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東京地方裁判所 平成9年(ワ)2554号 判決 1999年1月19日

原告

芳川博

被告

池田喜春

主文

1  被告は、原告に対し、金六一〇万七五〇四円とこれに対する平成七年六月一六日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、これを五分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

4  この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

一  申立

1  原告(請求の趣旨)

(一)  被告は、原告に対し、金三〇〇〇万円とこれに対する平成七年六月一六日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決及び仮執行の宣言を求めた。

2  被告(請求の趣旨に対する答弁)

(一)  原告の請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求めた。

二  事案の概要

本件は、原告が、後記本件事故による損害賠償を被告(加害車両運転者)に訴求する事案である。なお、立証は、記録中の証拠関係目録記載のとおりであるからこれを引用する。

1  争いのない事実等

原告を被害者とする次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(本件事故の内容)

<1> 日時 平成七年六月一六日午後九時〇九分頃

<2> 場所 埼玉県新座市野火止八丁目一番六号先路上

<3> 加害車両 普通乗用自動車(練馬33ゆ八二二三)(被告運転)

<4> 事故態様 東和代(旧姓・芳川)が普通乗用自動車(練馬55な六〇二三。以下「芳川車両」という。)を運転してレストラン駐車場から前面道路に左折進入しようとしたときに、後方から直進してきた加害車両と衝突した。原告は、芳川車両に同乗していた(なお、本件事故態様の詳細については、当事者間に争いがある。)。

原告は、本件事故の治療として、平成七年六月一六日から平成八年六月二四日まで新座志木中央総合病院で診療を受け(入院期間二五九日、通院実日数二五日)、同日、症状固定した。原告の後遺障害については、自動車損害賠償責任保険上、後遺障害九級一〇号の認定がされている。

また、本件事故に係る既払金は、合計七九二万六六四七円である。

(当事者間に争いがない事実、証拠〔甲第二二号証、乙第一号証〕及び弁論の全趣旨によって認める。)

2  争点

(一)  原告の主張

本件事故は、芳川車両が前面道路に左折を完了した後に、制限速度を超過して進行してきた加害車両が、第一車線上の芳川車両に追突したものである。したがって、加害車両を運転していた被告は、民法七〇九条により本件事故による別紙記載のとおりの損害の内金三〇〇〇万円を賠償する責任がある。

(二)被告の主張

本件事故は、芳川車両が前面道路に進入する際、緩慢な加速により追越車線に至ったため、追越車線を進行中の加害車両と衝突したという経過で生じたものである。したがって、本件事故は、加害車両の進路妨害とさえ評価できるものであって、本件事故の責任の少なくとも八割は、原告側に帰せられるべきである。

また、原告には、頸椎後縦靭帯骨化症という素因があり、原告の症状のうち中心性脊髄損傷の発生拡大と後遺障害は、右素因に大きく寄与しているというべきであるから、右の寄与(少なくとも六割)を考慮するべきである。

三  当裁判所の判断

1  本件事故の経過について

証拠(甲第四号証ないし第九号証、乙第一〇号証、第四一号証の五ないし七、第四二号証〔一部〕、証人東和代の証言及び被告本人尋問の結果〔各一部〕)並びに弁論の全趣旨によると、(一) 本件事故は、被告主張どおりの経過で生じたこと、(二) 本件事故の現場は、交通頻繁な幹線道路である国道二五四号線上であり、夜間でも見通しがよかったこと、(三) 加害車両は、制限速度(五〇キロメートル毎時)を三、四十キロメートル毎時は超える速度で本件事故の現場に至ったこと、以上の事実を認めることができる。

もっとも、証人東和代及び原告本人は、(一)の認定事実と異なり、原告主張に沿う供述をし、甲第三〇号証(東作成の陳述書)にもこれと同様の記載がある。しかしながら、これらの供述ないし記載には裏付がないうえ、甲第四号証、第八、九号証にみられる東の捜査官への説明内容とも異なるのにこの点を説明できる合理的な事情が窺えないことに照らせば、これに信を措くことはできない。また、被告本人は、(三)の認定事実と異なる供述をし、乙第四二号証(被告作成の陳述書)にもこれと同様の記載があるが、これらの供述ないし記載を裏付ける資料がない本件においては、これを採用することができないことは明らかである。

以上の事実関係によると、本件事故は、被告の前方不注視ないし制限速度違反と被告主張の東の過失とに基づいて生じたいわば出合頭衝突ということができる。当裁判所は、加害車両運転者の被告には損害賠償責任があるが、以上の過失の内容と程度に照らし、その過失割合を原告側六対被告四と判断する。

2  素因減額について

ところで、被告は、原告の素因がその損害の発生拡大に大きく寄与していると主張するが、乙第四〇号証の一(佐藤雅史作成の意見書)によっても、その可能性ということ以上にこの点についての的確な心証を惹くということはできず、他にこの点を認めるに足りる資料はない。被告所論を採用することはできない。

3  損害額について

当裁判所は、本件事故による原告の損害が、別紙のとおり六一〇万七五〇四円であると判断するものであるが、その理由は、次のとおりである。

(一)  治療費(別紙<1>)

証拠(甲第二三号証の一ないし三一、乙第三九号証)及び弁論の全趣旨に照らし、前示症状固定日以前の冶療費について認める。なお、本件においては、症状固定後の冶療についてその相当性を認めるに足りる資料はない。

(二)  付添費(同<2>)、入院雑費(同<3>)及び通院交通費(同<4>)

入院雑費は、前示入院日数二五九日につき日額一三〇〇円の計算で認める(入院雑費に少なくとも日額一三〇〇円を要したことは、弁論の全趣旨によって認める。)。また、付添費(入院期間分日額六〇〇〇円・通院期間分日額三〇〇〇円)及び通院交通費(入院期間分の日額三六〇円、通院期間分の日額七二〇円)は、前示症状固定日までの入通院の付添実日数(九五日と二五日)について必要性を認め、別紙の限度で肯認することとする(右の点は、証拠〔甲第二四号証の一ないし一二、第二五号証、第二八号証〕及び弁論の全趣旨によって認める。)。

(三)  休業損害(同<5>)及び逸失利益(同<6>)

証拠(甲第一号証、第二六、二七号証)によれば、(1) 原告は、本件事故の前年分の収入が六三五万七二二九円であること、(2) 原告は、本件事故後前示症状固定日までの三七五日は稼働することができず、その間の収入を得ることができなかったこと、(3) 前示症状固定日における原告の年齢は、五五歳であること、以上の事実を認めることができ、原告は、本件事故に遭わなければ症状固定後少なくとも一二年間は稼働し得たものと推認することができる。

そこで、(1)の金額を基礎収入(年収)として、(2)の範囲内である原告主張の休業損害額を肯認するとともに、前示後遺障害の程度に照らし原告の労働能力喪失率を三五パーセントとし、その一二年分(年五分のライプニッツ係数八・八六三二)を本件事故による原告の逸失利益と認めることとする。

(四)  慰謝料(同<7>及び<8>)

本件事故による原告の入通院期間、後遺障害の程度を考慮して算定した。

(五)  過失相殺(同<10>)

1で説示したとおり、六割と判断する。

(六)  てん補(同<11>)

二1末尾のとおりである。

(七)  弁護士費用

原告が本件訴訟を原告代理人に委任したことは、記録上明らかであり、本件事案の内容・審理経過、認容額等の事情に照らし判断した。

四  結論

以上によれば、原告の本訴請求は六一〇万七五〇四円(別紙参照)とこれに対する平成七年六月一六日(本件事故の日)から支払ずみまで民法所定年五分の遅延損害金の支払を被告に求める限度で理由があるからこれを認容すべきであり、その余は失当として棄却を免れない。

よって、訴訟費用の負担について民事訴訟法六一条、六四条、仮執行の宣言について同法二五九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判官 園部秀穗)

(別紙)

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