東京地方裁判所 昭和27年(ワ)7761号 判決
原告 斉藤末吉
被告 第一木材工業株式会社 外二名
一、主 文
原告に対し、
被告第一木材工業株式会社は金百十万円及び内金二十八万円に対する昭和二十七年一月二十日から、内金四十六万円に対する同年一月二十三日から、内金三十六万円に対する同年三月一日から、
被告千野健彦は金七十四万円及び内金二十八万円に対する昭和二十七年一月二十日から、内金四十六万円に対する同年一月二十三日から、
被告三光産業株式会社は金三十六万円及びこれに対する昭和二十七年三月一日から、
その支払の済むまで各年六分の割合による金員をそれぞれ支払うべし。
訴訟費用は被告らの負担とする。
この判決は仮に執行することができる。
二、事 実
原告訴訟代理人は主文第一、二項と同趣旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、(一) 被告第一木材工業株式会社は、(イ)昭和二十六年十一月五日金額四十六万円、満期昭和二十七年一月二十二日、(ロ)同年同月二十二日金額二十八万円、満期昭和二十七年一月十九日、その他の手形要件は何れも支払地、振出地共に東京都中央区、支払場所中央信託銀行株式会社なる約束手形各一通を訴外日本車体工業株式会社に宛てて振り出し、被告千野健彦はこれについてそれぞれ手形保証をし、右訴外会社は右各手形を原告に裏書譲渡し、(二) 被告三光産業株式会社は昭和二十六年十二月一日金額四十万円、満期昭和二十七年二月二十八日、支払地、振出地共に東京都中央区、支払場所株式会社東海銀行東京支店なる約束手形一通を被告第一木材工業株式会社に宛てて振り出し、同被告はこれを支払拒絶証書の作成義務を免除して前記日本車体工業株式会社に、日本車体工業株式会社は更にこれを原告に順次裏書譲渡し、原告は現に以上三通の手形の所持人である。しかして、原告は右(一)(イ)(ロ)の各手形を各満期の日に、同(二)の手形を満期の翌日それぞれ支払場所に呈示して支払を求めて拒絶されたが、後者の手形金についてその後三回に亘り合計四万円の一部弁済があつたから、ここに、被告第一木材工業株式会社に対しては前記(一)(イ)(ロ)の手形金合計七十四万円及び同(二)の手形金残金三十六万円総計百十万円、被告千野健彦に対しては右(一)(イ)(ロ)の手形金合計七十四万円、被告三光産業株式会社に対しては右(二)の手形金残金三十六万円及び以上の各手形金に対する支払呈示の日の翌日から、その支払の済むまで手形法所定の年六分の各法定利息の支払を求めるため本訴に及んだ次第であると述べた。<立証省略>
被告ら訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、原告の主張事実中、被告千野健彦が原告主張のような手形保証をしたとの点及び原告がその主張の(一)(イ)(ロ)の各手形を満期に支払場所に呈示して支払を求めたとの点は否認し、その他はすべて認めると述べた。<立証省略>
三、理 由
原告の主張事実は、被告千野が本件(一)(イ)(ロ)の各手形について手形保証をしたとの点及び原告が右(イ)(ロ)の各手形を満期に支払場所に呈示してその支払を求めたとの点を除いてすべて当事者間に争がない。
よつて先ず右各手形保証の成否について按ずるに、手形法第七十七条第三項の規定によつて約束手形に準用される同法第三十一条は「保証ハ為替手形又ハ補箋ニ之ヲ為スベシ」(第一項)『保証ハ「保証」其ノ他之ト同一ノ意義ヲ有スル文字ヲ以テ表示シ保証人署名スベシ』(第二項)「為替手形ノ表面ニ為シタル単ナル署名ハ之ヲ保証ト看做ス……」(第三項)と規定するに拘らず、本件(一)(イ)(ロ)の各手形について被告千野が個人の資格でこれに関与せることを示すものとしては、これらの各手形の表面に結合した紙片すなわち補箋の表面にその署名捺印があるに過ぎない(このことは成立に争のない甲第一、二号証の各一、二及び被告千野尋問の結果によつて明瞭でありなおこれらの証拠を綜合すると、被告千野はこの補箋の表面にその住所を記載し、補箋と手形に契印をしていることが認められる)から、本問は右各署名を以て手形保証とすべきか否かによつて決せられるのであるが、元来補箋は手形と結合してこれと一体をなすものであるから、その表面に結合した補箋の表面は、補箋になし得る手形行為に関する限り、これを手形自体の表面の一部と解するを相当とすべく、されば、かような補箋の表面にした単なる署名はなお手形法第三十一条第三項の規定によつて保証とみなさるべきであり、被告千野は前認定の各署名により本件(一)(イ)(ロ)の各手形についてその振出人たる被告第一木材工業株式会社のために手形保証をしたものといわなければならない。
次に、原告が本件(一)(イ)(ロ)の各手形を満期に支払場所に呈示してその支払を求めて拒絶されたことは原告本人尋問の結果に徴して明瞭である。
さすれば、原告に対し、被告第一木材工業株式会社は本件(一)(イ)(ロ)の手形金合計七十四万円と同(二)の手形金から原告が既にその支払のあつたことを認める四万円を差し引いた残金三十六万円、総計百十万円、被告千野は右(イ)(ロ)の手形金合計七十四万円、被告三光産業株式会社は本件(二)の手形金残金三十六万円の各支払義務を負つていることが明瞭であるから、被告らに対し右各手形金とこれに対する支払呈示の日の翌日からその支払の済むまで手形法所定の年六分の各法定利息の支払を求める原告の本訴請求を正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条第一項、仮執行の宣言につき同法第百九十六条の各規定をそれぞれ適用して主文の通り判決する。
(裁判官 田中盈)