東京地方裁判所 昭和26年(ワ)7230号 判決
原告 日本開発銀行
被告 大明鉱業株式会社 外一名
一、主 文
被告等は連帯して原告に対して金百五十二万八千二百円及びその内金五万三千七百六円に対する昭和二十三年六月六日より内金三万二千百七十九円に対する同年同月十七日より内金三万二千六百六十二円に対する同年同月二十五日より内金五万五千三十四円に対する同年七月十八日より内金八万九千五百八円に対する同年同月二十二日より内金百十万六千円に対する同年九月十六日より内金十五万九千百十一円に対する同年同月二十一日より各完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告等の負担とする。
この判決は原告において各被告に対して金二十万円宛の担保を供するときは仮に執行することができる。
二、事 実
原告訴訟代理人は主文第一、二項と同旨の判決並に仮執行の宣言を求め、その請求原因として、被告大明鉱業株式会社は復興金融金庫に宛て
(1) 昭和二十三年三月九日金額五万三千七百六円、満期同年六月五日、支払地東京都千代田区、支払場所復興金融金庫、振出地東京都中央区
(2) 同年三月十九日金額三万二千百七十九円、満期同年六月十六日、支払地、支払場所、振出地は前同様
(3) 同年三月二十九日金額三万二千六百六十二円、満期同年六月二十四日、支払地、支払場所、振出地は前同様
(4) 同年四月十九日金額五万五千三十四円、満期同年七月十七日、振出地東京都目黒区、支払地、支払場所は前同様
(5) 同年四月二十三日(イ)金額七千百二十五円、満期同年七月二十一日、振出地東京都中央区、支払地、支払場所は前同様、(ロ)金額八万二千三百八十三円、満期、支払地、支払場所、振出地は(イ)同様
(6) 同年六月二十九日金額百十万六千円、満期同年九月十五日、振出地東京都目黒区、支払地、支払場所は前同様
(7) 同年六月二十三日(イ)金額三万七千三十四円、満期同年九月二十日、支払地、支払場所、振出地は前同様、(ロ)金額十二万二千七十七円、満期、支払地、支払場所、振出地は(イ)同様
の約束手形九通を振出し、同時に被告小沢忠三郎はその連帯保証をなし、復興金融金庫はその所持人であつて、右手形をそれぞれその満期に呈示したが支払を拒絶された。而して復興金融金庫は本訴提起後日本開発銀行法第四十三条、昭和二十六年政令第三九一号により昭和二十七年一月十六日解散し、これと同時にその権利義務を原告において承継した。よつて右手形金合計金百五十二万八千二百円及び(1) の手形金五万三千七百六円に対する満期の翌日である昭和二十三年六月六日より、(2) の手形金三万二千百七十九円に対する同月十七日より、(3) の金三万二千六百六十二円に対する同月二十五日より、(4) の金五万五千三十四円に対する同年七月十八日より、(5) の金七千百二十五円と金八万二千三百八十三円に対する各同月二十二日より、(6) の金百十万六千円に対する同年九月十六日より、(7) の金三万七千三十四円と金十二万二千七十七円に対する各同月二十一日より各完済に至るまで年六分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めると述べ、被告等主張の抗弁事実に対して右金庫は被告両名に対して昭和二十六年五月二十四日附同月二十六日発送の内容証明郵便により右九通の手形金の支払を同年六月十日迄になすよう催告し同郵便は被告会社に遅くとも同年六月一日までに到達し、被告小沢に対して同年五月二十九日までに到達したが、その後六箇月内に本訴を提起したので右催告により時効は中断せられた。而して催告には手形の呈示を必要としないが、特に本件では支払場所において手形を所持していたのであるから呈示の効力がある。その余の抗弁事実を否認した。<立証省略>
被告等訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として原告主張事実中約束手形の振出と保証の点本件手形を所持している点並に催告の点は認めるが各満期に呈示を受けたこと内容証明郵便による支払の催告の到達したことは否認する。なお原告主張の右催告は内容証明郵便記載によれば貸金の履行を請求したもので手形金の請求ではないから催告の効力はないと述べ、抗弁として本件手形債権は何れも満期の日から三年の経過によつて時効により消滅している。而して原告主張の催告は手形を呈示していないから時効中断の効力がない。仮に右の抗弁理由なしとしても昭和二十四年三月六日訴外山崎増衛金融金庫と協議の上手形金の内金四十二万二千二百円((6) の手形を除くその余の手形金)について免責的に債務の引受けをしたので、原告の請求は失当であると述べた。<立証省略>
三、理 由
被告会社が復興金融金庫に宛て原告主張の九通の約束手形を振出し被告小沢忠三郎がその連帯保証をなしたこと並に同金庫が右手形を所持していること(後に本訴提起後原告がこれを承継したことは後記の通りである)は被告両名の認めるところである。
而して右手形の支払場所が所持人の営業所であるので満期に支払のために適法な呈示がなされたものと推認すべきである。
よつて時効の点を判断する。
被告は満期後三年の経過によつて消滅時効完成したと抗弁するけれども復興金融金庫の被告両名に対して昭和二十六年五月二十六日発送の内容証明郵便で本件手形金の支払を同年六月十日までになすよう催告し、右書面が被告会社に同年六月一日までに被告小沢に同年五月二十九日までにそれぞれ到達したことは成立に争いない甲第二、三号証の各一、二の記載と、被告本人小沢忠三郎の供述を綜合してこれを肯認するに充分である。
而して右催告後六箇月内に本訴が提起せられたことは記録に徴して明かであるから右催告により時効は中断せられたものというべきである。
被告等は手形の呈示のない支払の催告は時効中断の効力がないと抗争するけれども右催告の当時所持人が支払場所において本件手形を所持していたことは前記の通りであるから、たとい手形債務者が支払場所に至らなかつたため手形の現実の呈示がなされなくても、手形の適法な呈示がなされたというべきであるから、右催告が呈示を伴わないものと主張する被告の抗弁は理由がない。
次に被告両名は訴外山崎増衛は復興金融金庫と協議の上本件手形金の内金四十二万二千二百円(原告主張の(6) の手形を除くその余の手形金)について免責的に債務の引受けをした旨抗弁し被告本人小沢忠三郎の供述と同供述並に証人山崎増衛の供述により真正に成立したと認められる乙第一号証の一、二の記載を綜合すれば、被告会社はその経営に係る浪花炭鉱の権利義務一切を昭和二十三年十月頃山崎増衛に譲渡することに契約したが、従前同会社が右炭鉱の鉱員住宅建設資金として原告主張の(6) を除く以外の手形金に相当する金員を復興金融金庫から借り受けていたので、その際その債務を山崎に引受けて貰う約束ができたことを認めることができるけれども、右金庫と山崎との間に右債務の引受契約が成立したとの点については、これと同趣旨の証人石橋久の証言は措信し難く、なお被告本人小沢忠三郎、被告会社代表者月岡昭夫の各供述は何れも根拠がない想像に過ぎないもので右事実を認むべき証拠とするに足りない。他にこの事実を認むべき証拠がないのに反し、証人牧瀬時彦、小野胖、山崎増衛の各証言によれば、右金庫と山崎との間に被告主張のような債務引受契約が成立したものでないことが認められるから被告の右抗弁も理由がない。
而して復興金融金庫は本訴提起後日本開発銀行法第四十三条、昭和二十六年政令第三九一号により昭和二十七年一月十六日解散し同時にその権利義務を原告が承継したこと明かである。
以上の次第であるので原告の請求を正当として認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条、第九十三条第一項、仮執行の宣言について同法第百九十六条第一項を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 西川美数)