブチルエステル250gを無水エタノール1200mlに溶解し、出口の水素ガス中に二酸化炭素の微量が観察されなくなるまで(24時間)10%パラジウム/炭素(10g)と共に常圧で水素化する。触媒を〓別し、〓液を減圧(30mmHg)下に濃縮し、残留物を減圧下に蒸留してL-プロリン・t-ブチルエステルを得た。沸点(1mm)50~51℃。
参考例 5
1-(3-アセチルチオプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルの製造法:-
参考例4で得たL-プロリン・t-ブチルエステル5.13gをジクロロメタン40mlに溶解し、溶液を氷水浴中で冷やす。これにジシクロヘキシルガルボジイミド6.18gのジクロロメタン20ml溶液、次いですみやかに3-アセチルチオプロピオン酸4.45gを添加する。氷水浴中で15分間、室温で16時間撹拌後、沈澱を〓別し、〓液を減圧下に濃縮乾涸する。残留物を酢酸エチルに溶解し、洗浄して中性にする。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸して1-(3-アセチルチオプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステル9.8gを得た。
参考例 6
1-(3-アセチルチオプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
参考例5で得た1-(3-アセチルチオプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステル4.7gをアニソール34mlとトリフルオロ酢酸68mlの混合物に溶解し、混合物を室温で1時間保持する。溶媒を減圧下に蒸発させ、残留物を数回エーテルーヘキサンから沈澱させる。この残渣3.5gをアセトニトリル25mlに溶解し、ジシクロヘキシルアミン28mlを加える。結晶性塩を〓取し、イソプロパノールから再結晶する。収量38g、融点176~177℃。この塩を参考例1と同様の方法で酸に変換して1-(3-アセチルチオプロパノイル)-L-プロリン1.25gを得た。融点89~90℃(酢酸エチルーヘキサン)。
参考例 7
1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルの製造:-
L-プロリン・t-ブチルエステル3.42gの乾燥テトラヒドロフラン10ml溶液を氷浴中で冷やし、これにプロピオチオラクトン1.76gを加える。氷浴中で5分間、室温で3時間保持した後、反応混合物を酢酸エチル200mlで希釈し、5%硫酸水素カリウムおよび水で洗う。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸し、残留物をエーテルーヘキサンから結晶化して1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステル3.7gを得た。融点57~58℃。
実施例 3
1-(3-メチルカプトプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
製法A:-
参考例3で得た1-(3-ベンゾイルチオプロパノイル)-L-プロリン4.9gを水8mlおよび濃水酸化アンモニウム5.6mlの混合物に溶解し、アルゴン雰囲気下に撹拌しながら1時間保持する。反応混合物を水で希釈し、〓過して〓液を酢酸エチルで抽出する。水層を濃塩酸で酸性にし、塩化ナトリウムで飽和した後、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和塩化ナトリウムで洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸する。残留物を酢酸エチルーヘキサンから結晶化して1-(3-メチルカプトプトパノイル)-L-プロリン25gを得た。融点68~70℃。
製法B:-
参考例6で得た1-(3-アセチルチオプロパノイル)-L-プロリン0.8gをメタノール性5.5Nアンモニア5mlに溶解し、溶液をアルゴン雰囲気下に室温で保持する.2時間後、溶媒を減圧下に除き、残留物を水に溶解し、H^+^^サイクル上イオン交換カラム(ダウエツクス50(分析級))に付し、水で溶出する.テオール陽性反応を示す分画を合し、濃縮乾涸して生成物0.6gを得る.これを前記製法Aと同様、酢酸エチルーヘキサンから結晶化して1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリンを得た.
製法C:-
参考例7で得た1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステル2.3gをアニソール20mlとトリフルオロ酢酸45mlの混合物に溶解する.アルゴン雰囲気下に室温で1時間保持した後、反応混合物を減圧下に濃縮乾涸し、残留物を酢酸エチルーヘキサンから数回沈澱させる.残渣1.9gを酢酸エチル30mlに溶解し、ジシクロヘキシルアミン1.85mlを加える.生成物をを〓取し、イソプロパノールから再結晶して結晶性塩2gを得た.融点187~188℃.
この塩を参考例1と同様に酸に変換して生成物1.3gを得た.これを前記製法Aと同様に酢酸エチルから結晶化した.
塩の製造:-
ナトリウム塩:1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン500mgを水2.5mlと1N水酸化ナトリウム2.5mlの混合物に溶解し、この溶液を凍結乾燥してそのナトリウム塩を得た.
マグネシウム塩:1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン500mg、酸化マグネシウム49.5mgおよび水10mlを完全に溶液となるまで撹拌しながら僅かに加温する.これを凍結乾燥して溶媒を除き、マグネシウム塩を得た.
カルシウム塩:1-(3-メルカプトプロパノイル)-2-プロリン500mgを水酸化ナトリウム91mgと水10mlの混合物に溶解し、この溶解を凍結乾燥してそのカルシウム塩を得た.
カリウム塩:1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン500mg炭酸水素カリウム246mgと水10mlの混合物に溶解し、これを凍結乾燥してカリウム塩を得た。
N-メチル-D-グルカミン塩:1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン500mgとN-メチル-D-グルカミン480mgを水10mlに溶解し、凍結乾燥してN-メチル-D-グルカミン塩を得た.
実施例 4
1-(3-メルカプトプロパノイル)-D-プロリンの製造:-
参考例3の処理におけるL-プロリンの代わりにD-プロリンを用い、同様に処理し、次いでこの生成物を実施例3製法Aと同様に処理してそれぞれ1-(3-ベソゾイルチオプロパノイル)-D-プロリンおよび1-(3-メルカプトプロパノイル)-D-プロリン(融点68~70℃)を得た.
参考例 8
3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸の製造:-
チオ酢酸50gおよびメタクリル酸40.7gの混合物を蒸気浴上で1時間加熱し、次いで室温で18時間保持する.メタクリル酸の反応完結をNMRスベクトル分析で確認した後、反応混合物を減圧下に蒸留し、沸点128.5~131℃(2.6mmHg)の留分を分離して所望の3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸64gを得た.
参考例 9
3-ベンゾイルチオ-2-メチルプロパン酸の製造:-
参考例8の処理におけるチオ酢酸の代わりにチオ安息香酸を用い、同様に処理して3-ベンゾイルチオ-2-メチルプロパン酸を得た.
参考例 10
3-フエニルアセチルチオ-2-メチル-プロパン酸の製造:-
参考例8の処理におけるチオ酢酸の代わりにチオフエニル酢酸を用い、同様に処理して3-フエニルアセチルチオ-2-メチルプロパン酸を得た.
参考例 11
1-(3-アセチルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルの製造:-
L-プロリン・t-ブチルエステル5.1gをジクロロメタン40mlに溶解し、溶液を氷浴中で撹拌しながら冷やす.これにジシクロヘキシルカルボジイミド6.2gのジクロロメタン15ml溶液、次いで速やかに参考例8で得た3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸4.9gのジクロロメタン5ml溶液を加える.氷浴中で15分間、室温で16時間撹拌後、沈澱を〓別し、〓液を減圧下に濃縮乾涸する.残留物を酢酸エチルに溶解し、これを洗浄して中性にする.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸し、残留物をカラムクロマトグラフイ(シリカゲルークロロホルム)で精製して1-(3-アセチルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステル7.9gを得た.
参考例 12
1-(3-アセチルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
製法A:-
1-(3-アセチルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステル(参考例11の生成物)7.8gをアニソール55mlとトリフルオロ酢酸110mlの混合物に溶解する.室温で1時問保持した後、減圧下に溶媒を除き、残留物をエーテルーヘキサンから数回沈澱させる.残渣6.8gをアセトニトリ40mに溶解し、ジシクロヘキシルアミソ4.5mlを加える.結晶性塩を新鮮なアセトニトリル100mlと共に沸騰させ、室温に冷やし、〓過して塩3.8gを得る.融点(165)187~188℃.この物質をイソプロパノールから再結晶する.〔α〕D-67°(エタノール中濃度c=1.4).この結晶性ジシクロヘキシルアミン塩を5%硫酸カリウム水溶液と酢酸エチルの混合物に懸濁する.有機層を水洗し、濃縮乾涸して残渣を酢酸エチル-ヘキサンから結晶して1-(3-アセチルチオ-2-D-メチルプロパノイル)-L-プロリンを得た。融点83~85℃.〔α〕-162°(エタノール中濃度c=1.7).
製法B:-
3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸8.1gと塩化チオニル7gを混合し、この懸濁液を室温で16時間撹拌する.反応混合物を濃縮乾涸し、減圧下に蒸留(沸点80℃)する.得られた3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸クロリド5.4gと2N水酸化ナトリウム15mlをL-プロリン3.45gの1N水酸化ナトリウム30ml溶液(氷水浴中で冷やしたもの)を加える。室温で3時間撹拌後、混合物をエーテルで抽出し、水層を酸性にしてこれを酢酸エチルで抽出する.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮乾涸して1-(3-アセチルチオ-2-DL-メチルプロパノイル)-L-プロリンを得た.
製法C:-
水100mlおよび炭酸水素ナトリウム12gの混合物にL-プロリン3.45gを溶解し、この溶液を氷水浴中で冷やし、強く撹拌しながらこれにメタクリロイルクロリド4.16gを添加する.添加終了後、混合物を室温で2時間撹拌し、エーテルで抽出する.水層を1N塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する.有機層を滅圧下に濃縮乾涸し、残留物をチオール酢酸3.5gと混合し、アゾビスイソブチロニトリルの結晶数個を加え、混合物を蒸気浴上で2時間加熱する.反応混合物をベンゼンー酢酸(75:25)に溶解し、シリカゲルカラム上、同一の溶媒混合物で溶出し、1-(3-アセチルチオ-2-DL-メチルプロパノイル)-L-プロリンを得た.
参考例 13
1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルの製造:-
参考例11の処理における3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸の代わりに参考例9で得た3-ベンゾイルチオ-2-メチルプロパン酸を用い、同様に処理して1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルを得た.
参考例 14
1-(3-フエニルアセチルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルの製造:-
参考例11の処理における3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸の代わりに参考例10で得た3-フエニルアセチルチオ-2-メチルプロパン酸を用い、同様に処理して1-(3-フエニルアセチルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルを得た.
参考例 15
1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
参考例12製法Aの処理における1-(3-アセチルチオ)-2-メチルプロパノイル)-1-プロリン・t-ブチルエステルの代わりに参考例13で得た1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルを用い、同様に処理して1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンを得た.
参考例 16
1-(3-フエニルアセチルチオ-2-メチルプロパノイル-L-プロリンの製造:-
参考例12製法Aの処理における1-(3-アセチルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルの代わりに参考例14で得た1-(3-フエニルアセチルチオ-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステルを用い、同様に処理して1-(3-フエニルアセチルチオ-2-メチルプロパノイル-L-プロリンを得た.
実施例 5
1-(3-メルカプト-2-D-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
参考例12、15および16の生成物をそれぞれ下記のとおり処理して標記化合物を得た.
それぞれチオエステル生成物0.85gをメタノール性5.5Nアンモニアに溶解し、溶液を室温で2時間保持する.減圧下に溶媒を除き、残留物を永に溶解し、H+サイクル上イオン交換カラム(ダウエツクス50(分析級))に流し、水で溶出する.チオール反応陽性を与える分画を合し、凍結乾燥する.残留物を酢酸エチル-ヘキサンから結晶化し、1-(3-メルカプト-2-D-メチルプロパノイル-L-プロリン0.3gを得た.融点103~104℃、〔α〕D-131°(エタノール中、濃度c=2).
参考例 17
1-(4-ベンゾイルチオブタノイル)-L-プロリンの製造:-
L-プロリン2.88gの1N水酸化ナトリウム25ml溶液を氷浴中で冷やし、これに2N水酸化ナトリウム12.5mlおよび4-クロロブチルクロリド3.5gを加える.混合物を室温で3.5時間撹拌し、これにチオ安息香酸3.75g、炭酸カリウム2.4gおよび水25mlの懸濁液を加える。室温で1時間撹拌後、反応混合物を濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸する.残留物をノリカゲルカラム上、ベンゼン-酢酸(7:1)を溶出液とするクロマトグラフイに付する。所望の物質を含む分画を合し、濃縮乾涸して生成物1.35gを得る.この物質の一部少量を酢酸エチルに溶解し、溶液のpH8~10(湿潤pH試験紙上)になるまでジンクロヘキシルアミンを加える。直ちにノンクロヘキンルアミン塩が晶出する.融点159~161℃.
実施例 6
1-(4-メルカプトブタノイル)-L-プロリンの製造:-
参考例17て得た1-(4-ベンゾイルチオブタノイル)-L-プロリン1.08gを水4mlと濃アンモニア2.7mlの混合物に溶解する.室温で1時間撹拌後、混合物を水で希釈し、〓過して酢酸エチルで抽出し、水層を減圧下に濃縮する.生成した1-(4-メルカプトブタノイル)-L-プロリン・アンモニウム塩をシエチルアミノエチル-セフアデツクス(デキストリンて架橋処理したもの)カラム上、炭酸水素アンモニウムの勾配溶離剤でイオン交換クロマトグラフイ処理することにより精製して純品0.7gを得る.このアンモニウム塩を水2mlに溶解し、これをダウエツクス50スルホン酸樹脂(分析級、水素型)カラム上で処理し、得られた遊離酸を水で溶出する.所望の物質を含む分画(スルフヒドリル試薬およびカルボキンル試薬に陽性)を合し、凍結乾燥して1-(4-メルカプトブタノイル)-L-プロリンを得た.更にこれを参考例17と同様に処理してそのヘキンルアンモニウム塩を得た。融点157~158℃.
参考例 18
4-プロモ-2-メチルブタン酸の製造:-
4-プロモ-2-メチルブタン酸エチル(ジヨンズ(G.Jones)およびウツド(J.Wood):テトラヘドロン・レターズ第21巷2961(1965年)参照)1.04gをジクロロメタン50mlに溶解し、-10℃に冷やす.これを撹拌しながらジクロロメタン中、三臭化ホウ酸1M溶液50mlを滴加し、更に-10℃で1時間、25℃で2時間撹拌を続ける.注意して水を加えることにより反応を終らせる.各層を分離し、有機層を水洗、乾燥後、濃縮乾涸して4-プロモ-2-メチルブタン酸を得た。
参考例 19
1-(4-ベンゾイルチオ-2-メチルブタノイル)-L-プロリンの製造:-
(a)参考例18で得た4-プロモ-2-メテルブタン酸8gと塩化チオニル7gを混合し、これを室温で16時間撹拌する.反応混合物を濃縮乾涸し、減圧下に蒸留する.
(b)L-プロリン2.88gの1N水酸化ナトリウム25mlを溶液を氷浴中で冷やし、これに2N水酸化ナトリウム12.5mlおよび4-プロモ-2-メチルブタン酸クロリド(上記(a)で製せられた物質)3.9gを加える.この混合物を室温で3.5時間撹拌し、これにチオ安息香酸3.75g、炭酸カリウム2.4gおよび水25mlの懸濁液を加える.室温で一夜撹拌後、反応混合物を濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸する.残留物をシリカゲルカラム上、ベンゼン-酢酸(7:1)を溶出液とするクロマトグラフイに付し、所望の生成物を含む分画を合し、減圧下に濃縮乾涸して1-(4-ベンゾイルチオ-2-メチルブタノイル)-L-プロリンを得た.
実施例 7
1-(4-メルカプト-2-メチルブタノイル)-L-プロリンの製造:-
実施例6の処理における1-(4-ベンゾイルチオブタノイル)-L-プロリンの代わりに参考例19て得た1-(4-ベンゾイルチオ-2-メチルブタノイル)-L-プロリンを用い、同様に処理して1-(4-メルカブト-2-メチルブタノイル)-L-プロリンを得た.
参考例 20
1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-プロリノ・t-ブチルエステルの製造:-
ジノクロヘキンルカルボジイミド6.2gおよび3-アセチルチオ酪酸4.86gをL-プロリン・t-ブチルエステル5.1gのジクロロメタン60ml溶液に、氷浴中で撹拌しながら添加する.15分後氷浴を除去し、混合物を室温で16時間撹拌する。沈澱物を〓過し、〓液を濃縮乾涸し、残留物をシリカゲルカラム上、クロロホルムを溶出液とするクロマトグラフイに付し、標記化合物5.2gを得た。
参考例 21
1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-プロリンの製造:-
1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-プロリン・t-ブチルエステル(参考例20の生成物)5.2gをトリフルオロ酢酸60mlおよびアニソール30mlの混合物に溶解し、溶液を室温で1時間保持する。減圧下に溶媒を除き、残留物をエーテルーヘキサンから数回再沈澱して1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-プロリン4gを得た。これを参考例17と同様に処理してそのジノクロヘキンルアミン塩を得た.融点175~176℃.
実施例 8
1-(3-メルカプトブタノイル)-L-プロリンの製造:-
1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-プロリン(参考例21の生成物)0.86gをメタノール性5.5Nアンモニア溶液20mlに溶解し、反応混合物を室温で2時間保持する.減圧下に溶媒を除き、残留物をイオン交換カラム(ダウエツクス50)上、水を溶出液とするクロマトグラフイに付する。所望の生成物を含む分画を合し、凍結乾燥して1-(3-メルカプトブタノイル)-L-プロリン0.6gを得た.これを参考例17と同様に処理してそのジノクロヘキンルアミン塩を得た.融点183~184℃.
実施例 9
1、1〔-ジチオビス(3-プロパノイル)〕-ビス-L-プロリンの製造:-
3-メルカプトプロパノイル-L-プロリン0.95gを水20mlに溶解し、1N水酸化ナトリウムてpHを6.5に調整する.注意深く1N水酸化ナトリウムを加えてpHを6.5に調整しながらヨードのエタノール性溶液を適下する.永続性黄色になつた時、ヨードの添加を中止し、チオ硫酸ナトリウムの小量をもつてこの色を消失させる.反応混合物を濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する.有機層を水洗し、乾燥し、濃縮乾涸して標記化合物を得た.この遊離酸のアセトニトリル溶液にジノクロヘキシルアミンを加えてそのジノクロヘキンルアンモニウム塩を得た.融点179~180℃.
実施例 10
1、1’-〔ジチオビス(2-D-メチル-3-プロパノイル)〕-ビス-L-プロリンの製造:-
3-メルカブトプロパノイル-L-プロリンの代わりに3-メルカブト-2-D-メチルプロパノイル-L-プロリンを用い、実施例9と同様に処理して、標記化合物を得た.融点236~237℃.
実施例 11
1、1’-〔ジチオビス(2-プロパノイル)〕-ビス-L-プロリンの製造:-
3-メルカブトプロパノイルーL-プロリンの代わりに2-メルカブトプロパノイル-L-プロリンを用い、実施例9と同様に処理して標記化合物を得た.
実施例 12
1、1’-(ジチオビスアセチル)-ビス-L-ヒドロキシプロリンの製造:-
3-メルカブトプロパノイル-L-プロリンの代わりに1-(2-メルカブトアセチル)-L-ヒドロキシプロリンを用い、実施例9と同様に処理して標記化合物を得た.
実施例 13
1、1’-〔ジチオビス(4-ブタノイル)〕-ビス-L-プロリンの製造:-
3-メルカブトプロパノイル-L-プロリンの代わりに4-メルカブトブタノイル-L-プロリンを用い、実施例9と同様に処理して標記化合物を得た.
参考例 22
3-〔(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルプロパン酸の製造-
p-メトキシ-α-トルエンチオール15.4g(0.1モル)をメタクリル酸8.6g(0.1モル)の2N水酸化ナトリウム50ml中の溶液に加える.この混合物を蒸気浴上で3時間加熱し、次いで2時間還流させ冷却する.この混合物をエーテルで抽出し、次いで水層を濃塩酸で酸性にし、ジクロロメタンで抽出する.酸性の抽出液を食塩水で洗浄し、硫酸マグネンウムで乾燥し減圧で蒸発させる。得られた半固体をジクロロメタン50ml中に溶解し、ヘキサン50mlで希釈し、冷却する。3-〔(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルプロパン酸を白色結晶の固体として集める融点74~82℃(5.5g).
参考例 23
1-〔3-(4-メトキンフエニル)メチルチオ〕-2-メチルプロパノイルーL-プロリン・tert-ブチルエステルの製造:-
参考例22で得た3-〔(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルプロパン酸3.6g(0.015モル)、L-プロリンtert-ブチルエステル2.6g(0.015モル)およびジノクロヘキシルカルボジイミド31g(0.015モル)をジクロロメタン50mlに溶解し、0℃で30分間撹拌する.冷却浴を取除き、混合物を一夜(16時間)撹拌する.得られた懸濁液を〓過し、〓液を5%硫酸水素カリウム、飽和炭素水酸ナトリウムおよび食塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し減圧で蒸発させる.得られた澄明な油状物を250mlシリカゲルカラムに適用し、溶離剤として20%酢酸エチル/ヘキサンを用いてクロマトグラフイー処理する.主分画(Rf=0.70(シリカゲル上、酢酸エチル))を蒸発させて1-〔3-(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルプロパノイル-L-プロリン・tert-ブチルエステル5.5g(93%)を澄明な油状物として得た.Rf=0.70(シリカゲル上、酢酸エチル);Rf=0.60(シリカゲル上、エーテル).
実施例 14
1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
参考例23からのエステル1.2g(0.003モル)、アニソール5mlおよびトリフルオロメタンズルホン酸0.5mlをトリフルオロ酢酸20mlに窒素下で溶解し、得られた赤色の溶液を室温で1時間放置する。この溶液を減圧で蒸発させて赤色の残渣を得、これを酢酸エチルに溶解し、水、食塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させる.残渣をヘキサンで繰返しすり砕き、残つたヘキサンを蒸発させ、油状残渣0.4gを得る.この物質の一部(180mg)を溶離剤としてブンゼン/酢酸(75:25)を用いて2mmシリカゲルブレ-トでプレパラテブ薄層クロマトグラフイーに付す。主ニトロブルンド陽性帯(Rf=0.40)を回収し、1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノィル)-L-プロリン135mgを油状物として得た。ベンゼン/酢酸(75:25)を用いたときの薄層クロマトグラフイーのRf=0.4およびクロロオルム/メタノール/酢酸(50:40:10)を用いたときの薄層クロマトグラフイーのRf=0.62.
実施例 15
1-(3-メルカプト-2-D-メチルプロパノイル)-L-プロリノの製造:-
アルゴンガスンール下に参考例25、27で得た1-〔3-(アセチルチオ)-2-D-メチルプロパノイル〕-L-プロリン10.0gを10℃で水150mlの中に混合する.この混合物に5N水酸化ナトリウムを加え、溶液のpHを13に1.5時間保つ。この時間の後に水酸化ナトリウムの消費が終り、溶液を濃硫酸でpH=2.0に調節する。
次いでこの水溶液を塩化メチレン150mlで3回抽出し、合わせた塩化エチレン分画を油状物に濃縮する.この濃縮物を酢酸エチルに溶解し、〓過し、〓液をヘキサン30mlで希釈する.ヘキサンの追加量を0.5時間後に加え、次いでこの混合物を10℃に1時間冷却する.
結晶を〓過しヘキサン(2×25ml)で洗浄し、恒量になるまで乾燥し、1-(3-メルカプト-2-D-メチルプロパノイル)-L-プロリン6.26gを白色の結晶として得た.融点100~102℃.
参考例 24
1-〔3-トンルオキシ-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリンの製造:-
参考例12Bの方法で、3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸クロリドの代りに3-トシルオキン-2-メチルプロパン酸クロリドを用い1-3〔-トシルオキシ-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリンを得た.
参考例 25
1-〔3-アセチルチオ-2-D-メチルプロパノイル〕-L-プロリンの製造:-
参考例24で得た1-〔3-トシルオキシ-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリン3.5gをチオール酢酸1.14gおよびトリエテルアミン3.5mlの酢酸エチル20ml中の溶液に加える.この溶液を3時間50℃に保ち、冷却し、酢酸エチル100mlで希釈し、希塩酸で洗浄する。有機層を乾燥し減圧て濃縮乾涸する。残渣をアセトニトリルに溶解し、ジシクロヘキンルアミンを加える.結晶沈澱物をイソプロパノールから再結晶し1-〔3-アセチルチオ-2-D-メチルプロパノイル〕-L-プロリン・ジンクロヘキシルアミン塩を得た.融点187~188℃。〔α〕-67°(エタノール中、濃度c=1.4)。この塩を遊離酸に変換する.融点83~85℃(結晶性物質を含有する溶液に高融点の物質の種を入れると融点104~105℃の同形が得られる).
実施例 16
1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
1-〔3-〔〔(エチルアミノ)カルボニル〕チオ〕プロパノイル〕-L-プロリン75mg(0.27ミリモル)を濃水酸化アノモニウム1mlおよび水1mlに溶解し、この溶液をアルゴン雰囲気下に室温で18時間放置する。溶液を少量の水で希釈し、エーテルで抽出する.水層を冷濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する.抽出液を合して乾燥し、減圧で濃縮し、実施例3の生成物と一致する化合物を得る。簿層クロマトグラフイ(ンリカゲル上、ベンゼン:酢酸(7:3)Rf=0.4.
参考例 26
メタクリロイル-L-プロリンの製造:-
L-プロリン23.0g(0.2モル)を水100mlに溶解し、氷浴中で攪拌する.メチルイソブチルケトン25ml中のメタクリロイルクロリド19.6ml(0.2モル)を3時間で滴加する.反応混合物のpHを0.7に保持して水酸化ナトリウム溶液(2N)を同時に加える.塩基の添加を酸クロリドの添加が完了後、塩基の添加を4時間続ける.反応混合物を濃塩酸でpH5に調整し、酢酸エチルで抽出する.次いで水層をpH2.5に調整し、酢酸エチルで十分に抽出する.酸性の抽出液を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥する.酢酸エチル溶液をジンクロヘキンルアミン40mlで処理し、一夜冷却する.得られた白色沈澱を〓過し乾燥し融点202~210℃の白色固体29g(39%)を得る.この固体をアセトニトリル/イソプロパノール(3:1)1500mlから結晶化してメタクリロイル-L-プロリン・ゾノクロヘキノルアミン塩19.7gを微細な白色針状晶として得る.融点202~210℃.
この塩を水/酢酸エチルに溶解し、混合物を濃塩酸で酸性にする。得られた懸濁液を〓過して徴細な白色沈澱物を除き、酢酸エチルでよく洗浄する。〓過を塩化ナトリウムで飽和させ十分に酢酸エチルて抽出する。抽出液を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、澄明な油状物にまで蒸発させてこれを固化させる。酢酸エチル/ヘキサンから結晶化してメタクリロイル-L-プロリン7.5g(85%)を白色結晶固体として得た.融点89~93℃.再結晶して純品を得た.融点95~98℃.
参考例 27
1-(3-アセチルチオ-2-D-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
参考例26て得たメタクリロイル-L-プロリソ183mg(0.001モル)をチオール酢酸0.5mlに溶解し室温で16時間放置する.この溶液を減圧下に蒸発させて黄色の残渣を得る.プレパラテブ薄層クロマトグラフイー(シリカゲル上、ジクロロメタン/メタール/酢酸(90:5:5))で主分画として澄明な油状物240mgを単離する。薄層クロマトグラフイー(ジクロロメタン/メタノール/酢酸(90:5:5))でこの物質な参考例12Bの生成物に対応する1-(3-アセチルチオ-2-DL-メチルプロパノイル)-L-プロリンであることを認めた.Rf=0.35.(ベンゼン/酢酸(75:25))Rf=0.38.
この油状物をアセトニトリル3mlに溶解し、溶液が塩基性になるまでジシクロヘキシルアミンで処理し、冷却する.白色結晶固体106mgを集める.融点175~181℃.イソプロバノールから結晶させ融点187~188℃の1-(3-アセチルチオ-2-D-メチルプロパノイル)-L-プロリン・ジンクロヘキンルアミン塩を得た.この生成物は参考例12Aのものと一致する.
実施例 17
1、1’-〔ジチオビスー(2-メチル-3-プロパノイル)〕-ビス-L-プロリンの製造:-
参考例12Bの方法で、3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸の代りに3、3’-ジチオビス-2-メチルプロパン酸を用いて1、1’-〔ジチオビスー(2-メチル-3-プロパノイル)〕-ビス-L-プロリンを得る.
実施例 18
1-(3-メルカブト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
亜鉛末10.0gを実施例17の生成物5.0gと1.0N硫酸100mlのスラリーに加え、この混合物を18℃で窒素ガスンール下で4時間撹拌する.この溶液を〓過し、亜鉛を水20mlで洗浄し、〓液を合わせ、塩化メチレン(3×75ml)で抽出する.塩化メチレン洗液で水(25ml)で逆抽出し、次いて有機溶液を油状物に濃縮する.この油状物を酢酸エチル20mlに溶解し、〓過する.〓液にヘキサン15mlを加え、この混合物を15分間撹拌する.その後、追加のヘキサン30mlを加え、この溶液を5℃に1時間冷却する。この混合物を〓過し、生成物をヘキサン(2×10ml)て洗浄し、乾燥して生成物1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンの白色結晶4.17gを得た.薄層クロマトグラフイー、Rf=0.60(溶媒系:ベンゼン/酢酸(75:25))。
参考例 28
3-ベンジルチオ-2-メチルプロパン酸の製造:-
参考例22の方法で、p-メトキシ-a-トルエンチオールの代りにa-トルエンチオールを用いて3-ベンジルチオ-2-メチルプロパン酸を得る.
参考例 29
1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L、-プロリン・tertブチルエステルの製造:-
参考例23の方法で、3-〔(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルプロパン酸の代りに参考例28を得た3-ベンジルチオ-2-メチルプロパン酸を用いて1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリン・tertブチルエステルを得る.
参考例 30
1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリンの製造:-
参考例29で得た1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリン・tertブチルエステル7.8gをアニソール55mlおよびトリフルオロ酢酸110mlの混合物中に加える.1時間室温に放置した後、溶媒を減圧で除去し、残渣をエーテル溶解し、飽和塩化ナトリウムで数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧で蒸発乾涸して1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルブロパノィル〕-L-プロリンを得た.Rf0.5(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))Rf0.5(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1)).
実施例 19
1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
参考例30て得た1-(3-(ベンジルチオ)-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン0.1gを沸騰液体アンモニア10ml中に懸濁させ、ナトリウムの小片を永続的な青色になるまで撹拌しながら加える.色を硫酸アンモニウムの少数の結晶で脱色させ、アンモニアを窒素気流下に蒸癸させる.残渣を希塩酸と酢酸エチルの混合物中に溶解する.有機層を乾燥し、減圧で濃縮乾涸して1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンを得る.Rf0.35(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.5(シリカゲル上、メテル/エチルケトン/酢酸/ピリジン/水(14:1:2:1))で実施例5の化合物に一致する.
参考例 31
1-〔3-(トリフエニルメチルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリンの製造:-
3-トリフエニルメチルチオ-2-メチルプロバン酸1.8gとN、N’-カルボニルジイミダゾール0.8gを撹拌しながら室温でテトラヒドロフラン10mlに溶解する.2-分後、この溶液をL-プロリン0.6gとN-メチルホルモリン1gとジメチルアセトアミド20mlの混合物に加える。得られた混合物を室温で一夜撹拌し、濃縮乾涸し、残渣を酢酸エチルと10%硫酸水素カリウム水溶液の混合物に溶解する.有機層を分離し、乾燥して滅圧で濃縮乾涸し、1-〔3-(トリフエニルメチルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリンを得た.Rf0.4(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf1.0(シリカゲル上、メチル/エチルケトン/酢酸/ピリジン/水(14:1:2:1)).
参考例 32
3-(テトラヒドロピラン-2-イルチオ)-2-メチルプロパン酸の製造:-
3-メルカブト-2-メチルプロパン酸2.4gおよび新しく蒸留した2、3-ジヒドロ-4H-ピラン1.9gのベンゼン60ml溶液に三フツ化ホウ素エーテル錯化合物2.8gを加える.2時間後、炭酸カリウム4gを加え、この混合物を撹拌して〓過する.〓液を濃縮乾涸して3-(テトラヒドロピラン-2-イルチオ)-2-メチルプロパン酸を得た。
参考例 33
1-〔3-(テトラヒドロピラン-2-イルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリンの製造:-
参考例31の方法で、3-トリフエニルメチルチオ-2-メチルプロパン酸の代りに参考例32で得た3-(テトラヒドロピラン-2-イルテオ)-2-メチルプロパン酸を用いて1-〔3-(テトラヒドロピラン-2-イルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリンを得た.Rf0.8(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1)).
実施例 20
1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
参考例33で得た1-〔3-(テトラヒドロピラン-2-イルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリン1gをメタノール25mlおよび濃塩酸25mlの混合物に溶解し、この溶液を室温で30分間放置する.溶媒を減圧で除去して1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンを得た.Rf0.35(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.5(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ピリジン/水(14:1:2:1))の物質は実施例5の化合物に一致する。
参考例 34
アセトアミドメチルチオ-2-メチルプロパン酸の製造:-
3-メルカプト-2-メチルプロパン酸2.4gとN-ヒドロキシメチルアセトアミド1.8gをトリフルオロ酢酸に溶解し、この溶液を室温で1時間貯蔵する.トリフルオロ酢酸を減圧で除去し、残渣を水酸化カリウム上で減圧で乾燥して3-アセトアミドメチルチオ-2-メチルプロパン酸を得た.
参考例 35
1-〔3-(アセトアミドメチルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリンの製造:-
参考例33の方法で、3-(テトラヒドロビラン-2-イルチオ)-2-メチルプロパン酸の代りに参考例34て得た3-アセトアミドメチルチオ-2-メチルプロパン酸を用いて1-〔3-(アセトアミドメチルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリンを得た.Rf0.2(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.3(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ピリジン/水(14:1:2:1)).
実施例 21
1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
参考例35で得た1-〔3-(アセトアミドメチルチオ)-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリン1.4gと酢酸水銀1.93gを酢酸25mlと水25mlの混合物に溶解する.蒸気浴上で1時間撹拌した後、硫化水素を、もはや硫化水銀の沈澱が見られなくなるまで泡立てる.混合物を〓過し、沈澱をエタノールて洗浄し、〓液を減圧で濃縮乾涸して1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンを得た.Rf0.35(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.5(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ピリジン/水(14:1:2:1))の物質は実施例5の化合物に一致する.
参考例 36
1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・tertブチルエステルの製造:-
3-メルカプト-2-メチルプロパン酸1.2g(10ミリモル)とL-プロリン・tertブチルエステル1.7g(10ミリモル)のジクロロメタン25ml中の冷(5℃)溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.26gのジクロロメタン5ml溶液を分けて加える.室温で2時間後、酢酸5滴を加え、混合物を〓過し、〓液油状残渣に蒸発させる.この残渣を石油エーテルー酢酸エチル(3:1)20mlに溶解し、石油エーテルで調製した150mlシリカゲルカラムに適用する.石油エーテルー酢酸エチル(1:1)で溶離した分画は1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・tertブチルエステル生成物を含有する.この分画0.6gを五酸化燐上で減圧下に12時間乾燥する.Rf0.6(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.8(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ピリジン/水(14:1:2:1))。
実施例 22
1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンの製造:-
実施例3Cの方法で、1-(3-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン・tertブチルエステルの代りに参考例36で得た1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリン・tertブチルエステルを用い1-(3-メルカプト-2-メチルプロパノイル)-L-プロリンを得た.Rf0.35(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.5(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ピリジン/水(14:1:2:1))の物質は実施例5の化合物に一致する.
前記の実施例の何れかの最終生成物のラセミ体はL体ではなくして出発アミノ酸のDL体を用いて製せられる.
同様に、前記の実施例の何れかの最終生成物のD体はL体ではなくして出発アミノ酸のD体を用いて製せられる.
参考例 37
1-(2-メルカプトプロパノイル)-L-プロリンを各100mg含有する1000錠を次の成分から製造する.
1-(2-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン 100g
コーンスターチ 50g
ゼラチン 7.5g
アゼセル(Avicel)(微細結晶のセルロース) 25g
ステアリン酸マグネシウム 2.5g
1-(2-メルカプトプロパノイル)-L-プロリンとコーンスターチをゼラチンの水溶液で混合する.この混合物を乾燥し微粉末に粉砕する.アビセル、次いでステアリン酸マグネシウムを混合し顆粒化する.次いでこれを錠剤に打錠し、活性成分を各100ml含有する1000錠を得た.
参考例 38
参考例37において、1-(2-メルカプトプロバノィル)-L-プロリンの代りに1-(3-メルカプト-2-D-メチルプロパノイル)-L-プロリン100gを用いて1-(3-メルカプト-2-D-メチルプロパノイル)-L-プロリンを各100mgを含有する1000錠を製造した.
参考例 39
1-(2-メルカプトアセチル)-L-プロリンを各200mg含有する1000錠を次の成分から製造する。
1-(2-メルカプトアセチル)-L-プロリン 200g
ラクトース 100g
アビセル 150g
コーンスターチ 50g
ステアリン酸マグネシウム 5g
1-(2-メルカプトアセチル)-L-プロリン、ラクトースおよびアビセルを混合し、次いでコーンスターチを混合する.乾燥混合物を打錠機で打錠し、活性成分を各200mgを含有する505mgの錠剤1000錠を得た.錠剤を色素として黄色#6含有するレーキを包含するメトセル(Methocel)E15(メチルセルロース)の溶液で錠剤を被覆して製剤した.
参考例 40
1-(2-メルカプトプロパノイル)-L-プロリンを各250mg含有する2ピースの#1ゼラチルカブセルに次の成分の混合物が充填される.
1-(2-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン 250mg
ステアリン酸マグネシウム 7mg
USPラクトース 193mg
参考例 41
注射液を次のように製造した.
1-(2-メルカプトプロパノイル)-L-プロリン 500mg
メチルパラベン 5g
プロパルパラベン 1g
塩化ナトリウム 25g
注射用水を加えて 5l
活性物質、保存剤および塩化ナトリウムを注射用水3lに溶解し、次いで容量を5lにする.この溶液を、滅菌〓過器で〓過し、あらかじめ滅菌したバイアル中に無菌的に充填し、次いであらかじめ滅菌したゴム栓で密閉する.各バイアルは、注射液のml当り活性成分100mlの濃度の溶液5mlを含有する。
参考例 42
1-(2-メルカプトプロパノイル)-L-プロリンの代りに1、1’-〔ジチオビス(2-D-メチル-3-プロパノイル)〕-ビス-L-プロリン100gを用い参考例37と同様に処理して1、1’-〔ジチオビス(2-D-メチル-3-プロパノイル)〕-ビス-L-プロリンを各100mg含有する1000錠を製造した.
参考例37、39、40または41の活性成分の代りに前記各製造法の実施例で得られた生成物を活性成分としてそれぞれ同様に製剤を行なつた.
化合物目録
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特許公報
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