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東京地方裁判所 昭和26年(行)62号 判決

原告 中野第一洋服企業組合

被告 中野税務署長

一、主  文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告代表者は、「被告中野税務署長が原告企業組合に関し昭和二十六年二月十三日附決議書及び原告組合に対する同年四月二日附通知でした原告企業組合の経理を否認する行政行為は無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として次のとおり述べた。

一、原告は、東京都中野区内及び近接地域に居住する注文洋服裁縫業者を組合員として、昭和二十四年九月二十一日、中小企業等協同組合法に基いて設立され、同年十二月七日設立登記を完了した企業組合であつて、同年十一月一日から事実上法人としての営業を開始しているものである。被告中野税務署長は、昭和二十六年一月三十一日、同署々員大蔵事務官安藤美夫をして、元原告組合員中野区桃園町一四番地森本忠司につき、原告の経営実態を調査させた結果、原告の事業は企業組合の経営たる実質がなく、個人営業をしているものと異なるところがないとしても、同年二月十三日附で、原告組合に関し、企業組合の経理を否認する旨の決議書なるものを作成した上、同年四月二日附書面で原告に対し、その旨通知すると共に、所属組合員につき、個人事業所得として申告するよう指示してきた。すなわち、その書面によれば、「貴組合およびその所属組合員に付いて、当署で調査したところ、実質上法人たる企業組合の存在と相容れない事実がありますので、組合の経理にかかわらず所属組合員については、所得税法第九条第四号の所得(個人事業所得)として御申告下さるよう御指導願います。」とあるのであつて、原告は同月四日これを受領した。

被告がした右行政行為は、次に述べるような理由によつて、当然無効のものである。

二、(一) まず、被告の本件行政行為は中小企業等協同組合法第八一条に違反する。中小企業等協同組合法の企業組合の規定は、資力も経理能力もない零細業者を結集し、整然たる事業活動を行わしめようとする趣旨に出たもので、弱小業者の保護育成がその目的である。同法第八一条は、企業組合の組合員たる組合事業従事者が組合から受ける諸給与を、組合員以外の組合事業従事者と同一の基準で支給される部分については、所得税法の適用に関して給与又は退職所得とするという規定であつて、その文言は給与の種類を具体的に列挙したため、まぎらわしい嫌いがあるが、要は社会通念上勤労所得と目される部分については、税法上給与所得として取り扱うべきことを規定したものである。従つて税務官庁においては、事務取扱上不労所得たる利益配当以外の企業組合の諸給与は、税法上給与所得として取り扱うべき拘束を受けているものである。

しかるに税務官庁においては、この規定をくぐるため、種々不当な条件を独断的に設定して、企業組合の健全な発達を妨害しつゝある。なかんづく、昭和二十五年十月二十四日附直所一―九八、直法一―一一四の国税庁通達により、企業組合認否の判定基準なるものが下級官庁に対して指示されており、各税務署はこの通達に基いて企業組合の認否を決定し、否認した特定組合に対してその旨の通知を発している。本件通知書がそれであつて、その前段において原告の租税経理否認処分を表示し、後段において個人事業所得としての申告指導を依頼する旨附言している。すなわち前段は、中小企業等協同組合法第八一条を適用しないことの効果意思の表示であり、後段のごときは、およそ企業組合員たりとも個人事業所得として申告すべきものあるときは、税務官庁としては、各個人につきそれを調査し課税すれば足るのであつて、企業組合に対しこのようにその申告指導を依頼する筋合はないといわなくてはならない。

かくのごとく、企業組合に認否の別を設け差別待遇をすることはいずれの点よりするも不合理であり、公益を害すること甚しい。企業組合の収益は常に変動のあるものであり、組合員の所得が前記中小企業等協同組合法第八一条所定の所得であるか、個人事業所得であるか、その実態につき検討した上課税すべきが当然である。それを各企業組合につき画一的に取り扱おうとする本件行政行為のごときものは、法の認めないところである。しかのみならず、被告の要求するように、法人の経理を損益計算の帰属する人格を異にする個人の経理に変更することは不可能であり、論理上も成立しないものである。要するに被告のした本件行政行為はそれ自体法律上許されていないものというべく、無効のものたるを免れない。

(二) 被告の本件企業組合経理否認処分決議書に記載されてある、原告の組合経理否認理由は、元原告組合員森本忠司の業態が個人企業であることによるものである。同人はかつて原告組合員として組合の行う事業に従事しており、その営業所も組合に提供して、組合の一営業所であつたが、昭和二十五年七月に至り合同企業としての実体にそわないかどがあつたので、同月末を以て原告組合の合同企業体から除外せられ、その後は、原告組合と営業上何等関係のない別個の個人企業体となつたものである。原告はこのように何等の営業上の支配権を有しない別個の企業体に対して責任を負うべき理由はない。被告がこれを以て原告の組合経理否認の理由としたのは明らかに失当であり、従つて被告の本件行政行為は、誤つた事実認定に基くかしがあるものであつて、それは本件行政行為をして、当然無効ならしめるものである。

三、原告組合は、前に述べたように、昭和二四年一一月から事業を開始し、一一名の組合員が一致協力して組合の事業計画達成のため努力してきたが、税務当局が企業組合の全面的否認を流布して企業組合の発展に対して種々の妨害策を講じたため、昭和二五年六月頃に至り組合員は浮足立ち、組合内部は動揺し、合同企業としての秩序を乱すものが出てきたので、かねて定めてあつた業務処理規約により順次に合同企業から除外処分に附しつゝ合同企業としての実体を維持してきた。而うして残留組合員の所得税を源泉徴収し、年末調整をして、昭和二六年一月中頃中野税務署に届け出で、税法上何等の不都合はなかつたものである。しかるに被告中野税務署長は、原告組合と営業上何等の関係がなくなつたものの事業実態が個人事業であることを理由として、前記のような原告の組合経理否認の行政行為に及んだものであつて、現に同年八月七日頃には、中野税務署所得税係小林事務官が原告組合事務所に来て、原告企業組合が否認されて居り、否認通知が送達されているから、その組合員は個人事業所得として予定申告書を提出しなければならないと言つて、この通知によつて原告企業組合が否認されたことを前提とし、これに基くその後の手続を要求している。被告は本訴において、被告の通知書は単なる案内にすぎず、何等の法律的効果を伴わないものと主張しているが、小林事務官の右のような処置は、被告自ら本件通知書をしかく単純なものと理解していないことを明らかに示すものである。

原告は企業組合として、組合員の所得につき中小企業等協同組合法第八一条の規定の適用を受けしめることにつき、法律上の利益を有する。原告のした本件行政行為は、法規の不当な解釈と事実の不当な認定を敢てし、原告企業組合の法律上の立場をくつがえし、前述したその法律上の利益を侵害しようとする違法な行政行為である。原告組合は以上のような事情で現在事業を縮少して継続しているが、もし本件行政行為が無効であることが確認せられたならば、前の組合員を復帰させたり、又新組合員を加入させて、態勢を立て直し、事業を拡張する用意を整えつゝある。

前示国税庁通達の影響するところ甚大なるものあり、否認された多数の企業組合は或は解散し、或は分裂し、大なる混乱を引き起しつゝある。右通達に基いて各税務署長のした行政行為が実質的にかく甚しく企業組合を拘束するにおいては、これの外部に対する法的価値を否定することができない。本件行政行為亦然りであつて、原告組合はその無効確認を求めるにつき法律上の利益を有するものである。(立省証略)

被告指定代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、次のとおり答弁した。

一、原告が登記簿上その主張のような存在を有し、被告がその企業実態につき調査の結果原告主張のような判定をし、原告主張の日にその主張のような書面による通知が被告から原告宛になされ、原告主張の日それが原告に到達したことは争わないが、その他の原告主張事実はすべて否認する。原告主張の右通知の趣旨はその文面の示すとおり、「課税物件の帰属は形式(名義)によつてではなく、実質に従つて決められるべきであるから、被告において昭和二五年度分所得の実質上の所得者を探索調査したところ、原告は中小企業等協同組合法に基いて設立された法人であるが、企業組合の本旨に違い、所属組合員が独立してそれぞれ事業活動をして課税の対象となるべき個人所得を収めていることが判明したので、組合の法人としての経理にかゝわらず、所属組合員について所得税法所定の個人事業所得の申告がなされるよう、原告の指導を願いたい。」というのであつて、それは記載文書どおり、原告及び原告所属組合員に対する税務行政の取扱方針を注意的に知らせて、申告指導を依頼もしくは希望したものにすぎない。従つて、右通知は何等原告の権利又は義務に直接具体的な効果を及ぼすものではないから、これが無効確認を求める原告の請求は、権利保護の利益を欠くものとして、棄却さるべきものである。

二、そもそも企業組合なるものは、中小企業等協同組合法により設立される法人であるが、事業協同組合、信用協同組合、協同組合連合会(同法第七〇条、第七六条、第七七条)のように、組合員の事業を助成するため共同施設をなし、又はこれに関連する事業等を行う組合とはその趣きを異にし、自ら一個の企業体として事業を行うものである(同法第七八条)。従つて、たとえ企業組合を設立しても、その本旨に違い、所属組合員が独立して自己の事業活動を営み、自らその所得を収めている場合には、その所得は法人たる企業組合の所得でなく、組合員個人の事業所得であるから、その組合員が、組合経理の形式にかゝわらず、所得税法によつて所得税を納付しなければならないことは、租税実質主義の要請上当然のことである。

ところで、全国多数に設立された企業組合がすべてその本来の姿で事業活動をしているかというに、必ずしもそうでなく、なかには単に税金を免れるために、形式上組合に組合員として加入しながら組合と独立して自己の事業活動を営むものがあつたことは、否定すべからざる実情であつた。そこで税務官庁として、企業組合がそれ自身の事業によつて所得を収めているか、それとも所属組合員が独立して自己の事業を営み、自ら所得を収めているかを判定しなければならないわけであるが、この判断は公正に行わるべきものであるから、国税庁長官は、諸般の資料を綜合調査したところに基き、その判断の基準とするため、各国税局長あてに、企業組合員が特に個人としての事業活動を営んでいると判断される九項目を選定例示した「所得税法に関する基本通達」(直所一―九八、直法一―一一四)を発し、税務行政運営の指針にしたのである。

そこで被告は右指針に従い、原告及び原告所属組合員の事業活動に関して種々探索調査したところ、原告所属組合員は、組合加人前と同様、独立して自己の事業活動を営み、所得税を納付する義務を負うものであるとの判断に到達した。このような場合、組合員個人の自主的な申告納税が行われない以上、被告としては所得税法第四六条第四項に基いて一方的にその所得金額を決定し、相当額の税を徴収すべきであるが、このように納税者の理解を得ないまゝに最初から強権を以て臨むことは、現行法の採用する申告納税制度の建前から必ずしも当を得たこととは考えられないので、被告はまず本件書面を以て、原告に対し被告の調査による判断を予め注意的に知らせ、原告組合自身のすゝめによつて所属組合員個人の自主的申告納税が行われるよう指導を依頼したものであつて、この通知は何等法律上の根拠に基くものでなく、また何等法律上の効果をともなわない事実行為に過ぎない。原告所属組合員にしても、もしこの判定通知に不服であるならば、自己の信ずるところに従つて、申告納税をし、又はしないことを妨げない。もしその組合員が確定申告をせず、被告においてこれに対し課税決定をしたときは、被告はその組合員にこれを通知するから、この決定に異議のある組合員は、所得税法の定むるところに従い、再調査の請求、審査の請求、訴の提起を以てこれを争うことができる(同法第四八条―第五一条)また万一本件通知が申告指導の主旨を逸脱して強迫にわたるときはこれによつてなされた申告納税は強迫に因る意思表示としてこれを取り消すことができ、すでに納めた税金は不当利得として返還を請求することができる。しかしながら、これらの救済手段も個々の組合員に対して与えらるべきであつて、原告組合としては、所属組合員との関係において経済的利害関係を有するか、若しくは抽象的な法律上の地位を有するに過ぎない。原告は被告の行為によつて原告組合の存立が危くされるかのような主張をするが、被告としては原告組合の法人格を否認したことはないし、その権限も有しないのであつて、本件原告の請求は権利保護の利益を欠くものであるといわざるを得ない。

(立証省略)

三、理  由

(一)  原告が登記簿上その主張のような存在を有する法人であること、被告が原告の企業実態につき原告主張のような判定をし、これに基いて被告から原告宛に原告主張の日附で原告主張のような内容の書面が送付され、それが原告主張の日原告に到達したことは当事者間に争いがなく、真正に成立することにつき争いのない甲第三号証に、証人市橋一雄の証言を合せ考えれば、中野税務署直税課所得税係には、原告企業組合に関し、同署安藤美夫事務官が元原告組合員森本忠司について原告組合の企業実態を調査したところ、企業合同営業と認められない旨の調査顛末を記載し、これに「否認」と朱書し、昭和二六年二月一三日附で被告以下同署係員の押印した書面が存在することが明らかで、前記被告の原告宛通知はこの書面による判定の通知であることを窺うことができる。

(二)  原告の本訴請求の要旨は、被告の昭和二六年二月一三日附の右書面(原告はこれを否認決議書と言つている。)及びこれを原告に通知した同年四月二日附書面は、相合して原告企業組合の組合としての経理を否認する行政行為を形成するが、被告がこのような行政行為をすることは法律上許されるものでなく、且つその認定も不当であつて、無効の行政行為といわねばならぬところ、原告組合はその無効確認を求める法律上の利益があるから、これを求めるというにあり、それは必ずしもその行政行為が行政事件訴訟特例法第二条にいう行政処分であると主張するものでなく、又その取消を求めるものでもないから、本訴は同条のいわゆる抗告訴訟として提起されたものと見るべきでなく、同法第一条にいうその他公法上の権利関係に関する訴訟(いわゆる当事者訴訟)として、提起されたものと解するのが相当である。

ところで、かような確認訴訟においても、確認を求める原告の側においてこれを求めるについて現実の法律上の利益又は必要がある場合に限つてこれが許されることもちろんであり、そのことは訴訟要件の一に数えられる。そこで原告が果して本訴についてこのような利益又は必要を有しているかを見るために、まず原告主張の被告の行為の性質を考えるのに、証人広瀬時江の証言によつて真正に成立するものであることが明らかな乙第一、二号証(通達案及び簡易通達綴)及び証人広瀬時江、市橋一雄の各証言を綜合考察すれば、次のような事実が認められる。

昭和二四年七月一日に施行された中小企業等協同組合法(同年六月一日法律第一八一号)によつて、企業組合の制度(同法第七八条以下)が始まつたが、当時、同法第八一条によつて企業組合員の所得は給与所得又は退職所得として課税上利益な取扱を受けるということが、広く伝えられ、これがため全国にわたり非常に多くの企業組合が設立されたので、税務官庁においてその実態を調査したところ、中には名義のみの企業組合であつて、その実質は組合員の個人事業と異なるところのないものが発見せられた。かような名義だけの企業組合の組合員の事業上の所得については、個人の事業上の所得として課税をすることが、租税実質主義の要請上当然のことである。但し第一線の実務においてその判定が区々にわたらないため、同年十月二四日国税庁長官から各国税局長あて「企業組合の組合員等が当該組合から受ける所得に対する所得税等の取扱方について」という通達がされ(直所一―九八、直法一―一一四)それには実質上法人たる企業組合の存在と相容れない事実として九つの事項を示し、これを以て前記の意味における名義だけの企業組合であるかないかの判定基準としている。更にかような調査をした結果、実質上法人たる企業組合の存在と相容れない事実があると認められた組合については、その組合員である個人に対し、確定申告書の提出がないとして、直ちに所得税法第四六条第四項の決定をすることをせず、まずその組合に対し、その所属組合員につき個人の事業所得としての申告の指導をするよう要望するため、本件の甲第二号証のような文面の書面を作成し、これをその組合宛に送付することが、東京国税局直税部長から管下各税務署長にあて、簡易通達によつて示された事務処理方針であつて、本件原告のいわゆる組合経理否認通知書なるものもその一つの例である。かゝる通知は、その主旨単に当該組合に対し税務官庁の課税方針を示し、これに協力方要望するものに過ぎず、これのみでその相手方でない組合員個人に対してはもちろん、これを受けた組合について何等の法律効果を生ずるものでなく、組合や組合員に対し、何等の意味においても、法律的拘束を加えるものではない。

かように認めることができ、これを左右するに足る証拠はない。

(三)  ある企業組合の組合員の所得が中小企業等協同組合法第八一条の所得(給与所得又は退職所得)であるか個人の事業上の所得(所得税法第九条第一項第四号)であるかは、本来その所得自体につき検討せらるべきであつて、その企業組合の法律上の存在とは理論上必然の関連のないものである。たゞ本件においては、その企業組合に実質上法人としての存在と相容れない事実があると認められる点が、その組合員の所得を中小企業等協同組合法第八一条の所得と認めさせない一つの理由となるので、その限りにおいて企業組合の実態に対する認識が関係をもつてくるに過ぎない。本件通知書に原告企業組合の存在及び経理について言及しているのは、このような意味で組合員の所得の認定に関係する範囲において言つているものであつて、原告の法人としての人格やその経理を否認するというようなことは、右通知書やその前提となる被告の判定の意図するところではないといわねばならず、前示甲第三号証に否認と朱書されているものはそのような重大な意味をもつものではないと見るのを相当とする。又課税を受けるべき各組合員と別個の人格である組合に対し、組合員個人に対する課税につきこのような通知をするということも、法律上意味のあることとみることができず、要するにそれには組合に対し、所属組合員に対する課税の方針を内示し、これに好意的な協力を求める主旨に出たものと解するほかはない。組合においてこれに応ずると応じないとはもとよりその自由であつて組合がこのような税務官庁の希望に従つて、組合員をして個人の事業所得の申告をなさしむべき、何等の法律上の義務は存在しないのである。要するに原告が本訴において問題としている被告の行為は、何等の法律効果を伴わない事実行為に過ぎないものといわなくてはならない。もし被告においてそれを誤解し、原告の法益を侵害しようとした事実があるとすれば、それはなおさら事実行為であつて、法律上の効力の問題を生じない。

(四)  原告が本訴において無効確認を求めている被告の行政行為なるものは、前記のとおり単なる事実行為であつて、何等の法律上の効果を生じないものであるから、これが有効であるとか無効であるとかいうことは無意味である。本訴において原告の真意とするところは、それが法律行為であるにせよ事実行為であるにせよ、これあることによつて原告の法律上の存立に影響し、原告の権利が侵害されているので、それの除去を求めるというにあるかも知れない。もしそうであるとしても、本訴はその方法を誤つている。法律上の意味のない事実行為の有効とか無効とかを問題とするよりも、他に適切な救済方法があるはずである。原告の本件無効確認の訴は結局権利保護の利益がないことに帰し、本訴は訴訟要件を欠くものであつて、不適法として却下を免れない。

よつてその余の争点につき審究するまでもなく、本件訴はこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 八山実)

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