大判例

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東京地方裁判所 昭和27年(ワ)6039号 判決

(一)「原告は、別紙目録記載21及び26の手形はいずれも振出日の記載がないから手形の記載要件を欠く無効のものであり、従つて、右手形債権を自働債権としてなした相殺は無効であると主張し、なるほど前出乙第一号証の二十一及び二十六の各一によると、右21及び26の手形には、いずれも振出日の記載のない事実を認めることができる。しかしながら、およそ、約束手形を無効ならしめるに足る瑕疵の存する場合であつても、該手形は当然に無効となるものではなく手形債務者がその瑕疵を理由に手形の無効を主張することによつて始めて無効として取扱うべきものであるから、手形の当事者間において右の如き瑕疵に基く手形の効力につきなんら争いがなく、その使用を終つた場合には、手形債務者において後日右瑕疵に基き手形の無効を主張することは許されないものと解するを相当とする。これを本件についてみると、前記相殺の意思表示が右二通の手形債権を自働債権に含めてなされたことは、既に認定したところであり、証人坪田興平(第二回)の証言によつて原本の存在並びにその成立を認め得る乙第二十一号証並びに右証言を綜合すると、千代田塗料は、昭和二十七年五月十三日右相殺につきなんらの異議もなく被告から、右二通の手形を含む別紙目録記載1ないし27の手形計二十七通の返還を受けた事実を認定することができ、甲第九号証(乙第五号証)をもつてしては右認定を左右することができず、他に、これを覆えすに足る証拠はない。従つて、原告主張の右二通の手形は、いずれも、当事者間において有効なものとしてその使用を終つたものというべきであるから、もはや、右手形の瑕疵を理由にその無効を主張することは許されないものといわなければならない。

(二)右相殺の自働債権は二十七個の手形債権であつて、その総額が受働債権の総額を超過することは、前説示のとおりであるから、被告が右相殺をなすに当つては、右自働債権のうち、いずれによつて相殺をなすものであるか、その順位を特定すべきものであるところ、その特定がなされたことは証拠上これを認めることができず、かえつて、前記乙第四号証の一(甲第八号証の一)二によれば、右特定がなかつたことを肯認することができるから、前記相殺の意思表示は、直ちに、効力を生じたものと解するを得ない如くであるけれども、前記認定のとおり、千代田塗料は昭和二十七年五月十三日頃右相殺につきなんら異議を留めずして前記各手形の返還を受けたものであるから、右相殺の当事者間においては、右相殺を有効なるものとして、自働債権と受働債権とが対当額で消滅し、その相殺残につき債権、債務の存在を承認したものと認められる。従つて、相殺に当り、自働債権の特定がなかつた一事によつては相殺の効力発生を否定すべき筋合でない。」

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