大判例

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東京地方裁判所 昭和24年(ワ)2876号 判決

【主文】

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負擔とする。

【事實】

原告訴訟代理人は『水戸地方裁判所昭和十九年(ワ)第二八號土地所有權移轉登記手續請求事件について、同裁判所が昭和二十年十二月三日言渡した判决が無効であることを確定する。訴訟費用は被告の負擔とする』との判决を求め、請求の原因として(一)被告は原告にたいして、昭和十九年中水戸地方裁判所にたいして土地所有權移轉登記手續請求の訴訟を提起し、同裁判所昭和十九年(ワ)二八號事件として繋〓し、審理の結果、昭和二十年十月三日『被告(本件原告)は原告(本件被告)に對し、茨城縣多賀郡松岡町上平綱字カツロウ千三百十二番地ノ二山林一反三畝二十七歩の中、實測面積一反九畝歩を右地番より分筆手續を爲すべし』との言渡があり、原告は右判决にたいして直ちに上告の申立をしたが、昭和二十一年六月十九日上告棄却の言渡があつて右判决は確定した。

(二)所が右判决は山林一反三畝二十七歩から一反九歩を分筆して所有權移轉登記手續をせよというのであつて法律上不能であり非論理的であり、又内容自體矛盾していることは判决自體によつて明かであり、形式的に確定しても判决としての實質的効力を生じないから無効であるが、も早上訴によつて是正できない以上、之が無効の確認を求める外はないから本訴請求に及んだ次第であると陳述し、立證として甲第一、二號證を提出した。

被告訴訟代理人は『本件は民事訴訟法第五百四十五條の趣旨に凖じて確定した判决の第一審受訴裁判所たる水戸地方裁判所が管轄權を有するから、同裁判所に移送をもとめる』とのべ、本案の答辯として請求棄却の判决をもとめ、請求原因中(一)をみとめ、(二)を否認し、茨城縣多賀郡松岡町上手綱字カツロウ千三百五十二番地の二所在の山林の面積が一反五畝二十七歩とあるのは公簿上の記載であつて、實測面積は七反一畝十九歩であると附陳し、甲號各證の成立を認めた。

【理由】

(一)本件の如き訴訟につき民事訴訟法第五百四十五條を凖用すべき規定はなく、又特に之を凖用すべき理由もないから、被告の普通裁判籍に從うものと解すべく、被告の管轄違の抗弁は採用できない。

(二)原告は判决自體の無効確認を求めるのであるが、判决は裁判所の意思表現行爲であつて、それ自體特定の權利又は法律關係ではない。ところが民事訴訟法は特定の權利又は法律關係以外の事實關係の確定をもとめることを、同法二百二十五條のばあいを除いては認めていないのであるから、原告の主張自體權利保護の利益を缺くものである。又、かりに無効の判决があるとしても、判决が裁判所の意思表現行爲にすぎない以上無効の確認をみとめられただけでは、現在の法律關係の存在又は不存在は確定されないのであつて、更に無効と主張された判决によつて確認又は形成され、或は給付を命ぜられたことによつて成立した現在の法律關係の存在乃至不存在の確定をもとめなければ權利保護に十分でない。從つて、結局當該確定判决の内容に抵觸する趣旨の判决を求める新訴を提起しなければ、原告としては何等うるところがないのであるから、本件の如き請求はこの點においても權利保證の利益を缺くものである。

(三)原告の訴旨が右判决表示の分筆登記及び移轉登記請求權不存在確認にあるとしても、成立に爭ない甲第一號證によれば、茨城縣多賀郡松岡町上手綱字カツロウ千三百五十二番地の二山林一反三畝二十七歩と云うのは、公簿上の面積であり、これより、分筆せよと命ぜられた一反九畝歩はその一部分の實測面積であつて、しかもその範圍は第一點より第七點まで確定不動の地點を明示しこれを順次連結した線に圍まれた部分であることが、判决主文及び理由において明白に表示せられていることが認められ、從つて右山林の實測面積が一反九畝歩以上であることは判决自體より優に看取し得るところであるから、右分筆及び移轉登記が事實上も法律上も决して不能でなく、判决内容がそれ自體矛盾し又は非論理的な場合でもないことは多言を要しない。

唯登記簿上の記載が法定の手續により更正せられない限り、直ちには分筆及び移轉登記手續はなし得ないが前登記簿上の坪數の更正手續は登記名義人たる原告のなすべき事項であり、被告において原告にたいし何等かの法律上の請求權に基いて原告に對しその更正手續をなすべきことを求め又はこれに代位して自らその手續をなすことを得るであろうし、公圖及び實側圖その他の資料に基き、登記の同一性を害せざる更正であることの證明も不可能とは云えないから前記判决において確定せられた分筆及び移轉登記手續は窮極において不能の行爲と云うことはできない。從つて右行爲が不能の行爲であることを理由として右各登記請求權が存在せずとする原告の主張は到底採用できないものと云わねばならない。

(四)以上何れの點よりするも原告の請求を棄却し、訴訟費用の負擔については民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判决する。

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