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東京地方裁判所 昭和25年(ワ)1510号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事実と判斷)

権利金については、それが不法原因給付であるかということと、裁判上その返還請求が認められるかという二つの問題がある。

本件で問題となつている権利金は、將来確定的に賃貸借契約が成立した場合における権利金として授受されたものであつて、本来の意味における権利金(賃貸借契約成立の際授受されるもの)ではないのであるが、本件判決は、一般の権利金をも含めた趣旨で、前記の二問題を論じているものと認められるので、以下には、本件の事実関係を省略し、裁判所の判断の要点のみを掲げることにする。

(一)判決は、権利金の授受は不法原因給付であると論ずる。その理由は、

「権利金の授受は当時も一般的風潮であつたから右の給付は社会的にみて醜悪な給付とは云えないが、国民生活の安定確保を目的とする地代家賃統制令制定の趣旨に照らし同令第一八条の罰則を伴つている前記の法令違反が公序に合致するものであると云うことはできず、結局右の給付は民法第七〇八条所定の『不法原因の爲の給付』に該ると解するのが相当である。」

(二) 権利金の授受が不法原因給付であるとすれば、交付者はこれが返還請求をなし得ないが(民法第七〇八條本文)、本件判決は、本件の場合は「不法ノ原因ガ受益者ニ付テノミ存シタルトキ」(同條但書)に該るとして、その返還請求を認容している。

「一般的に云つて借地借家関係の条件決定について主動的地位にあるのは貸主であるから、右の条件を前記法令(地代家賃統制令――筆者註)によつて統制しても、その遵守を借主に期待することは殆ど実効性のないことと云わなければならない。土地家屋の拂底した戦後に於て右のことは特に顯著であり、権利金の授受も右の例外を爲すものではない。又右統制令が窮極的に意図するのは借地借家関係の経済的条件の統制による国民生活の安定であるこというまでもないが、他の借地借家関係立法と同樣借主保護の趣旨をも有することは否定できない。右統制令が專ら貸主を対象として規定したのも右のような趣旨に了解される。これ等の点を考えると前記給付の不法の原因は、その受益者である貸主、被告のみに存すると解し、民法第七〇八条但書を適用して原告に前記金一五万円(本件權利金――筆者註)の取戻を許容するのが相当である。そうでなければ右統制令に違反する給付をそのまま保留させることとなり、却つて権利金の受領を制限した前記統制令の趣旨は 沒却される結果になるし、殊に貸主の債務の履行を事実上強制する意義を有している本件の如き場合には、貸主の不信義な態度を誘発する虞なしとしない。」

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