東京地方裁判所 平成9年(ワ)918号・平11年(ワ)18137号・平9年(ワ)6611号 判決
甲・丙事件原告(乙事件被告)
久保太郎
甲事件原告(乙事件被告)
松本廣
同
浅川重美
右三名訴訟代理人弁護士
山本忠雄
同(甲・乙事件)
中野貞一郎
同(甲・乙事件)
抜山映子
右山本忠雄訴訟復代理人(甲・乙事件)・丙事件原告訴訟代理人弁護士
安部朋美
甲事件原告(乙事件被告)松本廣訴訟代理人弁護士
小林和則
同
水野靖史
甲・丙事件被告(乙事件原告)
霊友会
右代表者代表役員
増永雄俊
甲事件被告
増永雄俊
同
増永正
同
濱口八重
右四名訴訟代理人弁護士
阿部昭吾
同
加茂善仁
同
北原潤一
同
村上寛
主文
一 甲事件について
1 原告らが被告らに対して原告久保太郎が被告霊友会の会長の地位にあることの確認を求める請求に係る訴えのうち、原告らの被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口八重に対する訴えをいずれも却下する。
2 原告らが被告らに対して被告濱口八重が被告霊友会の会長の地位にないことの確認を求める請求に係る訴えのうち、原告らの被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口八重に対する訴えをいずれも却下する。
3 原告らが被告らに対して原告松本廣が被告霊友会の代表役員の地位にあることの確認を求める請求に係る訴えのうち、原告久保太郎及び原告浅川重美の被告らに対する訴え並びに原告松本廣の被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口八重に対する訴えをいずれも却下する。
4 昭和五三年三月七日に変更された別紙「宗教法人「霊友会」規則」が被告霊友会の規則として現に効力を有することの確認を被告らに対して求める原告らの訴えを却下する。
5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
二 乙事件について
1 被告久保太郎は、霊友会会長を名乗ってはならない。
2 被告松本廣は、霊友会総務理事又は霊友会代表役員を名乗ってはならない。
3 被告浅川重美は、霊友会常務理事又は霊友会第二五支部運営委員長を名乗ってはならない。
4 被告らは、自らが中心となって運営する団体及びその頒布する出版物に霊友会の名称を使用してはならない。
5 被告らは、昭和五三年三月七日付でその変更が文部大臣によって認証された原告の規則について、原告が文部大臣に規則変更認証申請手続をすることを妨害してはならない。
6 原告のその余の請求を棄却する。
三 丙事件について
原告の請求を棄却する。
四 訴訟費用
訴訟費用は、甲事件、乙事件及び丙事件を通じて、これを五分し、その四を甲事件原告(乙事件被告、丙事件原告)久保太郎、甲事件原告(乙事件被告)松本廣及び同浅川重美の負担とし、その余を甲事件被告(乙事件原告、丙事件被告)霊友会の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 甲事件(本訴)
1 原告らと被告らとの間において、原告久保太郎が被告霊友会の会長であることを確認する。
2 原告らと被告らとの間において、被告濱口八重が被告霊友会の会長でないことを確認する。
3 原告らと被告らとの間において、原告松本廣が被告霊友会の代表役員であることを確認する。
4 被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口八重は、原告久保太郎の被告霊友会会長としての活動に際し、被告霊友会に属する建物・施設等への立入りの拒否、被告霊友会の各種会合への出席の阻止、同人の行為を誹謗する文書の配布、その他活動の障害となる一切の行為をしてはならない。
5 被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口八重は、原告浅川重美の被告霊友会第二五支部運営委員長としての活動に際し、被告霊友会に属する建物・施設等への立入りの妨害、被告霊友会の各種会合への出席の阻止、同人の行為を誹謗する文書の配布、その他活動の障害となる一切の行為をしてはならない。
6 原告らと被告らとの間において、昭和五三年三月七日に変更された別紙「宗教法人「霊友会」規則」が被告霊友会の規則として現に効力を有することを確認する。
二 乙事件(反訴)
1 主文第二項の1から5までと同旨
2 被告らは、原告に対して、各自、金一六億円及びこれに対する平成九年四月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 丙事件
被告は、原告が宗教団体霊友会の会長・会主として別紙物件目録(一)ないし(三)記載の建物等施設において宗教活動を行うときは、原告に対して右施設を引き渡せ。
第二 事案の概要
一 当事者
この判決においては、以下において当事者を次のとおり表示する。また、甲事件原告三名を「原告ら」と総称し、甲事件被告四名を「被告ら」と総称する。
1 原告久保(甲・丙事件原告、乙事件被告久保太郎)
2 原告松本(甲事件原告、乙事件被告松本廣)
3 原告浅川(甲事件原告、乙事件被告浅川重美)
4 被告霊友会(甲・丙事件被告、乙事件原告霊友会、なお単に「霊友会」ということがある。)
5 被告増永雄俊(甲事件被告増永雄俊)
6 被告増永正(甲事件被告増永正)
7 被告濱口(甲事件被告濱口八重)
二 紛争の要点
被告霊友会は宗教法人であり、昭和五三年三月七日に文部大臣から規則の変更の認証を受けた霊友会の規則においては、会長が霊友会を統理し、教務、会務に関する最高指導者であると規定されている。原告らは、原告久保が現在でも霊友会の会長の地位にあるとした上で、原告久保は、規則に定める会長の権限に基づき、霊友会の役員として、原告松本を総務理事・代表役員、原告浅川を常務理事・第二五支部運営委員長にそれぞれ任命したと主張している。これに対して、被告らは、原告久保は被告霊友会の会長を辞任し、被告濱口が原告久保の後任の会長に就任したと主張し、原告久保が霊友会の会長としての地位を有することを争っている。
三 請求の要旨
1 甲事件
甲事件は、原告久保が霊友会の会長、原告松本が霊友会の総務理事・代表役員、原告浅川が常務理事・第二五支部運営委員長としての各地位に基づき、原告久保が霊友会の会長であり、被告濱口が霊友会の会長でないこと、原告松本が霊友会代表役員であること、及び昭和五三年三月七日に変更された霊友会の規則が現に効力を有することの確認を、原告らが被告らに対して求めるとともに、原告久保が霊友会の会長としての活動、原告浅川が霊友会の第二五支部運営委員長としての活動を行うに際し、霊友会に属する建物・施設等への立入りの拒否等これを妨害する行為の禁止を、それぞれの原告が被告らに対して請求するものである。
2 乙事件
乙事件は、甲事件に対する反訴であり、霊友会と関係のない原告らが被告霊友会における地位を表す肩書を名乗り、霊友会の名称を使用するなどの行為をすることにより被告霊友会の人格的利益が侵害されているとして、被告霊友会が、原告久保に対して霊友会の会長、原告松本に対して霊友会の総務理事又は代表役員、原告浅川に対して霊友会の常務理事又は第二五支部運営委員長の各役員の名称の使用禁止を求めるとともに、原告らに対し、霊友会の名称を使用する宗教活動の禁止と霊友会の規則変更認証申請手続に対する妨害の禁止を請求し、併せて、原告らが共謀して霊友会の会員に対し、原告久保を霊友会の会長と称して原告久保に霊友会の会費を納入するように求めたことにより、本来被告霊友会に納入されるべき会費が合計一六億円以上減少して被告霊友会がこれと同額の損害を被ったとして、被告霊友会が原告らに対し、不法行為に基づく損害賠償を請求するものである。
3 丙事件
丙事件は、原告久保が、宗教法人としての霊友会の会長としての地位のほかに宗教団体としての霊友会の会主としての地位をも有すると主張して、原告久保の宗教団体霊友会の会長・会主としての権利に基づき、霊友会に対し、原告久保が霊友会の建物等施設において宗教活動を行うときは、原告久保に対し施設を引き渡すことを請求するものである。
四 前提となる事実関係(以下に掲げる事実は、傍線を引いた部分を除いては当事者間に争いがなく、傍線を引いた部分については直後のカッコ内に掲げた証拠により認めることができる。)
1 霊友会における会長の地位
(一) 宗教団体霊友会は、久保角太郎、小谷喜美両恩師の立教に始まり、法華経の大義を遵奉し、その奥義とする先祖供養を行践し、その教えをひろめ、儀式行事を行い、会員を教化育成し、思想の善導、社会の教化を図ることを本旨として、昭和五年七月一三日に発会した。戦後に及んで、宗教法人法(昭和二六年四月三日法律第一二六号)が施行され、宗教団体霊友会は、昭和二七年一一月二一日、宗教法人の設立登記を了して宗教法人霊友会として成立した。
霊友会は、計一四の(乙四四)御旗支部と四〇を超える系統支部及びその他の各支部に属する会員で成っており、会員総数は二〇〇万人を超える宗教団体である。宗教団体霊友会は、昭和四七年一〇月二六日のアメリカ霊友会の発足を初めとして世界の諸国に支部を擁し、宗教活動を世界に展開している。
(二) 宗教団体霊友会においては、発会以来、小谷喜美恩師がその終身の会長であり、昭和四六年二月九日、同師の他界に伴って、久保角太郎の実子であり、かつ、小谷恩師に養育された原告久保が、同師の遺言に基づいて(甲七五)、昭和四六年二月一五日、前記のとおり既に法人となっていた霊友会の会長に就任した。
(三) 宗教団体霊友会の会長は、小谷恩師がそうであったように、宗教団体の霊友会の教義上の指導者であり、また、組織管理上の人事権を含めた最終意思決定者である。
現行の宗教法人「霊友会」規則(昭和五三年三月七日改正)(以下、単に「規則」ということもある。)も、六条一項において「本会は、会長が統理する。」、同条二項において「会長は、本会の教務、会務に関する最高指導者である。」と定め、さらに、同条三項において「会長の任期は、終身とし、次代会長は、本会の伝統に基づき、現在の会長が予め指名した者を推戴する。予め指名がないときは、教務役員会の議決によってこれを定める。」と規定している。
宗教法人「霊友会」規則の変更は、理事会においてその総数の三分の二以上及び常務理事会においてその定数の三分の二以上の議決を経て、会長の承認及び文部大臣の認証を受けなければならない(同規則四八条)ことになっており、宗教法人法によれば、宗教法人の規則の変更は、当該規則の変更に関する認証書の交付によってその効力を生ずる(同法三〇条)。昭和五三年三月七日以後、このような変更は、宗教法人「霊友会」規則については、全く行われておらず、昭和五三年三月七日改正の宗教法人「霊友会」規則は現在においても有効である。
同規則が変更されていない以上、規則上の官職である会長職が存在することは明らかである。なお、原告久保は、予め被告濱口その他なんぴとをも次代会長に指名したことはない。
2 紛争の経緯
(一) 原告久保は、平成五年九月二八日、霊友会の「会員代表会・全御旗系統支部責任支部長・運営委員長会合」を招集し、その席上において、会長制の改革について提案を行い、自ら会長の職を辞する意思があることを表明した。これに続いて、同年一一月、原告久保は、霊友会の会報等において会長辞任の表明を行い、同月一八日、霊友会に新たに設けられた理事長職に就任した(なお、現行規則上は、会長職だけがあって理事長なる職はない。)。
(二) 原告久保は、平成八年一月一二日、霊友会の理事長の職を辞した。
被告増永雄俊は、平成五年二月、総務関係を担当する常務理事となり、会長である原告久保を補佐してきた者であり、また、その実父である被告増永正は、霊友会の一四の御旗支部の中で最大規模を有する第八支部の増永定子支部長の夫で、平成五年一一月以後は霊友会顧問であった。平成八年一月一二日、原告久保が霊友会の理事長の職を辞した際、被告増永雄俊は、霊友会の責任役員及び代表役員となる総務理事として原告久保より任命され、代表役員の就任登記を了した。
原告久保は、平成八年三月二八日、額面五億〇〇五三万三五〇〇円(源泉税控除後の手取り三億五四五九万円)を退職金として受領した。
(三) 平成八年四月二〇日、原告久保が影響力を有していた体制準備委員会が解散され、かつ、原告久保の妻である久保克兒が理事職の再任を拒否された。このような事態のなかで、原告久保は、同年六月九日、会長の務めを再び行う決意を表明した(会長復帰宣言)。原告久保は、会長復帰宣言に引き続き、右同日、被告増永雄俊を霊友会の理事及び総務理事から解任して原告松本を霊友会の代表役員に任命し、翌一〇日、右についての各登記がなされた。続いて原告久保は、同月一三日、霊友会の取引銀行に赴き、「霊友会会長」を名乗り、霊友会名義の預金の被告霊友会への払戻しを凍結させた。
同月一四日、被告増永正、増永定子、岡村さく、小池文子、桑沢きぬ及び被告濱口の六名が持ち回り決議で被告濱口を霊友会会長に選任し、さらに、同年九月四日、右六名は、それぞれ書面で右持ち回り決議の結果を確認し、被告濱口は会長就任を受諾し、さらにまた、同年九月一七日、右六名(被告増永正、増永定子、岡村さく及び被告濱口が出席、他は委任による)は、「教務役員会」と称する会合を開いて同じ持ち回り決議の内容を確認又は追認し、被告濱口は重ねて会長就任を受諾した。
この間、被告増永雄俊の申立てによる代表役員職務執行停止等仮処分事件(東京地方裁判所平成八年(ヨ)第二〇〇六七号)において、同年九月三日、「松本廣は、霊友会の責任役員兼代表役員の職務を執行してはならない。霊友会は、松本廣に右職務を執行させてはならない。増永雄俊と霊友会との間において、増永雄俊が霊友会の責任役員の職務を行う地位を有することを仮に定める。」との東京地裁の仮処分決定があった。被告濱口は、同年九月四日、原告松本を解任した上、被告増永雄俊を総務理事(代表役員)に任命し、右についての各登記がなされた。
(四) 霊友会の御旗支部の一つである第二五支部は、もともと原告浅川の父である浅川治康が、昭和三三年一一月、小谷恩師から御旗を直接拝受して創設された支部であるが、浅川治康の死亡後は、原告浅川が同支部の運営委員長に就任した。ところが、平成八年八月、被告霊友会は、原告浅川を右運営委員長の地位から解任し、さらに、大阪府岸和田市磯上町<番地略>所在の講堂・礼拝堂等への原告浅川及び同原告を支持する第二五支部会員の立入り・使用を禁止した。これに対して、大阪地裁は、原告浅川らの右講堂・礼拝堂等の使用に対する妨害を禁止する旨の仮処分命令を発したが、霊友会は原告浅川らの右建物への立入りを拒否している。また、被告らは、原告浅川の第二五支部運営委員長としての地位を認めていない。
五 主要な争点
1 甲事件の訴えの適法性に関する争点
原告久保が霊友会の会長であることの確認を求める訴えが裁判所法三条にいう「法律上の争訟」に当たるか、また、被告濱口が霊友会の会長でないことの確認を求める利益があるか。
2 霊友会の会長は、原告久保か被告濱口か
甲・乙・丙事件を通じた本件訴訟の主たる争点は、霊友会の現在の会長が原告久保あるいは被告濱口のいずれであるかという点である。そして、原告久保が従来霊友会の会長であったことについては当事者間に争いがなく、具体的には、原告久保が後任の会長を予め指名することなく霊友会の会長を辞任し、被告濱口が規則六条三項に規定する教務役員会の議決に基づいて原告久保の後任の会長に選任されたという、被告ら主張の事実が認められるか、また、これらの行為が霊友会の規則に照らして有効かどうか、仮に原告久保が一たん霊友会会長を有効に辞任したとしても、辞任の意思表示を有効に撤回したとする原告らの主張が認められるかどうか、が争点である。
3 原告松本の地位
原告松本が霊友会の総務理事・代表役員であるか。原告らは、原告松本が平成八年六月九日に原告久保から霊友会の総務理事・代表役員に任命されたと主張し、被告らは、原告松本の任命時には原告久保が霊友会の会長を辞任してその地位を失っていたから原告久保が行った原告松本の霊友会の役員への任命行為は無効であると主張する。
4 原告浅川の地位
原告浅川が霊友会の常務理事・第二五支部運営委員長であるか。原告浅川が従来から霊友会の第二五支部運営委員長の地位にあったことについては当事者間に争いがなく、平成八年六月九日に原告久保が行った原告浅川の常務理事への任命が有効か、及び原告浅川が霊友会から除名処分を受けて会員としての地位を失ったため、霊友会の役員としての地位も失い、あるいは被告濱口が霊友会の会長としての任免権に基づき原告浅川を霊友会の常務理事・第二五支部運営委員長から解任したという、被告ら主張の事実が認められるかどうかが争点である。
第三 原告らの主張<省略>
第四 被告らの主張<省略>
第五 裁判所の判断
一 裁判所の認定した事実(1ないし12の各認定事実の証拠は各項目の見出しに掲げる。ただし、1ないし12の認定事実全般にわたる証拠として、甲六、七、八一、一二〇、乙七二、七五、七六、証人末吉、被告本人増永雄俊、原告本人久保。なお、裁判所の認定した事実の中に、前記第二の四(前提となる事実関係)の事実も加えてある。)
1 霊友会の沿革と原告久保の会長就任(甲七五、乙五、六、一五)
霊友会の沿革は、大正九年、原告久保の実父である久保角太郎が双系の先祖供養の実践と一部経(法華三部経)の研究、実践に入ったことに始まる。昭和五年、霊友会の発会式が行われ、理事長に久保角太郎、会長に小谷喜美(久保角太郎の次兄小谷安吉(昭和四年一二月死去)の妻)が就任した。昭和一九年一一月、久保角太郎が死去した。昭和二七年一一月二一日、霊友会は、宗教法人として成立した。昭和四六年二月九日、小谷喜美が死亡すると、小谷喜美の生前の指名により、原告久保が、同年二月一五日、霊友会の第二代の会長に就任した。原告久保が会長に就任した当時の霊友会の規則は、昭和三四年四月一日改正の「宗教法人「霊友会教団」規則」(甲三六、以下「旧規則」という。)のとおりであった。旧規則は、会長の地位について、「第五条この教団に会長一人を置く。 2 次代会長には、この教団発祥以来の伝統に基き、会長が指名した者を推戴する。 3 会長が前項の規定により、次代の会長を指名しないで死亡、辞任その他の事由に因って欠けたときは、理事会の議決によってこれを定める。 4 会長は、この教団の最高指導者である。 5 会長は、辞任その他の事由に因って退任した後でも、後任者が就任するときまで、なおその職務を行うものとする。 6 会長はこの法人の代表役員となる。 7 会長が代表役員でなくなったときは、理事長が代表役員となる。」と規定し、理事長の地位については、「第十七条 会長は理事のうちから理事長一人を指名することができる。 2 理事長は、会長を補佐して、この法人の事務その他の会務を指揮する。」と規定していた。
2 霊友会規範の制定及び霊友会規則の昭和五三年改正(甲一、二、乙一)
霊友会は、原告久保が会長に就任した後の昭和五三年一月、別紙「霊友会規範」のとおりの霊友会規範を制定するとともに、別紙「宗教法人「霊友会」規則」のとおりに規則を変更することの認証の申請を文部大臣に対して行い、昭和五三年三月七日に、規則の変更につき文部大臣の認証を受けた。これにより、霊友会の名称も「霊友会教団」から現在の「霊友会」に変更された。なお、この昭和五三年三月七日に文部大臣から変更の認証を受けた別紙「宗教法人「霊友会」規則」が現に効力を有するものであることについては、既に述べたとおり、当事者間に争いがない。昭和五三年改正の規則によれば、霊友会の目的は、久保角太郎、小谷喜美両恩師の立教に始まり、法華経の大義を遵奉し、その奥義とする先祖供養を行践し、その教えをひろめ、儀式行事を行い、会員を教化育成し、教会及び支部を包括して、思想の善導、社会の教化を目的とし、その目的を達成するために必要な業務を行うこととされる(規則三条)。
昭和五三年制定の規範及び同年改正の規則の関係は、甲第三二号証の両者の対照表からも明らかなように、霊友会の活動及び運営を主として宗教面に関する教務と主として事務面に関する会務とに区別した上で(規範一四条、規則一四条)、規範は、宗教法人としての霊友会の運営に限らず、宗教団体たる霊友会の全体について、教務及び会務を通じた霊友会の活動と運営の基本を定め(規範前文)、規則は、規範が定める宗教団体霊友会の活動と運営の基本の中から、宗教法人法一二条各号の掲げる事項、すなわち宗教法人としての霊友会の運営の基本に関わる事項を規定したものである。もっとも、規範と規則とは、その規定対象を、宗教団体としての霊友会(規範一条)と宗教法人としての霊友会(規則一条)と区別しているが、宗教団体としての霊友会が、宗教法人法一条一項により法律上の能力を与えられたものが宗教法人としての霊友会であり、宗教法人としての霊友会の規則は、主として会務に関する規定を置いているが、規則が具体的な規定を置いていない宗教団体霊友会の教務の基本に関する事項についても、規範に準じてその骨格を規定する(規範一五条ないし一七条、規則一八条参照)など、規則は、規範の規定と同一の内容を宗教法人法上の規則として必要な範囲で抽出して規定したものであり、その規定の趣旨は、規範と規則とは同一であると解されることからすれば、宗教団体霊友会における役員の規範上の地位は、宗教法人である霊友会における役員の規則上の地位と一致するものと認められる。したがって、以下においては、宗教団体としての霊友会と宗教法人としての霊友会を区別せず、単に「霊友会」という場合もある。
3 規範及び昭和五三年改正の規則による霊友会の組織(甲一、二、乙一)
前記規範及び規則の規定による霊友会の組織の概要(支部に関する事項を除く。)は、次のとおりである。
(一) 会長(規範・規則六条)
霊友会は、会長が統理する。会長は、霊友会の教務、会務に関する最高指導者である。会長の任期は、終身とし、次代会長は、本会の伝統に基づき現在の会長が予め指名した者を推戴する。予め指名がないときは、教務役員会の議決によってこれを定める。
(二) 教務役員・副会長・会長補佐(規範・規則七条)
霊友会には、教務役員として、副会長若干名、会長補佐若干名を置く。副会長および会長補佐は、会長がこれを任免する。副会長、および会長補佐の任期は三年とする。ただし、再任を妨げない。副会長は各自、教務に関し会長を補佐するとともに、常務役員会(教務に関する実施事項の決定機関)の構成員となる。会長補佐は教務役員会(教務に関する基本事項の決定機関)の構成員になるとともに教務に関する部会を担当する。
(三) 総括審議会(規範一五条・規則一八条)
総括審議会は、常務役員会の構成員たる会長及び副会長並びに常務理事会の構成員たる総務理事及び常務理事によって構成され、会長によって必要の都度、招集される。総括審議会の議長は会長があたる。総括審議会は教務及び会務の両方に関連する事項、並びに両者の間の調整を要する事項、その他規範に別に定める事項につき審議する。総括審議会の決議は満場一致を原則とし、審議を尽くしても満場一致の結論に至らざる場合は、会長が裁断するところによる。総括審議会の決議は、あらためて主管機関において機関決定のうえ、執行されなければならない。
(四) 常務役員会(規範一六条・規則一八条)
常務役員会は、会長及び副会長によって構成され、会長が必要の都度、招集する。常務役員会の議長は、会長があたる。常務役員会は、霊友会の教務に関する実施事項及び規範に別に定める事項を審議決定する。常務役員会の決議は三分の二以上の多数決をもってする。
(五) 教務役員会(規範一七条・規則一八条)
教務役員会は、会長、副会長及び会長補佐によって構成され、会長が必要の都度招集する。教務役員会の議長は、会長、または会長の指名する構成員一名がこれにあたる。教務役員会は霊友会の教務に関する基本的な事項及び規範に別に定める事項を審議、決定する。教務役員会の議決は過半数をもってする。教務役員会はその部会として、教務活動に関する部会をもつ。
(六) 会務役員・理事(規範・規則八条)
霊友会には、会務役員として理事若干名を置く。理事は会長が任免する。理事の任期は三年とする。ただし、再任を妨げない。理事は理事会の構成員となる。会長は、理事のうちから総務理事一名、常務理事二名を任免する。総務理事・常務理事は、宗教法人法に定める責任役員となり、そのうち総務理事は同法に定める代表役員となる。理事・総務理事・常務理事は、任期満了その他の事由によって退任した後でも、後任者が就任するときまで、なおその職務を行うものとする。
(七) 常務理事会(規範一八条・規則一五条)
常務理事会は、総務理事及び常務理事をもって構成する。常務理事会の議長は、総務理事をもってこれにあたる。常務理事会は、総務理事が必要の都度、随時これを招集する。常務理事会は、霊友会の会務及び別に規範に定める事項について審議決定する。常務理事会の決議は、過半数で決し、その議決権は、各々平等とする。
(八) 理事会(規範一九条・二〇条、規則一六条・一七条)
理事会は、理事全員をもって構成する。理事会は毎年一回六月に、総務理事が招集する。ただし、総務理事が必要と認めたとき、又は三人以上の理事から会議の目的たる事項を示して要求があったときは、臨時に理事会を招集する。理事会は、理事総数の過半数の出席がなければ議事を開き議決することができない。理事会の議事は、出席理事の過半数で決する。ただし、可否同数のときは、議長の決するところによる。理事会の議長は、総務理事があたる。理事会は、総務理事から付議された事項及び別に霊友会の規範に定める事項につき議決する。
(九) 規範の変更(規範五七条)
この規範を変更しようとするときは、総括審議会の議決を経て、会長の承認を受けなければならない。
(一〇) 規則の変更(規則四八条)
この規則を変更しようとするときは、理事会においてその総数の三分の二以上及び常務理事会においてその定数の三分の二以上の議決を経て、会長の承認及び文部大臣の認証を受けなければならない。
4 平成五年一一月一八日の本部新体制の発足(会長制廃止)(乙二ないし四、七一)
原告久保は、昭和六〇年ころ、宗教界にありがちな長老支配の傾向を廃して集団合議制によって霊友会の運営を行うことの検討を行うために、規則には規定されていない参与会を発足させた。また、昭和六二年一一月に統轄会議を発足させて、参与会と統轄会議の両機関で意見を交換して霊友会内のコンセンサスを醸成させようと計画した。統轄会議及び参与会の構成員は原告久保が人選にあたり、それまで高齢者によって占められていた教団幹部に大手支部の幹部たちが大幅に加わることになった。
原告久保は、平成五年八月二七日の参与会において、集団合議制への移行の一環として、会長を辞任し理事長に就任したい旨を霊友会の幹部らに発表した。これに対しては、参与会の構成員からは消極的な意見が述べられたが、原告久保は翻意しなかった。原告久保は、同月三〇日には常勤役員に対して会長辞任を発表し、以後は自らが主体となって会長辞任の発表の方法などを決定していった。
原告久保は、平成五年九月二一日までに、霊友会の本部新体制を確定し、これに伴う人事発令を行った。この本部新体制は、会長制を廃止して原告久保が会長から理事長に就任し、規範上の教務役員会の構成員である副会長、会長補佐は、それぞれ最高顧問、教務担当顧問となり、教務役員会の名称を教務担当顧問会と改め、平成五年一一月一八日に発足する第三期統轄会議を霊友会の最高議決機関としての性格を強めることを主な内容とするものであり、本部新体制の発足は、平成五年一一月一八日の久保恩師五〇回忌を期して行うこととされた。この体制改革前は、霊友会の組織は、原告久保を会長とし、副会長は被告増永正(通称、忠)及び岡村さくの二名、会長補佐は小池文子、増永定子、被告濱口、桑沢きぬ、荒井みね、新田目喜也、被告増永雄俊及び原告の妻の久保克兒の八名であったが、原告久保は、新体制において教務役員会の名称を教務担当顧問会に改めるに際し、御旗支部長(御旗を受けた支部長をいう。)である会長補佐のみを教務担当顧問として教務役員会の役員として残し、他の会長補佐である新田目喜也、被告増永雄俊及び久保克兒の三名は、会長補佐の職を免じて、理事会の構成員とすることとし、平成五年九月二一日、一〇月一日付で新田目喜也、被告増永雄俊及び久保克兒についていずれも会長補佐を免じ、新田目喜也を総務理事(代表役員)、被告増永雄俊を専務理事(規範・規則上の常務理事・責任役員)に、久保克兒を理事にそれぞれ任命する人事発令を行った。また、同じ平成五年九月二一日、同年一〇月一日付で、第三期統轄会議議長に就任する予定の小出繁夫が常務理事(責任役員)に任命され、荻窪新始、平沼正次郎の二名が前記久保克兒のほかに理事に新任された。
一方、同日、原告久保は、平成五年一一月一八日付けで、副会長の被告増永正と岡村さくの二名を副会長を免じて最高顧問に任命し、御旗支部長でもあった小池文子、増永定子、被告濱口、桑沢きぬ、荒井みねの五名を会長補佐を免じて教務担当顧問に任命する人事を決定した。このような経緯で、新体制における霊友会の教務の基本を決定する機関である教務担当顧問会の構成員は、理事長・原告久保、最高顧問・被告増永正、同・岡村さく、教務担当顧問・小池文子、同・増永定子、同・被告濱口、同・桑沢きぬ、同・荒井みね、とするほか総務理事、専務理事、常務理事、理事、参事の常勤役員の人事を決定した原告久保は、九月二八日の会員代表会・全御旗系統支部責任支部長・運営委員会会合、一〇月一五日の全御旗大祭において、会員に対して会長辞任と理事長就任を発表し、平成五年一一月一日付の霊友会の機関紙である霊友界報五三七号六頁において本部新体制として発表し、併せて、会員に対する挨拶文の中で、「私は、久保恩師五十回忌を期して、会長を辞し、昭和十九年久保恩師他界以来、長年空席であった理事長に就任することにいたしました。また、この際会長制を廃し、副会長・御旗支部長である会長補佐の皆さんには、改めて会の最高顧問・教務担当顧問として指導にあたっていただくことになりました。」と述べている。また、霊友会が関係者に配布した挨拶状において、「このたび、平成五年一一月一八日をもって、創立以来の会長制を廃し、会長久保太郎は理事長に、副会長・会長補佐は最高顧問・教務担当顧問に就任いたします。」と述べている。
5 理事長就任から辞任までの原告久保の職務内容(甲五七、五八、乙二、四、三九、四〇)
原告久保は、会長を辞任し理事長に就任した後の平成六年、七年にも、支部長等を任命していた。
また、原告久保は、理事長として、会務の基本を決定する理事会及び常務理事会の筆頭構成員として行動し、教務の基本を決定する教務役員会の筆頭構成員として行動していた。
さらに、原告久保は、総括審議会では、規範上会長があたるとされている議長(規範一五条二項)を務めていた。
6 新規範の策定と原告久保の理事長辞任(甲二〇、二三、二五ないし二八、三九ないし四一、九〇、乙八ないし一〇、一三、三九、四〇、七九)
その後、霊友会では、会長制を廃した霊友会規範の改正案の起草・審議が進められた。原告久保は、参与会の構成員として中心となって、新体制の基盤作りを進めていった。その結果、参与会の意見に基づいて第三期統轄会議が新たな組織体制を決定し、これに基づく新規範案が作成された。
平成七年一一月二三日開催の総括審議会(規則一八条、規範一五条)において、規範の変更に関する規範五七条の規定に従って、改正霊友会規範(新規範)が決議され、同日、新規範を霊友会の規則とする現行規則を改正することにつき、規則変更手続に関する規定(規則四八条)に従って、常務理事会で決議され、さらに規則四八条で必要とされる理事会決議の議事録も作成された。統括審議会及び常務理事会の決議には、原告久保も出席して賛成し、理事会決議の議事録にも原告久保は捺印している。新規範による体制は、平成八年一月一日から準備的に施行されたが、平成八年一一月一八日までこの、新規範に規定された全機関が揃い本格的に新体制が始動することが目標とされた。
この新規範によって確立した体制は、「集団合議制」を標榜し、その体制は、教務・会務の基本事項の審議・決定機関である「運営会議」、運営会議の執行事項に関する提案・承認機関である「評議員会」、「指導会議」と「公平会議」(指導育成・統制機関)を霊友会本部のそれぞれ独立した意思決定機関とし、これらを支え推進する系統代表会、会員代表会などの機関によって構成される。会の運営においては、会長制は採用されず、宗教法人法の責任役員である常務理事は運営会議議長によって任免され、責任役員の互選によって代表役員が定められると規定されるなど、新規範によると、霊友会の運営は、運営会議によって行われることになっている。しかし、一方で、運営会議議長は、評議員会が指名するが、その評議員は前記の運営会議総務会が指名し運営会議議長が委嘱し、任期も運営会議議長は最長二期六年で交替する。このように新規範においては、会の機関は、任免権等を通じて相互に牽制しつつ、また、任期の制限がもうけられるなど、特定の機関が絶対的に優位な権力を行使することができない体制をとっているものである。この新体制は、現行規則において霊友会の教務、会務に関する最高指導者として、任期を終身とし、次代会長も指名する権限をもつほか、副会長、会長補佐、理事、総務理事、常務理事など、霊友会の教務及び会務に関わるほぼすべての機関の構成員の任免権を有する会長の絶対的な権限による体制とは相容れないものであった。なお、運営会議議長が理事の中から評議員会の承認を得て理事長を任命することになっているが(新規範一〇条)、新規範にいう理事長は、運営会議議長を補佐するとともに、運営会議総務会及び運営会議全体会に参画し、会務に関する事項を起案し、決定された事項を執行する権限を持つ者にすぎない。
他方、平成七年一一月下旬、原告久保の過去の女性問題に関して恐喝まがいの事件が発生した。
原告久保は、平成七年一一月二八日の常勤役員会の席上で、理事長を辞任する旨発表し、同年一二月一六日の統轄会議全体会において、翌年の一月一二日に理事長を辞任する旨を発表した。統轄会議員の中には反対する者もいたが、原告久保は新体制を一日も早く立ち上げるために理事長を辞任すると説明した。
原告久保は、平成八年一月一二日、理事長を辞任し、同日付で学校法人国際仏教学院理事、国際仏教学大学院大学附置国際仏教学研究所所長に就任した。
平成八年一月一三日、新規範による第二回評議員会において第一期運営会議議長に蓼沼善四郎が選出され、蓼沼が被告増永雄俊を理事長に、荻窪新始を総務理事に、平沼正次郎を専務理事に選任し、右三名の互選により被告増永雄俊が代表役員に選任された。
なお、新体制における運営会議は、従来の統轄会議に相当する組織として運営することが決定し、体制準備委員会が、新規範三一条に基いて運営会議総務会の附属機関として設置され、新規範に基づく新体制上の機関の構成員の決定に際して、規範上の権限は有しないが、事実上これを推薦するための人選にあたることになり、原告久保及び久保克兒が構成員として参加することとなった。
翌日一四日の釈迦殿新年大会で原告久保は理事長を辞任する旨を発表し、大会終了後、一月一二日付辞任書(従前の代表役員であった総務理事の新田目平吉(新田目喜也のことと推認される)にあてたもの)に署名捺印し、同日、規則上は会長が代表役員を任命しなければならないために増永理事長の代表役員登記に必要な任命書に会長名で署名捺印した。翌一月一三日付の代表役員への就任承諾書が被告増永雄俊から「「霊友会」会長久保太郎先生」あてに提出された。
原告久保は、前記の新体制の成立を発表した同年二月一日付の機関紙の霊友界報五六四号において、理事長辞任について、「このたび、霊友会は、将来に亘って会員みんなで支えあう本部を確立するために、新しい本部組織を決定しました。また、その主旨にのっとって、私は、この新しい本部の体制には加わらないことにいたしました。」、「また、違う角度からすれば、世襲制を廃すると同時に、恩師に代わる特定の個人を指導者とする観念も捨てようということです。私自身、この新体制によってこの主旨を実現するために、新しい本部の組織からは離れ、新たな自分の役割を果たすことにした次第です。もちろん、一会員として、また、本部で責任ある立場で働かせていただいてきた者として、これからも本部のこの体制を支援してまいります。」と述べている。また別の機関紙(「あした」平成八年二月一八日第五六四号)において、「ところで、私はこの際、本部の新機構の一端を担う立場からは離れ、国際仏教学研究所所長として、小谷恩師から言いつかった法華教研究を全力で実らせていく決意です。と同時に、一会員として、また今日までの本部組織の責任ある立場で働かせていただいた者として、今般の霊友会の体制の確立のため、今後とも支援を惜しまぬ所存です。」と述べている。なお、右「あした」の大見出しには、「平等の精神に立脚、集団合議制を確立」という表現が用いられている。
7 原告久保の退職慰労金受領(乙一二)
原告久保は、平成八年三月二八日、霊友会から額面五億〇〇五三万三五〇〇円(源泉税控除後の手取額三億五四五九万円)の退職慰労金を受領した。右支給総額は、原告久保の理事、会長、理事長としての在任期間それぞれについて計算された数値を合計したものである。退職慰労金計算の根拠は次のとおりである。
① 理事としての期間計算による退職慰労金は、最終の基本月額給与に在任年数を乗じて得られた金額に功績倍率1.5倍を乗じて求められた。また、理事としての任期計算による退職慰労金は、最終の基本月額給与に、在任年数を任期の三年で除した数値(在任した任期の回数)を乗じて得られた金額で功績倍率1.5倍を乗じて求められた。
② 会長としての期間計算による退職慰労金は、最終の基本月額給与に在任年数を乗じて得られた金額に功績倍率五倍を乗じて求められた。会長に対する功績倍率は前例がなかったので、常務理事1.7倍、専務理事1.85倍、総務理事二倍の倍率を参考に責任役員会で決定された。任期計算による退職慰労金は、会長には任期がなかったので支払われていない。
③ 理事長としての退職慰労金は、理事としての退職慰労金と同様に期間計算と任期計算が行われた。理事長の功績倍率にも前例がなかったため、責任役員が決定した2.5倍が使用された。
霊友会の財務経理担当者の神山幸夫は、原告久保に対して、右の計算内容を記載した書面を示し、会長としての在任期間に対する退職慰労金も含まれていることを説明した。
8 体制準備委員会の解散、久保克兒の理事解任(甲四六ないし四八、乙七五)
体制準備委員会は、前記のとおり、新規範三一条に基いて運営会議総務会の附属機関として設置され、新規範に基づく新体制上の機関の構成員の人選にあたり、原告久保及び久保克兒の夫妻が出席していた。体制準備委員会は新規範二八条に定める教務会の構成員である教務役員に久保克兒を選任するように推薦したが、運営会議総務会は同人を教務会の構成員にはしないことを決定した。
運営会議総務会は、平成八年四月二〇日、体制準備委員会は原告久保夫妻の発言力が強く、新体制における集団合議制による組織運営方法と相容れないとの理由で、同委員会を解散するとともに、原告久保の妻久保克兒を同月二五日付けで理事から解任することを決定し、同月二六日、同月二〇日付で理事に再任されなかった旨の久保克兒理事の事実上の解任を意味する人事通達を発した。
原告久保夫妻は運営会議総務会の右決定は受け入れらないと主張し、原告久保らと霊友会の執行部の対立が始まった。同年五月二八日には第一三支部長大形市太郎が原告久保を教務役員とし、久保克兒は理事を退任するとの調停案を出したが、原告久保は受け入れなかった。
9 原告久保の会長復帰宣言と対立の激化(甲四、九二ないし九七、乙一四ないし一六)
原告久保は、平成八年六月九日、本部釈迦殿で行われた集会で、改めて会長に復帰し会長としての職務を再開する旨を宣言し、被告増永雄俊、小出繁夫、松本正二に副会長に就任するよう依頼した。原告久保は、同日、会長として被告増永雄俊を総務理事から解任し、新たに原告松本を総務理事に任命した。その上で、六月一〇日、被告増永雄俊の代表役員解任の登記がされ、同日、原告松本の代表役員就任の登記がされた。また、同日、原告久保は、原告浅川を常務理事に任命した。
同月一一日、被告濱口、被告増永正、新田目、大形と統轄会議総務会の構成員の合同会議が開催され、原告久保の会長復帰宣言への対応が検討されたが、原告久保と絶縁することが決定された。
同月一三日には、原告久保らが霊友会の取引銀行である三和銀行虎ノ門支店を訪れ預金口座の名義変更等を申し出た。また、同日午後九時四〇分ころ、原告久保を支持する茅野旭志ら約四〇名が東京都港区麻布台<番地略>所在の霊友会本部第一ビル(別紙物件目録(三)の建物)に入ろうとしたところ、第一ビルで勤務していた霊友会の職員との間でもみ合いになった。
10 教務役員会の被告濱口を会長に選任する決議(乙七、三一ないし三五)
平成八年六月一四日、被告増永正、増永定子、岡村さく、小池文子、被告濱口、桑沢きぬの六名は、「当宗教法人霊友会において、平成五年一一月一八日又は平成八年一月一二日に会長久保太郎が自己の後継の会長を予め指名することなく当会会長を辞任したので、当会の昭和五三年三月七日に文部省の認証を受けた「規則」第六条三項の規定により、教務役員である増永忠は久保太郎の後継の会長とし下記の者を教務役員会として選任したい旨を教務役員の全員に提案したところ、教務役員の全員が異議なくこれに同意した。会長に濱口八重」との記載内容の決議書を持ち回りに、前記六名が教務役員の名義で記名捺印する方法で、乙三一の決議書を作成した。
この決議書の作成は、教務役員会の構成員は、現行規則に対応する規範(昭和五三年)一七条により、会長、副会長及び会長補佐とされているが、副会長及び会長補佐の職務が平成五年一一月一八日の新体制発足にあたって廃止されたことに伴い、副会長及び会長補佐の後任者が任命されないままその職を免じられたこととされていたので、従来の副会長及び会長補佐が教務役員の職務を継続しているものとして、従来の副会長及び会長補佐の中から、死亡した荒井みねを除く、被告増永正、岡村さく、増永定子、小池文子、被告濱口、桑沢きぬの六人が教務役員会の構成員であるとして決議を行ったものである。なお、平成五年九月までいずれも会長補佐として教務役員の地位にあった新田目喜也、被告増永雄俊及び久保克兒の三名は同年一〇月一日付で会長補佐を免ぜられ、以降教務役員としての地位になかったことは前記4で認定したとおりである。
被告増永雄俊は、平成八年六月一七日、東京地方裁判所に対して、原告松本の責任役員兼代表役員の職務執行停止及び被告増永雄俊の責任役員兼代表役員の地位を仮に定める旨の仮処分を申し立てた(東京地方裁判所平成八年(ヨ)第二〇〇六七号)。
同裁判所は、同年九月三日、原告松本の責任役員兼代表役員の職務を停止するとともに、被告増永雄俊が責任役員としての地位を有することを仮に定める旨の仮処分決定をした。なお、被告増永雄俊が代表役員の地位にあることを仮に定める旨の申立ては却下された。
各教務役員は、同月四日、右東京地裁決定で被告濱口が会長に選任されていることが認定されなかったため、改めて被告濱口を会長にすることに賛成する旨の同日付の確認書を作成するとともに、平成八年六月一四日の決議書に再度押印した。被告濱口は、平成八年九月四日付の会長への就任受諾書を作成した。被告濱口は、同日、会長として被告増永雄俊を代表役員に任命し、被告増永雄俊について、同月五日、代表役員就任の登記がなされた。
同月一七日、岡村さく方で、被告増永正、増永定子、岡村さく、被告濱口の四名が出席し教務役員会が開催された。小池文子及び桑沢きぬは被告増永正へ委任状を提出した。この会合では、全員の同意により選任された被告増永正が議長となり、平成八年六月一四日の決議により被告濱口を会長にする選任したことを確認又は追認するとともに、重ねて被告濱口を会長に選任する旨の決議がなされた。
11 会費の未納入と除名処分(甲一〇二ないし一〇四、一一二、乙二一ないし二八、四三、四九ないし五八、六〇ないし六四、原告本人松本)
霊友会は、平成八年八月、第二五支部の講堂は原告久保に従う会員には使用させないと宣言して、講堂出入り口の施錠を変更して封鎖した。この事件以降、原告久保、原告浅川らは、同月末に霊友会に送金すべき同月分の会費を送金せず原告久保のもとに送金するように、原告久保を支持する会員に働きかけた。原告浅川らは、同月一八日、大阪地方裁判所に講堂の使用妨害禁止の仮処分を申し立てた(大阪地方裁判所平成八年(ヨ)第二一五〇号)。
霊友会は、会費を納入しない会員に対して会費を支払うよう求め、平成八年一〇月分の会費納入をもって会員か否かを判断する旨を通知した。そして、平成八年一一月一五日、一〇月分の会費を納入しなかった会員に対して、同年一〇月三一日付で退会したものとみなす旨を通告した。
大阪地方裁判所は、同年一二月一三日、使用妨害禁止の仮処分を認容したが、その中で原告浅川らを除名しない限り会費を納入しない者にも霊友会施設を使用する権利がある旨説示した。
霊友会は、同年一一月一八日開催の総括審議会の議決及び同日の被告濱口会長の承認によって新規範が成立したという前提で、改めて会費を納入しない会員らに対して新規範に基づく除名の手続を進め、平成九年二月三日付で、会費を納入しない会員を除名処分とした。また、同月一日付で、原告久保及び久保克兒を除名処分とした。
霊友会は、前記大阪地裁決定に対して異議を申し立てたが(平成八年(モ)第五四四七九号)、大阪地裁は債権者らが毎月定例的に行われる読経又は法座へ参加するために霊友会施設に立ち入って使用することを妨害してはならないとする限度で原決定を認可し、原告浅川らのその余の申立てを却下した。同裁判所は、その決定の中で、新規範は規則に抵触するものであり、新規範に則って行われた上記除名手続は無効である旨説示した。
そこで、被告濱口は、旧規範に則って除名手続を行うこととし、平成九年一〇月二三日、規則七条に基づき、被告増永正を副会長に、増永定子、福本輝子、大形市太郎、小出繁夫、平川廣道を会長補佐に、規則三三条の二第一項、規範四一条二項に基づき、被告増永正を指導委員会委員長に、増永定子、福本輝子を指導委員会委員に、規則三三条の三、規範四二条二項に基づき、大形市太郎を公平委員会委員長に、小出繁夫、平川廣道を公平委員会委員に、それぞれ任命した。被告増永雄俊、荻窪新始及び平沼正次郎は、平成九年一一月一〇日、原告久保、久保克兒、原告浅川ほか二六九名の除名を指導委員会に申し立て、指導委員会は公平委員会にこれを付託し、公平委員会は原告久保らに弁明書の提出通知の手続きを行ったが、原告久保らは弁明書を提出しなかった。そこで、公平委員会は、同年一二月二日、原告久保の会長復帰宣言後に原告久保らが行った一連の行為により霊友会の運営に混乱を生じせしめたことは著しい非違行為であることを認めて原告久保及び久保克兒を除名することを決定し、同日、被告濱口が会長として右決定を裁可した。また、公平委員会は、同月一九日、原告浅川ほか二六五名を会費の納入を怠っていることを理由に除名することを決定し、同日、被告濱口は右決定を裁可した。また、同日ころ、原告松本に対する除名処分がなされ、被告濱口が右決定を裁可した。
霊友会は、前記大阪地裁の認可決定に対して、旧規範の手続による除名の点をも追加主張した上で保全抗告を申し立てたが(大阪高等裁判所平成九年(ラ)第八二四号)、大阪高裁は、保全抗告を棄却し、右の指導委員会、公平委員会は実体がない上に、原告久保は会長に復帰しており又は会長の職務を継続していたと見るべきであり被告濱口が会長であることをにわかに認めることはできないとして旧規範による除名処分を有効なものと認めることができない旨説示した。
12 原告久保らの現在の活動(争いがない)
現在も原告久保は霊友会会長を名乗り、原告松本は霊友会総務理事、霊友会代表役員を名乗り、原告浅川は霊友会常務理事、霊友会第二五支部運営委員長を名乗っている。
原告久保らは、自らが中心となって運営する宗教団体こそが霊友会であると主張し、その発行する出版物に「霊友会」ないし「インナートリップの霊友会」の標章を使用し外部に配布するなどして団体としての活動を行っている。
原告久保は、原告松本、原告浅川らとともに霊友会機関誌「あした」を発行し、そこにおいて霊友会会長として被告増永雄俊ら現執行部を非難し、会員に対して会費を原告久保の主宰する「霊友会」に納入するよう呼びかけている。
二 争点に対する判断
1 法律上の争訟性について
宗教団体内部での宗教上の地位の存否が問題とされる訴訟においては、①請求自体が具体的権利義務ないし法律関係に関するものであって、かつ、②その判断の過程において宗教上の教義・信仰の内容に立ち入る必要のない場合には、裁判所は右地位の存否について審判権を有する(最判昭和四四年七月一〇日民集二三巻八号一四二三頁、最判昭和五六年四月七日民集三五巻三号四四三頁)。
本件で問題とされる会長とは、宗教法人法一二条によって作成が要求されている宗教法人の内部規範たる規則の六条に規定されている被告霊友会の機関であり、会長の地位は法律上の地位であるということができる。
霊友会の会長の地位及び任命手続に関しては、前記認定のとおり、規範及び規則において規則六条三項が「会長の任期は、終身とし、次代会長は、本会の伝統に基づき、現在の会長が予め指名した者を推戴する。予め指名がないときは、教務役員会の議決によってこれを定める。」と規定し、規範一七条が教務役員会の構成について規定している。本件訴訟の争点は、原告久保の会長辞任の意思表示の有無及び被告濱口の会長選任手続が、規範及び規則に定める手続に沿った有効なものかどうかであり、前記条項はその文言からみてその解釈において宗教上の教義・信仰の内容に立ち入る必要があるとはいえない。したがって、本件訴訟の請求に対する審理・判断において、宗教上の教義が問題となることはなく、原告久保の会長たる地位の確認を求める訴えは、裁判所法三条にいう法律上の争訟に当たる。
なお、その他の本案前の抗弁については後記6で一括して判断する。
2 原告久保が霊友会の会長を辞任したかどうかについて
原告久保が昭和四六年二月に霊友会の会長に就任し、霊友会の規範及び規則が変更された昭和五三年以降も霊友会の会長であったことは当事者間に争いがない。そこで、原告久保の会長を辞任した事実があったどうかについて判断する。
原告久保が平成五年一一月一八日付で霊友会における会長制を廃止し、同時に会長を辞任して理事長に就任する旨表明したこと、及び原告久保が平成八年一月一二日に霊友会の理事長を辞任する意思表示をしたこと、以上の事実については当事者間に争いがない。問題は、霊友会の会長の任期が終身とされている関係で、会長が自らの意思で辞任することができるか否か、及びこれを肯定する場合に本件における原告久保のこれらの行動を本件の諸事情に照らして会長の地位を辞任する意思表示と解釈することができるかどうかという点である。
(一) 霊友会における会長の法的地位
昭和五三年改正の霊友会の規範及び規則においては、霊友会の会長は、前記認定のとおり、霊友会の教務、会務に関する最高指導者として、任期を終身とし、次代会長も指名する権限をもつほか、副会長、会長補佐、理事、総務理事、常務理事など、理事会、常務理事会、総括審議会、常務役員会、教務役員会など、霊友会の教務及び会務に関わるほぼすべての機関の構成員の任免権を有する、会の運営における絶対的な権限を有する地位とされている。
しかしながら、会長の職は、宗教法人法に基づく霊友会規則(六条)にその根拠を有する、宗教法人の内部機関というべきであり、また、法人とその機関たる地位にある者との法律関係は、委任ないし準委任契約と解すべきであって、これらの点について宗教法人を別異に解すべき理由はない。そうすると、被告霊友会とその内部機関である会長との法律関係についても、法令又は規則に別段の定めがある場合を除き、民法の委任に関する規定が適用ないし準用されるものというべきである。
原告らは、会長は被告霊友会を統理する者であり、霊友会との間の契約関係といったものに拘束される存在ではなく、民法の予定する対等な二当事者間の関係ではないので、民法の委任の規定の適用はないと主張するが、宗教法人法が宗教法人のいわゆる世俗的事項(財産及び組織管理の面)に関する法律であり、本件で問題となっている会長の職が宗教法人法に基づく規則に根拠を有するものである以上、原告らの右主張は採用の限りではない。
(二) 霊友会における規則と規範との関係、現規則の効力
宗教法人法は、宗教法人の世俗的側面の事項に関して、規則で定め所轄庁の認証を受けるべきことを規定しており(一二条)、規則の定めは、宗教法人法等の規定を別として世俗的側面に関しての根本の規則となると解される。したがって、右世俗的側面に関する事項である限り、規則の定めに従った運営がなされるべきであり、「規範」など当該宗教法人内部の定めは、規則に反してはならず、もしこれに反している場合には、当該規範は無効というべきである。規則四九条は「本会の運営に関し、この規定に定める事項の外、規範で別に定める。」と規定しているが、これは右のことを当然の前提としていると考えられる。
本件において、規則及び規範並びに新規範の制定の経緯及びそれらの内容は、裁判所の認定した事実2、3及び5のとおりであり、新規範は、規則及び規範に規定された会長の職を廃止しているが、右に述べたところから、新規範の内容と同一の規則改正がなされていない以上は、右会長職の廃止は現在の規則に反するものとして無効であり、したがって、霊友会において会長の職自体は現在も有効に存在するものである。また、裁判所の認定した事実4のとおり、平成五年一一月一八日に原告久保が会長職を廃止する旨を言明したが、会長職は規則上定められた機関であり、会長個人の意思表示によって廃止することができないことはいうまでもない(これらの点に関しては当事者はともに争わない。)。
(三) 会長は自らの意思により辞任することができるか
(一)及び(二)に述べたところにより、右の点を判断する。
原告らは、会長の任期は終身とする旨の規則六条三項前段は、会長の生存中はおよそ辞任できないという意味に解釈すべきと主張するが、一たん法人の機関に就任すればその者の意思に関係なく一生その法人に拘束されるとするのは妥当ではなく、右条項は、会長の任期には定めがなく、霊友会からの委任契約の解除(民法六五一条一項)を制限する趣旨にとどまるものであると解釈すべきである。したがって、会長の地位にある者は、民法の原則(民法六五一条一項)により委任契約を解除して辞任することができるというべきである。
この点に関し、裁判所の認定した事実1のとおり、旧規則には会長は終身制であるとの規定はなく、かえって会長の辞任を前提とした規定を置いている(五条三項、五項)が、旧規則を改正して現在の規則が制定されたからといって、会長自らの意思による辞任を否定する趣旨と解すべきでないことは右に述べたとおりである。
(四) 原告久保は平成五年一一月一八日に会長を辞任したか
原告久保が平成五年一一月一八日付で霊友会における会長制を廃止し、同時に会長を辞任して理事長に就任する旨を表明したことは、前記のとおり当事者間に争いがない。
しかしながら、前記認定の本件の経緯及び霊友会の会長の地位に照らし、霊友会における本部組織体制の改革の経緯との対応において原告久保の行為を評価すれば、原告久保は、霊友会の組織体制を、会長が絶対的な権能を有する体制から、組織内の各機関が相互に牽制しつつ機能を発揮する集団合議制による運営体制を確立するために、平成五年一一月一八日の新体制発足を契機に会長制を廃止し(ただし、この効力が生じていないことは前述した。)、理事長に就任することとしたもので、この段階では、統轄会議を中心とする集団合議制による組織運営の萌芽は見られるものの、全体としては、原告久保は、会長辞任後も、理事長として、霊友会の教務の基本を決定する教務役員会(教務担当顧問会に事実上名称変更)の筆頭の構成員であり、会務の基本を決定する理事会及び常務理事会についても筆頭の構成員として行動しているのであって、新体制の確立に向けての指導の絶対的中心としての存在であったと評価すべきものである。これに原告久保が支部長、代表幹事、統轄会議の会議員等の役員の任命人事を引き続き行っていたこと及び原告久保が平成五年一一月の辞任表明後も理事長という久保角太郎が当時の会長の小谷を指導する立場にある被告霊友会の最高指導者として使用していた役職名を使用していたことを考え併せると、原告久保が平成五年一一月一八日に霊友会の会長の地位を辞任したと評価することはできず、むしろその後も規則上の会長の職を保持していたというべきである。
(五) 原告久保は平成八年一月一二日に会長を辞任したか
次の①ないし②によるとき、原告久保が平成八年一月一二日に霊友会の会長を辞任したこと(霊友会との委任契約の解除の意思表示をしたこと)を認めることができる。
① 裁判所の認定した事実5のとおり、原告久保は、平成八年一月一二日及びその直後において、理事長を辞任するに際し、新しい霊友会の本部の体制に加わらず、今後は一会員として本部の体制を支援していくと明言し、かつ、今後は、国際仏教学研究所所長として、法華経研究を全力で実らせていく決意であるとの意思を霊友会の会員に対して明らかにしている。
② 前記認定事実によるとき、新規範の内容が平成七年一一月二三日までに霊友会の事実上の運営組織であった統轄会議で決定され、さらに総括審議会においても決議されて、集団合議制を標榜する新規範がほぼ確定し、新規範における組織運営の基本である運営会議の構成がそれまでの統轄会議を基礎に決定されていた上、集団合議制による新規範における基本的な機関である評議員会、会員代表会、常務理事(理事長・専務理事を含む)が決定され、新規範による手続によって宗教法人法上の代表役員・責任役員となる者も決定する運びとなっていたことから、原告久保は、このような新規範に基づく集団合議制による新体制とは相容れない教務・会務の最高指導者の立場であった従来の理事長の地位から退くことを決意したものと解することができる。
③ 前記認定のとおり、平成八年一月一二日以降原告久保は被告霊友会執行部の中心から離れ、公式には体制準備委員会の一委員の立場としてしか被告霊友会の運営に対して意見を表明できなかった。
④ 原告久保は、平成八年三月二八日に理事、会長、理事長の就任期間によって計算された退職慰労金額面五億〇〇五三万三五〇〇円(源泉税控除後の手取額三億五四五九万円)を霊友会財務経理担当者の神山幸夫からその趣旨を説明された上で受領している。
なお、原告らは、次のイないしハの事実(あるいは主張)に基づいて、これらが原告久保が会長を辞任していないことを示すものであると主張するが、それぞれの箇所において述べるとおり、これらの事実(主張)が原告久保の会長辞任を否定するものであると評価することはできない。
イ 平成八年一月一二日以降原告久保は、新規範に基づく運営会議総務会の特別委員会である体制準備委員会の委員として新体制の人事面における実質的な発言力を確保していたことは認められるが、このような地位は、あくまで、運営会議総務会に設置された特別委員会にすぎず、新規範上の正式な人事権を有する機関ではないから、このような地位に就いたことは、霊友会の規則上の最高指導者である会長の地位にあったことの裏付けとなるものではない。
ロ 新体制によって選任された代表役員の任命書に原告久保が会長として署名したことも、新規範に沿った規則の変更認証手続がされていない以上、登記手続上必要な手続がふまれただけであると見るべきである。集団合議制による新規範が成立した以上、原告久保が独断で任命ができることは実際には不可能な状態になっていたのであって、その意味でも会長の権限は、自ら新体制を確立することによって失われていたというべきであり、このような登記手続に必要とされた行為が、法的な意味で原告久保が会長としての地位を保持していたことを裏付けるものであるということはできない。
ハ 原告らは、原告久保は理事長辞任表明後も会長としての職務を行っていたと主張し、その根拠として、原告久保は、平成八年に入っても、統轄会議総務会等に出席していたこと、霊友会の宗教的儀式等を行っていたこと、霊友会の施設の竣工式等(例えば、平成八年三月二八日のインナートリッププラザ、同年四月三日の第一三支部会館の上棟式)を主宰していたことを根拠に挙げるが、これらの行為が、原告久保が霊友会の会長としての地位を有することを前提として行われたことを裏付ける証拠はなく、原告らの右主張は採用できない。
3 会長辞任の意思表示の撤回の有効性
原告らは、原告久保が平成八年六月九日に会長復帰宣言を行ったことによって会長辞任の意思表示を撤回したと主張する。しかし、会長辞任の意思表示は、霊友会との委任契約を解除する意思表示としての性質を有しているのであるから、解除の意思表示は取り消すことができないとする民法五四〇条二項(なお、右規定は、意思表示が相手方に到達した後は相手方の地位をいたずらに不安定にすることは許されないということから、その意思表示に取消・無効事由がある場合を除いて、自由にその撤回を許さないとする一般原則を契約の解除の場合において個別的に規定したものと考えられる。)の規定により、会長復帰宣言(これがなされたのは委任契約の解除の意思表示が相手方霊友会の代表役員である新田目平吉に到達した後であることは明らかである。)は辞任の意思表示の撤回としての効力は生じないと解するのが相当である。
なお、原告らは、霊友会の規範及び規則においては、会長の任期が終身と定められているから、辞任後も辞任の意思を撤回することは自由であるとも主張するが、会長の任期を終身と定める規定の趣旨は、前記のとおり、会長の任期の定めがなく、霊友会からの解除権の行使を制限することを定めた趣旨にとどまり、一たん辞任をした会長が自由に復帰することができることまで定めた規定と解することは到底できない。
また、原告らは、会長には辞任後も後任の会長が選任されるまでは、その職務を継続して行う権限が認められるから、後任者が選任されるまでの間に辞任の意思を撤回することもできると主張するが、委任契約の終了後の受任者が急迫時の善処義務(民法六五四条)の範囲の義務を負うことはともかくとして、商法二五八条一項は宗教法人には適用されないから、会長が辞任後も後任者が選任されるまで一般的に会長としての権限を行うことができると解すべき根拠はない。まして、辞任をした会長が自由に辞任の意思を撤回することができると解すべき根拠はない。
4 被告濱口が霊友会会長の地位にあるかどうか
(一) 会長職の空位
以上述べたところによると、原告久保が霊友会の会長を平成八年一月一二日に辞任しており、かつ、辞任の撤回が効力を有しないのであるから、同年六月一四日の時点においては霊友会の会長職には何人も就いていなかった(会長職は空位であった)ということができる。また、原告久保が、次代会長を予め指名したことがないことは当事者間に争いがない。
そして、会長が次代会長を予め指名することなく欠けた場合における教務役員会の議決による会長の選任について定める規則六条三項の規定は、会長が死亡した場合のみならず、会長が次代会長を指名することなく辞任した場合についても適用されると解するのが相当である(原告らはこれに反する主張をするが、その論拠は会長の辞任がありえないということに尽きるものであり、採用できない。)。
(二) 被告増永正らによる教務役員会の被告濱口を会長に選任した決議の有効性
前記認定の事実によれば、乙第三一号証の決議書が作成された平成八年六月一四日の教務役員会の構成員は、平成五年一一月一八日の新体制において教務役員会に相当する教務担当顧問会の構成員となった従前の教務役員である元副会長被告増永正及び岡村さく並びに元会長補佐の小池文子、増永定子、被告濱口及び桑沢きぬであった(なお、右に元副会長及び元会長補佐と記載したが、前記認定事実によるとき、右六名は規則上の役職としては副会長及び会長補佐の地位を維持しており、これらの地位を辞したことはなかったものということができる。)と認められる(平成五年九月まで教務役員であった新田目喜也、被告増永雄俊及び久保克兒は、いずれも同年一〇月一日に教務役員を免ぜられており、原告久保は平成八年一月一二日の会長辞任により教務役員から外れており、平成五年一〇月以降も教務役員であった荒井みねは既に死亡していた。)。なお、仮に前記六名が平成五年一一月一八日に副会長又は会長補佐の職を辞していたとしても、副会長及び会長補佐は、辞任、任期満了その他の事由によって退任した後でも、後任者が就任するときまで、なおその職務を行うとされていることから(規則七条五項、八条七項)、平成五年一一月一八日の新体制成立により副会長・会長補佐が同時に免ぜられ、後任者が選任されていない以上、これらの教務役員は、引き続き、教務役員としての職務を行っていたと認められる。
原告らは、原告久保及び久保克兒も教務役員であったのにどちらに対しても会議の招集が通知されず、そもそも原告久保の会長としての会議の招集権(規範一七条一項)をも無視するものでその決議は無効であると主張する。しかし、前記認定のとおり、原告久保は平成五年一一月一八日の新体制において理事長として教務担当顧問会の構成員となってはいるが、平成八年一月一二日に理事長をも辞任してこれが規則上の会長の地位を辞任したものと解されるのであるから、これにより教務役員会の構成員としての地位を失ったのであり、久保克兒は平成五年一〇月一日に会長補佐を免ぜられ、同時に教務役員会から名称が変わった教務担当顧問会の構成員からも除かれているのであるから、この時点で教務役員会の構成員としての地位を失っていると認められ、したがって、いずれも会長選任の決議の時点では教務役員ではないので原告らの主張は失当である。
また、原告らは、会長辞任後も後任者が選任されるまでの間はその職務を継続して行うのであるから、原告久保が教務役員としての職務を行うべき地位にあったと主張するが、前述のとおり、会長はその辞任後は急迫時の善処義務を負うのみであり、会長が辞任した場合に、副会長及び会長補佐によって構成される教務役員会を自ら招集し、あるいはそれに加わる権限を会長辞任後も有しているということは相当でない。規則上、副会長及び会長補佐には退任後、後任者の就職までの間の職務継続が認められている(規則七条五項、八条七項)のに対し、会長にはその旨の規定がないし、実質的に見ても、自らの意思のみで次代会長を指名する機会があったのにあえてその指名をせずに辞任をした者は、その辞任の効力が生じた以上は、次代会長の選任を教務役員会の決定に委ねることとする手続自体は不合理なものということができないからである。なお、原告らは、原告久保という次代会長の指名権を行使することができた者が健在で、本旨に従った指名が容易に実現できる状況であるのに、その原告久保に諮らなかったことは規則六条三項の趣旨を潜脱するものと主張するが、教務役員会の決議時には原告久保は会長ではなかったのであるから、原告らの主張は前提を欠く。
以上によれば、被告濱口を会長に選任する旨の教務役員会の決議は平成八年六月一四日に有効に成立したと見るべきである。右の教務役員会決議は、会議が開催されてはいないが、前記認定のとおり教務役員の全員が一致して決議内容に賛成して決議書に記名捺印しているのであるから、その決議としての効力を否定すべき理由はない。
なお、仮に右平成八年六月一四日の教務役員会の決議が、持ち回り方式によるもので現実の開催がない点でその手続に問題があるものであったとしても、同年九月一七日、被告増永正、増永定子、岡村さく及び被告濱口の出席並びに小池文子及び桑沢きぬの委任状提出により、同年六月一四日の教務役員会の決議の瑕疵は治癒されたあるいは同年九月一七日に有効な教務役員会の決議が成立したということができる。
5 その他実体上の争点について
(一) 原告松本が霊友会代表役員及び総務理事の地位にあるかどうか
前記のとおり、原告久保は平成八年一月一二日に会長を辞任しているのであるから、原告久保が平成八年六月一〇日に行った原告松本の霊友会の代表役員及び総務理事への任命は無効である。
したがって、原告松本は、霊友会の代表役員でも総務理事でもない。
(二) 原告浅川が第二五支部運営委員長、常務理事の地位にあるかどうか
原告浅川がその父の浅川治康の死亡後に霊友会の第二五支部の運営委員長に就任したことは当事者間に争いがない。
前記認定の事実によれば、原告浅川は、公平委員会から会費を納入しないとの理由で除名の決定を受けたことが認められ、本件訴訟において原告浅川が会長である被告濱口から、第二五支部運営委員長を解任する通告を受けていることは、当裁判所に顕著な事実である。
そして、第二五支部運営委員長は、支部長に準じて支部の運営を司る支部運営委員会の長であることについては当事者間に争いがないから、その解任については、支部長の解任について定める規則二五条三項が適用されると解すべきであり、したがって、支部運営委員長が不適任と認められるときは、公平委員会の決定により、会長がこれを解任することができると解すべきである。
そうすると、原告浅川が被告濱口を霊友会の会長とは認めず、被告霊友会に会費を納入していないことは、当事者が明らかに争わない事実であるから、解任の理由である「不適任」と認められる事由があるというべきである。なお、公平委員会の決定は除名の決定であって、支部長としての解任の決定ではないが、その趣旨には当然支部長を解任する趣旨が含まれていると解されるから、原告浅川は、第二五支部運営委員長を解任されたというべきである。
また、平成八年六月九日に原告久保が行った原告浅川の常務理事への任命は、前記のとおり原告久保が会長でない以上、任命権者によらない任命であって無効である。
したがって、原告浅川は、現在、霊友会の第二五支部運営委員長でも常務理事でもない。
(三) 霊友会からの不法行為による損害賠償請求について
被告霊友会は、原告久保が霊友会の会長であると称し、原告らが霊友会の会員に対して会費を原告らに納入するように促した結果、被告霊友会の会費収入が減少して損害を被ったとして、原告らに対し、不法行為による損害賠償を請求している。
しかし、原告らと被告らとの間に霊友会の正当な会長がだれであるかについて争いがあることは、前記認定の事実によれば、霊友会の会員にとっては周知の事実であると認められるところ、前記認定のとおり、原告久保は霊友会の立教者である久保角太郎の実子で、初代会長の小谷喜美に養育され、同人から会長職を引き継いだ者であって、昭和四六年の会長就任以来、霊友会の最高指導者として存在してきたことは、会長を辞任し、霊友会との間で紛争となっている現時点においても、争うことはできない事実である。このような事実を前提とすると、霊友会の法的な意味での正当な会長が誰かという意味では、これを裁判手続の中で確定することができるとしても、会費をどちらの側に納入するかの会員の意思決定は、どちらの側が法的な意味での会長かということによるものではなく、むしろどちらの側が霊友会の最高指導者としての正統性を有するかという点についての各会員の宗教的自由に基づく選択の結果であると推認することができる。
そうであるとすれば、原告らが、原告久保を霊友会の会長であるとして霊友会会員に対して会費の納入を求めているという行為は、被告霊友会との関係において違法に被告霊友会の権利を侵害していると評価することはできないものであって、したがって、被告霊友会に納入される会費の減少をとらえて原告らの違法な行為による損害であると主張する被告霊友会の損害賠償請求の主張は理由がないというべきである。
6 法律上の争訟性を除くその他の本案前の争点について
(一) 被告濱口が霊友会会長の地位にないことの確認を求める訴えについての訴えの利益の有無
原告久保が被告霊友会会長の地位にあることの確認を求める訴えは、一たん会長辞任を表明した原告久保の会長たる地位の存続をめぐる紛争に関するものであり、被告濱口が会長の地位にないことの確認を求める訴えは、被告濱口を会長に選任した教務役員会決議の効力をめぐるものであり、前者の請求が棄却になれば後者の請求が自動的に認容になるというような関係にはない。
したがって、被告濱口が会長の地位にないことの確認を求める訴えには訴えの利益が認められ、被告濱口が会長の地位にないと主張する原告らは被告濱口らを相手として被告濱口が会長の地位にないことの確認を求める利益がある。
(二) 規則の有効確認請求に係る訴えについての訴えの利益の有無
規則が現在も効力があるかどうかは具体的権利義務関係でも法律関係でもない。また、規則が効力があること自体は両当事者において争わないところであり、確認の利益はない。
したがって、右訴えは不適法である。
(三) 当事者適格
(1) 原告適格
ア 原告久保が霊友会の会長の地位にあることの確認を求める訴えについて、原告久保自身は当然に原告適格を有する。右訴えについて、原告松本及び原告浅川は、自らの地位ないし権利関係についての確認を求めるものではない。したがって、原告松本及び原告浅川に原告適格が認められるためには、右両名が、組織上、原告久保の任免に関与するなど会長の地位に影響を及ぼすべき立場にあるか、又は自らが会長によって任免される立場にあるなど会長の地位について法律上の利害関係を有していることを要する(最高裁判決平成七年二月二一日民集四九巻二号二三一頁)。
原告松本は原告久保から代表役員の任命を受けた者であり、原告浅川は原告久保から常務理事の任命を受けた者であり、原告松本及び原告浅川はともに、「自らが会長によって任免される立場にある」者にあたるので、右訴えについての原告適格が認められる。
イ 被告濱口が霊友会の会長の地位にないことの確認を求める訴えについて、自ら霊友会会長を名乗っている原告久保は原告適格を有する。原告松本は被告濱口から代表役員を解任された者であり、原告浅川は被告濱口から第二五支部運営委員長を解任された者であり、原告松本及び原告浅川はともに、「自らが会長によって任免される立場にある」者にあたるので、右訴えについての原告適格が認められる。
ウ 原告松本が霊友会代表役員の地位にあることの確認を求める訴えについては、原告久保は、前記認定のとおり霊友会会長ではなく代表役員を任命する権限を有する者ではないので、原告松本の地位に影響を及ぼす者ではなく原告適格を有しない。また、原告浅川は、原告松本の地位に影響を及ぼす者ではなく原告適格を有しない。
(2) 被告適格
原告久保が霊友会の会長の地位にあることの確認を求める訴え、被告濱口が霊友会の会長の地位にないことの確認を求める訴え及び原告松本が霊友会の代表役員の地位にあることの確認を求める訴えにおいて被告適格を有する者は霊友会のみである。原告久保が霊友会会長であるかどうか及び被告濱口が霊友会会長でないかどうかについて、原告らの被告霊友会に対する訴えに対する判決は対世的効力を持つので、霊友会を被告にすれば必要にして十分だからである(最高裁判決昭和四四年七月一〇日民集二三巻八号一四二三頁、最高裁判決昭和六二年五月二九日集民一五一号一一七頁)。
したがって、右各訴えのうち、原告らの被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口に対する訴えは不適法である。
三 請求に対する判断
1 甲事件について
甲事件の請求のうち、原告らが被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口に対して原告久保が霊友会の会長の地位にあることの確認を求める訴え、原告らが被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口に対して被告濱口が霊友会の会長の地位にないことの確認を求める訴え、原告久保太郎及び原告浅川重美が被告らに対して原告松本が霊友会の代表役員の地位にあることの確認を求める訴え、原告松本廣が被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口八重に対して原告松本が霊友会の代表役員の地位にあることの確認を求める訴え並びに原告らが被告らに対して昭和五三年三月七日に変更された別紙「宗教法人「霊友会」規則」が霊友会の規則として現に効力を有することの確認を求める訴えは、不適法として却下し、原告らのその余の請求は、いずれも理由がないから棄却する。
1 原告らが被告らに対して原告久保太郎が被告霊友会の会長の地位にあることの確認を求める請求に係る訴えのうち、原告らの被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口八重に対する訴えをいずれも却下する。
2 原告らが被告らに対して被告濱口八重が被告霊友会の会長の地位にないことの確認を求める請求に係る訴えのうち、原告らの被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口八重に対する訴えをいずれも却下する。
3 原告らが被告らに対して原告松本廣が被告霊友会の代表役員の地位にあることの確認を求める請求に係る訴えのうち、原告久保太郎及び原告浅川重美の被告らに対する訴え並びに原告松本廣の被告増永雄俊、被告増永正及び被告濱口八重に対する訴えをいずれも却下する。
2 乙事件について
乙事件の請求のうち、被告霊友会の原告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がないから棄却し、被告霊友会のその余の請求は、原告らが請求の趣旨で禁止を求めている霊友会の役員の名称を名乗り、あるいは自らの活動を霊友会の名称を付して行い、また、被告濱口が霊友会の正当な会長として認められないとして文部大臣に対して規則変更の認証をしないように働きかけていることは、原告らが自ら認めるところであり、原告らが霊友会においてその主張する役職の地位にないことは前記認定のとおりであるから、被告霊友会の人格的利益に基づき、原告らの行為の禁止を求める請求として理由があるので認容する。
3 丙事件について
原告久保が霊友会の会長でないことは前記のとおりであり、原告久保が請求権の根拠として主張する宗教団体霊友会の会主としての地位は、霊友会の会長の地位と一体となったものであって、原告久保が霊友会の会長でない以上、霊友会の会主としての地位にもないというべきである。
したがって、丙事件の請求は理由がないから棄却する。
4 よって、訴訟費用について民事訴訟法六一条、六四条一項、六五条一項を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官・菅原雄二、裁判官・小林久起、裁判官・松山昇平)
別紙宗教法人「霊友会」規則<省略>
霊友会規範<省略>
物件目録(一)〜(三)<省略>