大判例

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東京地方裁判所 昭和31年(ワ)2852号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕訴外清水林業株式会社は昭和三〇年四月六日被告から金二五万円を借受け、右債務を担保するため自己所有の貨物自動車一台について質権を設定し、同日これを被告に引渡した。ところが被告は同月一五日ころ右清水林業の承諾をえず訴外吉川金男にその保管方法をたしかめないで引渡し、昭和三一年二月一四日原告が自動車に対して有する抵当権実行のため執行吏の監守保管に付するまでの間、被告は吉川と共同してこれをほしいままに貨物運送の用に供して使用した。清水林業が被告に自動車を引渡した当時右自動車は新品同様でその価格は金二二七万五、〇〇〇円を下らないものであつたが、前記執行吏の監守保管に付した当時の右自動車は若しく損傷しその評価額は金一〇五万に減少した。それ故清水林業は右評価額の差額金一二二万五〇〇〇円相当の損害を蒙つたことになるが、この損害は被告が質権者として善良な管理者の注意をもつて質物を保管すべき義務不履行によつて生じたものであるから、被告は清水林業に対し同額の損害賠償義務がある。しかして原告は清水林業から右損害賠償債権の譲渡をうけ清水林業から昭和三一年三月一七日同月一九日到達の確定日附ある証書で通知した旨主張した本訴請求をなした。ところで、原告は右質契約の成立以前に本件自動車を目的として抵当権を設定しているので、自動車抵当法第二〇条との関係上、原告主張の質権設定契約それ自体が果して有効に成立したか、どうかが問題となるわけてあるが、判決は清水林業と被告との間に成立した担保契約を債権契約としての質契約と解し、有効であるとして被告に善良な管理者の注意義務による保管義務ありと判断し、つぎのとおり説明している。曰く

「原告は、右事実を目して質権の設定であるというが、右自動車が自動車抵当法第二条にいわゆる「自動車」であることは明らかであり、同法第二十条の規定により質権の設定が禁止されているのであるから、被告が右自動車について質権を取得したものということはできない。しかしながら、自動車について質権設定を禁止する自動車抵当法第二十条の規定の設けられた趣旨は、抵当権の目的となる既登録の自動車について質権の設定を認めることは抵当権との順位について技術的に困難な問題があり、また、抵当制度の認められた自動車について質権の設定の必要性に乏しいということにあると解されるのであつて、恩給権を担保に供することを禁止する場合のように債務者保護のためのものではない。右法条のこのような趣旨からすれば、既登録の自動車について物権としての質権の成立を否認すれば足り、債権契約として既登録の自動車を質に供することまでも無効とする必要はない。すなわち、本件自動車についても、被告は、第三者に対して質権の取得をもつて対抗することはできないが、清水林業株式会社に対しては前記債務の弁済あるまで右自動車を留置する権限を有するものといわなければならない。したがつて、被告は、清水林業株式会社から債務の弁済を受けてこれに対して右自動車を返還するに至るまで民法第四百条の規定により善良なる管理者の注意をもつて右自動車を保存することを要するものといわなければならない。」

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