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東京地方裁判所 平成9年(ワ)2482号 判決 1998年9月28日

アメリカ合衆国 ニュージャージー州 〇八五四〇

プリンストン ローレンスビループリンストン ロード

原告

イー アール スクイブ アンド

サンズ

インコーポレイテッド

(以下「原告スクイブ」という。)

右代表者

ドナルド ジェイ バラック

東京都中央区日本橋本町三丁目五番一号

原告

三共株式会社

(以下「原告三共」という。)

右代表者代表取締役

河村喜典

右両名訴訟代理人弁護士

中村稔

熊倉禎男

富岡英次

辻居幸一

田中伸一郎

宮垣聡

右両名補佐人弁理士

小川信夫

福井県坂井郡金津町市姫二丁目二六番一七号

被告

小林化工株式会社

右代表者代表取締役

小林喜一

右訴訟代理人弁護士

飯田秀郷

栗宇一樹

和田聖仁

早稲本和徳

久保田伸

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  原告スクイブ

被告は、平成一二年における後発品の薬価基準収載日の翌日まで別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の製剤を製造し又は販売してはならない。

二  原告ら

被告は、原告らに対し、金二億〇三五四万円及びこれに対する平成九年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  原告スクイブは、特許権の満了した後記特許権を有していた。また、原告三共は、右特許権につき実施許諾を受けていた。原告らは、被告において右特許権存続期間中に医薬品の製造承認申請のために試験をした行為等が、右特許権を侵害するものであるとして、原告スクイブが被告に対し、不法行為による医薬品製造販売の差止を、また、原告らが被告に対し、不法行為による損害賠償をそれぞれ請求した。

二  基礎となる事実(証拠を示した事実を除き、当事者間に争いはない。)

1  原告スクイブの特許権

原告スクイブは、左記の特許権(以下、「本件特許権」といい、その特許請求の範囲第七項の発明を「本件特許発明」という。)の特許権者である。

(一) 登録番号 特許第一二八一一三三号

(二) 発明の名称 プロリン誘導体

(三) 出願日 昭和五二年二月一二日(特願昭五二-一四五四二)

(四) 優先権主張 国名 アメリカ合衆国

出願年月日 一九七六年(昭和五一年)二月一三日

(五) 登録日 昭和六〇年九月一三日

(六) 特許請求の範囲 別紙特許公報該当欄記載のとおり

(七) 特許請求の範囲第一項のR1がメチル、R2及びR4が水素、nが1のとき、同第七項の発明に係る物質をカプトプリル(化学名 1-〔(2S)-3-メルカプト-2-メチルプロパノイル〕-L-プロリン)といい、その化学構造式は別紙化合物目録記載のとおりである。

2  原告ら製造に係る薬品名

原告スクイブは、日本において、カプトプリルを有効成分として含有する医薬品(商品名「カプトリル」。以下「原告製剤」という。)の製造を原告三共に許諾し、原告三共は、原告製剤を製造し、これを原告三共のほか原告スクイブの関連会社が販売している。

3  被告の行為

(一)(1) 被告は、別紙イ号物件目録記載の製剤(以下「イ号物件」という。)及びロ号物件目録記載の製剤(以下「ロ号物件」といい、イ号物件とあわせて「本件製剤」という。)につき、いわゆる後発品として、医薬品製造承認を申請した。被告は、右製造承認申請に必要な資料を得るため、カプトプリル原末を使用して本件製剤を製造し、「規格及び試験方法に関する資料」、「加速試験に関する資料」及び「生物学的同等性に関する資料」を得るための各種試験を行い、これによって得た資料を添付して、後発品の製造承認を申請し、平成七年二月一五日、厚生省から製造承認を得た。そして、平成九年七月に本件製剤につき薬価基準収載を受けた。

(2) その後、被告は、本件製剤を製造して、「規格及び試験方法に関する資料」、「安定性試験に関する資料」及び「溶出試験に関する資料」を得るための試験を行い、これによって得た資料を提出して医薬品製造承認事項一部変更承認申請を行い(安定化剤をエデト酸ナトリウムから酢酸トコフェロールへ変更)、承認を得た(乙二)。

(3) 被告は、医薬品製造承認事項一部変更承認申請後、医療現場にて処方する際に多用される包装形態(プラスチックフィルムによる分割包装)での安定性について、原告製剤と本件製剤を比較検討するための追加試験を行った(乙三)。

(二) なお、被告は、前記試験等に使用するため、少なくとも左記のとおり、カプトプリル原末を輸入して入手した(甲三、四、乙四、弁論の全趣旨)。

<1> 平成二年一一月八日 五グラム(無償サンプル)

<2> 平成二年一二月二〇日 一〇〇グラム(無償サンプル)

<3> 平成三年二月一五日 二〇グラム(無償サンプル)

<4> 平成三年三月 一一グラム(無償サンプル)

<5> 平成七年五月二八日 二〇グラム(無償サンプル)

<6> 平成七年七月二八日 三〇グラム(有償)

<7> 平成七年一一月一八日 五〇〇グラム(有償)

(三) 本件製剤は、カプトプリルを有効成分とするものであり、本件製剤の有効成分は本件特許発明の技術的範囲に属する。

三  争点

1  特許法六九条一項所定の「試験又は研究」該当性

(一) 被告の主張

(1) 被告は、輸入したカプトプリル原末を以下のとおり使用した。

(ア) 前記二3(二)<2>(以下同項記載の<1>ないし<7>を、「<1>」等という。)の原末の一部について、本件製剤の製造承認申請のための試験

(イ) <2>の原末の残りと、<1>、<3>、<4>の原末の全量及び<5>の原末の一部について、医薬品製造承認事項一部変更承認申請のための試験

(ウ) <6>の一部について、医薬品製造承認事項一部変更承認申請後の追加試験

(エ) なお、被告は、<6>及び<7>の原末について、工業化研究の準備段階として、本件特許権の存続期間満了前にラボスケール(少量スケール)での最適化条件の検討(データの収集)を行う目的で輸入したが、本件特許権の存続期間満了前には、右検討を行わなかった。

(2) 被告は、後発品に期待されている「高品質で安価な医薬品を安定的に供給する」という命題に十分答えられるような製品を企画すべく、付加価値を加えた改良品として、以下の理由から、安定した製剤を開発するために試験及び研究をしたのであり、右目的で実施した試験・研究行為は、特許法六九条の「試験又は研究」に該当する。

カプトプリルは、吸湿性が高く、特に加温・加湿条件下での保存により、酸化してジスルフィド体(二分子対称体)を生成することが確認されている。ジスルフィド体は、カプトプリルが生体内において代謝される際に生じる物質の一つであり、医薬品にとっては品質低下につながる不純物である。被告は、このようなカプトプリルの特性を認識しつつ、ジスルフィド体の生成抑制という薬剤の安定化を目的とした製剤化に向けて試験、研究を行い、原告製剤を上回る安定性を示す本件製剤を完成した。被告は、このように、物質特許として特許された物質を利用して、さらに安定した製剤を開発、改良する目的で、試験又は研究行為に当たったのであるから、特許法六九条の「試験又は研究」に該当する。

(3) また、被告が行った本件製剤の製造承認申請のための試験は、以下の理由から、特許法六九条一項の「試験又は研究」に該当する。

(ア) すなわち、特許法の目的が、発明の保護及び利用を図ることにより発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することにあることからすれば、独占的排他権である特許権の効力も、特許権を保護することによる発明者又はその権利の承継人の利益と、特許権という独占権を認めることによるマイナスの効果を抑え、社会一般の利益とのバランスを図るという産業政策上の見地から制限されることがあるのは当然である。しかも、特許制度は我が国の諸法制の一分野であって、他分野と関係なく存在するものではなく、他分野の法制と整合、調和して存在すべきものであり、現に特許法は、公益目的から特許権の成立及び内容に種々の制限を加える規定をおいており、特許法が目的として掲げるところも、関係する諸制度との整合、調和を考慮したうえでの発明の保護、産業の発展への寄与と解すべきものである。したがって、特許法六九条一項の解釈に当たっては、特許権者の利益と第三者ないしは社会一般の利益の調整という観点から考量すべきである。

(イ) 本件のような医薬品については、薬事法による規制を受け、厚生大臣が基準を定めて指定する医薬品以外の医薬品を製造し、輸入しようとする者は、厚生大臣の承認を受けることを要し、厚生大臣は、医薬品等につき、これを製造しようとする者からの申請があったときは、品目毎にその製造についての承認を与えるものであり、承認を受けようとする者は、厚生省令で定めるところにより、申請書に臨床試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならない。薬事法は、医薬品の品質、有効性及び安全性確保のために必要な規制を行うこと等により保健衛生の向上を図ることを目的とするものであり、同法に基づく医薬品の製造承認のための審査、その承認申請に添付すべき審査資料を得るための各種試験が要求されているのも、右目的を達成するためのものであって、公益性の強いものである。薬事法が、後発品製造業者に対しても、その製造承認に当たり一定の試験の実施とそのデータの添付を求めているのも、先発品と品質において同等であり、同様の有効性、安全性があることを担保するためであり、当該医薬品に関する特許権又は先発品製造業者の独占的地位を確保させることを目的とするものではない。

(ウ) 以上によれば、薬事法に基づき、後発品の製造承認の申請に添付する目的で必要な試験としてされた特許発明の実施は、それが特許権の存続期間内に後発品の製造販売を開始するためのものでない限り、特許法六九条一項の「試験又は研究のためにする特許権の実施」に該当し、特許権の効力は及ばないものと認めるのが相当である。

(4) 被告は、前記のとおり、本件特許権の存続期間満了前にラボスケール(少量スケール)での最適化条件の検討(データの収集)を行う目的でカプトプリル原末を輸入したことがあるが、右データ収集を行ったのは、本件特許権の存続期間満了前ではないから、被告のした輸入行為が違法となるいわれはない。

のみならず、ラボスケール(少量スケール)での最適化条件の検討は、特許法六九条一項の「試験又は研究」に該当するので、この理由からも、被告のした輸入行為は、適法である。

すなわち、ラボスケール(少量スケール)での最適化条件の検討を行う目的は、被告製剤が人に投与される医薬品として恒常的な製造に耐えられるかどうかのデータを収集するために、あらかじめ実生産を行う製造機械と同じ方式のラボスケール機を使用して、製剤の品質に影響を及ぼす変動要因を把握することにある。そして、右最適化条件の検討は、後発品メーカーが入手した化学物質の製法が不明であることから、人に投与される医薬品の主成分として含まれるとき、実生産においても医薬品として確実安全に使用し得るか否かを試験又は研究する行為であるとともに、その目的とする品質に適合する医薬品を恒常的に製造できるかどうかを検証するものであるという点で、正に技術の進歩をもたらすものである。したがって、ラボスケール(少量スケール)での最適化条件の検討は、特許法六九条一項の「試験又は研究」に該当する。そして、右最適化条件の検討とそのための原材料の輸入は目的と手段として密接不可分の関係にあることから、右最適化条件の検討を行う目的で行ったカプトプリル原末の輸入もまた、特許権を侵害しない。

(二) 原告らの反論

特許法が、六九条一項を置いた趣旨は、仮に、試験又は研究のためにする実施が特許権により禁じられたとすれば、発明を公開させて技術の発達を促すという特許法の目的の実現が、妨げられる可能性があるため、試験又は研究のためにする実施については、極めて例外的に特許権の効力の範囲外としたものである。したがって、特許法六九条一項にいう「試験又は研究」の範囲は、このような特許法本来の目的にかなうものに限定されるべきである。

したがって、試験あるいは研究と名が付けばすべての実施が適法となるものではなく、専ら純粋に技術の発展を目的とする試験、研究のみが適法となる。医薬品の試験の場合、当該医薬品が新有効成分を含有しない後発品であるときは、特許発明の対象であり、かつ医薬品の本質である有効成分の有効性、安全性は既に確立されており、当該発明の真の有用性を知るという意義は失われている。このような後発品の製造承認申請のための試験は、後発品の製造販売を目的とするものであり、後発品が新薬と同等品であるか否かを確認することに尽きるのであって、純粋に医薬分野の技術の進歩を目的とするものではないから、特許法六九条一項の「試験又は研究」に当たらないことは明白である。

なお、最適化条件の検討とは、製造工程における製造機械の作動条件を探るものであるから、何ら特許発明の改良を企図したものではなく、単なる製造工程の工夫に過ぎず、このような行為は、特許法六九条一項の「試験又は研究」に含まれない。

2  実質的違法性の有無

(一) 被告の主張

ある製剤について特許権が存在しているときに、特許権者に無許諾で、薬事法上の製造承認を受けるため、製造承認申請に必要とされる各種試験に供する目的で、これに必要な限度でごく少量の製剤を試作的に製造、使用することは、当該特許権存続期間内における当該製剤の製造販売を意図してこれに向けた行為ではなく、専ら当該特許権の存続期間満了後における製造販売を目的としたものであるときは、当該特許発明を独占的に実施し得る特許権者の法的地位を何ら脅かすものではないことから、その実質的な違法性はない。

(二) 原告らの反論

被告の主張は争う。

3  差止請求権の存否

(一) 原告スクイブの主張

(1) 被告は、本件製剤の製造承認申請の際提出すべき資料作成のために、本件特許発明の技術的範囲に属するカプトプリル原末を輸入又は生産し、使用して、本件製剤の製造承認を申請したものであるが、被告はかかる特許権侵害を行うことにより初めて、平成九年七月の薬価基準収載に基づく本件製剤の製造販売ができる地位を得ることができた。

仮に、被告が、本件特許権の存続期間の満了日である平成九年二月一二日より後に、剤型のための試験を行い(少なくとも、三か月程度は必要である。)、そのうえでカプトプリル製剤の製造承認のための試験(六か月の安定性試験を含む。)をし、その試験結果をまとめ(少なくとも、一か月程度必要である。)、製造承認申請を行うとした場合には、通常、製造承認を得るまでには申請後約一年半を要するので、カプトプリル製剤の薬価基準収載を得るのは、早くとも平成一二年度の後発品の薬価基準収載、すなわち、平成一二年七月とならざるを得ない(七月の薬価基準収載のための申請は、通常三月末ないし四月初旬までに行われる必要がある。)。この場合には、カプトプリル製剤の製造販売の開始は、早くても平成一二年七月以降にならざるを得ない。

(2) 本件においては、本件製剤の製造販売自体は本件特許権の満了後の行為であるから、本件特許権の侵害行為そのものではないが、本件特許権の侵害行為により初めて可能となった製造承認申請に基づくものであり、この点において、特許権侵害に起因する不可分一体の行為と解される。したがって、被告が、本件特許権の存続期間中の侵害行為に基づき、平成九年に薬価基準収載を受けて本件製剤の製造販売を開始する行為は、民法七〇九条の不法行為を構成する。しかも、製造承認申請のための試験における特許権の実施及び製造承認申請行為は、すべて秘密裏に行われ、かかる侵害行為を事前に差し止める妨害予防の機会はなく、特許権の存続期間満了後であっても、一定の期間について被告の行為の差止が認められなければ、期間満了後に試験を行う者は皆無となり、その結果、開発及び権利の取得に莫大な投資と極めて長い期間を費やした特許権者が損害を被ることになる。特許権存続期間中、被告による製造承認申請のための試験を差し止めることは、特許権による妨害予防請求権により認められているところ、このような救済を実効あらしめるために、実質的に唯一の手段として、特許権存続期間満了後相当期間の製造販売行為に対する差止請求権を認めるのが相当である。

よって、本件においては、原告スクイブに、平成一二年における後発品の薬価基準収載日の翌日まで、本件製剤の製造販売に対する差止請求権を認めるのが相当である。

(二) 被告の反論

原告の主張は争う。なお、現在製造承認を得るまでの期間は一年以内に短縮されている。

財産権侵害による不法行為の効果として、侵害行為の停止あるいは予防を求める差止請求権が発生すると解すべきではない。また、不法行為の効果としての原状回復は、金銭賠償によることが原則であり、特段の合意も明文の法規もない以上、不法行為の原状回復として、被告の行為の差止を認める余地はない。

のみならず、被告が、特許権消滅後に特許発明を実施しても、特許権の侵害にはならず、不法行為が成立する余地はない。

4  損害賠償額

(一) 原告らの主張

原告スクイブは、原告三共に対し、本件特許権の独占的通常実施権を許諾するとともに、両者間では、本件特許権に関連して発生した損害賠償請求権、不当利得返還請求権等、一切の金員の支払請求権を共有する旨の合意が成立している。よって、原告らは被告に対し、被告の右特許侵害行為につき、通常受けるべき金銭の額に相当する額の金員を損害賠償として請求することができる。

ところで、通常受けるべき金銭の額については、以下のとおり算定・評価するのが相当である。

すなわち、前記のとおり、被告が本件特許権の存続期間満了後に製造承認申請のための試験を行えば、薬価基準収載が可能となるのは平成一二年七月であるのに対し、被告は平成九年七月に薬価基準収載をし、本件製剤を販売している。したがって、後発品の製造承認申請のための試験に関する本件特許権の実施許諾については、被告が市場に早期に参入できることによって得られる三年間の利益を基礎として、通常受けるべき金銭の額に相当する額を算定するのが相当である。

被告は、本件製剤の販売を開始した後、少なくとも一か月につき本件製剤を一〇〇万錠、すなわちイ号物件とロ号物件を各五〇万錠製造販売している。平成八年四月におけるカプトプリル製剤の薬価は、イ号物件対応の「カプトリル」製剤が三四・八円、ロ号物件対応の「カプトリル」製剤が六八円であるが、後発品の場合薬価は先発品の八〇パーセント程度とされ、実売価格は更にその五〇パーセントと考えられる。よって、被告は、一年間に本件製剤を二億四六七二万円販売するものと推測される。また、被告は、研究開発費を一切投じていないことから、少なくとも本件製剤の販売額の五〇パーセントに当たる一億二三三六万円の利益を一年間に得るものと推測される。したがって、本件特許権の実施許諾に対し通常受けるべき実施料額は、少なくとも、一年間当たり、右利益の二分の一に相当する六一六八万円(三年間の合計一億八五〇四万円)と算定されるべきである。

また、本件訴訟の特質から、原告らは本件訴訟の遂行を弁護士に依頼せざるを得ず、そのために支出すべき弁護士費用は一八五〇万円を下らない。これは、被告の前記不法行為と相当因果関係を有する損害である。

よって、原告らは被告に対し、二億〇三五四万円の損害賠償請求権を有する。

(二) 被告の反論

原告らの主張は争う。

原告らには、損害が発生していない。

イ号物件対応の「カプトリル」製剤の薬価は、平成九年四月一日以降三三・七円に、ロ号物件対応の「カプトリル」製剤の薬価は、平成九年四月一日以降六五・六円に、それぞれ改定された。また、被告は製造承認のための同等性試験等の研究開発費用を投じており、被告の利益は低額である。

第三  争点に対する判断

一  被告は、本件特許権の存続期間中に、前記第二、二3(二)のとおりカプトプリル原末を輸入したこと、同二3(一)(1)のとおり、カプトプリル原末を使用して、医薬品製造承認申請に必要な「規格及び試験方法に関する資料」、「加速試験に関する資料」及び「生物学的同等性に関する資料」を得るための各種試験を行い、その後、医薬品製造承認事項一部変更承認申請に必要な「規格及び試験方法に関する資料」、「安定性試験に関する資料」及び「溶出試験に関する資料」を得るための各種試験を行い、右申請後に更に追加試験を行ったことは前記のとおりである。

したがって、被告は、本件特許権の存続期間中に、特許法二条三項一号所定の実施行為をしたことになる。

しかし、被告の右行為は、いずれも、特許法六九条一項に規定する「試験又は研究のためにする特許発明の実施」に該当するので、本件特許権を侵害しないものと解するのが相当である。その理由は以下のとおりである。

二1  特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有し(特許法六八条本文)、特許権は、独占的排他権であるから、第三者が、特許権者の許諾なく、特許発明を業として実施することは原則としてできない。他方、特許法の目的が、発明の保護及び利用を図ることにより発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することにある(同法一条)ことからすれば、独占権である特許権の効力も、特許権者の利益と特許発明を利用する第三者ないし社会一般の利益との調和を図るという産業政策上の理由から、法令等により、一定の制限を受けることがあることがあり得るのは当然である。

特許法六九条一項は、「特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。」旨、特許権の効力の制限について定めているところ、同条の立法趣旨は、特許権の効力を、試験又は研究のためにする特許発明の実施にまで拡大することは、かえって技術の進歩を阻害し、産業の発展を損なう結果になり得ることから、これを制限すべきであるとの産業政策的な立法目的によるものと解される。

右の立法趣旨に鑑みると、同条項にいう「試験又は研究のためにする特許発明の実施」を解釈、適用するに当たっては、特許権の効力が制限されることによって被る特許権者の不利益と、試験又は研究が禁止されることによって受けることがある第三者ないし社会一般の不利益とを比較検討して、判断するのが相当である。

このような観点に照らすならば、<1>特許発明の明細書により開示された技術等を基礎にして、新規の発明ないし利用発明をもたらし得るような、技術の進歩を目的として行われる試験又は研究が、特許法六九条一項所定の「試験又は研究」に該当することは明らかであるが、これのみに限定されるものではなく、<2>特許発明の実施が可能であるか否か、また、いかなる条件の下で可能であるかについて、有用な資料を得るために追試をしたり、実施上の問題点を探求したり、解決したりするために行われる試験又は研究も、右「試験又は研究」に該当すると解されるし、更に、<3>直接的には、技術の進歩を目的とするものではないが、特許発明の新規性や進歩性の有無を確認、調査するために行われる試験又は研究も、特許法の趣旨に沿ったものとして、右「試験及び研究」に該当するものと解するのが相当である。

2  そこで、被告の行った本件製剤の製造承認申請及び製造承認事項一部変更承認申請のための前記各試験の性質等について検討する。

薬事法は、医薬品等を製造しようとする者は、厚生大臣の承認を受けなければならないこと(同法一二条一項、一三条一項、一四条)、厚生大臣は、医薬品等につき、これを製造しようとする者から申請があったときは、品目ごとにその製造についての承認を与えること(同法一四条一項)、その承認は、申請に係る医薬品等の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用等を審査して行うこと(同法一四条二項)、右承認を受けようとする者は、厚生省令で定めるところにより、申請書に臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならないこと(同法一四条三項)等を規定する。また、同法は、後発品の製造承認申請についても、右申請書に添付する「規格及び試験方法に関する資料」、「加速試験に関する資料」及び「生物学的同等性に関する資料」を得るための各種試験、及び製造承認のための審査を要求しているが、これは、後発品が、既に充分な資料による審査を経て、有効性、安全性の面で承認を与えられた先発品と、品質において同等であることを客観的に担保するための措置であって、これによって、安全な医薬品を提供し、国民の保健衛生の向上を図る趣旨で設けられた規制と理解することができる。

このように、同法に基づく医薬品の製造承認に係る審査は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うこと等により、保健衛生の向上を目的とする同法の趣旨・目的に沿って、医薬品の有効性や安全性の確保を図るために実施されるものであり、したがって、右製造承認申請に添付する資料を得るために実施が義務付けられている各種試験についても、医薬品の品質、有効性及び安全性を確保するという、公益的な要請に基づくものであるということができる。

3  以上のとおり、<1>特許法六九条一項の定める「試験又は研究」は、純然たる技術の進歩、改良を目的とする試験又は研究に限られるものではなく、広く、特許発明の実施が可能であるか否か、また、いかなる条件の下で可能であるかについて、有用な資料を得るために追試をしたり、実施上の問題点を探求したり、解決したりするために行われる試験又は研究も含まれると解すべきところ、被告の前記行為は、存続期間満了後に医薬品を製造販売する目的で、後発品の製造承認申請に必要な薬事法に義務付けられた所定の資料を得るための各種試験行為であり、後発品の有効性及び安全性を確保するという公益目的に沿ったものであるといえること、<2>被告の行為は、本件特許権の存続期間内において、本件製剤の販売を意図した行為ではなく、専ら、本件特許権の存続期間満了後の販売を目的としているところ、特許権の存続期間満了後は何人もその発明を実施できるにもかかわらず、右各種試験が許されないとすると、事実上特許期間満了後も特許権者に独占的地位を与える結果となること等を比較検討するならば、被告の行った後発品の製造承認申請に添付する資料を得るための各種試験は、特許法六九条一項の定める「試験又は研究」に該当するものと解するのが相当である。

よって、被告の右各種試験の実施には本件特許権の効力は及ばず、右行為が違法であることを前提とした本件製剤の製造販売の差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がない。

4  その他、被告の行った本件特許権の実施態様について、検討する。

まず、被告が、医薬品製造承認事項一部変更承認申請後に、本件製剤の安定性について追加試験を行ったのは、前記のとおりである。しかし、右試験は、薬事法等の法令で直接義務付けられているものではないが、被告において、将来、実用に供する場合、安定性に関するデータを得る目的で行われた試験であり、右試験の趣旨・目的に照らすならば、右試験も、特許法六九条一項の定める「試験又は研究」に該当すると解するのが相当であり、被告の右行為は、違法性を有しないものということができる。

また、被告が、本件特許権の存続期間内に、カプトプリル原末の輸入したことは前記のとおりである。しかし、前示のとおり、被告の行った各種試験が本件特許権を侵害する違法な行為といえない以上、右試験を行うために必要な程度のカプトプリル原末を輸入した行為も違法ということはできない。なお、被告の輸入したカプトプリル原末は、すべてが各種試験の実施に用いられたものではないが、原末が残った点を考慮しても、右輸入行為が違法であるとまではいえない。さらに、被告の輸入したカプトプリル原末につき、本件特許権の存続期間満了後、右各種試験の実施と異なる目的で使用されたものも存在するが、本件において、原告らの主張する損害が右輸入行為によって生じたと認めることはできない。

三  以上のとおり、原告らの主張に係る各行為は、本件特許権を侵害したものということはできず、右各行為が違法であることを前提とした本件製剤の製造販売の差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 八木貴美子 裁判官 沖中康人)

イ号物件目録

「カプトルナ錠一二・五mg」を品名とする一錠につきカプトプリル一二・五mgを含有する錠剤

ロ号物件目録

「カプトルナ錠二五mg」を品名とする一錠につきカプトプリル二五mgを含有する錠剤

<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告

<12>特許公報(B2) 昭60-4815

<51>Int.Cl.4C 07 D 207/16 // A 61 K 31/40 識別記号 ABU AEQ 庁内整理番号 7242-4C <24><44>公告 昭和60年(1985)2月6日

発明の数 1

<54>発明の名称 プロリン話導体

<21>特願 昭52-14542 <65>公開 昭52-116457

<22>出願 昭52(1977)2月12日 <43>52(1977)9月29日

優先権主張 <32>1976年2月13日<33>米国(US)<31>657792

<32>1976年6月21日<33>米国(US)<31>698432

<32>1976年12月22日<33>米国(US)<31>751851

<72>発明者 ミゲール・エンジエル・オンデツテイ アメリカ合衆国ニユージヤージー・プリンストン・ヘムロツク・サークル79番

<72>発明者 デイビツト・ダブリユ・クツシユマン アメリカ合衆国ニユージヤージー・トレントン・レイク・シヨア・ドライブ20番アール・デイ1

<71>出願人 イー・アール・スクイブ・アンド・サンズ・インコーポレイテツド アメリカ合衆国ニユージヤージー州08540・ブリンストン、ローレンスビル・ブリンストンロード(番地の表示なし)

<74>代理人 弁理士 青山葆 外1名

審査官 谷口浩行

<57>特許請求の範囲

1式:

〔Ⅰ〕

<省略>

〔式中、R1およびR1はそれぞれ水素または低級アルキルを表わす.R2は水素または式:

<省略>

で示される基を表わす.nは0、1または2を表わす.〕

で示される化合物およびその塩類.

2 R1が水素である特許請求の範囲第1項記載の化合物.

3 nが1である特許請求の範囲第2項記載の化合物.

4 R2が水素である特許請求の範囲第2項記載の化合物.

5 R1が水素またはメチルである特許請求のか範囲第2項記載の化合物.

6 式〔Ⅰ〕におけるブロリンがL-異性体である特許請求の範囲第1項記載の化合物.

7 1-(3-メルカブト-2-D-メチルプロバノイル)-L-ブロリンである特許請求の範囲第1項記載の化合物.

8 1、1'-〔ジチオビス(2-D-メチル-3-プロバノイル)〕-ビス-L-ブロリンである特許請求の範囲第1項記載の化合物.

発明の詳細な説明

本発明はブロリン誘導体、更に詳しくは薬理学的活性を有する新規ブロリン誘導体およびその塩類に関する.

本発明の新規ブロリン誘導体は次の一般式で示される化合物およびその塩類を包含する.

<省略>

本発明化合物はアンギオテンシン変換酵素抑制剤として有用であつて、血圧降下薬として便用することができる.本発明化合物を更に明確化すれば次式で示すことができる.

〔Ⅰ〕

<省略>

上記式中の記号は下記の意義を有する.R1およびR4はそれぞれ水素または低級アルキルを表わす.R5水素または式:

<省略>

で示される基を表わす.nは0、1または2を表わす.

式中の※印は不整炭素原子を表わす.ただしR1およびR4置換基を保持する炭素原子はそれぞれの置換基が水素以外の基であるときに不整である.

本発明化合物〔Ⅰ〕の内、特に好ましい化合物は式:

〔Ⅱ〕

<省略>

(R1、R2およびnは前記と同意義。)で示される化合物である.

上記範囲の化合物〔Ⅱ〕の内、下記化合物は特に好ましい態様を示す本発明化合物〔Ⅰ〕の下位概念に属する化合物であつて、記載する順序(2~g)でその好ましさを増大する.

(a)nが1、(b)R2が水素、(c)R1が水素またはメチル、(d)R1およびR2がそれぞれ水素、nが0、(c)R1およびR2がそれぞれ水素、nが1、(f)R1がメチル、R2が水素、nが1、(g)R2が式:

<省略>

(基中、R1が水素または低級アルキル(特にメチル)、nが0~2(特に1))で示される基である化合物.

上記好ましい基を組合わせて得られる化合物も好ましい化合物に包含されることは当然である.

ブロリン核がL-型である立体異性体は特に好ましい化合物である.

種々の記号により表わされる低級アルキルはメチルないしへブチルの直鎖もしくは分枝状炭化水素基、たとえばメチル、エチル、ブロビル、イソブロビル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ベンチル、イソベンチルなどを包含する.上記の基はC1~C4の基(特にC1~C2の基)が好ましい.

本発明化合物〔Ⅰ〕(およびその好ましい下位概念の化合物を含む.)は次の方法により製造することができる.

一般にR2が水素である本発明化合物〔Ⅰ〕は式:

<省略>

〔式中、Rはヒドロキシまたは低級アルコキシを表わす.〕

で示される化合物を式:

<省略>

〔式中、R1、R4およびnは前記と同意義.〕

で示される酸でアシル化し、Rは低級アルコキシである時これを離脱することにより得ることができる.

しかし酸〔Ⅵ〕でアシル化することにより直接、本発明化合物〔Ⅰ〕が得られるばかりでなく、中間体を経由して本発明化合物〔Ⅰ〕を得ることができる.すなわち、前記化合物〔Ⅲ〕を(a)式:

<省略>

〔式中、Xはハロゲン(好ましくはブロモ、クロロまたはヨウド)を表わす.R1、R4およびnは前記と同意義.〕

で示されるω-ハロアルカン酸、または(b)式:

<省略>

〔式中、R1、R4およびnは前記と同意義.〕

で示されるトシルオキシアルカン酸(Xがトシルオキシである化合物〔Ⅴ〕)、または(c)式:

〔Ⅵ〕

<省略>

〔式中、R1およびR4は前記と同意義.〕

で示される置換アクリル酸でアシル化し、次いでこのアシル化生成物を式:

R5CO-SH 〔Ⅶ〕

〔式中R5は低級アルキル、フエニルまたはフフエニル低級アルキルを表わす.〕

で示されるチオ酸のアニオンで置換もしくは付加することにより本発明化合物〔Ⅰ〕の中間体を得ることができる.

またR2が水素である本発明化合物〔Ⅰ〕またはそのエステルは出発物質〔Ⅲ〕を式:

<省略>

〔式中、n'は1または2を表わす.R1およびR4は前記と同意義。〕

で示されるチオラクトンでアシル化することにより得ることができる.あるいは出発物質〔Ⅲ〕を式:

<省略>

〔式中、YはR5COもしくは保護基(たとえば

(a)<省略>

(b)<省略> (c)CH3-CONHCH2-

(d)<省略>

または他の硫横保護基)であつてよい.R、R1、R4、R5、およびnは前記と同意義.〕

で示されるメルカブトアルカン酸でアシル化することにより中間体を得ることができる.

Yが上記のごとき保護基である化合物はR2が水素である目的化合物〔Ⅰ〕またはそのエステル製造のための出発物質であつて、かかる出発物質〔Ⅸ〕で化合物〔Ⅲ〕をアシル化することによりYが保護された化合物〔Ⅰ〕の中間体を得、次いでこれを熱トリフルオロ酢酸、冷トリフルオロメタンスホン酸、酢酸第二水銀、液体アンモニア中ナトリウム、亜鉛と塩酸などと処理する常套方法で脱保護基反応によりR2が水素である本発明化合物〔Ⅰ〕またはそのエステルを得ることができる(保護基の離脱処理についてはメトーデン・デア・オルガニツエン・ヘミー(Methoden der、Organishen Chemie (Houben-Weyl))第ⅩⅤ巻バートⅠ第736頁および以降参照).

出発物質〔Ⅲ〕のアシル化剤として酸〔Ⅳ〕または〔ⅩⅠ〕を用いるときはジシクロヘキシルカルボジイミドなどのようなカツブリング試薬を用いるかまたは該酸の混合無水物、対称性無水物、酸ハライド、酸エステル体を形成せしめるかもしくはウツドワード試薬K、N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1、2-ジヒドロキノリンなどを使用して該酸〔Ⅵ〕または〔Ⅸ〕を活性化することによりアシル化処理を効果的に行なうことができる(アシル化処理についてはメトーデン・デア・オルガニツシエン・ヘミー(Methoden der Organishen Chemie (Houben-Weyl))第ⅩⅤ巻バートⅡ第1頁および以降参照).

出発物質〔Ⅲ)はブロリンおよびその低級アルキルエステル類を包含する.出発物質〔Ⅲ〕のアシル化処理については以下に詳述する.

YがR5-CO-である化合物〔Ⅰ〕の中間体を製造するための好ましい方法は出発物質〔Ⅲ〕(酸またはそのエステル類)と式:

<省略>

〔式中、Ⅹはハロゲン(好ましくはクロロまたはブロモ)を表わす.R1、R4およびnは前記と同意義.)

で示されろハロアルカン酸をカツブリング処理する.この反応処理は酸〔Ⅴ〕と酸〔Ⅲ〕を反応させる前に酸〔Ⅴ〕の混合酸無水物、対称性無水物、酸ハライド、活牲エステルを形成せしめるかまたはウツドワード試薬K、EEDQ(N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1、2-ジヒドロキシキノリン)などを用いることにより該酸〔Ⅴ〕を活性化した後、これと化合物〔Ⅲ〕をカツブリング処理することにより行なうことができる.

この操作により式:

<省略>

〔式中、R、R1、R4、nおよびXは前記と同意義。〕

で示される化合物が得られる.

この化合物〔Ⅹ〕を式:

R5CO-SH 〔VII〕

〔式中、R5は前記と同意義.〕

で示されるチオ酸のアニオンとの置換反応に付することにより式:

<省略>

〔式中、R、R1、R4、R5およびnは前記と同意義.〕

で示される本発明化合物の中間体を得ることができる.

上記化合物〔ⅩⅠ〕をアンモノリンス処理することにより、これを式:

<省略>

〔式中、R、R1、R4およびnは前記と同意義.〕

で示される本発明化合物またはそのエステルに変換することができる.

Rが低級アルコキシ基であるとき、たとえばRがt-ブトキシまたはt-アミルオキシであるとき、本発明化合物の中間体〔ⅩⅠ〕または〔ⅩⅡ〕のエステル体をトリフルオロ酢酸およびアニソールで処理することにより低級アルコキシ基を離脱せしめで対応する遊離酸を得ることができる.以上のアルコキシが存在するとき、これをアルカリ加水分解することにより対応する酸生成物を得ることもできる.

以上に説明した本発明化合物を得るための種々の製造法を更に詳細に説明すれば次のとおりである.式:

<省略>

〔式中、R1およびR4は前記と同意義。〕

で示されるアクリル酸出発物質をその酸ハライド型に変形し、次いでこれと化合物〔Ⅲ〕を反応させて式:

<省略>

式中R、R1およびR4は前記と同意義.〕

で示される化合物を製し、これを前記式:R5CO-SH〔Ⅶ〕で示されるチオ酸との付加反応に付することにより本発明化合物の中間体〔ⅩⅠ〕を得ることができる.

<省略>

〔式中、R1、R4およびnは前記と同意義.〕

で示されるトシルオキシアルカン酸をアシル化剤として出発物質〔Ⅲ〕をアシル化し、このアシル化生成物を前記のごとき置換反応などに付することにより本発明化合物の中間体〔ⅩⅠ〕を得ることができる.

またアクリル酸〔Ⅵ〕とチオ酸〔Ⅶ〕を反応させて式:

<省略>

〔式中、n、R1、R4およびR5は前記と同意義。〕

で示される化合物を製し、これをたとえば塩化チオニルで処理してその酸ハライドに変換した後、これと出発物質〔Ⅲ〕をカツブリング処理し、更に前記のように処理することにより本発明化合物の中間体〔ⅩⅠ〕を得ることができる。

酸またはそのエステル出発物質〔Ⅲ〕を式:

<省略>

〔式中、R5は保護基(前記同様の保護基であつてよい.)を表わす.n、R1およびR4は前記と同意義.〕

で示されるω-メルカブトアルカン酸の保護型化合物でアシル化することができる.この場合にはアシル化処理後、前記のような常套の脱保護基処理することにより本発明化合物〔Ⅰ〕を得ることができる.

また出発物質〔Ⅲ〕のアシル化剤としてチオラクトン型化合物(たとえばβ-ブロビオチオラクトン、α-メチル-β-ブロビオチオラクトンなど)を使用することができる。

本発明化合物の好ましい製造法については後記実施例にその詳細を説明する.

本発明化合物を得るための特に好ましい製造法の代表例を挙げれば次のとおりである.

酸またはそのエステル出発物質〔Ⅲ〕を式:

また前記のように式:

<省略>

〔式中、Xはそれぞれ個別にハロゲン(好ましくはクロロまたはブロモ)、R1、R4およびnは前記と同意義.〕

で示されるハロアルカノイルハライドでアシル化する.この反応操作はアルカリ性媒体(たとえば希水酸化アルカリ金属溶液、炭酸水素アルカリ金属溶液または炭素アルカリ金属溶液)中、低温(たとえば約0~15℃)で行なうことができる.このアシル化反応生成物をチオ酸〔Ⅶ〕のアニオンによる置換反応に付することにより中間体を得ることができる.この処理はアルカリ性媒体(好ましくは炭酸アルカリ金属溶液)中、常法により行うことができる.この反応生成物をアンモノリシス処理(たとえばアルコール性アンモニアまたは濃水酸化アンモニウム溶液処理)またはアルカリ性加水分解(たとえば水酸化金属水溶液で処理)することによりR2が水素である本発明化合物を得ることができる.

また本発明化合物の特に好ましい製造法の代表例としてエステル出発物質〔Ⅲ〕(好ましくはt-ブチルエステル体)を式:

<省略>

〔式中、R1、R4、R5およびnは前記と同意義.〕

で示されるチオアルカン酸で処理する方法を挙げることができる.この操作はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのような無水媒体中、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N、N'-カルボニルビスイミダゾール、エトキシアセチレン、ジフエニルホスホリルアジドまたは同様のカツブワング剤の存在下、約0~10℃で行なうことができる.この反応生成物を上記のようにアンモノリシス処理することによりR2が水素である化合物を得る.Rが低級アルコキシ基であるとき、これをたとえばトリフルオロ酢酸およびアニソール(室温)で処理することにより低級アルコキシ基を離脱せしめ、対応する遊離酸を得ることができる。

エステル体〔Ⅲ〕(Rが低級アルコキシ(特にt-ブトキシ)である化合物)をチオラクトン(たとえばβ-ブロビオチオラクトン、α-メチル-β-ブロビオチオラクトンなど)でアシル化するとき、この反応はテトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレンなどのような無水溶媒中、約0℃ないし室温で処理することにより達成される.このエステル生成物を前記のとおりアニソールとトリフルオロ酢酸で処理することにより、そのエステル基を離脱せめることができる。

R2が式:

<省略>

〔式中、R1、R4およびnは前記と同意義.〕

で示される基である本発明化合物はR2が水素である化合物〔ⅩⅡ〕をヨウ素で直接酸化することにより得ることができる.

本発明化合物〔Ⅰ〕は1個またはそれ以上の不整炭素原子を有する.R1よびR4が水素以外の基であるとき、これらを結合する炭素原子は不整である.これらの炭素原子は式〔Ⅰ〕中、※印で示した。このように本発明化合物は立体異性体またはそのラセミ化合物として存在する.これらはいずれも本発明化合物の範囲に包含される.前記製造法における出発物質としてラセミ化合物または光学的対掌体を用いることができる.ラセミ出発物質を本発明の製造法で使用するとき、生成物中の立体異性体はこれを通常のクロマトグラフイまたは分別結晶法により分離することができる.一般にアミノ酸の炭素原子に関するL-異性体は好ましい異性型化合物を構成する.また本発明化合物のアシル側鎮中のα-炭素(すなわちR1を結合する炭素原子)に関するD-異性体が好ましい.

本発明化合物〔Ⅰ〕は種々の無機塩基または有機塩基との塩基性塩を形成し、この塩もまた本発明化合物の範囲内に包含される。かかる塩はたとえばアンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩などが例示され、これらが好ましい.)、アルカリ土類金属塩(たとえばカルシウム塩、マグネシウム塩)、有機塩基との塩としてたとえばジシクロヘキシルアミン塩、ベンザチン塩、N-メチル-D-グルカミン塩、ヒドラバミン塩、アルギニンまたはリジンのようなアミノ酸との塩などを包含する.生理学的に許容される無毒性塩が好ましいが、他の塩も有用であつて、たとえば後記実施例で説明するようにジシクロヘキシルアミン塩の場合にはこれを単離、精製するために他の塩が有用である.

かかる塩類はこれを溶解せしめない溶媒または媒体または水中、所望のカチオンを供給する適当な塩基当モル量またはそれ以上と遊離酸型生成物を反応させ、凍結乾燥法で脱水する通常の処理法により製造することができる.次いでH型カチオン交換樹脂(たとえばダウエツクス50のようなボリスチレンスルホン酸樹脂)のごとき不溶性酸または酸水溶液で上記塩を中和し、有機溶媒(たとえば酢酸エチル、ジクロロメタンなど)で抽出することにより遊離酸型化合物を得ることができる.遊離酸から所望により対応する他の塩を製造することもできる.

本発明の詳細な製造法については後記実施例において詳述する.実施例は好ましい実施態様を示すものであつて、実施例に記載されていない本発明化合物も同様に製造し得ることを示唆するものである.

本発明化合物はデカベブチドアンギオテンシンⅠのアンギオテンシンⅡへの変換を抑制し得るので、アンギオテンシンに関連する高血圧を軽減または救済するために有用である。アンギオテンシノーゲン(血漿中のシユードグロブリン)に関する酵素レニンの作用はアンギオテンシンⅠを産生するにある.アンギオテンシンⅠはアンギオテンシン変換酵素(ACE)によりアンギオテンシンⅡに変換される.後者は哺乳動物(たとえばラツト、イヌ)の種々の型の高血圧症にいける原因物質として連座する血圧上昇活性物質である。本発明化合物はアンギオテンシン変換酵素を抑制し、アンギオテンシンⅡ(血圧上昇物質)を生成を減少または阻止することによりアンギオテンシン(レニン)→アンギオテンシンⅠ→アンギオテンシンⅡ変換系に介在する.それ故アンギオテンシンに依存する高血圧の影響を受ける哺乳動物に対して本発明化合物またはその生理学的に許容される塩の1種もしくはその混合物を投与することによりその高血圧症状を阻止することができる.エンゲルらにより記載された典型的動物実験で示されるように、本発明化合物の血圧を降下せしめ得る適当量は約0.1~100mg/kg/日、好ましくは約1~50mg/kg/日を基準とする1日当1回、好ましくは2~4回分割投与量である(動物実験についてエンゲル(S.L.Engel)、シエーフア(T.R.Schaeffer)、ウオー(M.H.Waugh)、ルービン(B.Rubin):Proc.Soc.Exp.Biol.Med.143第483頁(1973年)参照).本発明の好ましい投与方法は経口投与であるが、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内のような非経口的投与法で投与してもよい.

本発明化合物はこれを経口投与のための錠剤、カブセル剤、エリキシル剤のような組成物または非経口投与のための減菌溶液もしくは懸濁液に製剤することにより血圧減少効果を達成するために使用することができる.このために本発明化合物〔Ⅰ〕またはその生理学的に許容される塩もしくはその混合物を薬理学的に許容される慣行に適合するような単位投与剤形中に生理学的に許容される媒体、担体、賦形剤、結合剤、保存剤、安定剤、香味料と共に配合することができる.これら組成物または薬剤中の活性化合物の量は上記のごとき範囲の投与量を服用し得る量としなければならない。

錠剤、カブセル剤などに配合することができる佐剤として次のものが例示される.トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチンのような結合剤、リン酸ジカルシウムのような賦形剤、コーンスターチ、ボテトスターチ、アルギン酸などのような崩壊剤、ステアリン酸のような滑沢剤、シユクロース、ラクトース、サツカリンのような甘味剤、ベバーミント、冬緑油、チエリー香料のような香味剤など.投与単位剤形がカブセル剤であるとき、このものに上記物質に加うるに脂肪油のような液体担体を含有せしめることができる.投与単位剤形をコーテング処理するコーテング剤として、あるいはその外形を改良するため他の種々の物質を使用することができる.たとえば錠剤をセラツク、砂糖またはその双方でコーテング処理することができる.シロツブ剤、エリキシル剤、活性化合物、甘味剤としてシユクロース、保存剤としてメチルおよびブロビルバラベン、着色剤、香味料としてチエリー香料、オレンジ香料を含有せしめてもよい.

注射用減菌組成物は注射用減菌水のような担体中に活性物質および天然植物油(たとえばゴマ油、ヤシ油、落花生油、棉実油など)または合成樹脂性担体(たとえばオレイン酸エチルなど)を溶解もしくは懸濁し、通常の薬物学的慣行に従つて製剤することができる.要すれば緩衝剤、保存剤、抗酸化剤などを配合することができる.

次に実施例および参考例を挙げて本発明の好ましい化合物の具体的製造法について詳述する.

参考例 1

1-(2-ベンゾイルテオアセチル)-L-ブロリンの製造法:-

L-ブロリン5.75gを1N水酸化ナトリウム50mlに溶解し、溶液を氷水溶中で冷やす.2N水酸化ナトリウム26mlおよび塩化クロロアセチル5.65gを加え、混合物を室温で3時間強く攪拌する。水50ml中チオ安息香酸7.5gおよび炭酸カリウム4.8gの懸濁液を加え、室温で18時間攪拌後、混合物を酸性にし、酢酸エチルで抽出する.酢酸エチル層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸する.残留物14.6gを酢酸エチル150mlに溶解し、ジクロロヘキシルアミン11mlを加える.生成した結晶を〓別してこれを酢酸エチルから再結晶し、生成物5.7gを得る.融点151~152℃.この結晶性塩を5%硫酸水素カリウム水溶液100mmと酢酸エチル300mlの混合物に溶解する.有機層を1回水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸して酸生成物3.45gを得た.

実施例 1

1-(2-メルカブトアセチル)-L-ブロリンの製造:-

参考例1で得た1-(2-ベンゾイルチオアセチル)-L-ブロリン3.4gを水10.5mlおよび濃アンモニア6.4mlの混合物に溶解する.1時間後、混合物を水で希釈して〓過する.〓液を酢酸エチルで抽出し、濃縮酸で酸性にした後、塩化ナトリウムで飽和し、酢酸エチルで2回抽出する。酢酸エチル抽出物を飽和塩化ナトリウムで洗い、濃縮乾涸して生成物1.5gを得る.これを酢酸エチルから結晶化して1-(2-メルカブトアセチル)-L-ブロリンを得た.融点133~135℃.

参考例 2

1-(2-ベンゾイルチオブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

L-ブロリン5.75gを1N水酸化ナトリウム水溶液50mlに溶解し、溶液を氷浴中で攪拌しながら冷やす。2N水酸化ナトリウム25mlおよび2-ブロモブロビオニルクロリド8.57gをその順序で添加し、混合物を氷浴から取出し、室温で1時間攪拌する.チオ安息香酸7.5g、炭酸カリウム4.8gおよび水50mlの混合物を加え、この混合物を室温で一夜攪拌する.濃塩酸で酸性にした後、水溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗、乾燥して濃縮乾涸する。残留物14.7gをシリカゲル440gカラム上、ベンゼン-酢酸(7:1)混合物を溶出液とするクロマトグラフイに付する。所望の物質を含有する分画を合して濃縮乾涸し、残渣をエーテルーヘキサンで2回沈澱させてエーテルーヘキサン中でジシクロヘキシルアミン塩に変換し、生成物9.4gを得る.融点(142℃)、148~156℃.このジシクロヘキシルアミン塩を参考例1と同様に処理してその遊離酸5.7gを得た.

実施例 2

1-(2-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

水12mlおよび濃縮酸化アンモニウム9mlの混合物を攪拌しながらこれに参考例2で得た1-(2-ベンゾイルチオブロバノイル)-L-ブロリン5.7gを溶解する.1時間後、混合物を水10mlで希釈して〓過する.〓液を酢酸エチルで2回抽出してこれを原容量の1/3に濃縮し、濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する.有機層を飽和塩化ナトリウムで洗い、乾燥後、減圧下に濃縮乾涸する.残留物を酢酸エチルーヘキサンから結晶下して1-(2-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン3gを得た.融点(105℃)116~120℃.

参考例 3

1-(3-ベンゾイルチオブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

L-ブロリン5.75gを1N水酸化ナトリウム50mlに溶解し、溶液を氷浴中で冷やす.3-ブロモブロビオニルクロリド8.5gと2N水酸化ナトリウム27mlを加え、混合物を氷浴中で10分、室温で3時間攪拌する.チオ安息香酸7.5g、炭酸カリウム4.5gおよび水50mlの懸濁液を加え、混合物を室温で18時間攪拌する.濃塩酸で酸性にした後、水層を酢酸エチルで2回抽出する.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸して1-(3-ベンゾイルチオブロバノイル)-L-ブロリン7.1gを得た.融点101~102℃(酢酸エチルーヘキサン)。

参考例 4

L-ブロリン・t-ブチルエステルの製造:-

L-ブロリン230gを水1000mlおよび5N水酸化ナトリウム400mlの混合物に溶解する.溶液を氷浴中で冷やし、強く攪拌しながら5N水酸化ナトリウム460mlとベンジルオキシカルボニルクロリド340mlを5等分に分けて0.5時間に渡つて添加する.室温で1時間攪拌後、混合物をエーテルで2回抽出し、濃塩酸で酸性にする.沈澱を〓過してこれを乾燥する.収量442g.融点78~80℃。

得られたベンジルオキシカルボニル-L-ブロリン480gをジクロロメタン300ml、液体イソブチレン800mlおよび濃硫酸7.2mlの混合物に溶解する.溶液を圧力ビン中で72時間振盪する.圧力を解除してイソブチレンを蒸発させた後、溶液を5%炭酸ナトリウムおよび水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸してベンジルオキシカルボニル-L-ブロリン-t-ブチルエステル205gを得る.

ベンジルオキシカルボニル-L-ブロリン・t-ブチルエステル205gを無水エタノール1200mlに溶解し、出口の水素ガス中に二酸化炭素の微量が観察されなくなるまで(24時間)10%バラジウム/炭素(10g)と共に常圧で水素化する.触媒を〓別し、〓液を減圧(30mmHg)下に濃縮し、残留物を減圧下に蒸留してL-ブロリン・t-ブチルエステルを得た.沸点(1mm)50~51℃.

参考例 5

1-(3-アセチルチオブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルの製造法:-

参考例4で得たL-ブロリン・t-ブチルエステル5.13gをジクロロメタン40mlに溶解し、溶液を氷水浴中で冷やす.これにジシクロヘキシルカルボジイミド6.18gのジクロロメタン20ml溶液、次いですみやかに3-アセチルチオブロビオン酸4.45gを添加する.氷水浴中で15分間、室温で16時間攪拌後、沈澱を〓別し、〓液を減圧下に濃縮乾涸する.残留物を酢酸エチルに溶解し、洗浄して中性にする.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸して1-(3-アセチルチオブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステル9.8gを得た。

参考例 6

1-(3-アセチルチオブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

参考例5で得た1-(3-アセチルチオブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステル4.7gをアニソール34mlとトリフルオロ酢酸68mlの混合物に溶解し、混合物を室温で1時間保持する.溶媒を減圧下に蒸発させ、残留物を数回エーテルーヘキサンから沈澱させる.この残渣3.5gをアセトニトリル25mlに溶解し、ジシクロヘキシルアミン2.8mlを加える.結晶性塩を〓取し、イソブロバノールから再結晶する.収量3.8g、融点176~177℃。この塩を参考例1と同様の方法で酸に変換して1-(3-アセチルチオブロバノイル)-L-ブロリン1.25gを得た.融点89~90℃(酢酸エチルーヘキサン).

参考例 7

1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルの製造:-

L-ブロリン・t-ブチルエステル3.42gの乾燥テトラヒドロフラン10ml溶液を氷浴中で冷やし、これにブロビオチオラクトン1.76gを加える.氷浴中で5分間、室温で3時間保持した後、反応混合物を酢酸エチル200mlで希釈し、5%硫酸水素カリウムおよび水で洗う.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸し、残留物をエーテルーヘキサンから結晶化して1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステル3.7gを得た.融点57~58℃.

実施例 3

1-(3-メチルカブトブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

製法A:-

参考例3で得た1-(3-ベンゾイルチオブロバノイル)-L-ブロリン4.9gを水8mlおよび濃水酸化アンモニウム5.6mlの混合物に溶解し、アルゴン雰囲気下に攪拌しながら1時間保持する.反応混合物を水で希釈し、〓過して〓液を酢酸エチルで抽出する.水層を濃塩酸で酸性にし、塩化ナトリウムで飽和した後、酢酸エチルで抽出すろ。有機層を飽和塩化ナトリウムで洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸する.残留物を酢酸エチルーヘキサンから結晶化して1-(3-メチルカブトブロバノイル)-L-ブロリン2.5gを得た.融点68~70℃.

製法B:-

参考例6で得た1-(3-アセチルチオブロバノイル)-L-ブロリン0.8gをメタノール性5.5Nアンモニア5mlに溶解し、溶液をアルゴン雰囲気下に室温で保持する.2時間後、溶媒を減圧下に除き、残留物を水に溶解し、H*サイクル上イオン交換カラム(ダウエツクス50(分析級))に付し、水で溶出する.テオール陽性反応を示す分画を合し、濃縮乾涸して生成物0.6gを得る.これを前記製法Aと同様、酢酸エチルーヘキサンから結晶化して1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリンを得た.

製法C:-

参考例7で得た1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステル2.3gをアニソール20mlとトリフルオロ酢酸45mlの混合物に溶解する.アルゴン雰囲気下に室温で1時間保持した後、反応混合物を減圧下に濃縮乾涸し、残留物を酢酸エチルーヘキサンから数回沈澱させる.残渣1.9gを酢酸エチル30mlに溶解し、ジシクロヘキシルアミン1.85mlを加える.生成物を〓取し、イソブロバノールから再結晶して結晶性塩2gを得た.融点187~188℃.

この塩を参考例1と同様に酸に変換して生成物1.3gを得た.これを前記製法Aと同様に酢酸エチルから結晶化した.

塩の製造:-

ナトリウム塩:1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン500mgを水2.5mlと1N水酸化ナトリウム2.5mlの混合物に溶解し、この溶液を凍結乾燥してそのナトリウム塩を得た.

マグネシウム塩:1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン500mg、酸化マグネシウム49.5mgおよび水10mlを完全に溶液となるまで攪拌しながら僅かに加温する.これを凍結乾燥して溶媒を除き、マグネシウム塩を得た.

カルシウム塩:1-(3-メルカブトブロバノイル)-2-ブロリン500mgを水酸化ナトリウム91mgと水10mlの混合物に溶解し、この溶解を凍結乾燥してそのカルシウム塩を得た.

カリウム塩:1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン500ml炭酸水素カリウム246mgと水10mlの混合物に溶解し、これを凍結乾燥してカリウム塩を得た.

N-メチルーD-グルカミン塩:1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン500mgとN-メチルーD-グルカミン480mgを水10mlた溶解し、凍結乾燥してN-メチルーD-グルカミン塩を得た.

実施例 4

1-(3-メルカブトブロバノイル)-D-ブロリンの製造:-

参考例3の処理におけるL-ブロリンの代わりにD-ブロリンを用い、同様に処理し、次いでこの生成物を実施例3製法Aと同様に処理してそれぞれ1-(3-ベンゾイルチオブロバノイル)-D-ブロリンおよび1-(3-メルカブトブロバノイル)-D-ブロリン(融点68~70℃)を得た.

参考例 8

3-アセチルチオ-2-メチルブロバン酸の製造:-

チオ酢酸50gおよびメタクリル酸40.7gの混合物を蒸気浴上で1時間加熱し、次いで室温で18時間保持する.メタクリル酸の反応完結をNMRスベクトル分析で確認した後、反応混合物を減圧下に蒸留し、沸点128.5~131℃(2.6mmHg)の留分を分離して所望の3-アセチルチオ-2-メチルブロバン酸64gを得た.

参考例 9

3-ベンゾイルチオ-2-メチルブロバン酸の製造:-

参考例8の処理におけるチオ酢酸の代わりにチオ安息香酸を用い、同様に処理して3-ベンゾイルチオ-2-メチルブロバン酸を得た.

参考例 10

3-フエニルアセチルチオ-2-メチル-ブロバン酸の製造:-

参考例8の処理におけるチオ酢酸の代わりにチオフエニル酢酸を用い、同様に処理して3-フエニルアセチルチオ-2-メチルブロバン酸を得た.

参考例 11

1-(3-アセチルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルの製造:-

L-ブロリン・t-ブチルエステル5.1gをジクロロメタン40mlに溶解し、溶液を氷浴中で攪拌しながら冷やす.これにジシクロヘキシルカルボジイミド6.2gのジクロロメタン15ml溶液、次いで速やかに参考例8で得た3-アセチルチオ-2-メチルブロバン酸4.9gのジクロロメタン5ml溶液を加える.氷浴中で15分間、室温で16時間攪拌後、沈澱を〓別し、〓液を減圧下に濃縮乾涸する.残留物を酢酸エチルに溶解し、これを洗浄して中性にする.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾涸し、残留物をカラムクロマトグラフイ(シリカゲルークロロホルム)で精製して1-(3-アセチルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステル7.9gを得た.

参考例 12

1-(3-アセチルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

製法A:-

1-(3-アセチルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステル(参考例11の生成物)7.8gをアニソール55mlとトリフルオロ酢酸110mlの混合物に溶解する.室温で1時間保持した後、減圧下に溶煤を除き、残留物をエーテルーベキサンから数回沈澱させる.残渣6.8gをアセトニトリル40mlに溶解し、ジシクロヘキシルアミン4.5mlを加える.結晶性塩を新鮮なアセトニトリル100mlと共に沸騰させ、室温に冷やし、〓過して塩3.8gを得る。融点(165)187~188℃.この物質をイソブロノールから再結晶する.〔α〕D-67°(エタノール中濃度c=1.4).この結晶性ジシクロヘキシルアミン塩を5%硫酸カリウム水溶液と酢酸エチルの混合物に懸濁する.有機層を水洗し、濃縮乾涸して残渣を酢酸エチルーヘキサンから結晶して1-(3-アセチルチオ-2-D-メチルブロバノイル)-L-ブロリンを得た。融点83~85℃.〔α〕g-162°(エタノール中濃度c=1.7).

製法B:-

3-アセチルチオ-2-メチルブロバン酸8.1gと塩化チオニル7gを混合し、この懸濁液を室温で16時間攪拌する.反応混合物を濃縮乾涸し、減圧下に蒸留(沸点80℃)する.得られた3-アセチルチオ-2-メチルブロバン酸クロリド5.4gと2N水酸化ナトリウム15mlをL-ブロリン3.45gの1N水酸化ナトリウム30ml溶液(氷水浴中で冷やしたもの)を加える。室温で3時間攪拌後、混合物をエーテルで抽出し、水層を酸性にしてこれを酢酸エチルで抽出する.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮乾涸して1-(3-アセチルチオ-2-DL-メチルブロバノイル)-L-ブロリンを得た.

製法C:-

水100mlおよび炭酸水素ナトリウム12gの混合物にL-ブロリン3.45gを溶解し、この溶液を氷水浴中で冷やし、強く攪拌しながらこれにメタクリロイルクロリド4.16gを添加する.添加終了後、混合物を室温で2時間攪拌し、エーテルで抽出する.水層を1N塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する.有機層を減圧下に濃縮乾涸し、残留物をチオール酢酸3.5gと混合し、アゾビスイソブチロニトリルの結晶数個を加え、混合物を蒸気浴上で2時間加熱する.反応混合物をベンゼン-酢酸(75:25)に溶解し、シリカゲルカラム上、同一の溶媒混合物で溶出し、1-(3-アセチルチオ-2-DL-メチルブロバノイル)-L-ブロリンを得た.

参考例 13

1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルの製造:-

参考例11の処理における3-アセチルチオ-2-メチルブロバン酸の代わりに参考例9で得た3-ベンゾイルチオ-2-メチルブロバン酸を用い、同様に処理して1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルを得た.

参考例 14

1-(3-フエニルアセチルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルの製造:-

参考例11の処理における3-アセチルチオ-2-メチルブロバン酸の代わりに参考例10で得た3-フエニルアセチルチオ-2-メチルブロバン酸を用い、同様に処理して1-(3-フエニルアセチルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルを得た.

参考例 15

1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

参考例12製法Aの処理における1-(3-アセチルチオ)-2-メチルブロバノイル)-1-ブロリン・t-ブチルエステルの代わりに参考例13で得た1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルを用い、同様に処理して1-(3-ベンゾイルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリノを得た.

参考例 16

1-〔3-フエニルアセチルチオ-2-メチルブロバノイル-L-ブロリンの製造:-

参考例12製法Aの処理における1-(3-アセチルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルの代わりに参考例14で得た1-(3-フエニルアセチルチオ-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルを用い、同様に処理して1-(3-フエニルアセチルチオ-2-メチルブロバノイル-L-ブロリンを得た.

実施例 5

1-(3-メルカブト-2-D-メチルブロバノイル)-L-ブローリンの製造:-

参考例12、15および16の生成物をそれぞれ下記のとおり処理して標記化合物を得た.

それぞれチオエステル生成物0.85gをメタノール性5.5Nアンモニアに溶解し、溶液を室温で2時間保持する.減圧下に溶媒を除き、残留物を水に溶解し、H*サイクル上イオン交換カラム(ダウエツクス50(分析級))に流し、水で溶出する.チオール反応陽性を与える分画を合し、凍結乾燥する.残留物を酢酸エチルーヘキサンから結晶化し、1-(3-メルカブト-2-D-メチルブロバノイル-L-ブロリン0.3gを得た.融点103~104℃、〔α〕D-131°(エタノール中、濃度c=2)。

参考例 17

1-(4-ベンゾイルチオブタノイル)-L-ブロリンの製造:-

L-ブロリン2.88gの1N水酸化ナトリウム25ml溶液を氷浴中で冷やし、これに2N水酸化ナトリウム12.5mlおよび4-クロロブチルクロリド3.5gを加える.混合物を室温で3.5時間攪拌し、これにチオ安息香酸3.75g、炭酸カリウム2.4gおよび水25mlの懸濁液を加える.室温で1時間攪拌後、反応混合物を濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する.有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸する.残留物をシリカゲルカラム上、ベンゼン-酢酸(7:1)を溶出液とするクロマトグラフイに付する.所望の物質を含む分画を合し、濃縮乾涸して生成物1.35gを得る.この物質の一部少量を酢酸エチルに溶解し、溶液のpH8~10(湿潤pH試験紙上)になるまでジシクロヘキシルアミンを加える.直ちにジシクロヘキシルアミン塩が晶出する.融点159~161℃.

実施例 6

1-(4-メルカブトブタノイル)-L-ブロリンの製造:-

参考例17で得た1-(4-ベンゾイルチオブタノイル)-L-ブロリン1.08gを水4mlと濃アンモニア2.7mlの混合物に溶解する.室温で1時間攪拌後、混合物を水で希釈し、〓過して酢酸エチルで抽出し、水層を減圧下に濃縮する.生成した1-(4-メルカブトブタノイル)-L-ブロリン・アンモニウム塩をジエチルアミノエチルーセブアデツクス(デキストリンで架橋処理したもの)カラム上、炭酸水素アンモニウムの勾配溶離剤でイオン交換クロマトグラフイ処理することにより精製して純品0.7gを得る.このアンモニウム塩を水2mlに溶解し、これをダウエツクス50スルホン酸樹脂(分析級、水素型)カラム上で処理し、得られた遊離酸を水で溶出する.所望の物質を含む分画(スルフヒドリル試薬およびカルボキシル試薬に陽性)を合し、凍結乾燥して1-(4-メルカブトブタノイル)-L-ブロリンを得た.更にこれを参考例17と同様に処理してそのへキシルアンモニウム塩を得た.融点157~158℃。

参考例 18

4-ブロモ-2-メチルブタン酸の製造:-

4-ブロモ-2-メチルブタン酸エチル(ジヨンズ(G.Jones)およびウツド(J.Wood):テトラヘドロン・レターズ第21巻2961(1965年)参照)1.04gをジクロロメタン50mlに溶解し、-10℃に冷やす.これを攪拌しながらジクロロメタン中、三臭化ホウ酸1M溶液50mlを滴加し、更に-10℃で1時間、25℃で2時間攪拌を続ける.注意して水を加えることにより反応を終らせる.各層を分離し、有機層を水洗、乾燥後、濃縮乾涸して4-ブロモ-2-メチルブタン酸を得た.

参考例 19

1-(4-ベンゾイルチオ-2-メチルブタノイル)-L-ブロリンの製造:-

(a)参考例18で得た4-ブロモ-2-メチルブタン酸8gと塩化チオニル7gを混合し、これを室温で16時間攪拌する.反応混合物を濃縮乾涸し、減圧下に蒸留する.

(b)L-ブロリン2.88gの1N水酸化ナトリウム25mlを溶液を氷浴中で冷やし、これに2N水酸化ナトリウム12.5mlおよび4-ブロモ-2-メチルブタン酸クロリド(上記(a)で製せられた物質)3.9gを加える.この混合物を室温で3.5時間攪拌し、これにチオ安息香酸3.75g、炭酸カリウム2.4gおよび水25mlの懸濁液を加える.室温で一夜攪拌後、反応混合物を濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する.右機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮乾涸する.残留物をシリカゲルカラム上、ベンゼン-酢酸(7:1)を溶出液とするクロマトグラフイに付し、所望の生成物を含む分画を合し、減圧下に濃縮乾涸して1-(4-ベンゾイルチオ-2-メチルブタノイル)-L-ブロリンを得た.

実施例 7

1-(4-メルカブト-2-メチルブタノイル)-L-ブロリンの製造:-

実施例6の処理における1-(4-ベンゾイルチオブタノイル)-L-ブロリンの代わりに参考例19で得た1-(4-ベンゾイルチオ-2-メチルブタノイル)-L-ブロリンを用い、同様に処理して1-(4-メルカブト-2-メチルブタノイル)-L-ブロリンを得た.

参考例 20

1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステルの製造:-

ジシクロヘキシルカルボジイミド6.2gおよび3-アセチルチオ酪酸4.86gをL-ブロリノ・t-ブチルエステル5.1gのジクロロメタン60ml溶液に、氷浴中で攪拌しながら添加する.15分後氷浴を除去し、混合物を室温で16時間攪拌する.沈澱物を〓過し、〓液を濃縮乾涸し、残留物をシリカゲルカラム上、クロロホルムを溶出液とするクロマトグラフイに付し、標記化合物5.2gを得た。

参考例 21

1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-ブロリンの製造:-

1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-ブロリン・t-ブチルエステル(参考例20の生成物)5.2gをトリフルオロ酢酸60mlおよびアニソール30mlの混合物に溶解し、溶液を室温で1時間保持する。減圧下に溶媒を除き、残留物をエーテルーヘキサンから数回再沈澱して1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-ブロリン4gを得た。これを参考例17と同様に処理してそのジシクロヘキシルアミン塩を得た.融点175~176℃.

実施例 8

1-(3-メルカブトブタノイル)-L-ブロリンの製造:-

1-(3-アセチルチオブタノイル)-L-ブロリン(参考例21の生成物)0.86gをメタノール性5.5Nアソモニア溶液20mlに溶解し、反応混合物を室温で2時間保持する.減圧下に溶煤を除き、残留物をイオン交換カラム(ダウエツクス50)上、水を溶出液とするクロマトグラフイに付する.所望の生成物を含む分画を合し、凍結乾燥して1-(3-メルカブトブタノイル)-L-ブロリン0.6gを得た.これを参考例17と同様に処理してそのジシクロヘキシルアミン塩を得た.融点183~184℃。

実施例 9

1、1〔-ジチオビス(3-ブロバノイル)〕-ビス-L-ブロリンの製造:-

3-メルカブトブロバノイル-L-ブロリン0.95gを水20mlに溶解し、1N水酸化ナトリウムでpHを6.5に調整する.注意深く1N水酸化ナトリウムを加えてpHを6.5に調整しながらヨードのエクノール性溶液を滴下する.永続性黄色になつた時、ヨードの添加を中止し、チオ硫酸ナトリウムの小量をもつてこの色を消失させる.反応混合物を濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する。有機層を水洗し、乾燥し、濃縮乾涸して標記化合物を得た.この遊離酸のアセトニトリル溶液にジシクロヘキシルアミンを加えてそのジシクロヘキシルアンモニウム塩を得た.融点179~180℃.

実施例 10

1、1'-〔ジチオビス(2-D-メチル-3-ブロバノイル)〕-ビス-L-ブロリンの製造:-

3-メルカブトブロバノイル-L-ブロリンの代わりに3-メルカブト-2-D-メチルブロバノイル-L-ブロリンを用い、実施例9と同様に処理して、標記化合物を得た.融点236~237℃.

実施例 11

1、1'-〔ジチオビス(2-ブロバノイル)〕-ビス-L-ブロリンの製造:-

3-メルカブトブロバノイル-L-ブロリンの代わりに2-メルカブトブロバノイル-L-ブロリンを用い、実施例9と同様に処理して標記化合物を得た。

実施例 12

1、1'-(ジチオビスアセチル)-ビス-L-ヒドロキシブロリンの製造:-

3-メルカブトブロバノイル-L-ブロリンの代わりに1-(2-メルカブトアセチル)-L-ヒドロキシブロリンを用い、実施例9と同様に処理して標記化合物を得た.

実施例 13

1.1'-〔ジチオビス(4-ブタノイル)〕-ビス-L-ブロリンの製造:-

3-メルカブトブロバノイル-L-ブロリンの代わりに4-メルカブトブタノイル-L-ブロリンを用い、実施例9と同様に処理して標記化合物を得た.

参考例 22

3-〔(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルブロバン酸の製造-

p-メトキシ-α-トルエンチオール15.4g(0.1モル)をメタクリル酸8.6g(0.1モル)の2N水酸化ナトリウム50ml中の溶液に加える.この混合物を蒸気浴上で3時間加熱し、次いで2時間還流させ冷却する.この混合物をエーテルで抽出し、次いで水層を濃塩酸で最性にし、ジクロロメタンで抽出する.酸性の抽出液を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し減圧で蒸発させる。得られた半固体をジクロロメタン50ml中に溶解し、ヘキサン50mlで希釈し、冷却する.3-〔(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルブロバン酸を白色結晶の固体として集める.融点74~82℃(5.5g).

参考例 23

1-〔3-(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルブロバノイル-L-ブロリン・tert-ブチルエステルの製造:-

参考例22で得た3-〔(4-メトキシブエニル)メチルチオ〕-2-メチルブロバン酸3.6g(0.015モル)、L-ブロリンtert-ブチルエステル2.6g(0.015モル)およびジシクロヘキシルカルボジイミド3.1g(0.015モル)をジクロロメタン50mlに溶解し、0℃で30分間攪拌する.冷却浴を取除き、混合物を一夜(16時間)攪拌する.得られた懸濁液を〓過し、〓液を5%硫酸水素カリウム、飽和炭素水酸ナトリウムおよび食塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し減圧で蒸発させる.縛られた澄明な油状物を250mlシリカゲルカラムに適用し、溶離剤として20%酢酸エチル/ヘキサンを用いてクロマトグラフイー処理する.主分画(Rf=0.70(シリカゲル上、酢酸エチル))を蒸発させて1-〔3-(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルブロバノイル-L-ブロリン・tert-ブチルエステル5.5g(93%)を澄明な油状物として得た.Rf=0.70(シリカゲル上、酢酸エチル):Rf=0.60(シリカゲル上、エーテル).

実施例 14

1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

参考例23からのエステル1.2g(0.003モル)、アニソール5mlおよびトリフルオロメタンスルホン酸0.5mlをトリフルオロ酢酸20mlに窒素下で溶解し、得られた赤色の溶液を室温で1時間放置する.この溶液を減圧で蒸発させて赤色の残渣を得、これを酢酸エチルに溶解し、水、食塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させる.残渣をヘキサンで繰返しすり砕き、残つたヘキサンを蒸発させ、油状残渣0.4gを得る.この物質の一部(180mg)を溶離剤としてブンゼン/酢酸(75:25)を用いて2mmシリカゲルブレートでブレバラテブ薄層クロマトグラフイーに付す.主ニトロブルシド陽性帯(Rf=0.40)を回収し、1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン135mgを油状物として得た.ベンゼン/酢酸(75:25)を用いたときの薄層クロマトグラフイーのRf=0.4およびクロロホルム/メタノール/酢酸(50:40:10)を用いたときの薄層クロマトグラフイーのRf=0.62.

実施例 15

1-(3-メルカブト-2-D-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

アルゴンガスシール下に参考例25、27で得た1-〔3-(アセチルチオ)-2-D-メチルブロバノイル〕-L-ブロリン10.0gを10℃で水150mlの中に混合する.この混合物に5N水酸化ナトリウムを加え、溶液のpHを13に1.5時間保つ.この時間の後に水酸化ナトリウムの消費が終り、溶液を濃硫酸でpH=2.0に調節する。

次いでこの水溶液を塩化メチレン150mlで3回抽出し、合わせた塩化エチレン分画を油状物に濃縮する.この濃縮物を酢酸エチルに溶解し、〓過し、〓液をヘキサン30mlで希釈する.ヘキサンの追加量を0.5時間後に加え、次いでこの混合物を10℃に1時間冷却する.

結晶を〓過しヘキサン(2×25ml)で洗浄し、恒量になるまで乾燥し、1-(3-メルカブト-2-D-メチルブロバノイル)-L-ブロリン6.26gを白色の結晶として得た.融点100~102℃.

参考例 24

1-〔3-トシルオキシ-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンの製造:-

参考例12Bの方法で、3-アセチルチオ-2-メチルブロバン酸クロリドの代りに3-トシルオキシ-2-メチルブロバン酸クロリドを用い1-3〔-トシルオキシ-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンを得た.

参考例 25

1-〔3-アセチルチオ-2-D-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンの製造:-

参考例24で得た1-〔3-トシルオキシ-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリン3.5gをチオール酢酸1.14gおよびトリエテルアミン3.5mlの酢酸エチル20ml中の溶液に加える.この溶液を3時間50℃に保ち、冷却し、酢酸エチル100mlで希釈し、希塩酸で洗浄する。有機層を乾燥し減圧で濃縮乾涸する.残渣をアセトニトリルに溶解し、ジシクロヘキシルアミンを加える.結晶沈澱物をイソブロバノールから再結晶し1-〔3-アセチルチオ-2-D-メチルブロバノイル〕-L-ブロリン・ジシクロヘキシルアミン塩を得た.融点187~188℃。〔α〕25D-67°(エタノール中、濃度c=1.4)。この塩を遊離酸に変換する。融点83~85℃(結晶性物質を含有する溶液に高融点の物質の種を入れると融点104~105℃の同形が得られる).

実施例 16

1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

1-〔3-〔〔(エチルアミノ)カルボニル〕チオ〕ブロバノイル〕-L-ブロリン75mg(0.27ミリモル)を濃水酸化アンモニウム1mlおよび水1mlに溶解し、この溶液をアルゴン雰囲気下に室温で18時間放置する。溶液を少量の水で希釈し、エーテルで抽出する.水層を冷濃塩酸で酸性にし、酢酸エチルで抽出する。抽出液を合して乾燥し、減圧で濃縮し、実施例3の生成物と一致する化合物を得る。薄層クロマトグラフイ(シリカゲル上、ベンゼン:酢酸(7:3)Rf=0.4。

参考例 26

メタクリロイル-L-ブロリンの製造:-

L-ブロリン23.0g(0.2モル)を水100mlに溶解し、氷浴中で攪拌する.メチルイソブチルケトン25ml中のメタクリロイルクロリド19.6ml(0.2モル)を3時間で滴加する.反応混合物のpHを0.7に保持して水酸化ナトリウム溶液(2N)を同時に加える.塩基の添加を酸クロリドの添加が完了後、塩基の添加を4時間続ける.反応混合物を濃塩酸でpH5に調整し、酢酸エチルで抽出する.次いで水層をpH2.5に調整し、酢酸エチルで十分に抽出する.酸性の抽出液を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥する.酢酸エチル溶液をジシクロヘキシルアミン40mlで処理し、一夜冷却する.得られた白色沈澱を〓過し乾燥し融点202~210℃の白色固体29g(39%)を得る.この固体をアセトニトリル/イソブロバノール(3:1)1500mlから結晶化してメタクリロイル-L-ブロリン・ジシクロヘキシルアミン塩19.7gを微細な白色針状晶として得る.融点202~210℃。

この塩を水/酢酸エチルに溶解し、混合物を濃塩酸で酸性にする。得られた懸濁液を〓過して微細な白色沈澱物を除き、酢酸エチルでよく洗浄する.〓過を塩化ナトリウムで飽和させ十分に酢酸エチルで抽出する。抽出液を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、澄明な油状物にまで蒸発させてこれを固化させる.酢酸エチル/ヘキサンから結晶化してメタクリロイル-L-ブロリン7.5g(85%)を白色結晶固体として得た。融点89~93℃.再結晶して純品を得た.融点95~98℃.

参考例 27

1-(3-アセチルチオ-2-D-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

参考例26で得たメタクリロイル-L-ブロリン183ml(0.001モル)をチオール酢酸0.5mlに溶解し室温で16時間放置する.この溶液を減圧下に蒸発させて黄色の残渣を得る.ブレバラテブ薄層クロマトグラフイ-(シリカゲル上、ジクロロメタン/メタール/酢酸(90:5:5))で主分画として澄明な油状物240mgを単離する.薄層クロマトグラフイー(ジクロロメタン/メタノール/酢酸(90:5:5))でこの物質な参考例12Bの生成物に対応する1-(3-アセチルチオ-2-DL-メチルブロバノイル)-L-ブロリンであることを認めた.Rf=0.35.(ベンゼン/酢酸(75:25))Rf=0.38.

この油状物をアセトニトリル3mlに溶解し、溶液が塩基性になるまでジシクロヘキシルアミンで処理し、冷却する.白色結晶固体106mgを集める.融点175~181℃.イソブロバノールから結晶させ融点187~188℃の1-(3-アセチルチオ-2-D-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・ジシクロヘキシルアミン塩を得た.この生成物は参考例12Aのものと一致する.

実施例 17

1、1'-〔ジチオビス-(2-メチル-3-ブロバノイル)〕-ビス-L-ブロリンの製造:-

参考例12Bの方法で、3-アセチルチオ-2-メチルブロバン酸の代りに3、3'-ジチオビス-2-メチルブロバン酸を用いて1、1'-〔ジチオビス-(2-メチル-3-ブロバノイル)〕-ビス-L-ブロリンを得る.

実施例 18

1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

亜鉛末10.0gを実施例17の生成物5.0gと1.0N硫酸100mlのスラリーに加え、この混合物を18℃で窒素ガスシール下で4時間攪拌する。この溶液を〓過し、亜鉛を水20mlで洗浄し、〓液を合わせ、塩化メチレン(3×75ml)で抽出する.塩化メチレン洗液で水(25ml)で逆抽出し、次いで有機溶液を油状物に濃縮する.この油状物を酢酸エチル20mlに溶解し、〓過する.〓液にヘキサン15mlを加え、この混合物を15分間攪拌する.その後、追加のヘキサン30mlを加え、この溶液を5℃に1時間冷却する。この混合物を〓過し、生成物をヘキサン(2×10ml)で洗浄し、乾燥して生成物1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの白色結晶4.17gを得た.薄層クロマトグラフィー、Rf=0.60(溶媒系:ベンゼン/酢酸(75:25)).

参考例 28

3-ベンジルチオ-2-メチルブロバン酸の製造:-

参考例22の方法で、p-メトキシ-α-トルエンチオールの代りにα-トルエンチオールを用いて3-ベンジルチオ-2-メチルブロバン酸を得る.

参考例 29

1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリン・tertブチルエステルの製造:-

参考例23の方法で、3-〔(4-メトキシフエニル)メチルチオ〕-2-メチルブロバン酸の代りに参考例28を得た3-ベンジルチオ-2-メチルブロバン酸を用いて1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリン・tertブチルエステルを得る.

参考例 30

1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンの製造:-

参考例29で得た1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリン・tertブチルエステル7.8gをアニソール55mlおよびトリフルオロ酢酸110mlの混合物中に加える.1時間室温に放置した後、溶媒を減圧で除去し、残渣をエーテル溶解し、飽和塩化ナトリウムで数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧で蒸発乾涸して1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンを得た.Rf0.5(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))Rf0.5(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1)).

実施例 19

1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

参考例30で得た1-〔3-(ベンジルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリン0.1gを沸騰液体アンモニア10ml中に懸濁させ、ナトリウムの小片を永続的な青色になるまで攪拌しながら加える.色を硫酸アンモニウムの少数の結晶で脱色させ、アンモニアを窒素気流下に蒸発させる.残渣を希塩酸と酢酸エチルの混合物中に溶解する.有機層を乾燥し、減圧で濃縮乾涸して1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンを得る.Rf0.35(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.5(シリカゲル上、メテル/エチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1))で実施例5の化合物に一致する.

参考例 31

1-〔3-(トリフエニルメチルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンの製造:-

3-トリフエニルメチルチオ-2-メチルブロバン酸1.8gとN、N'-カルボニルジイミダゾール0.8gを攪拌しながら室温でテトラヒドロフラン10mlに溶解する.2-分後、この溶液をL-ブロリン0.6gとN-メチルホルモリン1gとジメチルアセトアミド20mlの混合物に加える.得られた混合物を室温で一夜攪拌し、濃縮乾涸し、残渣を酢酸エチルと10%硫酸水素カリウム水溶液の混合物に溶解する.有機層を分離し、乾燥して減圧で濃縮乾涸し、1-〔3-(トリフエニルメチルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンを得た.Rf0.4(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf1.0(シリカゲル上、メチル/エチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1)).

参考例 32

3-(テトラヒドロビラン-2-イルチオ)-2-メチルブロバン酸の製造:-

3-メルカブト-2-メチルブロバン酸2.4gおよび新しく蒸留した2、3-ジヒドロ-4H-ビラン1.9gのベンゼン60ml溶液に三フツ化ホウ素エーテル錯化合物2.8gを加える.2時間後、炭酸カリウム4gを加え、この混合物を攪拌して〓過する.〓液を濃縮乾涸して3-(テトラヒドロビラン-2-イルチオ)-2-メチルブロバン酸を得た.

参考例 33

1-〔3-(テトラヒドロビラン-2-イルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンの製造:-

参考例31の方法で、3-トリフエニルメチルチオ-2-メチルブロバン酸の代りに参考例32で得た3-(テトラヒドロビラン-2-イルテオ)-2-メチルブロバン酸を用いて1-〔3-(テトラヒドロビラン-2-イルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンを得た.Rf0.8(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1)).

実施例 20

1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

参考例33で得た1-〔3-(テトラヒドロビラン-2-イルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリン1gをメタノ-ル25mlおよび濃塩酸25mlの混合物に溶解し、この溶液を室温で30分間放置する.溶媒を減圧で除去して1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンを得た.Rf0.35(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.5(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1))の物質は実施例5の化合物に一致する.

参考例 34

アセトアミドメチルチオ-2-メチルブロバン酸の製造:-

3-メルカブト-2-メチルブロバン酸2.4gとN-ヒドロキシメチルアセトアミド1.8gをトリフルオロ酢酸に溶解し、この溶液を室温で1時間貯蔵する.トリフルオロ酢酸を減圧で除去し、残渣を水酸化カリウム上で減圧で乾燥して3-アセトアミドメチルチオ-2-メチルブロバン酸を得た.

参考例 35

1-〔3-(アセトアミドメチルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンの製造:-

参考例33の方法で、3-(テトラヒドロビラン-2-イルチオ)-2-メチルブロバン酸の代りに参考例34で得た3-アセトアミドメチルチオ-2-メチルブロバン酸を用いて1-〔3-(アセトアミドメチルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリンを得た.Rf0.2(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.3(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1)).

実施例 21

1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

参考例35で得た1-〔3-(アセトアミドメチルチオ)-2-メチルブロバノイル〕-L-ブロリン1.4gと酢酸水銀1.93gを酢酸25mlと水25mlの混合物に溶解する.蒸気浴上で1時間攪拌した後、硫化水素を、もはや硫化水銀の沈澱が見られなくなるまで泡立てる.混合物を〓過し、沈澱をエタノールで洗浄し、〓液を減圧で濃縮乾涸して1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンを得た.Rf0.35(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.5(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1))の物質は実施例5の化合物に一致する.

参考例 36

1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・tertブチルエステルの製造:-

3-メルカブト-2-メチルブロバン酸1.2g(10ミリモル)とL-ブロリン・tertブチルエステル1.7g(10ミリモル)のジクロロメタン25ml中の冷(5℃)溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.26gのジクロロメタン5ml溶液を分けて加える.室温で2時間後、酢酸5滴を加え、混合物を〓過し、〓液油状残渣に蒸発させる.この残渣を石油エーテル-酢酸エチル(3:1)20mlに溶解し、石油エーテルで調製した150mlシリカゲルカラムに適用する.石油エーテル-酢酸エチル(1:1)で溶離した分画は1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・tertブチルエステル生成物を含有する.この分画0.6gを五酸化燐上で減圧下に12時間乾燥する.Rf0.6(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.8(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1))。

実施例 22

1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンの製造:-

実施例3Cの方法で、1-(3-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン・tertブチルエステルの代りに参考例36で得た1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリン・tertブチルエステルを用い1-(3-メルカブト-2-メチルブロバノイル)-L-ブロリンを得た.Rf0.35(シリカゲル上、ベンゼン/酢酸(3:1))、Rf0.5(シリカゲル上、メチルーエチルケトン/酢酸/ビリジン/水(14:1:2:1))の物質は実施例5の化合物に一致する。

前記の実施例の何れかの最終生成物のラマミ体はL体ではなくして出発アミノ酸のDL体を用いて製せられる.

同様に、前記の実施例の何れかの最終生成物のD体はL体ではなくして出発アミノ酸のD体を用いて製せられる.

参考例 37

1-(2-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリンを各100mg含有する1000錠を次の成分から製造する.

1-(2-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン 100g

コーンスターチ 50g

ゼラチン 7.5g

アゼセル(Avicel)(微細結晶のセルロース) 25g

ステアリン酸マグネシウム 2.5g

1-(2-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリンとコーンスターチをゼラチンの水溶液で混合する.この混合物を乾燥し微粉末に粉砕する.アビセル、次いでステアリン酸マグネシウムを混合し顆粒化する.次いでこれを錠剤に打錠し、活性成分を各100ml含有する1000錠を得た.

参考例 38

参考例37において、1-(2-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリンの代りに1-(3-メルカブト-2-D-メチルブロバノイル)-L-ブロリン100gを用いて1-(3-メルカブト-2-D-メチルブロバノイル)-L-ブロリンを各100mgを含有する1000錠を製造した.

参考例 39

1-(2-メルカブトアセチル)-L-ブロリンを各200mg含有する1000錠を次の成分から製造する.

1-(2-メルカブトアセチル)-L-ブロリン 200g

ラクトース 100g

アビセル 150g

コーンスターチ 50g

ステアリン酸マグネシウム 5g

1-(2-メルカブトアセチル)-L-ブロリン、ラクトースおよびアビセルを混合し、次いでコーンスターチを混合する.乾燥混合物を打錠機で判錠し、活性成分を各200mgを含有する505mgの錠剤1000錠を得た.錠剤を色素として黄色#6含有するレーキを包含するメトセル(Methocel)E15(メチルセルロース)の溶液で錠剤を被覆して製剤した.

参考例 40

1-(2-メルカブトブロバンイル)-L-ブロリンを各250mg含有する2ビースの#1ゼラチルカブセルに次の成分の混合物が充填される.

1-(2-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン 250mg

ステアリン酸マグネシウム 7mg

USPラクトース 193mg

参考例 41

注射液を次のように製造した.

1-(2-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリン 500mg

メチルバラベン 5g

ブロバルバラベン 1g

塩化ナトリウム 25g

注射用水を加えて 5l

活性物質、保存剤および塩化ナトリウムを注射用水3lに溶解し、次いで容量を5lにする.この溶液を、滅菌〓過器で〓過し、あらかじめ滅菌したバイアル中に無菌的に充填し、次いであらかじめ滅菌したゴム栓で密閉する.各バイアルは、注射液のml当り活性成分100mlの濃度の溶液5mlを含有する。

参考例 42

1-(2-メルカブトブロバノイル)-L-ブロリンの代りに1、1'-〔ジチオビス(2-D-メチル-3-ブロバノイル)〕-ビス-L-ブロリン100gを用い参考例37と同様に処理して1、1'-〔ジチオビス(2-D-メチル-3-ブロバノイル)〕-ビス-L-ブロリンを各100mg含有する1000錠を製造した.

参考例37、39、40または41の活性成分の代りに前記各製造法の実施例で得られた生成物を活性成分としてそれぞれ同様に製剤を行なつた.

化合物目録

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特許公報

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