大判例

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東京地方裁判所 昭和25年(ワ)1143号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事實)

原告は被告に對しその所有家屋を機械修理工場以外の用途に使用しないこと及び造作の改造をしないことを條件として賃貸したところ、被告は右約旨に違反して右家屋の内部に間仕切を設け四疊半、三疊及び押入の板張工事をした上、更に壁を打ち拔いて窓を作る工事を進めようとしたので、原告は裁判所に右工事の続行禁止と右家屋の占有移転禁止の仮處分を申請してこれが認可の決定を受けこれを執行するとともに、數日後被告に對し、右改造部分を七日以内に撤去して原状に復し當初の契約通りに使用すべく、もしこれに應じないときは賃貸借を解除する旨の催告並びに條件附契約解除の意思表示をしたが、被告はこの催告期間を徒過した。

そこで原告は前記賃貸借は解除せられて終了したとして被告に對し右家屋の明渡を求めるのであるが、被告は、前記仮處分の執行によつて右家屋に對する被告の占有は解かれ、現状を變更しないことを條件としてその使用を許されるに過ぎないこととなつたのに、原告のなした催告は被告に對し右仮處分命令に違反して現状を變更させることを求めるものであるから、右催告は無效であり、從つてその催告を前提とする賃貸借解除の意思表示も無效であるとして、原告の請求に應じない。

(判斷)

原告勝訴。判決は、本件の場合原告は何等の催告を要せずして賃貸借の解除をなし得ると論斷し、原告の催告が有效か無效かには言及していない。その理由とするところは次の通りである。

「民法が債務不履行を理由とする契約解除にあたつて、債權者は債務者に對し先ず以て相當の期間を定めた履行の催告をすべきことを規定したのは、元來契約はその履行によつて終了することを理想とするのであるが、債務者の側について見ればその不履行は履行期の失念その他宥恕すべき事由に基く場合もあり得べく、そのような場合には一片の催告がよく履行を招來しないとも限らないから、これ等の場合における理想と現實を可及的に一致せしめんとする用意に出たものに外ならないのである。されば一概に債務不履行による契約の解除といつても、その契約關係が性質上迅速に處理せられることを要する商事關係、または特に當事者の信賴關係を基調とする賃貸關係に關するような場合において、債務者が豫め債務の履行を拒絶したり、或は取引の通念に從い、たとえ債權者が所定の催告をしてもこれに應ずる意思のないことを表明するものと考えられるような行爲に出たときは債權者は催告を要せずして直ちに契約を解除し得るものと解するを相當とする。この見地に立つて本件を見るに、證人望月政雄の證言及び原告本人訊問の結果を綜合すれば、先に認定した被告の本件家屋の改造工事については、原告は昭和二十五年二月九日被告が大工二人を依賴してこれに着手したばかりのとき、すなわち右家屋の外圍の取壞をしている際にその事實を知つたので、直に實兄望月政雄を現場に呼び寄せ同人とともに被告に對しその違約を責め工事を中止するように申し入れたのに對し、被告は『家賃を拂つているから自分の自由である』といつて右申入を拒絶するとともに工事を続行し、遂に同月十三日の仮處分命令の執行までに原告主張のような工事をしたことを認めることができ、これが反證はないが、かような事情にあつて被告が一片の催告によつて右工事を撤去するということは到底期待し得ないところであるから、原告が昭和二十五年二月二十一日被告に對してした同月二十八日限り本件賃貸借を解除する旨の意思表示は原告主張の催告の當否に關係なく適法であつて、右賃貸借はこれによつて同月二十八日限り解除せられて終了したものといわなければならない。」

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