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東京地方裁判所 昭和33年(ヨ)4013号 決定 1958年2月19日

債権者(三九一名選定当事者) 竹内勇

債務者 鴨川化工株式会社

主文

債権者の債務者に対する前記債権(請求権の表示省略)の執行を保全するため、別紙第一、第二、物件目録記載の債務者所有の不動産は仮に差し押える。

債務者は、前記債権額を供託するときは、この決定の執行の停止、または、その執行処分の取消を求めることができる。

(注、保証金六〇万円)

(裁判官 西川美数 大塚正夫 伊藤和夫)

(別紙省略)

〔参考資料〕

仮差押申請書

請求債権の表示

別紙債権目録記載の通り債権者が昭和三十二年九月末日現在において債務者会社に対して、将来、退職の際に支給をうけるべき退職金合計金(八百八十八万三千百二十二円)

申請の趣旨

右請求債権の弁済に充てるため別紙物件目録記載の不動産は仮にこれを差押える。

との決定を求める。

申請の理由

一、債権者はいずれも債務者会社の従業員として雇われ現在迄勤務中のものであるが、債務者会社の退職手当支給規程によれば、従業員が退職の場合、勤続満一年以上のものであつて、労働能率の甚だしく劣悪であるか、あるいは会社の業務の都合による等の事由を以て解雇された場合(協約第五四条)は各従業員の基準賃金に、その勤続年数に応じ同規程別表(一)記載の支給率を乗じた金額の退職金(但し自己の都合による退職の場合は勤続年数の多寡により上記の金額の五〇ないし一〇〇%とする)を支給することに定められている。而して債務者は右規程に従い退職金として昭和三十二年九月末日現在において別紙債権目録記載の通りの金額の不確定期限の債権を有するものである。

二、しかるに債務者会社は、昭和三十二年中経営不振に陥り、手形の不渡を出し、休業のやむを得ざるに立到り、目下、百方その再開の為めに狂奔し、工場財団に対しても、特定の債権者のために抵当権を設定したり、未だ担保権を設定しない財産について担保権を設定したりしつつある。

かくては、民法、商法の規定によつて一般の先取特権を認められている本件の請求権のごときも全く無意味に帰するものといわなければならない。

三、本件債権は未だ退職の事実が発生していないため、債権者が、たとえば懲戒解雇や自己都合退職となつて必ずしも前項の支給率の退職金の支給をうけるとは限らないけれども、特段の事情のない限り、懲戒解雇になるようなことは考えられないことであり、これに反し自己都合退職の場合は必ずしも稀有の何であるとは思われないけれども、それまでには、前記計算時期より見て相当期間を経過し、それに応じて金額を累増することとなるから退職金支給規程別表(二)の支給率を減額しても、なおこれを補つて余りあるものと信ずる。

四、よつて債権者は債務者に対して右退職金債権の保全のためこの申請に及んだ。

(別紙省略)

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