東京地方裁判所 平成9年(ワ)27812号 判決
原告 日本クナイプ株式会社
右代表者代表取締役 三好啓介
右訴訟代理人弁護士 斎藤弘
被告 サンスター株式会社
右代表者代表取締役 金田博夫
右訴訟代理人弁護士 松本理
中山正隆
村田恭介
榊原美紀
主文
一 被告は、原告に対し、金二五七万八一七七円及びこれに対する平成九年一二月二一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを九分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
四 この判決は原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金二五〇〇万円及びこれに対する平成九年一二月二一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、健康食品の製造販売等を業とする会社であり、被告は、歯磨、医薬品、食品等の製造、加工、販売等を業とする会社である。
2 原告は、平成九年一月二〇日、被告との間で、被告が原告に対して健康食品のビタフルバーを継続的に供給販売する旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
(被告は右事実を自白したにもかかわらず、これを撤回し、請求原因に対する認否2のとおり主張するが、原告は右撤回に異議がある。)
3 ところが、本件契約に基づき被告が同月三一日から同年四月四日までに原告に供給した包装済みのビタフルバー(以下「本件商品」という。)には次の瑕疵があった。この瑕疵は、被告が商品包装トレーにボール紙を使用したために生じたものである。
(一) ビタフルバーの油脂が紙トレーに染み出し、売り物にできない。
(二) ビタフルバーが包装の箱の中でがたつき、割れている。
4 原告は、被告に対し、3の瑕疵のないビタフルバーを供給するよう要請したのに対して、被告は、同年一〇月一日、原告に対し、取引を停止する旨の通告をし、以後ビタフルバーの供給に応じない。
5 本件商品の成分の欠陥
(一) 被告は、本件契約において、原告に対し、ビタフルバーは被告の販売商品であるビュースリムビスケットと同じ成分とし、一個八〇グラムに含まれる蛋白質は一九・一二グラム(一〇〇グラム換算で二三・九グラム)とすることを約した。
(二) しかるに、被告が原告に納入した本件商品では、一個八〇グラムに含まれる蛋白質は一三・六八グラム(一〇〇グラム換算で一七・一グラム)しかなかった。
(三) ダイエット健康食品としての商品に含まれる蛋白質の量が右のように不足していることは、商品として重大な欠陥がある。
6 原告は、同年一二月一三日到達の書面により、被告に対し、4、5の債務不履行及び3の瑕疵の改善要請に対する被告の不誠実な態度を理由に本件契約を解除する旨の意思表示をすると共に、これによって原告の被った損害を右書面到達後七日以内に支払うよう催告した。
7 被告の債務不履行により被った損害
(一) ビタフルバー供給停止の影響
(1) 原告は、シェーキ、ビタフルバー、カットタブ、ファイバーの四点セットで構成するダイエット健康食品セットのドクタースリムを開発し、関連販売会社である株式会社セニエ(以下「セニエ」という。)の商品として販売することを企画した。
(2) 原告及びセニエは、ドクタースリムを販売するため、多大な宣伝費をかけ、パンフレット類その他を多数作成し、この種商品の需要が多い夏季に向け準備を整え販売を開始した。
(3) しかしながら、本件商品に前記の瑕疵があり、さらに本件契約が解除となってビタフルバーの供給が停止され、ドクタースリムの販売ができなくなったため、セニエと原告は損害を被った。
(二) セニエの被った損害
(1) 別紙損害内訳一覧表No.1ないしNo.7記載のとおりであるが、本件訴訟では、このうち次の損害合計二〇〇〇万円を請求する。
<1> 広告宣伝関係の損害 九二万一一六九円
<2> 一ウィークトライアル関係の損害 三一三万六六三三円
<3> 人件費の損害のうち、販売サポート分を除く九九一万九六八三円
<4> 値引等による損害 一三二万一二三五円
<5> 得べかりし利益の内金四七〇万一二八〇円
(2) 原告が右損害の賠償を請求する根拠
<1> ビタフルバーの供給停止により、原告がセニエにドクタースリムを卸売りすることができなくなったことから、原告とセニエは、ドクタースリムの供給契約を解除した。
<2> これによってセニエに生じた損害は、両者間の取引基本合意上、原告がセニエに対して賠償すべき責任があるため、原告は、平成九年一二月一〇日、セニエに対し、右損害を全額賠償することを約した(甲一一)。
したがって、原告は右損害相当額の損害を被った。
<3> 仮に、これが原告の損害といえなくても、セニエの(1) の損害は被告の不法行為によるものであり、原告は前記賠償の合意に基づき賠償者としてセニエに代位する。
(三) 原告の損害
別紙損害内訳一覧表No.8ないしNo.10記載のとおりであるが、本件訴訟では、このうち次の損害合計五〇〇万円を請求する。
(1) マニュアル、テキスト、箱代等の制作費損害 三九八万七六五二円
(2) デザイン関係費の損害 五一万六六〇〇円
(3) クレーム処理対応の誠意のなさによる慰謝料内金 四九万五七四八円
(四) 右のように損害が多額になったのは、<1>ビタフルバーがドクタースリムの一構成食品であったため、ビタフルバーの供給停止によって直ちにドクタースリムの発売停止となったこと、<2>ドクタースリムは原告らの大型新商品なので、発売に当たってその準備等に多額の支出をしたこと、<3>ドクタースリムは、原告らの主力商品であり、かつこの商品により販売ルートを変更したので、会社を挙げて宣伝営業活動をしたことによる。
そして、被告は本件契約締結に当たり、原告の担当者から<1>ないし<3>を聞かされて十分知っていたから、原告の損害は通常損害に当たらず、仮に特別損害であるとしても、被告はこれを予見し又は予見できた。
8 よって、原告は、被告に対し、債務不履行による損害賠償内金(ただし、7(二)<3>については不法行為による損害賠償者の代位)として7(二)、(三)の合計二五〇〇万円及びこれに対する請求による期限の日の翌日である平成九年一二月二一日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実中、被告が原告とビタフルバーの販売契約を締結したことは認めるが、契約の性質及び契約締結時期は否認する。右契約は継続的供給契約ではなく単発の契約であり、契約締結の日は平成八年一〇月一六日である。
(被告は、答弁書で右事実を自白したが、後に右のとおりこれを撤回した。)
3 同3の事実中、(一)は不知。その余は否認する。
4 同4の事実中、原告が被告に対してビタフルバーを供給するよう要請したのに対して、被告がこれに応じないことは認めるが、その余の事実は否認する。被告は、既に終了している取引を再開する意思がないことを告知したにすぎない。
5 同5の事実は否認する。
原、被告間では、本件商品をビュースリムビスケットと同じ処方によることとし、そこで用いられた成分表示を使用することに合意した。
しかしながら、成分表示に示された蛋白質のグラム数と実際に含まれているそれとの間には、プラスマイナス二〇パーセント程度の幅があることは栄養改善法が認めるところであり、特定のビスケットを実際に測定した場合、その測定値が成分表示の欄に示された蛋白質のグラム数を下回ることは当然あり得る現象である。甲五の測定結果は認めざるを得ないが、全てのビスケットの蛋白質の量が表示された蛋白質のグラム数を下回るものではなく、本件商品に重大な瑕疵があるとはいえない。
また、被告は、原告の本件商品の改善要請に対して、誠実に対応していた。
6 同6の事実は認める。
7 同7(一)ないし(三)の事実は不知。同7(四)は争う。
(一) 原告は、ビタフルバーを四点セットのドクタースリムとしてのみでなく、単品や二点セットの一ウィークトライアルとしても販売していたから、その供給停止によってその数に対応するドクタースリムの販売中止による損害をもたらしたわけではない。
(二) セニエの損害について
(1) 広告宣伝関係の損害について
<1> 原告は、現在もビタフルバーの販売を継続しているから、原告主張の支出が無駄になったとはいえない。
<2> 原告主張の雑誌(平成九年五月号JJ)が現実に発行された以上、これによる広告宣伝の効果は生じている。
(2) 一ウィークトライアル関係の損害について
<1> 原告は、現在もビタフルバーの販売を継続しているから、原告主張の支出が無駄になったとはいえない。
<2> 一ウィークトライアルの本体はシェーキであって、ビタフルバーは、「おまけ」にすぎないから、その供給がないからといって一ウィークトライアル関係の支出がすべて無駄になるようなことはありえない。
(3) 人件費の損害(販売サポート分を除く)について
<1> 原告は、現在もビタフルバーの販売を継続しているから、原告主張の支出が無駄になったとはいえない。
<2> 被告が原告に納入した本件商品は八割が販売済みであったので、営業活動は所期の効果を挙げたというべきであり、人件費が無駄になったとはいえない。
<3> 原告は、ドクタースリム以外の商品も扱っていたから、特定の営業社員五名分の七か月分の給与の七割が損害になることはありえない。
(4) 値引等による損害について
原告の主張する値引による損害は、総じて需要期である夏場を過ぎた年後半以降のものであり、中には賞味期限である平成一〇年三月経過日直前のものも含まれている。このように、時期を経過して売れ残った商品なら、卸し先としては値引して当然であって、右値引は本件商品の瑕疵とは関係がない。
(5) 得べかりし利益について
<1> 原告は、現在もビタフルバーの販売を継続しているから、得べかりし利益の喪失はない。
<2> 被告のビタフルバー生産能力は、一か月当たり一〇〇〇個が限度で、通常は七〇〇個程度であるところ、甲七三ないし七五はこれをはるかに超える数量の販売計画を前提にするもので、現実性がない。平成八年一〇月一六日の注文だけで、その後追加注文がなかった原告の注文状況からみても、右計画はなかったと考えられる。
甲七四、七五の発行先の会社の販売実績からも原告の主張は信用できない。
(三) 原告の損害について
(1) マニュアル、テキスト、箱代等の制作費損害・デザイン関係費の損害について
原告は、現在もビタフルバーの販売を継続しているから、原告主張の各支出が無駄になったとはいえない。
(2) 慰謝料について
原告は法人であるから、精神的苦痛を被ることはあり得ず、請求原因7(三)(3) の損害は生じない。
三 抗弁
1 原告は、平成九年八月二九日、被告に対し、本件契約の解除を申し出、被告がこれに応じたことにより、本件契約は合意解除された。
2 右合意解除に至ったことは、その前後の経緯から明らかである。
(一) 被告は、プラスチックトレーでは規定のビスケット枚数(一四枚)が入らない等の理由から、原告と合意の上で、平成九年三月以降に納入した本件商品に紙トレーを使用したところ、同年七月三一日、原告から、油脂染み出しの報告があり、予想したよりも多めの油脂染みがみられた。
(二) そこで、被告は、同年八月八日、原告に対し、改善策を申し入れたのに対して、同月二七日、セニエの相談役が被告を訪れ、改善案の受け入れを拒否し、損害賠償を求めた。
(三) 原告代表者は、同月二九日、被告担当者に対し、取引を中止する旨告げた。
(四) 被告は、やむを得ず右取引中止を受け入れ、同年九月一八日、六八九個の本件商品の返品を受け、同月三〇日、代金一六二万七七六二円を返金して解除後の清算手続をした。
(五) 原告は、同月二四日、被告に対し、突如取引再開を申し出、再度商品を供給するよう要請を行い、応じられないなら損害を支払うよう申し入れてきたが、被告は、請求原因に対する認否4のとおり、同年一〇月一日、原告に対し、取引を再開する意思がないことを告知した。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1の事実は否認する。
仮に、本件契約を合意で解除したとしても、原告は、被告に対して本件請求に係る損害賠償債務を免除していない。
2 同2(一)の事実は認める。
同2(二)の事実中、被告が平成九年八月八日原告に対し改善策を申し入れたことは認めるが、その余は否認する。
同2(三)の事実は否認する。原告代表者は、被告の対応には誠意が認められず、そのようなことでは取引を中止せざるを得なくなるとは言ったが、これは早急に誠意ある対応を促すための発言で、契約を解除する意思で発したものではない。その場にいた被告の担当者もその趣旨は明らかであった。
同2(四)の事実中、被告がその主張のとおり返品を受け、返金したことは認めるが、これは当初からの被告の申し入れに応じたまでであり、契約の清算の趣旨ではない。同2(四)の事実中、その余は否認する。
同2(五)の事実は否認する。原告は、被告の改善策を待ったが、被告から何の連絡もないため、本件商品の供給を要請したのである。
第三証拠関係
証拠関係は本件記録中の証拠目録記載のとおりである。
理由
一 契約の締結から解除まで
1 請求原因1の事実は当事者間に争いがない。
2 1の事実に、証拠(甲一ないし四、六、一〇の1ないし3、一二ないし二一、二二の1、2、二三ないし三五、七七、八〇ないし八二、八四、乙一、二の1、2、三、四の1、2、七、九、一〇、一五ないし一九、二一の1、2、二九の1、2、三〇、証人楠恵、同堀内義文、同山中政治)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
(一) 契約締結に至る経緯等
(1) 原告代表者は、昭和四九年一〇月、健康食品の製造販売を業とする会社として原告を設立した。その後、昭和六一年九月、原告代表者は、化粧品会社としてセニエ(当時の商号はセニエコスメッティックス。平成四年四月一日現商号に変更。)を設立したが、セニエは、業績不振のため化粧品から撤退し、原告同様に健康食品を扱うようになった。そして、税務署の指摘もあって、両者の区別を明確にするため、健康食品の生産を原告が、販売をセニエが担当するようになった。
(2) 健康食品の販売経路には、卸会社を通して薬局で販売する薬局ルートとエステティック業者や通信販売会社に直接販売する直販ルートとがあり、原告・セニエの商品の売上は薬局ルートへが八割を占めていたが、大手企業の参入により競争が激化したため、直販ルートへの方向転換を迫られた。
そこで、原告とセニエは、平成八年春ころから、ダイエット健康食品のドクタースリムシリーズを開発し、直販ルートを開拓してこれを主力商品として販売することを企画した。
(3) ドクタースリムは、シェーキ、ビスケット、カットタブ、ファイバーの四点セットで構成するものとして企画された。
原告は、右セットに市販のビスケットを使用することを予定し、当時市販されていた各社の製品を取り寄せて吟味した結果、味、食感から被告がビュースリムビスケットの商品名で発売していたビスケットが最適と判断した。
(4) そこで、原告は、同年六月ころ、被告に対してビュースリムビスケットをOEM供給するよう申し入れ、交渉の結果、被告はこれを承諾した。当初、納期は四五日との話であった。
(5) 被告が販売していたビュースリムビスケットは、製品一個につき八枚(合計八〇グラム)をプラスチック製のトレーに入れてこれを包装したものであった。これを前提に、原、被告間の取引では、製品の化粧箱は原告がデザインを支給し、被告が箱の印刷から箱詰め作業までを行うことで合意した。
(6) 同年九月一一日、被告は、原告に見積書を発行した。これによれば、納期はデザイン受領後六〇日、ロット数量は二二五〇個とされており、原告は、右見積書に基づき、被告に対し、ビュースリムビスケットを注文した。
(7) 同年一一月一五日、原告は、製品の化粧箱のデザインを完成し、その版及び版下を被告に送付し、被告は同月二〇日これを受領した。
なお、被告は、同年一〇月三一日付けの社内文書で、平成九年五月以降の生産品については、原告に納入するビュースリムビスケットの賞味期限を一年以上にするよう改善を図る旨の連絡をしている。
(8) 同月二一日、被告は原告に対し右デザインにつき表示の変更及び訂正を申し入れ、併せて、製造ラインが混雑しているため、納品が三か月先でも厳しい旨連絡した。これに対して、原告は、分納でもよいから早期に納品するよう依頼した。
なお、原告は、同年一二月一〇日、被告からOEM供給を受けるビスケットを「ビタフルバー」として商標登録を出願した。
(9) その後、被告側で製造工場に変更があったこと等に伴い、ビタフルバーは、ビュースリムビスケットとは違う形になり、かつ一トレー一四枚入り八〇グラムで包装されることになった。
(10) 平成九年一月一七日、被告は、原告側に、ビタフルバーを継続的にOEM供給することを前提とする取引基本契約書案を提示した。原告は、その内容に異論はなかったが、その供給先がセニエとされていたため、これを原告に改めるよう依頼して、右契約書案を被告に返送した。
(11) 被告は、原告に対し、同月三一日から同年二月二七日まで五回に分けてプラスティックトレー入りビタフルバー合計二一七ケース(一三〇二個)を納品した。
(二) ビタフルバーの生産、納入とドクタースリムの販売
(1) 原告は、同年二月三日以降、被告から納品されたビタフルバーを組合せに使用してドクタースリムを製造し始めた。
(2) 同年三月二六日、被告から原告に対して製造過程でビスケットの形が少しでも長目に仕上がるとプラスチックトレーに収まらないので、トレーの材質を紙に変更させてほしい旨の申し入れをした。この時点で、被告はすでに紙トレーでの製造を進行していたため、原告は仕方なくこれを承諾した。その際、原告は、被告に対し、トレーに油脂の染み出しがないように念を押した。
(3) 被告は、原告に対し、同月二六日紙トレー入りのビタフルバー二〇六ケース、同年四月四日同一三五ケースを納品した。
(一)(11)と合わせて、被告が原告に納品したビタフルバーは、合計三三六六個である。
(4) 原告は、同年春先から、チラシを配布したり、女性週刊誌等に広告を掲載するなどして、ドクタースリムの宣伝活動を行った。
そのころから、原告は、ドクタースリム一か月分セットと二週間セットを売り出した。なお、右各セットの販売促進の足掛かりとして、同年七月ころからは、一ウィークトライアルの販売も始めた。
(5) 同年五月二八日付けのファクシミリで、原告は、被告に対し、顧客からビタフルバーが商品によって焼き具合が異なる等の指摘を受けたとして、「次回(いつになるか、まだわかりませんが・・・)から御留意いただきたく、お願い申し上げます。」との申し入れをした。
(6) (二)(3) のとおり被告から納入されたビタフルバーで、同年七月三一日までに売れたのは半分から三分の二程度であり、売れ行きは芳しくなかった。
(三) クレームの発生とその処理交渉
(1) 同年七月三一日、原告の営業担当者から、取引先で試食をしようとしたビタフルバーの紙トレーに油脂の染み出しが目立ったとの報告があり、原告の社内で残っていた製品を改めたところ同様の状態であった。そこで、原告は、紙トレーの油脂の染みの部分のコピーを添付して、ファクシミリで被告にその旨を連絡し、改善を要請した。
(2) 同年八月四日、被告の担当者山中が原告を訪れて製品の現物を持ち帰った。そして、山中は、同月八日、原告(書面上の宛先はセニエ)に対し、次の提案をした(甲二)。
(納品済みの製品について)
<1> 在庫全品を引き取る。
<2> クレーム現品の品質を確認する。
<3> 品質に問題がなければ、化粧箱にデメリット表示をする。
<4> 品質保証が困難なので、リパックは行わない。
(今後製造する製品について)
<5> 油脂対策トレーをPB貼り紙トレーとプラスティックトレーのいずれにするかの検討に入る。
<6> トレーの仕様は、内容物の安定性及び油脂の染み出し具合を確認のうえで決定する。生産開始までPB貼り紙トレーで三か月、プラスティックトレーで四か月かかる。
(3) 同月一一日、原告は、被告に対し、(二)の提案に対して次の旨を回答した。
<1> 返品については、当面出荷必要分を残して可能である。
<2> トレーは紙トレーからプラスティックトレーに変更してほしい。
<3> 生産開始まで四か月というのは長すぎるので、了解できない。
<4> 新しくトレーを作り直すのでなく、当初使用していたトレーに戻してほしい。
(4) その後、原告は山中に現存製品を開封してプラスティックトレーにリパツクすることを打診したが、被告は衛生上の理由でこれを拒んだ。
その上で、被告は、右回答に対して、同月一八日、原告から返送した製品の検査の結果、品質に問題がなかったとした上で、再度(2) と同様の提案をした。
(5) 原告は、被告側との交渉に進展がみられないため、堀内を差し向けて被告側責任者と直接交渉することを決意し、同月二七日、堀内は被告の東京支店に赴き、早急に改善策をとるよう要請した。
(6) 同月二九日、被告の佐藤部長が山中と共に原告を訪れ、原告代表者と面談した。しかしながら、佐藤は弁解に終始したため、原告代表者が立腹して退席し、話し合いにならなかった。
(7) 原告は、同年九月一八日、被告の求めに応じて在庫の本件商品六八九個を返品した。
(8) 同月二四日、原告は、被告に対し、次の提案をして商品の供給を要請した。
<1> トレーを油の染み出しや割れないものにする。
<2> 製品の単価を下げる。
<3> 納期を注文後一か月程度とする。
(9) 被告は、同月三〇日、原告に対し、(7) で返品を受けた商品の代金一六二万七七六二円を返還した。
(10) 同年一〇月一日、被告の佐藤部長は、原告を訪れ、原告とは以後ビタフルバーの取引を行わないことを通告した。
さらに、被告は、同月七日、代理人名で、原告(書面上の宛先はセニエ)に対し、(8) の供給要請に対する同趣旨の回答書を送付した。
(四) ビタフルバーの供給停止とその後の経緯
(1) 原告は、被告とのビタフルバー供給交渉が決裂したため、同年一〇月上旬、暫定的な代替品(高タンパククッキー)の購入を手配すると共に、ビタフルバーに代わるビスケット(新ビタフルバー)の試作を他のメーカーに依頼した。
暫定品については、取引先に案内文を送付したり口頭でクッキーが暫定品であることを説明した。顧客向けにも案内文を作成し、製品に添付した。
(2) 同年一二月一〇日、原告は、セニエとの間で、ビタフルバーの供給停止によりドクタースリムが納入できなくなったためセニエが被った損害を原告が全額賠償することを約した。
(3) 同年一二月一三日、原告は、被告に対して、解約の不当破棄とビタフルバーの成分不足を理由に本件契約を解除する旨の意思表示をすると共に、これによって原告が被った損害を七日以内に賠償するよう請求した。
(4) 原告は、新ビタフルバーの開発について、メーカーとの間で、形や味、栄養成分の協議を重ね、これに伴って、化粧箱のサイズや表示内容も打ち合わせた。
その結果、平成一〇年三月一六日ころ、新ビタフルバーの出荷が可能になったため、原告からセニエに対する新ビタフルバーの供給が開始され、セニエは、商品名を「ビタフルバー」にしたままの新ビタフルバーを組み合わせたドクタースリムの販売を開始した。
3 契約の性質
前示認定のとおり、ビタフルバーは原告が継続的に販売を予定していたドクタースリムを構成する製品であり、被告もこれを認識していたこと、化粧箱も被告から原告に対して継続的な供給がされることを前提として考案されていること、被告自身原告側に対して継続的供給契約を内容とする契約書案を提示していること、原告から追加注文なしに、被告は当初の注文数量よりも五割程度多い商品を納入し、原告はこれを受領していること、クレーム発生後の交渉でも爾後製造する製品についてのトレー改善が検討課題とされていたこと等を総合考慮すると、2(一)(6) の注文によるビタフルバーの売買は一回限りの単発的な契約とみるべきではなく、原、被告間には、遅くとも2(一)(10)のころには、原告の注文があったとき被告はその生産能力に応じてこれを供給販売する義務を負う継続的供給契約が成立し、2(一)(6) の注文に基づき2(一)(11)のとおり被告が納入した製品は、右契約に基づく供給の一部とする合意があったと認めるのが相当である(被告が右契約書案の相手方の記載を訂正して原告に交付しなかった事情はつまびらかでないが、この事実から直ちに右認定が妨げられるとはいえない。)。
してみれば、請求原因2の事実についての被告の自白に錯誤があるとは認められないから、その撤回は許されず、右事実は当事者間に争いがないというべきである。
4 本件商品の瑕疵
前示2(三)(1) ないし(10)の事実に、証拠(甲四、乙一七、証人楠恵、同山中政治)を総合すると、請求原因3の事実が認められる。
5 供給停止
前示(三)(8) 及び(10)の事実に弁論の全趣旨を総合すると、請求原因4の事実が認められる。
6 請求原因6の事実は当事者間に争いがない。
なお、証拠(甲五、九の1、2、乙六、証人山中政治)によると、請求原因5(一)、(二)の事実が認められるけれども(乙五、一四の1ないし3は、右認定を覆すに足りない。)、原告主張の商品成分が改善不能と認めるに足りる証拠はなく、原告が被告に対して同5(一)の約定どおりの商品を納入するよう催告した事実はなんら主張立証がないから、本件契約の解除理由のうち、本件商品の成分の欠陥を理由とする部分は、採用できない。
7 抗弁の当否
(一) 事実関係について
(1) 平成九年八月二七日、堀内が本件商品の紙トレーの油脂染み出しを巡る改善交渉のため被告東京支社を訪れたが、これが右改善交渉の促進のためであったことは前示のとおりである。
(2) 同月二九日、被告の佐藤部長が山中と共に契約に訪れ、原告代表者と面談したが、原告代表者が立腹したため、話し合いにならなかったことは前示のとおりであり、証拠(乙一九及び証人山中政治)からは、その際原告代表者が佐藤らに対して被告との取引をやめる旨口走ったことが窺われないではない。
しかしながら、証拠(甲八一、八二、証人堀内義文)によれば、原告代表者の右言辞は、それまでの改善交渉につき消極的であった被告の姿勢について弁解に終始する佐藤の態度に業を煮やしてその場限りの感情的な発言であって、佐藤らもそのようなものであることを十分認識しえる状況下でのことであることが認められるから、右発言によって原告が被告に対して本件契約の解除を申し入れたと認めることはできない。乙一九及び証人山中政治には、佐藤が新たにプラスティックトレーに現行の商品を入れて納品するという改善案を持参したが、原告代表者は聞く耳を持たず、被告との取引を中止することを通告した旨の部分があるけれども、前掲証拠及び乙一七から窺われる被告社内における原告からのクレームの対応状況の記載に照らして採用できない。
(3) 同年九月一八日、原告が被告に対して在庫の本件商品六八九個を返品し、被告は原告に対してその代金一六二万七七六二円を返還したことは前示のとおりであるが、前示認定したその前後の経緯に証拠(甲八二)を総合すると、右返品は被告が原告に求め、原告がこれに応じたにすぎないものであり、原告としては瑕疵ある本件商品を一旦被告に返品して原状に戻す趣旨に止まり、被告との本件契約を解消するまでの意思はなかったことが認められる。
(二) 右の事実に徴すれば、(一)(2) の原告代表者の発言や本件商品の返品とその代金の返還から直ちに、抗弁1の事実を認めることはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はないから、抗弁2のその余の点につき判断するまでもなく、合意解除の抗弁は採用できない。
8 以上によれば、原、被告間の契約は、被告の商品供給義務違反の債務不履行により解除されたものというべきであるから、被告は、これによって原告が被った損害を賠償すべき責任がある。
二 原告の損害について
1 前示一2(一)(1) ないし(3) 、(二)(1) 、(3) 、(4) 、(四)(1) 、(2) 、(4) の事実に弁論の全趣旨を総合すると、請求原因7(一)(1) ないし(3) の事実が認められる。
2 セニエ関係
(一) 前示認定の事実に、証拠(甲二三ないし二七、六五の1、2、七六、証人楠恵、同山中義文)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
(1) 原告が被告から納入された本件商品は三三六六個(一個にビタフルバー一四枚が入っている。)であり、原告は平成九年四月以降これを構成品の一部とするドクタースリムのセットを販売したものであるところ、原告が同年九月被告に返品した本件商品の数量は六八九個であるから、右約五か月間の販売数量は二六七七個である。
(2) ドクタースリムのセットに組み入れるビタフルバーは、一か月セットで一六個、二週間セットで八個、一ウィークトライアルで二個である(ただし、一ウィークトライアルではビタフルバーは試供品とされている。)。
(3) ドクタースリムのセット小売価格は、一か月セットが四万三八〇〇円(ほかに、構成品をカットタブの代わりにカットプラスにしたロイヤルセット五万三八〇〇円がある。)、二週間セットが二万三八〇〇円、一ウィークトライアルが六五〇〇円であり、原告からの卸売りの掛け率は三割を下らず、原告の粗利益率はその三割を下らない。
(4) セニエは、本件商品に前記瑕疵があり、被告のビタフルバー供給停止により瑕疵のないビタフルバーと差し替えることも不可能であったため、株式会社おのに売り渡したドクタースリムロイヤル一か月セット五三三セットにつき合計一二二万三三一〇円、株式会社ソービに売り渡したドクタースリム一か月セット二七セット及び二週間セット二〇セットにつき合計九万〇一二五円、株式会社おのに売り渡したビタフルバー三セットにつき合計七八〇〇円の追加値引をした。
(二) 得べかりし利益
(1) 前記五か月間のドクタースリムの各セットの販売実績はつまびらかでないが、(1) のビタフルバーの販売数量が一か月セットに組み込まれたものとすると、一六七セット分であり、その粗利益は合計で六五万八三一四円、一か月当たりで一三万一六六二円となり、二週間セットに組み込まれたものとすると、三三四セット分であり、その粗利益は合計で七一万五四二八円、一か月当たりで一四万三〇八五円となる(一ウィークトライアルはビタフルバーの供給停止までに販売した期間が短く、販売状況は不明なので、逸失利益算定の基礎とするのは相当でない。)。これを平均すると、一か月当たりの粗利益は一四万五六〇六円となる。
他方、証拠(甲三八、七七、七九、八〇、証人楠恵)に弁論の全趣旨を総合すれば、ドクタースリムのようなダイエット食品は季節によって売上が変動し、夏季に比して秋・冬季は売れ行きが鈍ること、ビタフルバーも秋・冬季はそれ以前のような数量の販売は見込めなかったこと、しかしながら、消費者の生活習慣やダイエットに関する意識の変化などにより、消費の落ち込みは少なくなってきていることが認められ、原告は、ビタフルバーの供給停止後も、暫定品のクッキーで代替させた販売を試みていたことは、前示一2(四)(1) のとおりである。
以上を総合考慮すると、被告からビタフルバーの供給を停止された平成九年一〇月から新ビタフルバーを組み合わせてドクタースリムの販売を再開した平成一〇年三月までの六か月間にビタフルバーの供給停止がなければセニエが得べかりし利益は、前示粗利益平均月額の六か月分八七万三六三六円の五割である四三万六八一八円と認めるのが相当である。
(2) 原告は、セニエはドクタースリムの販売先である株式会社おのから五〇〇〇セット、株式会社ゲオールと株式会社セルムスから各三〇〇〇セットの注文が得られるはずであり、被告のビタフルバー供給停止がなければ右取引による利益を得ることができた旨主張する。
しかしながら、原告による注文状況、被告の生産能力、右三社の販売実績に、原告自身供給停止までに実際に右注文に見合うビタフルバーの製造発注をしていないことを併せ考慮すると、右注文見込みは裏付けのあるものとは認め難いから、甲七三ないし七五の記載及び証人山中義文の同趣旨の供述はにわかに採用できず、他に右事実を認めるに足りる証拠はないから、右主張は採用できない。
(三) 値引による損害
前示(一)(4) の事実によれば、セニエは追加値引額合計一三二万一二三五円の損害を被ったものと認められる(これらの値引が賞味期限の切迫や期限の経過によることを具体的に窺わせる証拠はない。)。
(四) その余の損害の主張について
(1) 原告は、被告のビタフルバー供給停止により、ドクタースリムや一ウィークトライアルの広告宣伝に支出した費用及びドクタースリムの販売活動に従事した社員の人件費(販売サポート分を除く。)を損害として主張する。
(2) しかしながら、広告宣伝経費については、ビタフルバーが前示(一)(1) のとおり返品されたもの以外はドクタースリムの一部として組み合わせるなどして販売されており、セニエはこれによる販売収入を得たものであるところ、右経費は右収入を得るための経費ともなっていること、販売収入中の粗利益の中に含まれるものであって、前示(二)で算定した得べかりし粗利益によって評価し尽くされる性質のものであること、さらに、原告は新ビタフルバーを組み合わせてドクタースリムの販売を再開しているところ、右経費の効果はこれらにも及ぶようなものであって、ビタフルバーの供給停止によって直ちにその効果を失う者とは認め難いことに徴すると、(二)の他に広告宣伝経費を損害として請求することはできないというべきである。
(3) また、人件費については、セニエはドクタースリムの販売のみの営業活動をしている会社ではなく、従業員がその他の営業にも従事していたことが窺われること、ビタフルバーについても前示(一)(1) のとおり返品されたもの以外はドクタースリムの一部として組み合わせるなどして販売されており、セニエはこれによる販売収入を得たものであるところ、人件費は右収入を得るための経費ともなっていること、そもそも、これらの人件費も販売収入中の粗利益の中に含まれるのであって、前示(二)で算定した得べかりし粗利益によって評価し尽くされる性質のものであることに徴すると、(二)の他に人件費を損害として請求することはできないというべきである。
(4) 仮に、原告がドクタースリムの販売のためにその主張のような多額の経費を投入したとしても、実際の売れ行きが前示(一)(1) 、一2(二)(6) のとおりであった以上、ビタフルバーの供給停止によってセニエの被った損害は(二)(1) 及び(三)の限度に止まるとみるほかはない。
(五) 原告が請求できる根拠
証拠(甲一一、七七、七八)によれば、ビタフルバーの供給停止により、原告がセニエにドクタースリムを卸売りすることができなくなったことから、原告とセニエは、ドクタースリムの供給契約を解除したこと、これによってセニエに生じた損害は、両者間の取引基本合意上、原告がセニエに対して賠償すべき責任があるため、原告は、平成九年一二月一〇日、セニエに対し、右損害を全額賠償することを約した、同月一八日同趣旨の契約一部変更合意をしていることが認められる。
右事実によれば、原告はセニエに(二)及び(三)の損害の賠償義務を負うことにより、右損害相当額の損害を被ったというべきである。
3 原告関係
(一) 証拠(甲三六、三九の1ないし3、四〇ないし四三の各1、2、四四の1ないし3、45ないし五〇の各1、2、五一の1ないし3、五二、五三、五四ないし五六の各1、2、五七の1ないし3、五八の1ないし4、五九、六〇の1ないし13、七六、七七、乙二三、二四、二五の1、2、二六、証人楠恵、同山中義文)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告は、被告から供給を受けるビタフルバーを構成の一部としてドクタースリムを販売することを前提に、次の支出をした。
<1> ドクタースリム製品マニュアルの制作料 合計三三万円
平成八年一一月一日から同年一二月三〇日までの請求に基づき、奥山透に支払
<2> ドクタースリムテキスト・ホームノート・カロリー表・挨拶状等印刷代(各三〇〇〇部) 合計二三六万九〇〇〇円(消費税込み)
平成九年一月二〇日の請求に基づき、株式会社テンプリントに支払
<3> ビタフルバー入りシール・ドクタースリムホームノート・ドクタースリムチラシ等印刷代(三〇〇〇部ないし五〇〇〇部) 合計一〇九万二七二二円(消費税込み)
平成九年六月二〇日から同年八月二〇日までの請求に基づき、株式会社テンプリントに支払
<4> ドクタースリム(一ウィークトライアル)説明書制作、デザイン、イラスト、写植、版下等代金 合計二二万〇五〇〇円(消費税込み)
平成九年六月一九日の請求に基づき、有限会社金田一デザイン室に支払
<5> ドクタースリムビタフルバー箱の版下、版代 一二万一五四〇円(消費税込み)
平成八年一一月二〇日の請求に基づき、株式会社ピスコに支払
<6> ドクタースリムカットタブ表裏ラベル・計量シール・ファイバー箱・シェーキ箱(仕切付き)・バーコードシール各印刷代 合計一一〇万八八三六円(消費税込み)
平成九年一月二〇日の請求に基づき、株式会社ピスコに支払
<7> ドクタースリム外箱印刷代 合計六二万五六二〇円(消費税込み)
次のとおり、株式会社ピスコに支払
ア 平成九年一月二〇日請求分(同年九月二四日納品) 二週間セット・一か月セット各五〇〇個
イ 同年五月二〇日請求分(同年九月二四日納品) 二週間セット・一か月セット各五〇〇個
ウ 同年一〇月二〇日請求分(同年九月二四日納品) 一か月セット五〇〇個
<8> ドクタースリムシェーキボトル用表裏ラベル・箱印刷代 合計二四万九五八五円(消費税込み)
平成九年五月二〇日の請求に基づき、株式会社ピスコに支払
<9> ドクタースリムシンプルセット(概ね二週間セットと同内容)往復はがき・ドクタースリム共通ラベル各印刷代、シンプルセット製版代 合計二四万九五八五円(消費税込み)
平成九年七月二〇日及び同年九月二〇日の請求に基づき、株式会社ピスコに支払
<10> ドクタースリムファイバー裏シール印刷代 四万二七三五円(消費税込み)
平成九年一〇月二〇日の請求に基づき、株式会社ピスコに支払
(2) 原告がドクタースリムの販売にあたって、供給停止された被告のビタフルバーに代えて新ビタフルバーを組み合わせることを余儀なくされたことは前示のとおりであるところ、ビタフルバーの化粧箱については、商品のサイズが変わるため、被告から返却された版は一部しか使用できず、新しく抜き型を作成する必要があった。
ドクタースリム用のテキストの内容変更作業も必要になった。
(3) そこで、原告は、ビタフルバー用の化粧箱等につき、一部は廃棄したが、一部は記載内容を訂正、一部は変更箇所にシールを貼付するなどして再利用を計った。
これを(1) の各支出についてみると次のとおりである。
<1> (一)(1) <1>、<2>の支出について
右のうち、ドクタースリムのテキストについては、ビタフルバーを新ビタフルバーに切り替えたことにより、ビタフルバーに関する箇所を全面的に改訂する必要が生じ、改訂したものを印刷し直した。
他方、ホームノート、カロリー表、挨拶状等それ以外のものは、ビタフルバーに関する記述があるけれども、新ビタフルバーに切替えたことにより右記述の改訂が必要になったことも、実際に改訂したことも認めるに足りる証拠はない。
<2> (一)(1) <3>、<4>、<9>の支出について
これらの印刷物等中、ドクタースリムシリーズアイテム紹介のチラシ(五〇〇〇部印刷)については、ビタフルバーの内容量に関する記載部分にシールを貼って訂正した。右シール貼付の費用は一枚一〇円である。
それ以外のものは、ビタフルバーに関する記述を含むけれども、新ビタフルバーに切替えたことにより右記述の改訂が必要になったことも、実際に改訂したことも認めるに足りる証拠はない。
<3> (一)(1) <5>の支出について
新ビタフルバーはビタフルバーとサイズが異なり、従来の化粧箱は使用できず、新たにその化粧箱を作り直す必要が生じた。
<4> (一)(1) <6>、<8>、<10>の支出について
これらの印刷物等は、専らビタフルバー以外の商品に関するもので、ビタフルバーを新ビタフルバーに切り替えたことにより右記述の改訂が必要になったことも、実際に改訂したことも認めるに足りる証拠はない。
<5> (一)(1) <7>の支出について
これらは、ドクタースリムセットの外箱の印刷費用であるところ、新ビタフルバーがビタフルバーとサイズが異なり、その化粧箱は作り直す必要が生じたことは前示のとおりであるが、そのために右外箱も作り替えることが必要になったことも、実際に作り直したことも認めるに足りる証拠はない。
(二) 損害の算定
(1) (一)(3) によれば、(一)(1) <1>ないし<10>の支出中、ビタフルバーの供給停止によって当該支出が無駄になり、原告に損害が生じたのは、(一)(1) <1>、<2>の支出のうちドクタースリムのテキスト関係のもの、(一)(1) <3>中ドクタースリムチラシに関する支出及び(一)(1) <5>の支出に限られると認められる。
(2) そして、(1) の各支出の性質・内容・金額、これに占める要改訂部分の割合、供給停止までのドクタースリムの販売状況を総合考慮すると、原告に生じた損害は、(一)(1) <1>の支出の半額の一割相当額の一万六五〇〇円、(一)(1) <2>の支出の半額の六割相当額の七一万〇七〇〇円及び(1) (一)<5>の支出の六割の七万二九二四円との、(一)(1) <3>中ドクタースリムチラシのビタフルバーの内容量を訂正シール貼付により訂正するに要した費用として相当額と認める二万円の合計八二万〇一二四円と認めるのが相当である((一)(1) <1>ないし<3>については、改訂に要した実費が明らかでないので、右のとおり損害を評価する。)。
(三) 原告は、右(二)のほかに、ドクタースリムのため支出したパッケージデザイン料の二割五分相当額を損害として請求するけれども、原告がドクタースリムの販売を再開し、これを継続していることは前示のとおりであって、被告のビタフルバー供給停止により右デザインがその効用を喪失したと認めるに足りる証拠はないから、右請求は失当というべきである。
(四) 慰謝料請求について
原告は、以上のほかに、クレーム処理対応の誠意のなさによる慰謝料を請求するところ、たしかに被告のクレーム処理の対応には誠実さに欠けるところがみられるけれども、会社間の商取引をめぐる債務不履行については、特段の事情がない限り経済的損害の賠償によって損害が回復されるものと解すべきところ、右の点のみでは未だ特段の事情があるとはいえず、他に特段の事情を認めるに足りる証拠はないから、原告の請求は失当というべきである。
三 以上の次第であるから、原告の請求は被告に対し二2と3の損害合計金二五七万八一七七円及びこれに対する請求による期限の日の翌日である平成九年一二月二一日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し、その余を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 信濃孝一)
別紙<省略>