東京地方裁判所 昭和28年(ワ)9768号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕原告は本件土地を昭和十五年十一月二日被告の前主訴外小野沢から期限の定めなく賃借し地上に建物を建築所有していたが、該建物は昭和二十年四月十三日空襲で焼失した。被告は昭和二十四年中に本件土地の所有権を取得し、昭和二十五年七月十三日その旨の登記手続を経由した。原告は家屋罹災当時から引続き本件宅地の賃借権を有するから処理法第十条により被告等に右賃借権を対抗することができる。もつとも右建物は未登記であつたが、右法条は罹災直後の社会的経済的混乱下において既存の法律を以つてしては借地権の保護が十分でないので、建物保護法所定の対抗力に関する原則に対して例外を設け、借地上の建物が罹災したという事実が存する以上、その建物が未登記であつたと否とを問わず、当該借地の借地権に対し対抗力を付与し、もつて罹災借地権者の地位の安全を図つたものであるから前記建物の登記の有無は原告の対抗力に消長を及ぼすものではないと主張した。
被告は処理法第十条の規定は罹災建物が未登記の場合にもその借地権を保護する趣旨ではないと抗争した。
判決は被告の主張を容れ原告の請求を棄却した。曰く。「そもそも建物保護法第一条所定の借地権の対抗力は登記ある建物の現存することを前提とするところ、空襲等の災害により登記ある建物が滅失した場合、同法律の保護に依存していた借地権者は一朝にしてその責に帰すべからざる理由により借地権の対抗力を喪失し、法の保護を受け得ない状態に陥るおそれがあるので、処理法第十条は特にかかる借地権者を救済するために設けられた規定であり、建物の登記をなさざるまま対抗力なき不安定な状態に甘んじていた借地権者に対してまで従前有しなかつた対抗力を付与してこれを保護する趣旨でない。」