東京地方裁判所 昭和27年(ワ)5360号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実〕原告はその所有の土地を訴外五反田駅前復興会に対し、仮設建物所有の目的で区劃整理に至るまでとの約の下に一時使用の為賃貸し、右復興会は同地上にマーケツトを建築し、その一部である本件家屋を被告に対し同じく区劃整理の時までという約定で一時使用の為賃貸した。昭和二十六年六月二十三日東京都知事の区劃整理による移転命令が発せられ、同年十月九日までに地上建物の移転を命ぜられたので、右土地及び右家屋の各賃借権は同日限り消滅した。然るに被告は明渡に応じないので、代執行により右家屋を換地に移転したが、なお右移転家屋を不法に占有している。原告は代執行後右家屋の所有権を譲受けたので、その所有権に基き右家屋の明渡を求める。
被告は原告主張の右土地賃貸借及び右家屋の賃貸借がそれぞれ一時使用のためのものであつた点を否認する。(他の爭点省略)
〔判斷〕原告勝訴。判決は原告と復興会間の土地賃貸借並びに右復興会と被告間の家屋賃貸借はいずれも一時使用のためのものであると認定して原告を勝たせた。まず右土地賃貸借について
「……の証言によれば右土地賃貸借はバラツクを所有するため区劃整理までという約の下になされたことが認められる。そして、もとより借地法第九条及び借家法第八条にいう「一時使用のため」であることは明らかな借地権、建物の賃貸借たるには、単に合意された期間そのものが一時的ないし短期間であるというだけでは足らず、かく定める――或は性質上定められる――について相当と首肯せしめるに足る理由が存することを必要とし、従つてかかる理由をもつ当該賃貸借の個性が借地法、借家法の保護と相容れないものをいうと解すべきではあるが、命数のきまつた区劃整理前の土地と区劃整理によつて引当てられる未定の換地との間にはその上におかれる価値において比較すべからざる差があるため区劃整理は土地利用の一転機となるものであることを考え、そして弁論の全趣旨によれば前記土地賃貸借当時その地に区劃整理が近く行わるべき予定であつたことが窺われるのであるからかような状況の下で前記のようにバラツク所有のため区劃整理までという約定でなされた土地賃貸借は短期間に到来すべきことの確実な期限が相当の理由によつて定められた場合として正に一時使用のため設定せられたことの明らかな賃借権といわなければならぬ。」と述べ、
つぎに訴外五反田駅前復興会と被告間の家屋賃貸借につき、
「それでは訴外五反田駅前復興会と被告との間の家屋賃貸借は区劃整理に至るまでという一時使用のためのものであつたと見るべきか。前記のような一時使用の賃貸借は別の言葉でいえば、明文又は黙示に賃貸借の内容とされた動機、目的から判断して通常人たる賃借人にはその目的が到達されないし所定の時期が到来した時には賃貸借が当然に終了するという自覚が期待されるような実体をもつ賃貸借というに外ならないのであつて、逆にいえば一時使用の賃貸借の認められるような事態の下では賃借人は所定時期の到来によつて当然賃貸借が終了するという素朴な感覚を持つているといつて過言ではない。かような点から考えると前記の如く復興会の土地賃借が区劃整理に至るまでという一時使用のためのものであると認められる本件において同会は区劃整理の時には賃貸借は当然終了し地上家屋は収去しなければならぬという認識を有したものというべく……を綜合すればこの認識即ち区劃整理によつて賃貸家屋を収去しなければならぬという事情はその代表者から被告に知らされたが空家の絶対的に不足した当時引揚者として如何にもして生活の本拠を求めるに急であつた被告はこれを承知し敢てその時までの約定で賃借したことが認められる。そして区劃整理の時に家屋を収去しなければならないという事情は当該家屋の賃貸借を区劃整理の時までと定めるについて相当と首肯せしめるに足る理由たること勿論であり、従つて復興会と被告との家屋賃貸借亦区劃整理までという一時使用のためのものであつたと認められる。」と説示している。