東京地方裁判所 昭和30年(ワ)4136号 判決
証拠によれば、昭和二十九年五月末日頃原告と被告会社神戸支店長石井広海との間に、本件物件につき原告主張の代金で売買が成立したことが認められるところで、石井広海は被告会社の取締役であるが、取締役が支店長を兼ねることは実際上しばしば見受けられるところであり、敢てこれを禁止すべき理由もないから兼務は何ら違法とは解されず、また被告会社の神戸支店はその設置につき商業登記をしていないが、事実上神戸支店が設置されて、其処に支店長が置かれてあるからには、支店長石井は被告会社の神戸支店の営業主任者であつて、支配人と同一の権限を有するものと認めるべきである。かように考えるときは支店長石井のなした前記売買契約については被告がその責任を負うべきである。
被告は、神戸支店にあつては独立採算制で営業をしているから、支店における取引上の責任は石井広海が負うべきであると主張しているが、仮りに独立採算制であつたとしても、特段の事情の認められない本件にあつては、右理由をもつて被告の責任を回避することはできないと解すべきであるとして原告の請求を正当と認めた。