東京地方裁判所 昭和26年(ワ)6371号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(事實)
原告は小切手の所持人であり、被告三名の中Aは振出人、BCは夫々裏書人である。
原告は本件小切手が不渡になつたので被告等に対しその償還を求めるため(遡求權の行使)本訴を提起したが、Aは小切手法第五一條第一項の時効の抗弁を提出し、それが裁判所に認められ、原告のAに対する本訴請求は失当であると判断された。
ところでBCはいずれも本件口頭弁論期日に出頭せず、且つ答弁書その他の準備書面をも提出しないので、原告主張の裏書の事実を自白したるものとみなされ、しかも何等の抗弁を主張しないことになるが、かような場合原告のAに対する本訴請求が前記の如き判断を受けたに拘らずBCに対してはなお原告の本訴請求を理由ありとなさざるべからざるかが問題となる。
(判斷)
判決は右問題について消極に解して原告のBCに対する本訴請求も失当であるとしている。その理由は次の通りである。
「次に原告の被告BCに対する請求について考えるに、右被告等が前記本件小切手に裏書したとの原告の主張事実は民事訴訟法第一四〇條によつて同被告等が自白したものと看做される。
しかし思うに手形所持人の前者に対する償還請求権を法律が認めた所以は手形の償還をなした者をして手形上の権利を取得せしめて更にその者をして償還請求権者としてその前者に対する手形上の権利を行使せしめむがためにあることは言うを俟たないから既に前叙説示した如く本件小切手の振出人である被告Aの償還請求権が時効に因つて消滅に帰した以上、その後者である右小切手の裏書人である被告BC等は本件小切手を受戻して所持人となつても、もはやその前者に対し償還請求権を行使するに由ない訳であるから右小切手の所持人である原告に対し、被告BC等は償還請求に應ずる義務はないものと解するを相当とする。何となれば叙上の通りに解釈しないと裏書人は所持人に対し償還して手形を受戻した後でなければ手形上の権利を行使できないから、自己の前者に対する償還請求権を保全することができない結果、裏書人は所持人に対し自己の償還義務を履行しても自己の前者に対する償還請求権は何等その責に帰すべき事由がないのに之を喪失するという不衡平なる結果を生ずるからである。以上の次第であるから、原告の右被告等に対する本訴請求も理由がないから……」