大判例

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東京地方裁判所 昭和26年(ワ)5836号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕原告はその所有の本件土地について原告不知の間に被告等のため所有権移転登記、根抵当権設定登記がなされた旨主張し、その抹消登記手続を求めたところ、被告等は、原告の代理人訴外河野を本件土地について代物弁済契約を締結したと主張し、仮定抗弁として、仮に河野に本件土地を代物弁済に提供する権限がなかつたとしても、河野が従来原告の家に居住し原告から家事処理の権限を与えられ、その上原告の署名捺印ある白紙委任状までも所持していたのであるから、河野の相手方である被告側において、河野に原告を代理して右代物弁済契約をなす権限があると信じたことは無理からぬことで原告は民法第百十条の規定によつて河野の権限外の行為についても責任がある旨抗争した。原告は河野が原告家に居住していたこと、被告永井の本件登記申請に際し原告の実印の捺してある白紙委任状が使用されたことは認めたが、その余の被告の主張を否認した。

〔判断〕原告勝訴。裁判所は証拠によつて、河野が原告から既存債務の借替えのため他から金額を受けることの依賴を受け、原告の実印の捺印された白紙委任状の交付を受け、右委任状を相手方に示して権限超越の代理行為をしたという事実を認定し、一般論として、代理人の行為が権限を超越した場合において、相手方が代理人の所持する白紙委任状により、権限あることを信じたときは、相手方は之を信ずるにつき正当の理由を有するを通常とすることは否定できない。と述べ乍ら、他面本件に特殊の事情を認定して被告の抗弁を排斥した。曰く。「……によると、昭和二十四年六月頃原告は金二十万円を川勝(本件行為の相手方)から借用し爾来両人は知合の関係にあつたこと、本件土地の抵当権設定等の手続において河野が本件土地の登記済証(所謂権利証)を所持してをらず保証書によつて登記手続がなされたこと、川勝はこの種の取引に相当通暁していた金融業者であることが認められる。成程法律上は右権利証に代えて不動産登記法第四十四条による保証書によつて登記手続をなすことが認められているが、公知の事実である我国不動産の取引の実際において、権利証は非常に重要視され、これを所持する者は真正の権利者又は処分の権限をもつものと考えられ、これを所持しないものは一応疑を招がれるという実情である。とすれば、河野が何等委任事項の記載なき白紙委任状を所持のみで本件土地の権利証を所持しない以上、原告と知合の間柄である川勝としては、原告に照会して事の真否を確むべきであり、又容易にこれをなし得る地位にあつたというべきである。従つて川勝においてこれ等の点につき何等の注意を払わず、このような照会もしないで、漫然河野に代理権ありと信じたとすれば、過失あるものというべきで被告等が正当な事由として主張するところは理由がないこと明かである。」

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