東京地方裁判所 昭和30年(ワ)2938号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕原告は請求原因として、被告田村は昭和二三年九月上旬ころ被告豊島に対し振出日及び満期を白地とする金額三〇一万五、一二七円振出地及び支払地東京都千代田区、支払場所株式会社千代田銀行神田支店なる約束手形一通を白地部分の補充権を与えて振出した。被告豊島、同富塚を経て原告は本件手形を裏書により所得し、昭和二八年六月一日ころ本件手形の振出日を同日満期を昭和二九年五月七日と記入して白地を補充し、満期に支払場所に呈示し支払を求めたがその支払を拒絶されたので、被告らにたいし各自手形金のうち金一九六万〇八四七円の支払を求めると主張した。
被告らは手形振出の事実を認めたが、抗弁として白地手形補充権の消滅時効は五年を以つて完成すると解すべきところ、被告田村が本件手形を振出したのは昭和二三年六月一日であるのに原告が本件手形の補充権を行使したのは昭和二八年六月以降のことですでに補充権が時効によつて消滅したのちのことであるから、いずれにしても原告の右補充は無効であると抗弁した。
判決は本件手形の振出交付の日は昭和二四年四月以降のことで補充の月は昭和二八年六月一日ころであるから補充権の行使は時効完成以前であるとして被告らの抗弁を排斥したが、補充権は被告主張のとおり五年の期間の経過により時効によつて消滅すベきものとしてつぎのとおり説明している。曰く。
「しかして、白地手形の補充権は、一つの独立した形成権と解すべきであるけども、その行使によつて手形金債権を発生せしめるものであり、かつ白地手形に附着して当然これに随伴して移転するものであるから、商法第五二二条にいう「商行為ニ因リテ生シタル債権」と同視し得べく、従つてこれを行使し得べき時から五年の経過によつて時効により消滅すべきであるが、さきに認定したように本件手形が振出交付されたのは昭和二四年四月以後のことであり、原告代理人木村薫が原告のためこれに振出日及び満期を補充したのは昭和二八年六月一日頃であつて、その間五年を経過していないことが明らかであるから、右の補充は補充権の消滅時効完成前になされたものであつて、何ら無効をもつて目さるべきものではない。被告らの主張は失当である。」