東京地方裁判所 昭和32年(ワ)5157号 判決 1958年7月22日
原告 安島旭吉
被告 生田ヨシ
<外五名>
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
≪省略≫
理由
原告の本訴請求は、被告等の先代亡生田茂が原告に対する強制執行として、原告の有する特許権を差押え、その結果として特許原簿に記入された差押登録の抹消登録手続を求めるものであることは、原告の主張自体により明らかである。
ところで、強制執行手続が開始されると、そこに利害関係人が生ずるので、執行裁判所が執行手続の一環としてなした差押の嘱託に基く差押記入の登記又は登録は執行裁判所が民事訴訟法第六九〇条、七〇〇条等の規定に基いてなした抹消の嘱託によつてのみ抹消さるべきものであつて、執行債権者と執行債務者の申請によつてこれを抹消することは許されないものといわなければならない。従つて、執行債権者の承継人たる被告等に対して右差押登録の抹消登録手続を求める原告の本訴請求はそれ自体において理由がない。
のみならず、原告の主張によれば、執行裁判所たる水戸地方裁判所は原告の申請に基き執行処分の取消決定をなし、昭和三二年六月頃特許庁に対し前記差押登録の抹消を嘱託したが、特許庁は未だに右嘱託による抹消登録をしていないというのであるから、差押登録の抹消に必要な措置はすでに完了しているものというべく、この点からしても本訴請求は無用な訴であつて認容するに由なきものといわなければならない。
右のとおりであるから、原告の本訴請求はその余の点を判断するまでもなく、失当として棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 石井良三)