東京地方裁判所 平成9年(特わ)424号 判決 1997年6月13日
本店所在地
東京都世田谷区三軒茶屋一丁目三七番二号
株式会社三茶
(右代表者代表取締役 大鹿雅博)
本籍
東京都世田谷区野沢三丁目一三番
住居
同都同区野沢三丁目一三番五号
会社役員
大鹿貞博
大正一五年一二月四日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官藤原光秀、弁護人武田喜治各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社三茶を罰金三〇〇〇万円に、被告人大鹿貞博を懲役一年に処する。
被告人大鹿貞博に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社三茶(以下「被告会社」という)は、東京都世田谷区三軒茶屋一丁目三七番二号に本店を置き、パチンコ遊技場の経営等を目的とする資本金一二〇〇万円の株式会社であり、被告人大鹿貞博(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上
第一 平成四年六月一日から平成五年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億九九二〇万四九〇三円(別紙1の修正貸借対照表参照)であったにもかかわらず、平成五年七月三〇日、東京都世田谷区若林四丁目二二番一四号所在の所轄世田谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二億六九一二万〇八四七円で、これに対する法人税額が九六四三万四四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成九年押第六四三号の1)を提出し、そのまま法的納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億四五二一万五九〇〇円と右申告税額との差額四八七八万一五〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
第二 平成五年六月一日から平成六年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億二一八一万一六二三円(別紙2の修正貸借対照表参照)であったにもかかわらず、平成六年八月一日、前記世田谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億一五九一万四九八二円で、これに対する法人税額が三九五四万六四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額七九二五万七七〇〇円と右申告税額との差額三九七一万一三〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
第三 平成六年六月一日から平成七年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億〇〇七四万三八八九円(別紙3の修正貸借対照表参照)であったにもかかわらず、平成七年七月三一日、前記世田谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億一六六二万六三九四円で、これに対する法人税額が四一一八万四七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額七二七二万八六〇〇円と右申告税額との差額三一五四万三九〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実について
一 被告人及び被告会社代表者の当公判廷における各供述
一 被告人の検察官に対する供述調書九通
一 大鹿雅博(被告会社代表者、五通)、佐瀬毅及び大鹿彰(二通)の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の現金預金調査書、割引債券調査書、大鹿貞博(代表者)勘定調査書、大鹿雅博(専務)勘定調査書、未払金調査書、未納事業税調査書及び領置てん末書
一 検察事務官作成の事業税認定損及び税務署所在地に関する各捜査報告書
一 登記官作成の登記簿及び閉鎖登記簿(三通)の各謄本
判示第二及び第三の事実について
一 大蔵事務官作成の仮払金調査書
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の納税充当金から支出した事業税等調査書
一 押収してある法人税確定申告書一袋(平成九年押第六四三号の1)
判示第二の事実について
一 押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)
判示第三の事実について
一 検察事務官作成の未納事業税に関する捜査報告書
一 押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、刑法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重した刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、情状により刑法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、さらに、被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑に処せらるべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、刑法四八条二条により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金三〇〇〇万円に処することとする。
なお、右の刑法四五条等の適用は、平成七年法律第九一号附則二条二項、三項によるものである。
(量刑の理由)
本件のほ脱法人税額は三期合計で一億二〇〇三万円余で、ほ脱率は通算四〇・四パーセントである。このような脱税額、ほ脱率のほか、犯行の動機、態様、被告人の反省状況、被告会社の納税状況(附帯税を含め完納済み)等を考慮して、主文のとおり量刑した。
よって、主文のとおり判決する。
(求刑 被告会社・罰金四〇〇〇万円、被告人・懲役一年二月)
(裁判官 安廣文夫)
別紙1
修正貸借対照表
<省略>
別紙2
修正貸借対照表
<省略>
別紙3
修正貸借対照表
<省略>
別紙4
ほ脱税額計算書
株式会社 三茶
(1) 自 平成4年6月1日
至 平成5年5月31日
<省略>
(2) 自 平成5年6月1日
至 平成6年5月31日
<省略>
(3) 自 平成6年6月1日
至 平成7年5月31日
<省略>