東京地方裁判所 昭和29年(モ)3270号 判決
当裁判所が昭和二十九年(ヨ)第二四九号不動産仮処分申請事件につき、同年一月十八日した仮処分決定は取り消す。
との判決を求め、
その理由として、
被申立人は、申立人を債務者として、東京地方裁判所に対し、別紙目録<省略>記載の建物につき譲渡その他一切の処分をしてはならないとする仮処分命令を申請し、同裁判所は、昭和二十九年一月十八日前記建物につき右趣旨の仮処分決定をしたのであるが、申立人は、その後、起訴命令の申請をし、同裁判所は、同年二月十二日被申立人に対し、決定送達の日から十四日内に本案訴訟を提起すべきことを命ずる決定をし、その決定は、同年二月十八日被申立人に送達されたところ、被申立人は、その期間内に本案訴訟を提起しないので、この申立に及んだ。
と述べ、
申立人と被申立人との間に本件起訴命令申請当時すでに被申立人の主張するような調停手続が進行中であつたことは認める。
と述べた。
被申立人訴訟代理人は、
主文第一項同旨の判決を求め、
その理由として、
申立人の主張事実は認める。しかし、被申立人は、本件起訴命令申請当時、すでに、申立人を相手方として東京家庭裁判所に家事紛争調整の調停の申立をし、現に同庁昭和二十九年(イ)第一号事件として、被申立人と申立人との間の離婚並びに財産分与に関し、調停手続進行中である。このような家事審判法第十七条、第十八条の規定に基く調停の申立は、本案訴訟の提起に準ずるものであるから申立人の本件申立は理由がない。
と述べた。
三、理 由
被申立人を債権者、申立人を債務者とする当庁昭和二十九年(ヨ)第二四九号不動産仮処分申請事件につき、申立人(債務者)の申立に基き発せられた起訴命令に対し、被申立人(債権者)がその所定の期間内に本案訴訟を提起しないこと及び右起訴命令の申立以前、すでに被申立人より申立人を相手方として被申立人の主張するような調停が東京家庭裁判所に申し立てられ、現にその手続が進行中であることは、当事者間に争がない。
しかして、この種のいわゆる家庭に関する調停の申立が民事訴訟法第七百四十六条の規定する本案訴訟の提起と目すべきものであることは、同条並びに家事審判法第十七条、第十八条の規定の趣旨に鑑み明らかなところということができるから、申立人の本件申立は理由がない。
よつて、これを却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判官 三宅正雄)