大判例

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東京地方裁判所 昭和27年(行)146号 判決

原告 居関稔

被告 東京国税局長

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は「被告が昭和二十七年五月二十一日附で原告に対し、原告の昭和二十五年度分所得金額を七十二万四千五百円とした審査決定を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決を求めると申立て、請求の原因として、

「原告は昭和二十六年二月二十八日、神奈川税務署長に対し、その昭和二十五年度分所得金額を給与所得十万円、営業所得十七万八千五百円と確定申告(昭和二十五年八月六日予定申告をした際は、当初原告の妻訴外居関糸子名義でしたのであるが、神奈川税務署係員より原告名義を以てする様指示されたので、その様に訂正の上申告書を提出したものである)したが、神奈川税務署長は昭和二十六年四月三十日所得総額を七十八万八千円と更正し、原告に通知して来たので原告は同年五月二十九日これに対し再調査請求をしたところ、同年七月二十八日原告の再調査請求を理由がないとして棄却する旨の決定がなされ原告に通知された。そこで原告は更に同年八月三日被告に対して審査請求をしたところ、被告は昭和二十七年五月二十一日附で原告の昭和二十五年度所得金額を七十二万四千五百円とする審査決定をなし、原告に通知して来た。右被告認定の所得金額は、給与所得二十一万円と菊名製パン所の製パン事業による営業所得五十一万四千五百円との合計額である。ところが右の菊名製パン所と言うのは原告の肩書住所地で原告の営業登録名義によつて製パン製麺業を営んでいるものであるが、それは従来の慣習上登録名義人を原告としたにすぎず、原告は訴外居関食品工業株式会社の代表取締役として会社の業務に専念して居たのであつて、菊名製パン所の業務には全く関係せず、菊名製パン所の事業は事実上は全部原告の妻訴外居関糸子が経営して居り、菊名製パン所の事業上の支払は糸子名義の小切手を以てなされ食糧公団への毎日の払込も糸子によつてなされ、更に糸子は菊名製パン所の営業所得の帰属者として昭和二十五年度市民税五千五百円を賦課され、納付して来たのであつて、菊名製パン所よりの営業所得額は被告認定の通りであるが、その所得は糸子に帰属するものであつて原告に帰属するものではない。然るに菊名製パン所よりの右営業所得を原告に帰属するものと認定して居る被告の本件審査決定は違法であつて、取消さるべきものである。」と述べた(証拠省略)。

被告指定代理人は、請求棄却の判決を求め、

「原告主張事実中、原告がその主張の通りに確定申告をなし、神奈川税務署長が原告主張通りの更正をなし、原告がこれに対し再調査請求をしたが理由なしとしてその棄却決定があり、原告が更に被告に対し審査請求をなし、被告がこれに対し原告主張の通りの審査決定をなしてこれを原告に通知したこと、菊名製パン所の営業登録名義人が原告であること、原告が居関食品工業株式会社の代表取締役であつたこと、居関糸子名義で昭和二十五年度市民税五千五百円が納入されて居ることは認めるが、その余の事実は争う。

菊名製パン所の営業所得は五十一万四千五百三十七円であり、これは原告に帰属するものであるから、本件審査決定には原告主張のような違法はない。」と述べた(証拠省略)。

三、理  由

原告が昭和二十六年二月二十八日神奈川税務署長に対し昭和二十五年度所得金額を二十七万八千五百円と確定申告したところ、神奈川税務署長は昭和二十六年四月三十日原告の右所得を七十八万八千円と更正し原告に通知したこと、原告が同年五月二十九日再調査請求をなし、神奈川税務署長が同年七月二十八日再調査請求を理由なしとして棄却の決定をなし原告に通知したこと、原告が同年八月三日被告に対し審査請求をなし、被告が昭和二十七年五月二十一日付で原告の昭和二十五年度所得金額を七十二万四千五百円とする旨の審査決定をなし、原告に通知したこと、その審査決定において原告の給与所得二十一万円、菊名製パン所よりの営業所得五十一万四千五百円とされて居ること及び菊名製パン所の昭和二十五年度営業収益が、五十一万四千五百円であることは当事者間に争がない。そこで次に菊名製パン所の昭和二十五年度営業収益が原告に帰属するものかどうかについて判断する。

菊名製パン所の製パン製麺業の営業登録が原告名義でなされて居ることは当事者間に争がなく、菊名製パン所の営業について原告に交付された登録票であることについて当事者間に争のない乙第十四号証の二と証人高木光孝の証言を綜合すれば、菊名製パン所は原告に対して交付された小売業者(パン)登録票をその店頭に掲げて営業して居たことが認められ、成立に争のない乙第十五号証によれば、菊名製パン所の学校給食用のパンの加工について、神奈川県教育委員会教育長と原告との間に契約がなされて居ることが認められ、又成立に争のない乙第三号証の二及び証人高木光孝の証言を綜合すれば、前記神奈川税務署長のなした更正について再調査、審査の段階においては、菊名製パン所の営業上の収益が原告に帰属するものとされた認定については別に問題とされず、単に認定された所得金額が過大であるとの点が争われて居ただけであり、原告自身が東京国税局横浜支部に出向いて、菊名製パン所の営業収支について係官に説明をしたことはあつたが、居関糸子が出向いたことは全くなかつた事実が認められるのであつて、以上の争のない事実並に認定事実からすれば、菊名製パン所の営業主は原告であつて、その営業上の収益は原告に帰属せるものと認められる。尤も居関糸子名義を以て昭和二十五年度市民税五千五百円が納付されて居る事実は当事者間に争がないが、昭和二十五年度の市民税は昭和二十四年度の所得を基礎とするものではあるし、右事実のみを以て右認定を覆えすに足るものとは言えず、又成立に争のない甲第一号証によれば、居関糸子(京子とあるは糸子の誤記と思われる)宛に昭和二十五年度の予定申告書が送附された事実は認められるが、その事実は菊名製パン所の営業収益の帰属自体に関係のないことであり、更に証人居関糸子の証言とこれによつて真正に成立したものと認められる甲第四乃至第十号証を綜合すれば、菊名製パン所の営業についての支払が居関糸子によつて居関糸子名義の小切手を以てなされて居た外、営業上の事務は居関糸子がこれに当つて居たことは認められるのであるが、営業上の事務を担当執行して居るものが必ずしもその営業よりする収益の帰属者とは限らないし、営業上の支払の為に振出された小切手の振出名義人が原告でなくて居関糸子であつたと言う事実だけでは前記認定を覆えすに足らず、他に前記認定を左右するに足る証拠はない。

以上判示の通りであつて、本件審査決定には原告主張のような違法は存しないから、原告の本訴請求は失当として棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 毛利野富治郎 桑原正憲 山田尚)

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