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東京地方裁判所 平成8(ワ)21296等 労働事件裁判例

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主 文

一 被告(反訴原告)らは、原告(反訴被告)に対し、連帯して金三〇一万八○○○円及びこ

れに対する平成九年一一月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二 原告(反訴被告)のその余の請求をいずれも棄却する。

三 反訴原告(被告)らの請求をいずれも棄却する。

四 訴訟費用は、本訴・反訴を通じてこれを六分し、その一を原告(反訴被告)の負担とし

、その余を被告(反訴原告)らの負担とする。

五 この判決は、一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一 請求

一 本訴

被告らは、原告に対し、連帯して金四九一万八○○○円及びこれに対する平成九年一一

月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二 反訴

反訴被告は、反訴原告らに対し、各金三〇〇万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌

日(平成一〇年四月三日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要

(以下、原告(反訴被告)を単に「原告」と、被告(反訴原告)Aと、被告(反訴原告)株式会社

Yを「被告会社」という。)

本件は 被告会社の従業員であった原告が 同社の代表取締役である被告Aから性的嫌が、 、

らせや強姦未遂の被害を受けた上、不当に解雇されたとして、被告らに対し、損害の賠償

を求め(本訴)、他方、原告の本訴提起等が不法行為であるとして、被告らが、原告に対し

、損害の賠償を求めている(反訴)事案である。

第三 当事者の主張

一 本訴

1 請求原因

(一) 当事者

原告は 平成五年一二月一〇日被告会社に入社した 被告Aは 被告会社の代表取締役で、 。 、

ある。

(二) 被告Aの不法行為

(1) 入社以来の性的嫌がらせ

ア 原告が被告会社に入社して間もないころから 被告Aは 社内に原告と二人きりになる、 、

と 自分の学生時代の卑猥な話等を延々と始めた 例えば 被告Aは 当時共同トイレ 風、 。 、 、 、

呂無しの長屋形式のアパートに住んでいて、隣室がデパートの女性従業員であり、休みの

日にうめき声が聞こえてきて、若かったら処理に困ったとか、相手がいつも変わっていた

とか、鍵穴が古いタイプで覗けたから、夏の暑い日に覗いてみたら、その女性が一人でや

っていたとか 原告に申し向け またそのときの女性の様子を被告Aは悶え声を真似ながら、 、

、全身で実演して原告に見せた。そして、そのような話をしては、原告の反応をじっと窺

ってきた。

イ また、従業員のBと原告に聞こえよがしに猥褻な話を始め 「鶯谷の近くに立ちん坊が、

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いっぱい居て国籍もいろいろだ。ブラジル、アルゼンチンもいたけど、相場はいくらだろ

うかブラジルではいくとき何と叫ぶんだろうねC君知ってるあっちの男は太くて強いんだろ

うね君、外人の棒って経験あるかい僕も真ん中の棒に自信があるから、フンフン言わせる

自信があるんだ 「C君、白髪って下の方にも出るの君の下の毛はどんな状態僕見たいな。」、

」などと、原告がいくら「仕事をしましょう 」と話の腰を折っても再三再四猥褻な話を。 。

繰り返してきた。

ウ また、Bが不在の時、原告がコピーを取っていると、被告Aはやおら椅子から立ち上が

り、さりげなく後ろ手で原告の臀部をなでていったりした。このように被告Aは、必ずBが

不在の時をねらって原告に対して性的嫌がらせを繰り返してきた。

エ また 平成七年の八月上旬ころには 被告Aは 自分のデスクの引き出しからポルノビ、 、 、

デオテープを取り出し、社内のビデオにセットして原告に無理強いして当該ポルノを見せ

た 原告は 仕事中だから消してください と何度も頼んだが 被告Aはポルノの悶え声。 、「 。」 、

をまねた上 君もこういう声を出すのもっと激しいのぼかしが入っていて肝心な部分が見、「

えない。今度は無修正のものを見つけて来よう。このビデオみたいに三人プレイがしてみ

たい。君はやったことある今度試してみようよ 」などと原告に申し向けた。。

オ また同じころ、被告会社の他の社員が隣の居酒屋でアルバイトをしていた中国人女性

と社内で性交渉していたのを 酔って帰社した被告Aが発見し それ以降 その目撃した描、 、 、

写をうめき声を上げながら細部にわたって再現し、原告と二人になると昼、夕となく側に

付きまとって全身で再現し続けた。これは平成七年いっぱい続いた。

カ また、平成八年の一月四日の仕事始めの日には、夕刻五時半ころから新橋の居酒屋「

α で 原告と被告Aとが新年の初心の話などをしていたところ 徐々に話をそらせ 被告」 、 、 、

Aは両方の靴を脱ぎ 両足でテーブルの下から向かい側の席の原告の足を包み込み こすっ、 、

た上 「一回だけでいいから浮気をしよう。やらせてくれ。まだ七時前だから間に合う 」、 。

等と申し向けたので、原告は心底情けなくなって席を立って帰ろうとしたら、追いかけて

来て、駅前の交差点でもまだ「やらせてくれ。いいだろう 」と。

言いつのり、原告は公衆の面前でそのようなことを言われるので、実に不快で恥ずかしく

「やめてください 」と叫んで駅の改札に逃げ込んだ。、 。

(2) 強姦未遂

リフォーム代金の未払いのこととかで、平成八年六月ころからヤクザらしき者が、被告

会社に来るようになり いつも被告Aは逃げてしまい 原告のみが社内に残されていつも一、 、

人で応対させられていた 平成八年九月六日 この日は男二人のヤクザらしき者(うち一人。 、

は訴外D) と女一人(運転手とのことであった )が来て 被告Aは二〇一号室にいた原告の。 。 、

ところへ封筒を持って来て この封筒の中に確かに四〇万円入っているか 君も数えてく、「 、

れ。Dらに渡すから 」と数えさせた。それらの者が帰った後、被告Aは現場監督の者(E)。。

と手打ちだといって酒を飲み始め その後Eは帰った 午後五時一〇分過ぎころ 原告が時、 。 、

間なので帰宅しようと準備していたところ、隣室に被告Aが入って来た。被告Aは外部への

ドアを閉め、部屋の仕切りのドアにも鍵を掛けた。原告が仕切りドアの方へ行こうとした

ら、突然後ろから羽交い締めにされた。原告は「やめてください 」と言ったが、被告A原。

告の胸部を揉み出し 抵抗したところ 被告Aは原告の右上顎部を殴打し 原告のキュロッ、 、 、

ト・スカート内に手を入れて来たので、原告はしゃがんでくぐり抜け、クーラーのところ

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まで逃げた 被告Aはズボンのベルトを緩め ジッパーを引き下げながらクーラーのところ。 、

まで原告を追って来て、今度は正面から原告を抱きすくめた。原告の両腕は自由にならず

「止めて、止めてください 」ともがいたところ、被告Aは 「面接に来たときから・・、、 。 、

入った日から・・、一度でいいから一発・・」と言いながら唇を近づけてきた。原告は「

いやだ!いや!!」と顔を必死に振り続け、もがいて体を揺すったので、被告Aの腕が少し緩

み 原告は流し台のところに逃げた 仕切りのドアの方へ逃げたかったが 被告Aがドアの、 。 、

前に立ち塞がるようにしたので、そちらには逃げられなかったのである。またそこで被告

Aに抱きすくめられたので 逃げようともがいていると 夕刻には珍しく突然電話が鳴った、 、

被告Aの動きが止まり 両腕の力が緩んだので 原告はとっさに電話に飛びついて受話器。 、 、

をつかみ、Bの声だったので、原告は「社長、B君から電話!電話!」と叫んで、受話器を被

告Aに投げつけ、他の荷物はそのままにして、とり

あえず家の鍵だけが入っているハンドバッグをつかみ、仕切りドアの鍵を開けて二〇二号

室へ出て、すぐ右側の鉄製の外部へのドアの鍵も開けて外へ飛び出し、新橋駅まで一気に

走って逃げることができた。

不当解雇

被告Aは 原告に対し 平成八年九月二六日到達の書面により 同年一〇月二五日をもっ、 、 、

て解雇する旨の意思表示をしたが、これは不当な解雇である。

(三) 被告会社の責任

被告Aの右(二)の各行為は 被告会社の業務に従事する過程 又はこれに付随する過程で、 、

行なわれたものである。

(四) 損害

(1) 前記(二)(1)及び同(2)の各不法行為による損害

前記(二)(1)及び同(2)の一連の不法行為により原告は多大の精神的苦痛を被った。その

慰謝料は三〇〇万円を下らない。

(2) 前記(二)(3)の不法行為による損害

ア 原告は、平成九年七月まで再就職できなかった。

イ 原告の賃金は月額一九万五〇〇〇円(毎月二五日払い)であったから、解雇されなけれ

ば、平成八年一〇月二六日から平成九年七月二五日までの九か月分の賃金として一七五万

五〇〇〇円を取得できたはずである。ここから失業保険として得た八三万七〇〇〇円を控

除した九一万八〇〇〇円が原告の損害である。

(3) 弁護士費用

一○○万円

(五) まとめ

よって 原告は 被告Aに対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき 被告会社に、 、 、

対しては商法二六一条三項、七八条二項、民法四四条一項に基づき、連帯して四九一万八

〇〇〇円及びこれに対する被告Aの不法行為の日の後である平成九年一一月一八日から支払

済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2 請求原因に対する認否

(一) 請求原因(一)(当事者)の事実は認める。

(二) 請求原因(二)(被告Aの不法行為)について

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(1) 同(1)(入社以来の性的嫌がらせ)の各事実は否認する。

(2) 同(2)(強姦未遂)の事実は否認する。当日原告はいつもより遅くまで居残っていたが

Bからの電話を取り次いだ後 午後五時半ころ 社長 お先に失礼します といつも通、 、 、「 、 。」

りの挨拶をして退社した。

強姦未遂の事実は原告が捏造したものであり、原告が虚偽の事実を捏造した理由は次の

とおりである。

ア 原告は かねてより被告Aから勤務態度不良について注意されており 平成八年初め以、 、

降は 「追い出されるのではないか 」と感じるようになった。そこで、原告は、 。

、一方で辞めさせられないようにすることを考えながら、他方で転職のシナリオを考える

ようになった。

イ 平成七年秋ころから、マンション(コーポラスβ)の改修工事を巡って、訴外株式会社

Z(以下 株式会社Z という )の代表取締役であるFが被告会社に対して不穏な行動を起「 」 。

こすようになり、現場監督であったEを庇ったとして、平成八年六月ころには、Fの依頼を

受けたDが被告会社に出入りするようになった 原告は 転職の可能性を検討していたこと。 、

もあって、DやFと通じ、被告らの情報を提供するようになった。

ウ 平成八年九月六日午後、被告Aは、Dの要請に応じて紛争を決着させるべく、被告会社

において話し合いを持ち Dに金銭を支払って解決した この件の成り行きを注視していた、 。

原告は Eが起案した告訴状を盗み見して 情報が相手方に筒抜けになっていることについ、 、

て原告を疑っていた被告Aから 何の真似だ スパイか 首切ってやろうか などと咎め、「 。 。 。」

られた。

エ 被告Aが原告のことをかなり強く疑いだしたことを悟った原告は 解雇に対する対策を、

具体化しなければならないと考えた。そこで、考えついたのが、本件「強姦未遂」事件の

シナリオである。原告は、その後、被告らに解雇させて賠償金を取ることに方針を切り替

えている。

(3) 同(3)(不当解雇)のうち 被告Aが 原告に対し 平成八年九月二六日到達の書面によ、 、 、

り、同年一〇月二五日をもって解雇する旨の意思表示をした事実は認め、不当解雇である

ことは争う。

(三) 請求原因(三)(被告会社の責任)の事実は否認する。

(四) 請求原因(四)(損害)の各事実は否認する。

3 抗弁(解雇の正当性。請求原因(二)(3)に対し)

原告の解雇理由は次のとおりであり、解雇は正当なものである。

(一) 原告は、コーポラスβ改修工事を巡って、被告会社に対し不当な金銭請求をしてい

た株式会社ZのFや、同人から仲介を頼まれたとするDに対し、被告らの経理資料や動静に

ついて、不法に情報を提供した。

(二) 原告は 平成八年九月六日に被告Aから強姦未遂の被害を受けたなどと虚偽の事実を、

でっちあげ それをネタにして被告らから金銭を喝取しようと企て 同月九日 被告Aに対、 、 、

し、執拗に右不法行為の言質をとろうと迫り、それを口実にして給与の増額を要求し、さ

らに同月一二日 ヤクザが押し掛けてきました などと虚偽の事実をでっちあげた上 同、「 」 、

月一三

日、被告Aにヤクザが来ると思わせて、自らの要求に応じさせようとした。

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(三) 原告は 平成八年九月六日に被告Aから強姦未遂の被害を受けたなどと虚偽の事実を、

でっちあげた上、それを理由に同月一三日、無期限の有給休暇を要求した。

4 抗弁に対する認否

(一) 抗弁(一)の事実は否認する。

(二) 抗弁(二)の事実は否認する。

(三) 抗弁(三)のうち、原告が平成八年九月一三日に明確に日数を特定することなく有給

休暇を要求した事実は認め、その余は否認する。

二 反訴

1 請求原因

(一) 原告の不法行為

原告は 被告Aから性的嫌がらせや強姦未遂の被害を受けたなどと虚偽の事実をでっちあ、

げ、次のような不法行為を行った。

(1) 被告らから金銭を喝取しようと企て、平成八年九月九日、被告Aに対し、執拗に強姦

、 、 、「未遂の言質をとろうと迫り それを口実にして給与の増額を要求し さらに同月一二日

ヤクザが押し掛けてきました などと虚偽の事実をでっちあげた上 同月一三日 被告Aに」 、 、

ヤクザが来ると思わせて、自らの要求に応じさせようとした。

(2) 平成八年九月九日から 品川労政事務所に対し 強姦未遂等の事実があったと申告し、 、

て、被告らの名誉を毀損した。

(3) 被告らから金銭を喝取しようと企て、Dに依頼して、同人をして、平成八年九月一八

日被告会社を訪れさせ、被告Aに対し 「三〇〇万、五〇〇万」という金額を挙げて、被告、

らを脅迫させた。

(4) 本訴を提起し、被告らの名誉を毀損した。

(5) 株式会社ZのFと共謀して、被告らの名誉・信用を毀損して被告らに損害を与えるこ

とを企て、平成九年三月一〇日ころから同月一七日ころにかけて、被告らを誹謗中傷する

怪文書を被告会社が管理を委託されているマンション等の理事長宛に郵送したり、マンシ

ョン全戸に配布したりした。

(二) 損害

被告らは、右(一)の各行為により、著しく名誉・信用を毀損された。その損害は各自三

〇〇万円を下らない。

(三) まとめ

よって、被告らは、原告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、各自三〇〇

万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日(平成一〇年四月三日)から支払済みまで民法

所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2 請求原因に対する認否

(一) 請求原因(一)(原告の不法行為)のうち 同(2)の平成八年九月九日から品川労政事務、

所に対し強姦未遂等の事実があったと申告した

事実は認め その余は否認する 原告が被告Aから実際に性的嫌がらせや強姦未遂の被害を、 。

受けたことは、前記一1(二)のとおりである。

(二) 請求原因(二)(損害)の事実は否認する。

第四 当裁判所の判断

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一 本訴について

1 請求原因(一)(当事者)の事実は当事者間に争いがない なお 証拠(甲一五 一八)及び。 、 、

弁論の全趣旨によれば、被告会社は、マンションの維持・管理等を業とする会社であり、

その従業員数は、原告が入社してから解雇されるまでの間、原告を含めても三、四名程度

であったと認められる。

2 請求原因(二)(被告Aの不法行為)について

(一) 請求原因(二)(1)(入社以来の性的嫌がらせ)について

これらの事実についての物的証拠はなく 供述証拠も 直接的なものは原告の陳述(甲一、 、

五、一八、本人尋問)以外にはない。

しかし、原告の陳述が具体的であること、原告は、平成八年九月六日以降の早い時期に

品川労政事務所のH職員にこれらの事実について話しているところ(甲一〇の1 2) 短期間、 、

の間にこれだけ多数の事実を捏造したとは考え難いこと、原告から相談を受けていたとい

うGの陳述書(甲一六)も原告の主張に沿うものであること そして 後記(二)の強姦未遂の、 、

事実についての検討結果からすると 請求原因(二)(1)の各事実も認められるというべきで、

ある。

(二) 請求原因(二)(2)(強姦未遂)について

(1) 同事実についての原告の陳述(甲一五 一八 本人尋問)は具体的 詳細かつ明確であ、 、 、

る。

しかし 被告Aは 同事実の存在を否定し 同事実は原告が捏造したものであり 原告に、 、 、 、

は捏造する動機があったとの被告らの主張に沿う陳述をしている。

そこで、平成八年九月六日前後の状況、原告の陳述の信用性を失わせる事実の有無、被

告らの主張に沿う証拠等について検討することとする。

(2) 平成八年九月六日前後の状況

ア 平成八年九月六日午後五時以前

平成八年九月六日午後五時以前(同月五日以前を含む )の状況については 証拠(甲一五。 、

一八 乙二三 証人E 原告 被告A)及び弁論の全趣旨から 以下の限度で確実な事実と、 、 、 、 、 、

して認定することができる(株式会社Zとのトラブルの詳細等については、被告Aの陳述等

のみから、これを認定することは困難である。)。

(ア) 平成八年六月ころ、株式会社Z(F)とトラブルを起こしたE(株式会社Zの元従業員)

を被告会社が庇っているとして、

Fの依頼を受けたDが被告会社に出入りするようになった(被告会社は 電話の取次等の便宜、

や仕事をEに提供していた ) このDは 頭髪がパンチパーマであるなど 暴力団組員風の。 。 、 、

風体をしていた。

、 、 、(イ) 平成八年九月六日正午前後ころ E D及びDの連れの男女が被告会社事務所を訪れ

被告Aを交えて、話し合い及び金銭の授受が行われた。そして、Dと連れの男女が帰ると、

被告AとEはビール等を飲み始め 途中原告にビール等を買いに行かせた その後 Eも被告、 。 、

会社事務所を去り 遅くとも午後四時三〇分ころ以降は 原告と被告Aの二名だけが被告会、 、

社事務所にいる状態になった。

イ 平成八年九月七日以降

以下の事実は 証拠(認定事実の末尾に記載)及び弁論の全趣旨から 確実な事実(ただし、 、

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、(ケ)は記録上明らかな事実)として認定することができる。

(ア) 九月七日(土曜日)及び八日(日曜日)は原告は休日であった。

(イ) 同月九日 原告は 品川労政事務所に相談の電話をし その助言を受けて 被告Aと、 、 、 、

の会話をテープに録音した(甲四、一〇の1、2、乙二五。会話の内容は後記ウのとおり。)

。原告は、同日中に、D、第二東京弁護士会及び三田労働基準監督署にも電話をした(乙二

五)。

(ウ) 同月一二日 原告は A社長へ ヤクザが押しかけて来ました 部屋に入り(しばら、 、「 。 。

くいた)が 又 出直すと言って昼食に出たから 身の危険を感じますので 早退させて頂、 、 、 、

きます とのメモ(乙三)を残して早退した しかし これは原告の虚言であり 当日ヤク。」 。 、 、

ザが押しかけた事実はない。

(エ) 同月一三日、原告は、再び被告Aとの会話をテープに録音した(甲四。その内容は後

記エのとおり。)。被告Aはこの日、有給休暇の取得を求める原告に対し、解雇を予告する

発言をした。

(オ) 同月一七日、品川労政事務所のH職員が被告会社を訪問し、被告Aに和解を勧めた。

しかし、被告Aはこれに応じなかった(乙二四)。

(カ) 同月二四日、原告は、実弟の知り合いであるK弁護士に相談に行った。

(キ) 同月二五日、原告は、医療法人社団緑和会ストレスケア日比谷クリニックを受診し

、 。 、 、心的外傷後ストレス障害と診断された 同クリニックのI医師は 同月二五日の診察時

原告は明らかな、うつ状態と不安焦燥状態であった、心理テスト上も明らかな精神の不安

定と、うつ状態が認められた、ただし、もともとの性格は未熟でなく、

。 、ほがらかで明るい性格であることもほぼ確認できたとの所見を示している (以上につき

甲一、二、一九)

(ク) 同年一〇月二日 K弁護士が原告の代理人として 被告らに対し 損害の賠償を求め、 、 、

る内容証明郵便を送付した(乙三六)。

(ケ) 同年一〇月三一日、原告が本訴を提起した。

ウ 平成八年九月九日の原告と被告Aの会話

同日午後に原告と被告Aが交わした会話は次のようなものである。

原告「あのう、社長覚えていますかベルトに手が掛かって、ジッパーっていう、覚えてい

ますか私、本当に、怖かったんですよ、あの 」。

A「覚えていない、全然、だからね、うん、途中、Lが来たよね 」。

原告「いや、Lさん来た時には、私は、もう走って逃げていました。B君の電話が鳴ったの

は社長、覚えているでしょう

A「覚えていない 」。

原告 いや Bさんの電話が鳴ったから あれ 五時二五分ですよ で あれ きっと あ「 、 、 、 。 、 、 、

の電話、腹立たしかったでしょうね。あの電話で中断された私は、もうちょっとで社長、

乗しかかられるところをね・・ で B君の電話を私が渡したでしょうそれで 私 片付け。 、 、 、

もしなきゃいけない―と思いながら、だって、社長がもう普通じゃない状態だから、さす

がに怖くなって、そのままにして、だから、火は出ていないだろうか、社長は大丈夫だろ

うかって 」。

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A だから だからね Lが来てね Jのその件を話しててね こう ズルズルズルーと こ「 、 、 、 、 、 、

こで寝ていたんだよ 」。

(中略)

原告「とりあえず、Bさんの電話取ったのを社長、覚えていないの

A「覚えていない 」。

原告「じゃあ、ベルトに 」。

A「ただね 」。

原告「ベルトに手を掛けたっていう、あの怖ろしいあれは、本心なんでしょう本当にやる

気だったでしょう私本当に怖かった 」。

A「本当に、やる気だったんじゃあないの 」。

原告「いや、そうでしょう

A「わかんねえんだよ、だから。気がついたらなんか、あのう、ここで寝ててさあ 」。

原告「じゃ、ほんとに 」。

A「ただ、ベルトが、ベルトが緩んでいて 」。

原告「そうでしょう。チャックも開いてたでしょう

A「だから、何でかなあと思って 」。

原告「それ、そうよ。で、私が、やめて、やめてーと喚いて、後ろから抱きしめて、羽交

い締めにして、ここ、ここをガーンってやって、ここ痛いの。あのう、社長忘れた目じゃ

なくって良かったけれど・・コンタクト割れちゃうけど 」.。

A「で、俺がねえ、

ズルズルといって ・・ここが・・落っこっちゃって 」、 。

(中略)

原告「じゃあ、私のこと、後ろから羽交い締めにして、クーラーのところに追いつめて、

次、向こうの換気扇の回っている、トイレのところに追いつめて、グーッとやって、あの

胸揉んだのとか 本当に覚えていない 股の キュロットはいてたけど 下から手が入、 、 」「 、 、

って、あれは、じゃ、本当に希望していたことが酔った勢いで出ちゃったのね 」。

A「出ちゃったんだろうねえ 」。

原告「もの凄く怖かった、私。いや、本当に。もう聞いてくれないし、目が据わちゃって

るから。いいだろう、いいだろう、一発っていう、ものの連呼だもの。だから、入った時

からって言ってたよ。面接の時から一回って言うから、私は仕事をしに来てるって 」。

A「んなこと、本当かよー 」。

原告「本当に 」。

A「全然だよー、んなものー 」。

原告「あ、じゃ、それって本心なんだ、きっと 」。

A「本心だなー 」。

(中略)

原告「ベルト緩んで 」。

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A「ベルトが緩んで、だから 」。

原告「緩んでチャックが、こう三分の一程開いて 」。

A「うん、うん 」。

A「Lがいたずらしたんじゃないかーと思ってさ 」。

原告「じゃ、私を抱きすくめた、というのは覚えているでしょ

A「覚えていないんだよ 」。

原告「ここのところ、こっち側へ後ろから来た時に、ここ、こうやって・・覚えていない

ほんとうに 「じゃ、歯がグラグラ 」」 。

A「嘘だあ 」。

原告「いやあ、私、歯が強いからいいけど、ここ、あの、サロンパス貼るっていうの、だ

から、本当に怖かった。力はすごいし。だから、潜在意識の中に、いつかは私をっていう

のは、本当にあったんだな、と 」。

A「ふふん 」。

原告「もう、ああいう、ことはないね 」。

A「だから、もう、ほんとに、だから、だから、あのう、Eさんが、いつ帰ったのかもわか

らないから だから書類が Jさんの書類がね 何でないのかわからなかったんだよ だか、 、 、 。

、 、 、 、 、 、ら だから Eさんに電話したら したら フロッピーにいっぱい入っているから あの

それ一枚持って行って、えーっ、いいよってね、言ったって言うからさ、まあ、その辺か

らもう・断片的に、だから・・なんかね 」。

原告「鍵、社長掛けたの覚えているでしょうここの鍵と、そこの。いや、ほんと 」。

A「覚えてるわけねえだろう、そんなの 」。

原告「はい

A「覚えてないってえの、だから 」。

原告「よく、そういうことを 」。

A「ほんとに覚え

て 」。

原告「私は、あのポチッというのね、中扉を押す音で、ハッと振り向いたの。何でこんな

。 、 、 。 、 。」音すんのかなって そしたら 社長 仁王様みたいな形相で・・ あと 本当に怖かっ

A「だから、頭に血い昇ったのかなあ。ほんじゃあ、だからね 」原告「人格、変わったな。

っ、と 」。

A「うん、いや、要はね、あのう 」。

(中略)

原告「うーん、まあ、ここだからいいけど、目のところ、メガネ割ってたら今ごろ、あれ

でしょう 」。

A そうか もし そうじゃなかったら いや 記憶ないんでーなんて言えないんだろうけ「 、 、 、 、

ど、じゃ、申し訳ない 」。

原告「今度やったら、私、殴るからね、灰皿で 」。

A「いや、申し訳ない 」。

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エ 平成八年九月一三日の原告と被告Aの会話

同日午前に原告と被告Aが交わした会話は次のようなものである。

原告「社長がなさった、九月六日になさったことを、当然、加味すれば、あれは法に触れ

ますから 」。

A「私は知らないって 」。

原告「でも、謝罪されましたよね 」。

A「だから、ご迷惑かけたようだったら、ごめんなさいって言うだけです 」。

原告「はあ、そうですか 「全く、そう罪の意識がないっていうか、誠意がないわけです。」

ね 」。

A「誠意よりも、なによりも、意識がないから 」。

原告「意識がないって、かわされましたか 」。

A「なんにも、それ・・ 」。

原告「ドアーに鍵を掛けて、あれは明らかに計画的ですよ、社長 「二か所、すべてで三。」

か所ですけども、鍵を掛けて、はっきり言って、強姦未遂ですよ 」。

A「ふーん 」。

原告「なんとも思われませんか

A「なーんともないよりも、何よりも・・うーん、記憶がないんだから 」。

オ 前記ウ及びエの会話の評価

前記ウ及びエの会話では 被告Aは有効な反論を全くしておらず 主として記憶がないと、 、

述べつつ、ズボンのベルトが緩み、チャックが開いていたことを認めた上、謝罪と見られ

る発言までしている 被告Aは この点につき 原告の背後に誰かいるに違いないと直感し。 、 、

原告の出方を探るため適当に受け答えをしたと陳述するが 甲第四号証中に被告Aの右意、 、

図に整合すると見られる発言を見出すことはできないのであって、同被告の右陳述は採用

し難い。

また 前記ウの会話は 被告Aが 初にドアに鍵を掛ける部分が後から出てくるなど 話、 、 、

が前後しているが そこでの原告の発言を繋ぎ合わせれば ほぼ請求原因(二)(2)の事実と、 、

一致し、そこに前後の矛盾等は見られな

い。このように、話が前後しているにもかかわらず、前後矛盾等が見られないということ

は、そのような事実が実際にあったか、実際にはなかったとすれば、原告が入念にストー

、リーを構成し頭に入れた上で被告Aとの会話に臨んだかのいずれかであると考えられるが

証拠上 そのような事実が存在しないにもかかわらず 被告Aが記憶がないというような曖、 、

昧な回答をする保障があったとは認められず、むしろ原告自身が著しく不利な立場に置か

れる危険が大きいのであるから、実際にはそのような事実がないのに、原告が虚偽のスト

ーリーを構成し被告Aとの会話に臨んだとは考え難い。

なお 前記ウの会話からは緊張感がさほど伝わらないが H職員から 録音を成功させる、 、 「

ためには、加害者に悟られないように、いつものとおりに様子を変えずに接してください

と指示されていたので 普通に振る舞うよう心がけたとの原告の陳述に不自然さはなく。」 、

、緊張感の欠如から、強姦未遂の事実の存在を疑うことはできない。

(3) 原告の陳述の信用性を失わせる事実の有無について

- 11 -

ア 原告は 午後二時過ぎにビール等を買いに行かされ Eは午後三時ころ帰ったと陳述す、 、

るが、乙第二六号証(領収証)によれば、原告がビール等を買った時刻は午後三時七分であ

ると認められる。そうすると、原告の陳述は時間の点では採用できないことになる。

しかし、これらの時間のずれは、強姦未遂を物理的に不可能ならしめるものではなく、

原告の陳述全体の信用性を失わせるものとまではいえない。

イ 原告が平成八年九月一二日に「A社長へ。ヤクザが押しかけて来ました。部屋に入り(

しばらくいた)が 又 出直すと言って昼食に出たから 身の危険を感じますので 早退さ、 、 、 、

せて頂きます とのメモを残して早退したが これは原告の虚言であり 当日ヤクザが押。」 、 、

しかけた事実がないことは 前記(2)イ(ウ)のとおりであり このような虚言の存在は 通、 、 、

常は陳述全体の信用性を失わせるものである。

しかし 原告は このようなメモを残したのは 強姦をしようとした被告Aを困らせてや、 、 、

りたかったからであると陳述しているところ、原告が実際に強姦未遂の被害を受けていた

とするならば、原告が述べるような心境になることも理解できないではない。そうすると

、本件においては、右の虚言の存在は、原告の陳述全体の信用性を失わせるものとまでは

いえないというべきである。

ウ 乙第二

五号証(報告書)によれば平成八年九月六日以前にも また前記(2)イ(イ)のとおり同月九日、

にも、原告からDに電話していることが認められ、この点が、被告らが原告とDとの関係を

疑う一つの理由となっている。

しかし、この点について、原告は、Dが被告会社の事務所に来ることがわかると被告Aが

いなくなってしまい 原告一人が取り残されて怖い思いをしていたため 被告Aが不在であ、 、

ることを知らせてDが被告会社の事務所に来ないようにするために電話をしたと陳述してい

るところ、原告が他の有効な防衛手段を持たない女性の従業員であることも考えると、原

告が右のような行動に出ることが不自然・不合理であるとまではいえない。

そして 前記(2)イ(イ)のとおり 原告が平成八年九月九日に品川労政事務所 第二東京、 、 、

弁護士会及び三田労働基準監督署に電話をし、その後弁護士に相談するなどしていたこと

からすれば、原告は公的機関、あるいはこれに準ずる機関の救済を求めていたと推認でき

るのでもって、原告からDに電話をしていた事実から、原告がDらと通じ強姦未遂の事実を

捏造したと推認することはできないというべきである。

(4) 被告らの主張に沿う証拠等について

ア Bの陳述書(乙三四)は 平成八年九月六日午後五時半ころ被告会社に電話した際に特に、

変わった様子はなかったとの内容であるが 同人が被告会社在勤中である(被告会社が従業、

員三、四名程度の会社であることは前記1のとおりである。)ことからすると、被告らの主

張と異なる陳述を期待できる立場にないことが明らかであり、その陳述をたやすく信用す

ることはできない。

イ Eの陳述書(乙三八)及び証言も 平成八年九月六日午後五時半前後に数度にわたって被、

告Aに電話したが被告Aは冷静な様子であったというなど、概ね被告らの主張に沿うもので

あるが 被告Aが原告との会話ではEがいつ帰ったのかもわからないと述べていること(前記、

(2)ウ)) Eは株式会社Zの元従業員であったが株式会社Zとトラブルを起こし被告Aに庇わ、

れ 電話の取次等の便宜や仕事も提供されていた者であること(同(2)ア(ア)) 及び証言態、 、

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度にも真摯とはいえないものがあったことから、その陳述をたやすく信用することはでき

ない。

ウ 被告Aは 強姦未遂は原告が捏造したものであるとして るる陳述するが その陳述は、 、 、

甲第四号証で同被告がしている発言と著しく異なっている点でまず信

。 、 、 、用し難いものがある 同Aは この点につき 原告の背後に誰かいるに違いないと直感し

原告の出方を探るため適当に受け答えをしたと陳述するが 採用し難いことは前記(2)オの、

とおりである。

その他にも、同被告は、原告がFやDと通じていた根拠として、Eと被告Aの他には原告し

か知らなかったEの所在をDが知っていたことや 平成九年八月二七日にDが情報源は原告で、

ある旨告げたことなどを挙げているが(乙二三)、前者については、他に知っていた者がい

ないと断定する根拠が不明であること、後者については、被告らに対し不当な要求をして

いる相手が、情報提供者を安易に告げるとは考え難いことや、答弁書には決定的ともいえ

るこの発言への言及がなく後から言及されるようになったという経緯に照らして、いずれ

も採用し難い。

そして 原告とF及びDの関係についても 信用できないEの陳述 その存在自体疑わしい、 、 、

Dの陳述等を基に 推測を加えたものであり 推認の基礎となる事実の存在が認め難く 推、 、 、

測の過程(被告Aの本人調書四五五項等)も合理的とはいえず、採用できるものではない(被

告らは答弁書において 被告Aが平成八年九月一二日に原告宅に電話をし 電話口に出た原、 、

告の母親に「会社のAです 」と名乗ったところ、原告の母親が原告に「いつもの人から電。

話よ と言って取り次いだことから 被告Aは Dが原告の自宅に度々電話をしていたと推。」 、 、

測したとも主張しているが、娘の勤務先の社長からの電話を、母親が右のように取り次い

だというのも不自然であるし そこからDが原告宅に電話をしていたことを推測するという、

のも到底合理的なものとはいえない。)。

エ なお、被告らは、原告が解雇に対する対策を具体化するために、強姦未遂事件のシナ

、 、 、リオを考えついたと主張するが 甲第四号証中には 前記(2)ウで認定したところのほか

社長 私をこう 解雇しよう とかいう気持ちはあるんですか 俺はね 解雇しような「 、 、 、 」「 、

んて今まで思ったことないのよ という会話も見られるところであり(11頁) 原告が解雇。」 、

を避けるために更に強姦未遂の話をする必要があったとは認められない。

(5) 以上検討した諸点 特に原告の陳述(甲一五 一八 本人尋問)が具体的 詳細かつ明、 、 、 、

確であること 他方 被告Aは 数日後の会話において 強姦されそうになったと述べる原、 、 、 、

告に対し、有効な反論を全くせず、かえって謝罪と見ら

れる発言までしていることからすれば 請求原因(二)(2)の事実が実際にあったと認められ、

るというべきである。

(三) 請求原因(二)(3)(不当解雇)及び抗弁(解雇の正当性)について

(1) 請求原因(二)(3)のうち 被告Aが 原告に対し 平成八年九月二六日到達の書面によ、 、 、

り、同年一〇月二五日をもって解雇する旨の意思表示をした事実は、当事者間に争いがな

い。

そこで、以下、解雇の正当性について検討する。

(2) 抗弁(一)について

、 、 、 、平成八年九月六日以前にも またその後にも 原告からDに電話していること しかし

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被告Aが不在であることを知らせてDが被告会社の事務所に来ないようにするために電話を

。することが不自然・不合理であるとまではいえないことは前記(二)(3)ウのとおりである

また 被告Aが 原告がFやDと通じていた根拠として述べるところを採用できないことは前、 、

記(二)(4)ウのとおりである。

他に抗弁(一)の事実を認めるに足りる証拠はない。

(3) 抗弁(二)について

甲第四号証によれば 平成八年九月九日の原告と被告Aと会話の中で 原告が 給料上げ、 、 「

てくださいね 」という発言をしたことが認められるが(8頁)、長い会話の中で一言出てい。

るにすぎず、その後この要求が繰り返されているわけではないのであって、金員を喝取し

ようという意図があったと認めることはできない。

次に 原告が同月一二日に ヤクザが押しかけて来ました とのメモを残したこと 及、 「 。」 、

びこれが虚言であったことは 前記(二)(2)イ(ウ)のとおりである しかし この点につい、 。 、

ての原告の陳述及び当裁判所の評価は前記(二)(3)イのとおりであって 原告が金銭喝取の、

手段として右のような虚言を行ったとは認められない。

そして、強姦未遂の事実が実際にあったと認められることは前記のとおりであり、原告

の右のような言動が解雇を正当化する事由になるということはできない。

(4) 抗弁(三)について

抗弁(三)のうち、原告が平成八年九月一三日に明確に日数を特定することなく有給休暇

を要求した事実は、当事者間に争いがない。

しかし、甲第五号証によれば、原告は法定の有給休暇の範囲内での休暇の取得を求めて

いたものであって、無限定な休暇の取得を要求する趣旨ではなかったと認められる。また

、強姦未遂の事実が実際にあったと認められることは前記のとおりである。

(5) 以上に

よれば 被告Aが被告会社の代表者としてした解雇は 客観的に合理的な理由を欠き社会通、 、

念上相当として是認することができないものであり、権利を濫用する違法な行為として不

法行為を構成するというべきである。

3 請求原因(三)(被告会社の責任)について

請求原因(二)(3)(不当解雇)の被告Aの行為が被告会社の代表者としてのものであること

は明らかである。

また 請求原因(二)(1)(入社以来の性的嫌がらせ)及び同(2)(強姦未遂)の被告Aの各行為、

は(1)カを除き勤務中に被告会社事務所で行われたものであり、また、(1)カも、勤務終了

後それに引き続いた時間と経過の中で行われたものであり、被告会社の代表者と従業員と

いう関係を利用して行ったと評価すべきものである。

したがって 被告Aの各不法行為は 被告会社の代表者としての職務を行うにつき行った、 、

ものであり、被告会社は、商法二六一条三項、七八条二項、民法四四条一項により、原告

に対し、損害賠償責任を負うというべきである。

4 請求原因(四)(損害)について

(一) 請求原因(二)(1)及び同(2)の各不法行為による損害

請求原因(二)(1)の被告Aの一連の不法行為(入社以来の性的嫌がらせ)は、長期間にわた

り執拗に行われたものであること 請求原因(二)(2)の不法行為(強姦未遂)は被告会社事務、

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所内で行われたもので、原告に不法行偽を誘引するような落ち度といえるものがないこと

甲第一九号証 原告の陳述及び前記2(二)(2)イ(キ)で認定したI医師の所見によれば 原、 、 、

告は、この不法行為により心的外傷後ストレス障害となり、不法行為後三年以上を経過し

た平成一一年一二月一日時点でもなお治療を継続中であると認められ、原告の被った精神

、 、的苦痛が大きいこと(なお 被告らの応訴の態様及び反訴の提起等により訴訟が長期化し

当時のことを忘れることができない状況にあることも治療の長期化の一因になっていると

考えられる。)からすれば、慰謝料は一八○万円が相当である。

(二) 請求原因(二)(3)の不法行為による損害

証拠(甲一一 乙一 二二の1 原告本人)及び弁論の全趣旨によれば 原告に対しては平、 、 、 、

成八年八月までは基本給一八万五〇〇〇円に一万円を加えた月額一九万五〇〇〇円の賃金

が支払われていたこと(同年九月以降は一万円が支払われていないが これは解雇問題発生、

後のものであるから参考にな

らないというべきである ) 原告は 昭和二四年八月二九日生まれで解雇当時は四七歳で。 、 、

あったこと、原告は、再就職先がなかなか見つからなかったため平成九年七月まで九か月

間再就職できなかったことが認められる。

昨今の雇用情勢からみて、原告のような立場にある者の再就職が容易でないことは明ら

かであり 解雇後九か月間の得べかりし賃金は 請求原因(二)(3)の不法行為(不当解雇)と、 、

相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

したがって、月額一九万五〇〇〇円に九を乗じ、失業保険として得た八三万七〇〇〇円

を控除した九一万八○○○円を原告の損害と認めることができる。

(三) 弁護士費用

事案の難易、原告の請求額、認容額その他の事情を総合勘案すると、弁護士費用三〇万

円を被告Aの不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

5 本訴の結論

よって、原告の被告らに対する本訴請求は、連帯して三〇一万八○○○円及びこれに対

する被告Aの各不法行為の日の後である平成九年一一月一八日から支払済みまで民法所定の

年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余はいずれも理由

がない。

二 反訴について

1 請求原因(一)(原告の不法行為)について

(一) 請求原因(一)のうち 同(2)の平成八年九月九日から品川労政事務所に対し強姦未遂、

等の事実があったと申告した事実は当事者間に争いがなく 同(4)の原告が本訴を提起した、

事実は当裁判所に顕著である。

しかし 原告が被告Aから実際に性的嫌がらせや強姦未遂の被害を受けたことは既に判示、

したとおりであるから、原告の右申告等は、不法行為を構成しない。

(二) 請求原因(一)(1)について

請求原因(一)(1)のうち、原告が平成八年九月九日に「給料上げてくださいね 」という。

発言をしたこと 同月一二日に ヤクザが押しかけて来ました とのメモを残したが虚言、 「 。」

であったこと、しかし、原告が金銭喝取の手段として、あるいは金銭喝取を意図して右の

ような言動を行ったと認められないことは、前記一2(二)(2)イ(ウ)、同(二)(3)イ及び同(

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三)(3)で認定・判断したとおりである。したがって、右各言動は、不法行為を構成しない

(三) 請求原因(一)(3)について

これまで検討してきたところによれば 被告らの主張に沿う被告Aの陳述は 全体として、 、

信用性に乏しいといわざるを得な

いし、請求原因(一)(3)の事実に関する部分も、Dの態度が途中で急変するなど、不自然と

の感を否めない内容であって、採用できるものではない。他に同事実を認めるに足りる証

拠はない。

(四) 請求原因(一)(5)について

乙第一三号証(書簡)には Y(株)に以前長く勤めて居た事務の女性は社長のA氏から セ、「 、

クハラを受け、大変恥ずかしい目にあったと、連絡があり、現在その件で裁判中との事で

社長が自社の社員にセックスを強要したとは 全く驚くべき事柄です との記載がある、 、 。」

しかし この書面を作成したのが株式会社ZのFであることについての明確な証拠はない、

し、仮にそうであるとしても、その記載内容は漠然としており、原告が情報提供者である

と認めることもできない。

(五) 以上の次第であるから、原告に被告ら主張の不法行為があったと認めることはでき

ない。

2 反訴の結論

よって、その余の点につき検討するまでもなく、被告らの反訴請求は、いずれも理由が

ない。

三 結語

よって、原告の本訴請求を主文一項の限度で認容してその余を棄却し、被告らの反訴請

求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条本文、

六五条一項本文を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のと

おり判決する。

東京地方裁判所民事第一一部

裁判官 飯島健太郎

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