大判例

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東京地方裁判所 昭和28年(ワ)9523号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕原告はまず、被告やのが内縁の夫の死亡により本件家屋の賃借権を失つたことを主たる請求原因とするが、予備的に、賃借権ありとしても、原告に無断で他の被告二名に転貸したことを理由に賃貸借契約を解除した、と主張する。被告は右無断転貸の主張に答えて、被告岸一雄は被告やのの実妺で、亡夫の生存中から事実上の養子として同居している岸彌生の夫であつて、被告やのの家族として本件家屋に同居しているのであるから、転貸には当らない、と争う。

〔判断〕判決は、まず、証拠によつて次の事実を認定した。即ち「被告一雄は昭和二十二年四月頃青木雄三郎(被告やのの亡夫)の生前から同人と被告やのの事実上の養女となつていた岸彌生と婚姻し、借家難の折柄本件家屋に余裕があるので、爾来これにやのと同居しているものである。一雄は月収が一万五千円位ある工員で夫婦独立の生活を営むに充分なものである。」

そして右の認定事実に基ずいて、次のように説明している。即ち「よつて家屋の賃借人がかような同居を許すことが賃貸借解除の理由となり得るものであるか否かについて考えてみるに、子が婚姻すれば戸籍までもその夫婦について新に編製することとした新制度の下では、婚姻した子については強い自主独立性を認めなければならないのであつて、ことを住居について立言すれば、新夫婦が長期に亘りそこで独立の生活を営んでいる第三者との同居家屋については、配偶者の一方が第三者と共同自主占有をするものとしなければならないのである。そして、夫婦の生活を支える一方の配偶者が新にその家に入居して来たような場合には、その配偶者がこの占有をするものと認めるを相当とする。してみると、やのが前認定のように独立の生活を営むに足る収入を有する被告一雄を昭和二十二年四月頃から長期に亘り本件家屋に同居させているのは、一雄に右家屋の共同自主占有を許したものであり、……」

次いで標記二の点について説明を続けている。「従つて右は形式上民法六一二条にいわゆる賃借物を転貸した場合に該当するものとする外はないけれども、同条は、転貸は賃貸人と賃借人との間に存すべき個人的信頼関係を破るものであるとの見地に立つて設けられたものであるから、たとえ、賃借人が賃借物を転貸しても、その転貸が合理的理由により右のような信頼関係を破るものと認められない場合には、賃貸人は賃貸借を解除し得ないものと解するを相当とする。ところで前認定の転貸が、借家難生活難の厳しい今日合理的理由によつて賃貸借当事者間の信頼関係を破るものとするに足らないことは、疑のないところであるから、原告の前認定の解除の意思表示は無効とするほかはない。」

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