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東京地方裁判所 平成9年(特わ)2569号

主文

被告人和田電気株式会社を罰金四〇〇〇万円に、被告人和田一を懲役一年六月に処する。

被告人和田一に対し、この裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人和田電気株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都新宿区山吹町三三三番地に本店を置き、各種電気設備装置の設計工事施工等を目的とする資本金一六〇〇万円の株式会社、被告人和田一(以下「被告人」という)は、被告会社の取締役会長として、被告会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人和田は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億一七一二万五二二六円(別紙1の1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成六年二月二八日、東京都新宿区三栄町二四番地所在の所轄四谷税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が三二五八万一〇六六円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成九年押第一九一二号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四三〇九万五三〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

第二  平成六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億四九六万二六七八円(別紙1の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成七年二月二八日、前記四谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が零で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成九年押第一九一二号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億一三五三万六六〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

ものである。

(証拠の標目)

括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。

判示事実全部について

1  被告人の公判供述及び検察官調書四通(乙2ないし5)

2  和田一彦の検察官調書(甲17)

3  和田博の検察官調書三通(甲18ないし20)

4  黒川光春の検察官調書三通(甲21ないし23)

5  大蔵事務官作成の材料費調査書(甲1)、外注費調査書(甲2)、福利厚生費調査書(甲5)、交際費調査書(甲6)、雑費調査書(甲7)、受取利息調査書(甲8)、雑収入調査書(甲9)、雑損失調査書(甲10)、交際費等の損金不算入額調査書(甲12)、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲14)、繰越欠損金の当期控除額調査書(甲15)及び領置てん末書(甲25)

6  検察事務官作成の報告書二通(甲28、29)

7  東京法務局新宿出張所登記官作成の商業登記簿謄本(乙6)及び閉鎖登記簿謄本二通(乙7、8)

判示一の事実について

1  大蔵事務官作成の経費調査書(甲3)、従業員退職金調査書(甲4)及び欠損金額調査書(甲16)

2  押収してある法人税確定申告書(平成九年押第一九一二号の1)

判示第二の事実について

1  大蔵事務官作成の事業税認定損調査書(甲11)及び寄付金の損金不算入額調査書(甲13)

2  押収してある法人税確定申告書(平成九年押第一九一二号の2)

(法令の適用)

※ 以下の「刑法」は、平成七年法律第九一号による改正前のものである。

罰条

被告会社につき 判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

被告人につき 判示各事実につき、いずれも法人税法一五九条一項

刑種の選択

被告人につき いずれも懲役刑

併合罪の処理

被告会社につき 刑法四五条前段、四八条二項

被告人につき 刑法四五条前段、四七条本分、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

刑の執行猶予

被告人につき 刑法二五条一項

訴訟費用

被告会社及び被告人につき 刑訴法一八一条一項本文

(量刑の理由)

本件は、被告人が実質的に経営する各種電気設備装置の設計工事施行等を目的とする被告会社が二事業年度にわたり合計約一億五六〇〇万円の法人税額を免れた事案である。ほ脱額は少くなく、ほ脱率は一〇〇パーセントである。また、その手口は、ダミーの子会社を設立し、同社経由で材料を仕入れ、あるいは、同社に下請工事を発注した形をとるなどして架空の材料費や外注費を計上したほか、従業員の退職金を水増し計上したり、従業員に対する家電製品等の売上を除外するなど、多岐にわたっている上、右のようにして子会社に溜めた資金を更に別のダミー会社等に移転することによって脱税の発覚を免れようとするなど、計画的で悪質なものである。本件の動機をみても、被告人は、景気の先行きが悪いと予想されることから、将来被告会社の経営状態が悪化する場合に備えて資金を留保しておこうと思ったとか、高額の利益が上がっていることが取引先に知れると工事代金の値引きを要求されたりすると思ったなどと供述しているが、いずれも格別斟酌するに値しないものである。これらの点からすると、被告人及び被告会社の刑事責任は到底軽視できるものではない。

しかし、被告会社は、その後修正申告の上本税その他を納付済みである上、今後被告人が被告会社の経営から退き、役員らの合議によって経営を行うことなど、経営健全化のための方策を模索中であり、被告人は、本件犯行を認め反省の態度を示しており、前科がないことなど、被告人及び被告会社のために酌むべき事情も存するので、以上の諸事情を総合考慮し、主文の刑が相当と判断した(求刑-被告会社・罰金五〇〇〇万円、被告人・懲役一年六月)。

(検察官千葉雄一郎、国選弁護人長岡調治各出席)

(裁判官 保坂直樹)

別紙1の1

修正損益計算書

自 平成5年1月1日

至 平成5年12月31日

<和田電気株式会社>

<省略>

別紙1の2

修正損益計算書

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

<和田電気株式会社>

<省略>

別紙2

ほ脱税額計算書

自 平成5年1月1日

至 平成5年12月31日

和田電気株式会社

<省略>

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

和田電気株式会社

<省略>

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