東京地方裁判所 昭和31年(行)95号 判決 1958年12月26日
東京都千代田区内幸町二丁目二番地富国ビル七〇七号室
原告
株式会社香港国際貿易行
右代表者清算人
宮岡鉄也
右訴訟代理人弁護士
古屋貞雄
東京都千代田区大手町一丁目七番地
被告
東京国税局長
中西泰男
右指定代理人
法務省訟務局第五課長
堀内恒雄
法務事務官
那須輝雄
大蔵事務官
恩蔵章
同
中島康
右当事者間の強制執行異議事件について、次のように判決する。
主文
本件請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、「被告が昭和三十一年一月九日別紙目録記載の債権及び動産に対してした差押処分を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求原因として「原告は別紙目録記載の債権の権利者及び動産の所有者であるが、被告は昭和三十一年一月九日国税滞納処分によりこれを差し押えたので、原告は同月十七日被告に対し審査の請求をしたが、三ケ月を経過するも何ら審査の決定がない。しかし、右滞納処分は、訴外荘志成に対するものであつて、これにより、原告の前記財産を差し押えたのは違法であるからその取消を求める」と述べ、立証として、甲第一号証を提出し、証人西村晴雄の証言を援用し、乙第一号証の成立を認めた。
被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として「別紙目録記載の債権及び動産が原告に属するとの点を除き、すべて認める。右債権及び動産はともに前記荘志成に属するものである」と述べ立証として、乙第一号証を提出し、証人西村晴雄、新井久作、鎮目五郎、太田武次郎の各証言を援用し、甲第一号証の成立は知らないと述べた。
理由
被告が訴外荘志成に対する国税滞納処分として昭和三一年一月九日別紙目録記載の債権及び動産を差し押えたことは、当事者間に争がない。
そこで、右債権及び動産が果して右荘志成の有する債権又は動産なりや否やをみるに、証人西村晴雄、新井久作、鎭目五郎、太田武次郎の各証言を綜合すれば、原告会社は昭和二七年七月二四日その設立登記を了した法人ではあるけれどもその実体は右荘志成の個人事業であつて、先ず、右債権については、荘志成個人がホンコン・インターナショナル・トレーデイング・カンパニイ荘志成の名義で昭和二五年三月富国生命保険相互会社から富国ビルの七〇七号室を賃借し、翌二六年右荘志成において右名義で右相互会社に対し敷金として金一〇三、六八〇円を差し入れたものであり、その後右のとおり昭和二七年七月原告会社が設立せられ右七〇七号室をその本店所在場所と定めた後も、右七〇七号室の賃借人名義は依然前記カンパニイ荘志成であり、また、賃料の支払も同じく右カンパニイ荘志成名義で支払いながら現在に至つていることが認められ、他方、前記動産についても、これらは元来右荘志成個人の所有する物であつてその個人事業に供せられていたものであり、右原告会社設立の際これらが現物出資されたとか、或いは、原告会社が設立後これらを買い受けたとかいう事実はなく、ただ原告会社の帳簿上の操作としてこれらがその資産として計上されていたに留まることが認められるのである。しかして、右の認定を左右する証拠はない。
そうしてみると、本件の債権及び動産は、右荘志成に属するものであつて、原告会社に属するものとは認められないから、被告が右荘志成に対する滞納処分として右財産を差し押えた処分は適法な処分というべく、原告の本訴請求は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 浅沼武 裁判官 小谷卓男 裁判官 秋吉稔弘)
目録
第一、債権
原告が昭和二十五年三月富国生命保険相互会社から富国ビルデイング七〇七号室を賃借するに際し差し入れたと主張する敷金一〇三、六八〇円の返還請求権。
第二、動産(本件差押当時の所在場所、東京都千代田区内幸町二丁目二番地、富国ビル七〇七号室)
品名 数量 品質 形状
机 二個 両袖
〃 六 片袖
〃 二 タイプ用
衝立 二 大
〃 一 小
回転椅子 六 大
〃 四 小
タイプライター 一台 英文(レミントン)
〃 一 邦文(日本タイプ)
書類戸棚 一ケ 木製二つ重ね
鉄製ロッカー 一 大
〃 一 小
丸テーブル 一
肘掛椅子 二
背椅子 二
帽子掛 一
藤椅子 三
食器戸棚 一ケ 小
新聞掛 一
掛時計 一 丸型
以下 余白