大判例

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東京地方裁判所 昭和32年(ワ)9182号・昭35年(ワ)10020号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕本件建物は訴外岩橋一郎が昭和三一年九月五日所有者山本解寿および高柳道生から、賃借人において後日法人を設立し同法人が営業を引き継ぐ場合は、賃貸人は右法人において本件建物賃借権を承継することを予め承諾するという条件で賃借し、昭和三一年一〇月頃原告会社設立とともに、原告が岩橋の右賃貸借契約上の地位を承継して、岩橋から本件建物の引渡を受けた。そして昭和三二年五月頃、原告は社団法人アメリカンソサエテー・オブ・ジャパン外二名の訴外人により占有を侵奪されたので、直ちに占有回収の訴を提起し、第一審において勝訴判決を受け、現に控訴審に訴訟係属中である。一方、被告は昭和三二年八月二〇日右社団法人外二名の訴外人等を債務者として、本件建物につき占有移転禁止の仮処分命令を得て執行したが、その結果本件建物は執行吏の保管に付せられるとともに、執行債務者たる右訴外人三名の使用が許され、以後右訴外人三名が本件建物を占有して飲食店営業を続けている。原告は、原告の本件建物賃借権の対抗力は右訴外人三名の占有侵奪によつて消長を来すものではないと主張し、被告の仮処分命令の執行によつて原告の賃借権行使を妨げられているとして、右仮処分の執行の排除を求めた。被告は、右原告の賃借権の対抗力存続の点について、建物賃借権の対抗要件は当該建物の占有の継続であり、その占有を侵奪された場合でも、他の事由による占有の喪失の場合と同様に、その対抗力を失うと解すべきであると主張する。

判決は、右対抗力の存否に関する判断を次のように説く。曰く、

「右のごとく、本件建物の賃借人たる原告が、アメリカンソサエテー・オブ・ジャパン等の訴外人により右建物の占有を侵奪された場合には、原告の本件建物賃借権の対抗力は、これによつて喪失せしめられることとなるのは、言うまでもないが、一般に、建物の占有の被侵奪者が、侵奪者を被告として占有回収の訴を提起する場合においては、民法第二〇三条但書により、被侵奪者の占有は、右侵奪により中絶することなく、依然として継続しているものとみなされ、これを建物賃借権の対抗要件に関していえば、その対抗力は存続し、当該建物の賃借人は、右賃借権をもつて第三者に対抗し得るものと解するのが相当である。しかして、同法第二〇三条但書による占有の継続は、右の占有回収の訴において原告たる被侵奪者の敗訴確定を解除条件として、占有侵奪の当初に遡つて占有なかりしこととなるものと解すべきである。」

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