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東京地方裁判所 昭和24年(ワ)5726号 判決

原告 末広不動産株式会社

被告 野田文明 外一名

一、主  文

一  被告野田は原告に対し別紙目録<省略>建物(一)(二)につき昭和二十三年十二月二十七日東京法務局板橋出張所受付第一四三九七号を以てした仮登記の売買による所有権移転の本登記手続を、別紙目録建物(三)につき同年十一月二十日付売買による所有権移転登記手続をしなければならない。

二  被告野田及被告株式会社野田鉄工所は別紙目録記載の各建物を明渡せ。

三  被告堀越は別紙目録(一)(二)の建物について昭和二十四年九月八日東京法務局板橋出張所受付第九三七四号昭和二十三年十一月十九日金員貸借契約による債権者同被告債務者株式会社野田鉄工所債権額金十七万円につき設定した抵当権設定登記の抹消手続をせよ。

訴訟費用は被告等の負担とする。

この判決は第二項に限り原告において担保として金五万円を供託すれば仮に執行することができる。

二、事  実

原告代理人は、主文第一項乃至第四項同旨の判決並仮執行の宣言を求め、その原因として次の通り述べた。

(一)  本件別紙目録記載の建物は被告野田の所有であるが、昭和二十三年十一月二十日原告は被告野田に対し、金三十万円の貸付を約し即日金二十五万円を交付し同年十一月二十九日金三万円を交付した。しかして右消費貸借上の債務を担保する為右建物の所有権を原告に信託的に譲渡し右債務の弁済期日を同年十二月十五日と定め、被告野田が右期日迄に前記金二十五万円の外金二万五千円を附加して支払えば、右建物の所有権は被告野田に復帰することにしたが、右弁済期に被告野田が、右債務を完済しない場合は被告は本件建物の所有権を終局的に失うが、この場合被担保債権と担保物の価格との清算については特約をしなかつた。

(二)  その後右弁済期を被告の求めにより、昭和二十五年一月十五日迄延期し昭和二十五年十二月二十七日別紙建物(一)(二)について原告に対し、同日付売買による所有権移転の仮登記をした。

(三)  その後昭和二十四年五月十二日原告と被告野田間で合意の上、前記消費貸借上の債務金二十八万円、本件建物の前記登記費用金八千円の原告の立替金、右金二十五万円に対する昭和二十三年十一月二十日から金三万円に対する同年十一月二十九日から各昭和二十五年二月十五日迄の損害金(月五分)八万千百五十二円十銭、右合計金三十六万九千百五十二円十銭に対する昭和二十四年二月十六日より三ケ月分の損害金(同年五月十二日迄の分は五万五千三百七十二円)を加算して合計金四十二万五千五百円と協定し、これを同年六月より毎月六日限り一回に金三万五千円宛支払い、一回でも延滞した場合は、被告野田は右分割払の利益を喪つて、前記担保に供した本件建物に対する所有権を復帰せしめる権利を失つて原告が完全の所有権を取得する旨約したが、被告野田は同年六月六日に第一回の分割金を支払つたのみで、その後の支払をしないから、被告野田は右建物所有権を復帰せしめる権利を失つて、原告は本件建物に対する所有権を取得するに至つた。

(四)  被告野田及被告野田鉄工所は本件建物を何等権限なく不法に占有しているから原告は該建物の所有権に基いて同被告等に対し、之が明渡を求める。

(五)  被告堀越は別紙建物の(一)(二)について、昭和二十四年九月八日主文第三項表示の通りの抵当権設定登記をしたから右は原告の所有権取得の仮登記後の登記である故、原告は同被告に対し之が抹消を求める。

と陳述した。<立証省略>

被告野田及同野田鉄工所は原告の請求を棄却するとの判決を求め、その他の答弁をしないし、答弁書その他の準備書面も提出しない。

被告堀越の代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として、本件建物が被告野田の所有であること、被告堀越が本件建物(一)(二)について原告主張の通りの抵当権設定登記をしたことは認めるが、本件建物について原告が所有権を取得したことは否認する。その他の原告主張事実は知らないと述べた。<立証省略>

三、理  由

一  証人鈴木英雄の証言並同証言に徴して成立を認めうる甲第一号証乃至第四号証と本件弁論の全趣旨とを綜合すると左の通り認定することができる。

原告と被告野田間に昭和二十三年十一月二十日金二十五万円の消費貸借が成立しこれを担保する為、本件建物の所有権を信託的に原告に譲渡し且原告主張の一(事実摘示)の如き内容の譲渡担保契約をしたこと、及右支払期日をその後当事者双方合意の上、昭和二十五年一月十五日迄延期し、且昭和二十三年十二月二十七日本件建物(一)(二)について同日付原告の右の所有権移転請求権保全の仮登記をしたことをそれぞれ認めることができる。

前掲挙示の証拠中前記認定と牴触する部分は採用しない。しかして右鈴木証人の証言によると、その後被告野田は前記債務を履行しないため、昭和二十四年五月十二日右債務弁済の方法として、原告主張の(三)の如き月賦弁済の方法を協定したが被告野田は同年六月の分割金を一回支払つたのみで、その後の支払をしないことが明白である。

従つて被告野田は原告に対し債務担保のため信託的に移転した本件建物の所有権復帰の期待権を終局的に喪失したものと言わねばならない故被告野田は、別紙本件建物(一)(二)について所有権移転の本登記手続を、又別紙(三)の建物につき所有権移転の登記手続をなすべき義務あるものというべきである。

二  被告野田と被告野田鉄工所が本件建物を占有していることは、同被告等において明らかに争はないから自白したものと看做される故、同被告等は右建物の所有権に基く原告の明渡請求に応ずべき義務あるものと言うべきである。

しかし証人鈴木英雄の証言によると前記原告と被告野田間の担保契約は清算的のものであるから、原告は右担保物を処分して得た売得金を以て右被担保債権である金二十五万円(原告主張の昭和二十三年十一月二十九日被告に交付されたという金三万円は之を認める証拠がない)から昭和二十四年六月弁済した金三万五千円を控除し、残金二十一万五千円、及右登記費用として原告の立替えた金八千円並右金二十一万五千円に対する昭和二十三年十一月二十日以降完済迄年六分の割合の損害金の弁済に充当し残余金あらば、被告野田に返還する趣旨の契約であつたことが窺われるから、原告は本件建物を信義則に従つて公明な方法で処分し叙上の通り清算をなすべき義務を被告野田に対して負担していることは言う迄もないところである。

三  次に原告の被告堀越に対する請求について判断する。前示甲第三号証(登記簿謄本)によれば本件建物(一)(二)について原告は昭和二十三年十二月二十七日所有権移転請求権保全の仮登記をなした後被告堀越は昭和二十四年九月八日抵当権設定の本登記をなしたことが明瞭である。しかして右の場合原告の所有権取得の実体的関係が前叙説示したようにすでに確定した本件の如き場合は、原告は単に仮登記権利者であつて本登記前ではあるが、本登記がなされた場合にその権利に対抗できない、即ち右原告の仮登記後にその義務者である被告野田のなした処分で原告の右本登記に牴触してしかもこれに対抗できないような権利は、例えその本登記がなされていても之に対して仮登記権利者として抹消請求ができるものと解することが訴訟経済の上から、もつとも妥当の見解と当裁判所は考える。

右の通り解釈しないと原告に本登記をなさしめた上、更めて右被告に対し抹消請求の訴を起さなければならないわけであるが、かくの如き迂遠の方法を採らねばならない理由も、必要も本件にはないと考える故、被告堀越は原告に対して主文第三項のように、本件抵当権設定登記の抹消手続をなすべき義務あるものと判断する。

以上の次第であるから原告の本訴請求を正当として認容し、民事訴訟法第九十三条、第百九十六条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 佐野英雄)

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