東京地方裁判所 昭和31年(ワ)10305号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕原告は被告に対し婚姻予約不履行にもとずく損害賠償の請求をしたところ、被告は抗弁として、当初から被告の父親はこの縁談に反対で強硬な膝詰談判をうけるなどの事情があつたと主張した。
判決はつぎのように説明して被告の抗弁を排斥した。曰く。
「被告の父未治郎がこの結婚に強硬に反対し、昭和三十年六月ころからは津島市より上京して被告にこの結婚を断念しなければ勘当する等といつて被告の行動を監視し、強引に横浜のアパートに転居させた等の事実が明白であり、又右末治郎の性質も極めて頑固な昔気質の人であり、被告をしてこのような父に反対してまでもこの結婚を強行する程の気骨もないことは弁論の全趣旨から明白であるから婚姻予約不履行の理由として掲げる第二の理由はこれを認めることができる。然しながら未成年の子供の婚約ならばともかく、原被告ともに十分に分別のある年令であり教養も十分にあると思われるのであるから、父が反対したら履行できなかつたというのは、婚姻は両性の合意のみに基いて成立する現行法制の下では不履行の正当の理由にはならない。
真実当事者間に婚姻予約が成立した以上その実現には誠心誠意障害を排除してやりとおす固い決意が必要であり、親の反対を適当に処理するだけの決意があるべきことが前提となつていることはむしろ当然であり、それのできなかつた本件婚姻予約不履行の責は被告の意思の弱さに基くものであり、被告は不履行の責を免がれることができない。」