大判例

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東京地方裁判所 昭和29年(タ)105号 判決

原告 リチヤード・レウイス・ブラウン

被告 エルシイ・ブラウン

一、主  文

一、原告と被告とを離婚する。

二、原被告間の未成年の子長女カスリン・アン・ブラウン、長男デボラ・ケー・ブラウン及び二女ペギー・ブラウンの親権者を被告と定める。

三、原告は被告に対し右子等が成年に達するまで、養育費として一ケ月金三百弗(一人に対し金百弗宛)を支払うことを要する。

四、訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告は主文第一、二項及び第四項同旨の判決を求め、請求の原因として、

(一)、原告は千九百二十四年四月二十六日アメリカ合衆国ペンシルバニア州に於て出生した同国市民であり、被告は千九百十八年九月十日同国ウイスコンシン州に於て出生した同国市民である。

(二)、原告と被告とは千九百四十七年七月二十五日同国カリホルニア州バーバンクに於て婚姻を為し、当事者間には千九百四十九年二月十六日長女カスリーン・アン・ブラウンが、千九百五十年七月二十一日長男デボラー・ケー・ブラウンが、千九百五十二年六月四日二女ペギー・ブラウンが出生した。

(三)、原告は千九百五十一年三月比律賓航空株式会社の社員として日本に渡り、永住の意思を以つて東京都目黒区中目黒二丁目五百八十番地に住所を定め、現在に至つて居り、被告も同年八月子女と共に日本に来て原告と同棲した。

(四)、ところが被告は千九百五十二年四月中原告の反対を押し切り原告の同意を得ず、且つ正当の理由もなく右子女等を伴つてアメリカに帰つたので、原告は今日まで被告及び右子女等の生活費を支給し、原告の許に戻るよう勧告して来たが、被告はこれを拒絶して現在に及んでいる。かくの如き被告の所為は原告を悪意を以つて遺棄したものであつて、しかも既に二ケ年を経過しているので、この状態では原被告間の婚姻はもはやこれを継続することは困難な段階に達している。

(五)、法例第十六条によれば、本件離婚の準拠法は夫たる原告の本国法であるアメリカ合衆国ペンシルバニア州の法律であつて、同法律は右の如き事実を以つて離婚の原因と規定している。しかるにアメリカ合衆国の法律によれば、一般に離婚は当事者の所在地の法律に従うこととされているから、法例第二十九条によつて、本件離婚の準拠法は日本国民法が適用されることとなる。そして右事実は同民法第七百七十条第一項第二号に該当するから、原告は被告との離婚を求める。

(六)、尚前示三子の親権者は被告と定めるのを適当とするから、そのように指定されたい。と述べた。

被告は原告の請求どおりの判決を求め、答弁として原告主張の事実を全部認め、

尚主文第三項同旨の養育費の支払を原告に命ずる裁判を求めた原告は右被告の養育費の請求に対し異議なき旨述べた。

<立証省略>

三、理  由

(一)、公文書である甲第一号証によれば、原告が千九百二十四年四月二十六日アメリカ合衆国ペンシルバニア州に於て出生した同国市民であること、及び公文書である甲第二号証によれば、被告が千九百十八年九月十日同国ウイスコンシン州に於て出生した同国市民であることを夫々認めることができる。

(二)、公文書である甲第三号証によれば、原告と被告とは千九百四十七年七月二十五日同国カリホルニア州バーバンクに於て同州法に従つて婚姻をした事、並に原告本人尋問の結果に徴すれば原告と被告との間に千九百四十九年二月十六日長女カスリーン・アン・ブラウン、千九百五十年七月二十一日長男デボラ・ケー・ブラウン、千九百五十二年六月四日二女ペギー・ブラウンが出生したことを各認めることができる。

(三)、原告本人尋問の結果によると、原被告は右婚姻後カルホルニア州に居住していたが、原告が千九百五十一年三月比律賓航空株式会社の社員として来日し、爾来永住の意思を以つて東京都目黒区二丁目五百八十番地に住所を定めて現在に至つて居り、被告が同年八月来日し、前示子等と共に原告の右住所に於て、原告と同棲生活をしていたこと、並に被告が千九百五十二年四月中原告の反対を斥け、その同意を得ず、且つ正当の理由がないのに右子女等を伴つてアメリカ合衆国に帰つて、カルホルニア州ロスアンゼルス市マツデン街六千五十五番地に居住し、原告の右住所に復帰すべき旨の原告の勧告を拒絶して現在に及んでいることを認めることができる。従つて被告は原告を悪意を以つて遺棄したものと謂うことができる。

(四)、法例第十六条によれば、本件離婚の準拠法は夫たる原告の本国法であるアメリカ合衆国ペンシルバニア州の法律であるところ、アメリカ合衆国の法律に於ては一般に離婚は当事者の所在国の法律によることとされているから、法例第二十九条に則つて、本件については日本国民法を適用すべく、被告の右所為は同民法第七百七十条第一項第二号に該当するから原告の本件離婚の請求は理由がある。

(五)、当事者間の前示三子の親権者指定に付ては已に当事者間に合意があり、此の合意は子の利益に適合するから、原告の申立どおり之を被告に定めるべきものである。(子の法定住所は父たる原告の住所にあるから当裁判所は此の点の裁判権を有する。)而して右子等の養育費として各自成年に達するまで、毎月金百弗宛合計三百弗を原告より被告に対して支払う合意も亦当事者間に成立して居ることはアメリカ合衆国副領事の署名ある乙第一号によつて明であり、此の点に対する被告の申立に対し原告に於て異議がないのであるから右被告の申立は其の儘之を認むべきものである。

(六)、訴訟費用負担の裁判は民事訴訟法第八十九条による。

(裁判官 安武東一郎 田中宗雄 田中正一)

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