東京地方裁判所 昭和25年(ワ)6584号 判決
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(事実と判斷)本件は、東京都の第六次強制疎開実施により借地権が消滅したか否かに関する争であるが、本件判決は、疎開命令により(命令受領者の諾否を問わず)借地権が消滅したという見解をとつている。
ただ、右疎開命令の告知は一般に区役所の係員や町会の幹部が命令の趣旨を書面に記載して建物に貼付したり又は口頭で伝達したりしてこれを行つたのであつたが、本件の場合、借地権者たりし原告は函館市に本店を有し、東京都内に有する土地建物の管理は同都内に設けた出張所をしてこれに当らしめていたものであり、且つ本件疎開による除却建物は他に賃貸中のもので原告は全然これを使用していなかつたような関係から、右疎開命令のあつた事実も原告としては、事実上知らなかつたものであるので、かような場合果して原告に対し疎開命令の告知があつたものと認むべきか否かが問題になる。
判決は、下記理由により、告知の事実を肯認する。
「思うに、行政行為の効力発生の一要件である告知の方法は、法令に別段の定めのない限り、相当の方法により相手方に了知せしめ、又了知し得べき状態に置くことをもつて足り、その時をもつて、該行為の効力を発するものと解されるところ、成立に争いのない乙第四号証によれば、第六次強制疎開事業は、緊急の事態に対処するため、東京都全体で実に十五万戸に近い建物を対象として早急に実施する必要に迫られていたもので、現に当事者間に争いのないように、昭和二十年四月二十日附で発せられた前示疎開命令は同月三十日をもつてその実施を完了した程であるから、上叙諸事実からすれば、疎開事業実施の当局たる東京都側において、かように多数の建物(その中には、都民の避難退去によつて相当數の空家も含まれていたであろうと思はれる)の各戸について、その所在地に所有者が現に居住しているかどうか、つまりその所在地における伝達によつて疎開命令の趣旨を相手方に了知させることができるか否かを確知し、更に、相手方に確実に了知させるための別途の方法を講ずることは至難なことであり、反面、当時の東京都民の大多数が、上叙の緊急状態を熟知していて、都内各地に建物疎開の急速に実施される必要があつたことを了知することができたこと、相馬本店(註、原告会社の舊商號)も、叙上のとおり、東京都内二箇所に出張所を置いて、本件疎開建物ほかその所有に属する相当数の土地建物の管理にあたらせていたのであるから、勿論その例外ではあり得ないことを容易に推認することができるのである。
してみれば、前判示のような疎開命令の告知方法は、それ自体最善の方法であつたか否かは暫く措き、これまた当時としてやむを得ざる必要に出た適切な方法であつたといわざるを得ない。」