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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)633号 判決 1962年7月20日

原告 金田栄吉 外二名

被告(第五二九三号事件) ドン・アール・デイフイエスタ 外一名

(第六三三号事件) ゼ・グレート・アメリカン・インシユランス・コンパニー

主文

一、昭和三二年(ワ)第五、二九三号事件被告ドン・アール・デイフイエスタは、同事件原告三名に対し、各八〇万円、及びこれに対する、昭和三七年一月四日から支払ずみに至る迄、年五分の金員の支払をせよ。

二、同事件被告日本交通株式会社は、同事件原告三名に対し、各八〇万円、及びこれに対する昭和三二年七月一三日から、支払ずみに至る迄年五分の金員の支払をせよ。

三、昭和三三年(ワ)第六三三号事件被告ゼ・グレート・アメリカン・インシユランス・コンパニーは、同事件原告三名に対し、各六〇万円、及びこれに対する昭和三三年二月五日から、支払ずみに至る迄、年五分の金員の支払をせよ。

四、訴訟費用は、右両事件を通じ、右両事件被告らの負担とする。

五、この判決は、それぞれ、仮に執行することができる。

事実

昭和三二年(ワ)第五、二九三号事件(以下甲事件という。)昭和三三年(ワ)第六三三号事件(以下乙事件という。)原告ら訴訟代理人は、主文第一ないし第四項同旨の判決及び仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

一、原告金田栄吉(以下栄吉という。)は、明治三六年一一月二日に生れ、大正四年一二月一五日に生れた金田紅子(以下紅子という。)の夫であり、二人の間に、昭和二四年二月四日原告金田朝子(以下朝子という。)を、昭和二六年一〇月五日、原告金田栄(以下栄という。)をもうけた。

二、紅子は、昭和三一年八月九日、午後一〇時二〇分頃、肩書自宅附近(別紙図面A点)で、車道に背を向けて立つていたところ、甲事件被告日本交通株式会社(以下単に日本交通という。)の被用者大島義男の運転する同被告所有のタクシー(5-き2732号。以下日本交通の車という。)がゆるい速度で西側から、東側に、紅子の立つていた歩道側に即ち左よりに近づいて来た。(その時の位置は別紙図面B点。)ところが、その後から、甲事件被告ドン・アール・デイフイエスタ(以下デイフイエスタという。)が、相当の速度で、3A9223号(以下デイフイエスタの車という。)を 運転して来て、日本交通の車に追突した。(その時の位置は別紙図面C点)。

それが為、日本交通の車は左側歩道に乗り上げ、紅子を背後から突き飛ばし、その身体もろとも、原告ら宅のモルタル塗の角に強く衝突して停車した。(その時の紅子の位置は、別紙図面A´点、日本交通の車の位置はB´点)

三(1)、右事故は、被告日本交通の乗用自動車による旅客運送業の執行につき、被用者大島義男により、惹起せられたものであるが

(2)  もし大島義男が、右追突された瞬間、適宜、急停車の処置をとつたならば、右車を歩道に乗り上げる以前に、停車させることができたのであるが、同人は、その処置をとらなかつた為、右の事故が発生した。

(3)  又デイフイエスタが、前方注視義務を怠らず、先行する日本交通の車が急停車しても、追突を避けるに必要な、距離を保つて、その車を運行していたならば、かような事故は、十分避けられたのであるが、同被告はさような措置をとらなかつた為、右の事故が発生した。

四、紅子は、直ちに新宿区柏木一丁目五三番地東京医科大学病院に担ぎ込まれ、応急処置が講じられたが、その効なく、同年同月一三日午前五時五〇分、同病院に於て、胸部挫傷に因り、死亡した。

五、原告栄吉は、以前から、心臓病の為、寝たり起きたりで、働くことができず、紅子は、肩書住居で飲食店を営み月々最低三万円の収益をあげていた。原告一家の家計は、全く紅子の右収入に依存していたが、同人の死亡に因り、原告ら三名は家計の途を失うに至つた。

六、そこで原告らは、被告らに対し次の請求をする。

(1)  損害賠償

紅子は、「かねた」なる屋号を用い、酒場を経営することにより、最低年収三六万円を挙げていた。同人は死亡当時、満四〇歳であり、厚生省が作成した昭和二九年度余命表によれば、同人の余命は、三二、五五年である。しかし実際に六〇歳迄働けるとすれば、紅子は、なお右死亡日時から二〇年に亘り、合計七二〇万円の、年収を挙げられた筈である。

しかし同人は食費として一カ月八、〇〇〇円を要したから一年間で九六、〇〇〇円、年収三六万円からそれを差引けば年間収入は二六四、〇〇〇円となる。中間利息を年五分として、右金額を基として、二〇カ年間の得べかりし収入を、ホフマン式計算法により算出すると、その金額は三、五九五、六八〇円となる。同人は、大島義男及び被告デイフイエスタの前記業務上の過失により、右金額を喪失し、同額の損害を蒙つた。

(2)  慰藉料

原告栄吉は、心臓弁膜症の為、廃人同様であり、その子原告二名は幼少であり、一家の支柱とも言うべき紅子を失つたことの精神的苦痛は、一般の場合に比して、特に大きい。

(3)  原告らの紅子の損害賠償請求権に対する相続分は、夫たる原告栄吉が三分の一、子たる原告朝子、同栄両名が各三分の一であるから、(1) の損害賠償債権の相続分は、原告一人につき一、一九八、五六〇円である。

(4)  しかるに、原告らは、右損害賠償債権及び慰藉料請求権の内金として

(a)  乙事件被告株式会社から、被告デイフイエスタを通じ三〇万円

(b)  被告日本交通から三〇万円

いずれも自動車損害保険の給付金から支払をうけた。

よつて被告デイフイエスタに対し、原告栄吉は、慰藉料として一〇万円、損害賠償として七〇万円、合計八〇万円、原告朝子、同栄は、それぞれ、慰藉料として五万円、損害賠償として七五万円、合計八〇万円及びそれらの金額に対する、本件訴状副本が、同被告に送達せられた効果が発生した昭和三七年一月四日から、支払ずみに至る迄、民法所定の年五分の遅延損害金の支払を、

大島義男の使用者である被告日本交通に対し、原告栄吉は、それぞれ、右金額の慰藉料損害賠償合計八〇万円、原告朝子同栄は、それぞれ、右金額の慰藉料、損害賠償合計八〇万円、及びそれらの金額に対する、本件訴状副本が、同被告に送達せられた日の翌日、昭和三二年七月一三日から、支払ずみに至る迄、民法所定の年五分の遅延損害金の各支払を求める。

七、乙事件被告株式会社(以下被告アメリカンという)。は、亜米利加合衆国紐育市に、本店をもつ保険会社であつて、昭和三一年四月九日、東京都に於て、被告デイフイエスタと、保険金額を、五、〇〇〇ドル保険期間を同年同月同日から、同年七月九日午前一二時一分迄とする自動車事故に基く損害賠償責任契約を結び、同年七月九日、その保険期間を、同年同月同日から、昭和三二年一月九日迄、延長する契約を結んだ。

八、紅子の死亡は、被告デイフイエスタの前記業務上の過失に基く、自動車運転に因り、惹起せられたものであるから、原告らは、同被告に対し、それぞれ前記のような慰藉料及び損害賠償請求権を有するが、同被告は、右事故発生後、亜米利加合衆国カンサス州に帰還した後、その所在が不明で、同人に対する訴状の送達も、公示送達の方法による外はなく、況んや、同被告から右金員の任意支払又は強制執行による支払をうけることは全く不可能である。

九、それ故、同被告に対する債権者の地位にある原告等は、日本民法第四二三条に基き、同被告に代位して、被告アメリカンに対し、被告デイフイエスタの被告アメリカンに対する右保険金請求権を行使し、原告らは、それぞれ、慰藉料として、五万円、損害賠償として五五万円合計六〇万円及びそれらの金額に対する本件訴状副本が、被告アメリカンに送達せられた日の翌日、昭和三三年二月五日から、支払ずみに至る迄、民法所定の年五分の遅延損害金の支払を求める。

被告アメリカンが抗弁として主張する(一)(1) (2) の事実は知らない。

(二)の事実を認める。

(三)の主張を争う。

再抗弁として仮りに、被告デイフイエスタと被告アメリカンとの間に、被告アメリカン主張の(一)(2) の特約が成立していたとしても、それは、損害保険契約の保険者の、被害者に対する、保険金支払義務を、免除するものであるから、公序良俗に反し、無効である。

被告アメリカンが再々抗弁として主張する事実は、知らない。と述べた。<証拠省略>

被告日本交通訴訟代理人は「原告らの同被告に対する各請求を棄却する。」との判決を求め、原告ら主張の

一の事実は知らない。

二の事実中、被告日本交通の自動車運転手大島義男が原告ら主張の日時、運転する日本交通の車を、原告ら主張の地点で、その主張の方向に運転していたところ、後方からきたデイフイエスタの車に追突され、左側歩道上に乗り上げ、紅子と衝突し同人がその後、死亡したことを認める。その他の事実は、知らない。

三(1) の事実を認める。

(2) の主張を争う。

大島義男は、前記地点を、新宿御苑正門前方面に、即ち、西から東に進行中、前方を、同一方向に進行していた他の自動車が急停車したので、速力をゆるめ、左側歩道よりに停車した瞬間、後方からデイフイエスタの車に追突された。同人は、前方進行中の自動車と、車間安全距離を保ちつゝ、進行し、その車が停車すると、直ちに急停車の措置をとつたのであるから、同人には、何ら業務上の過失はない。(3) の事実を認める。

四の事実中、紅子が死亡したことを認め、その他の事実は知らない。

五の事実は知らない。

六(1) ないし(3) の事実は知らない。

(4) の事実を認める。

本件事故発生の原因は、事故現場の車道と歩道との境界にある石積が当時完全に崩れていた為、日本交通の車が追突により歩道に乗り上げるのに何ら妨げるものがなかつたこと、被告デイフイエスタが、日本交通の車と車間安全距離を保たず、日本交通の車が停車した時に、急停車の措置をとらなかつたことにあり、大島義男の措置には、何ら過失がなかつたから、同人の業務上の過失の存在を前提とする原告らの被告日本交通に対する各請求は、すべて失当である。と述べた。<証拠省略>

被告デイフイエスタは、公示送達による呼出をうけながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しなかつた。

乙事件被告株式会社、即ち被告アメリカン訴訟代理人は「一、原告らの被告アメリカンに対する各請求を棄却する。二、訴訟費用は、原告らの負担とする。」との判決を求め、原告ら主張の

一の事実は知らない。

二の事実中、紅子が原告ら主張の日時、大島義男の運転する日本交通の車に突き飛ばされたこと。日本交通の車とデイフイエスタの車とが、衝突したことを認める。その他の事実は、すべて知らない。

三(1) (2) の事実は知らない。(3) の事実を否認する。

四、五の事実は知らない。

六の事実中、(4) (a)の事実を認める。その他の事実は、すべて知らない。

七の事実を認める。

八の事実は知らない。

九の主張を争う。

本件自動車事故は、日本交通の自動車運転手大島義男の過失に基くものであり、被告デイフイエスタの過失に基くものではないから、被告アメリカンに対する原告らの各請求は、すべて失当である。

被告デイフイエスタは、日本交通の車と相当な車間安全距離を保ちつゝ、原告ら主張の地点に差しかゝつたところ、大島義男は、何ら警告を与えず、突如、ハンドルを左に切り、急停車したので、同被告はすかさず、急停車の措置をとつたが、遂にかなわず、日本交通の車に追突した。

かような場合大島義男としては、後続車に相当な警告を与えた上、急停車の措置をとるべきなのに、同人は、そのような警告を与えなかつた。

従つて、被告デイフイエスタの業務上の過失の存在を前提とする、原告らの被告アメリカンに対する各請求は、すべて失当である。

抗弁として、仮りに被告デイフイエスタが原告らに対し、何らかの損害賠償義務があるとしても、被告アメリカンは、次の理由により原告らに対し、その支払義務がない。

(一)(1) 被告デイフイエスタが昭和三一年四月九日、被告アメリカンと結んだ外国自動車保険契約「一、保険事項-A-法律上の賠償責任」の項には、

保険者は、自動車の所有、維持、又は使用により、かつ偶然の事故により、他人が受けた負傷、及びこれに起因する死亡による損害に対し、法律により課せられた民事責任の理由により、被保険者が支払うことを義務づけられるに至つた全額を被保険者に填補する(インデムニフアイ)旨を定めているが、

(2) 同約款の条件の項「一三、会社に対する訴訟-保険事項A-」によれば、

「被保険者の支払うべき賠償金額が、現実の審理を経て為された、被保険者に対する判決によるか、又は被保険者、損害賠償請求権者及び保険会社の三者間の書面による合意により、最終的に確定される迄は、被保険者は、会社に対し、法律上の請求権を生じない。又いかなる場合に於てもかゝる判決又は、合意の日から一二カ月以内に、訴が提起されなければ、保険会社に対し、請求権を有しない。」「何人も、被保険者の責任を決定する為に、被保険者に対して提起する訴に於て保険会社を共同被告とする権利を持たない。」旨、(いわゆるノーアクシヨン・クローズ)定められている。即ち、右保険契約は、被保険者が、被害者に支払つた損害を、保険会社が填補する損害填補保険契約、換言すれば、被保険者が、被害者に、損害額を支払う迄は、被保険者は、保険会社に対し、その損害の填補を請求し得ない旨の契約であり、特に判決により、又は被保険者、損害賠償請求権者、保険会社の三者間の書面による合意により、最終的に、被保険者の損害賠償額が確定するときに限り、被保険者は、保険会社に対し、保険金請求の訴を提起し得る。

(二) しかるに、本件に於ては、原告らの主張により、明なように、被告デイフイエスタは、原告らに対し、未だ原告ら主張の損害を賠償せず、同被告の原告らに対する損害賠償額は、未だ判決によつて、確定されていないのであるから、

(三) 被告デイフイエスタの被告アメリカンに対する五、〇〇〇弗の保険金請求権は発生していない。従つて、原告らが代位行使すべき、被告デイフイエスタの被告アメリカンに対する保険金請求権は、未だ発生していないから、その存在を前提とする原告らの各請求は、失当である。

原告らの再抗弁に対し、その主張を争う。

再々抗弁として、本保険契約の条件第一三項は昭和二五年一二月一二日附蔵銀第二、一五三号により、大蔵大臣の免許をうけたものであつて、有効である。と述べた。<証拠省略>

理由

紅子が、昭和三一年八月九日午後一〇時二〇分頃、被告日本交通の被用者大島義男の運転する日本交通の車が、デイフイエスタの車に追突され、前車が紅子に衝突したことは、被告日本交通、同アメリカンが自白したところであり、被告デイフイエスタに対しては、右両被告の自白に徴し、真実なりと認める。

証人石川たみ、同中村忠夫、同井出鶴雄、同大島義男の各証言、原告栄吉本人尋問の結果及びその供述により真正に成立したと認める甲第二号証の記載、本件事故発生現場検証の結果によれば、次の事実が認められる。

紅子は、右日時、原告らの肩書自宅附近、別紙図面A点で、幅三五糎、長さ一八一糎の木の椅子に腰をかけて、他の一人の男と、歩道に背を向け、談笑していた。この時大島義男は、日本交通の車(空車)を運転して、甲州街道方面から、新宿御苑に北接する道路を、新宿御苑の方面、即ち、西方から東方に向けて、乗客を求めながら、時速約三十粁のスピードで、疾走して来たが、原告らの自宅から西方に二、四米の道路を距てゝあつた岡田医院、それに西接する大同歯科医院の前方、歩道から二、三五米の地点に差かゝつた際、同人の車から約二米先を進行していた自動車(当時、右歩道上に佇立していた証人石川たみは、かような車の存在に気がつかなかつたと供述するが、この点については、証人大島義男の証言を採用するのが、相当と認められる。)が急停車し、尾燈がついたので、同人は、狼狽し、急遽、ハンドルを左に切り、速力を落し、(この時、先行の車と歩道との間には、自動車一台が入るだけの間隔はなかつた。)先行の車への追突を避けようとしたが、完全にブレーキを踏まなかつた為、偶後方から疾走してきたデイフイエスタの車が、同人の車に相当なスピードで追突したので、(デイフイエスタの車が相当なスピードを出していたことは、大島義男が、追突された瞬間、被つていた制帽が、後方座席に飛んだことから、判断される。)同人の車は、車道より約一五糎高かつた(前記検証の日時、測定したものであるが、事故発生当時も、大差はなかつたと認める。)左歩道に乗り上げ、前記木の椅子に腰をかけていた紅子を、一尺位の高さで、まりのように(証人石川たみの表現による)、跳ね飛ばし、大島義男が、ハンドルを左に切つた地点から、車の右前端を約一〇米はなれた、原告らの自宅の西南角に突入せしめ、紅子を、右自宅の西向きガラス戸(その幅員は、一七二糎)の北側角に圧し潰し、(その為、店の西南角の入口が損壊し、内部の椅子も、若干壊れた。)同人は、肋骨三、四本を折り、右胸から多量に出血し、直ちに、救急車に乗せられて、新宿区柏木一丁目一三番地の東京医科大学病院に担ぎ込まれたが、胸部挫傷(肋骨が折れて肺臓に突き刺さつた)に因り、同年同月一三日午前五時五〇分頃、同病院に於て、死亡した。日本交通の車は前方のライトのランプが割れ、フエンダーが全く破損し、現場を、事故発生後間もなく実況見分した警察官中村忠夫は、デイフイエスタの車の泥よけの泥が路面に落ちたところが、日本交通の車に追突したところであり、それから若干間をおいて、被告デイフイエスタが、ブレーキを踏んだことは、路面上にその車がスリツプした跡があつたので判つた。その車は、追突地点から、三、四米前進して、停車したと判断した。この為、日本交通の車の後ろのバンーパーは、使用不能の程度に、破壊された。

証人大島義男は、先行車との衝突を避ける為、ハンドルを左に切ると共に、ブレーキを不完全ながら、踏んだと供述するけれども、紅子を、約一〇米跳ね飛ばし、原告らの自宅の南西角に、車の右前方を突入せしめ、かつ、店内の椅子数脚を破損した点から判断すると、同人が、果して、急ブレーキをかけたかは疑わしい、と謂わなければならず、被告デイフイエスタは、可成のスピートで、しかも、日本交通の車が急停車しても、それに追突することを避けることができる為、必要な距離を保つことなく、疾走してきたものと認めざるを得ない。

又大島義男としては、先行車との間に、完全な車間距離を保つていたとしたら、先行車が急停車したならば、それを避ける為、左にハンドルを切つたとしても、その左前面に、紅子、別の男と石川たみとを認め得た筈であるから、(証人大島義男は、それらの人々を認めなかつたというが、もし、そうだとすれば、同人は、先行車の急停車に狼狽した結果、左側歩道上に、人が居るか否かを、認識していなかつたと、認める外はない。)それを避ける為に、再度、ハンドルを右に切り、紅子らに、車を衝突させることを避けることができた筈である。

以上の認定に反する部分の証人大島義男同安藤善作の各証言は、当裁判所の措信しないところであり、他に右認定を左右するに足りる証拠資料はない。

そうすると大島義男及び被告デイフイエスタには、前方を注意し、かつ、当時適用されていた道路交通取締法第八条、同法施行令第二二条にいわゆる、車馬又は軌道車が、他の車馬、又は軌道車に追従するときは、交通の安全を確保する為に必要な、距離を保たなければならない、業務上の注意義務を怠つたということができるのであつて、その意味に於て、右両名には、業務上の過失があつたと、判断せざるを得ない。してみれば、大島義男の使用者である被告日本交通及び被告デイフイエスタは、原告らに対し、原告らが、紅子の死亡に因つて蒙つた損害につき、連帯(不真正連帯)して、これを賠償すべき義務があると、謂わなければならない。

そこで原告らの蒙つた損害につき判断する。

成立に争のない甲第一号証、第三、第四号証、原告栄吉本人尋問の結果、及びその供述により真正に成立したと認める甲第五号証の記載によれば、紅子(大正四年一二月一五日生)は、原告栄吉(明治三六年一一月二日生)の妻で、死亡当時は満四〇才、原告栄(昭和二六年一〇月五日生)は、その長男、原告朝子(昭和二四年二月四日生)は、その長女であること。原告栄吉は、ずつと以前から心臓弁膜症で、働くことができず、一家の生計は、紅子が昭和二七年暮から、肩書自宅で営む「かねた」という酒場の収入で、支えられていたこと。同人の一カ年の収入は、少くとも、三六万円はあつたこと。その収入は、原告ら主張の計算方法(少しも不当な点はない。)によつて計算すると、一年間二六四、〇〇〇円となり、紅子の残存年齢の二〇カ年間の得べかりし利益を、次のホフマン式計算方法により、算出すると、二六四万円であることが明である。

X+(X×0.05×20)=264,000円×20 2X=528万円 X=264万円

従つて、被告日本交通及び被告デイフイエスタに対し、原告栄吉が得べかりし利益の喪失による損害として右金額の三分の一の範囲内である七〇万円、原告朝子同栄が得べかりし利益の喪失による損害として、それぞれ、七五万円の支払を請求する各請求は、いずれも正当であるから、これを認容する。

又上段認定の原告らの家族関係、年令、紅子の家の内部に於ける地位、前記負傷の態様が残酷であり、紅子の苦痛も甚大であつたであろうこと等を参酌すれば、右被告両名に対し、慰藉料として、原告栄吉が一〇万円、原告朝子同栄が五万円の支払を求める各請求も、正当であるから、これを認容する。

原告らの被告アメリカンに対する各請求につき、判断する。原告らは、債権者代位権に基いて、被告デイフイエスタが被告アメリカンに対して有する保険金請求権を、代位行使し、被告アメリカンに対し、直接被告デイフイエスタの保険金の支払を請求すると主張し、被告アメリカンは、亜米利加合衆国に於ては、債権者代位権なる制度は存在しないから、原告らの各請求は失当であると主張する。

債権者代位権が、実体法上の請求権か、訴訟法上の請求権かを判断することが、本件の問題を解決する要点と考えるから、この点につき判断する。何故ならば、訴訟法上の問題は、常に法廷地法によつて判断せられなければならないということが、国際法上の大原則であるから。(ロベルト・ノイネル著「私法と訴訟法」2頁参照)

日本民法の債権者代位権の制度は、フランス民法第一一六六条にならつたものであり、独逸民法には、この種の規定がなく、鑑定人田中和夫教授鑑定の結果によれば、被告アメリカンの本店の存在するニユーヨーク州、及び被告デイフイエスタの居住地と推認せられるカンサス州には、債権者代位権、又はこれに類似する一般的な制度は存しないこと。しかし、責任保険の場合に、被害者が、保険会社に対し、保険金請求の訴を、直接提起することができるかの問題は、ニユーヨーク州では、被保険者即ち加害者に、被害者に対して、損害賠償を為すべきことを命じる判決が為され、被保険者が、一定の期間内に、被害者に対し、その履行をしないときは、被害者は、保険会社に対して、保険金請求の訴を提起することができ、カンサス州では、自動車責任保険の場合には、被害者は、保険会社に対し、直接保険金請求の訴を提起し得る。

そうして、多くの州に於て、保険契約を締結した土地が、ニユーヨーク州であれば、同州の規定を適用する。この場合、被害者が直接、保険会社に対し、保険金を請求する訴を提起し得るとする規定が、実体規定に属するとすれば、保険契約締結地の法が準拠法となり、その規定が、訴訟法規に属するとすれば、法廷地法が準拠法となる。と解釈されていることが認められる。

フランス民法第一一六六条は「然れども、債権者は、債務者の一身に専属するものを除き、その権利及び訴権を行使することを得。」と規定しているが、ブラニオル・リペール著フランス民法(一九三一年版)第七巻二〇三頁以下、及びゴードメのテオリ・ジエネラール・デゾブリガシヨン(一九三七年版)四〇一頁は、「権利及び訴権」とは単に「訴権」-アクスイヨン・アンジユステイス-を意味するに止まり、私権及び訴権を、対立せしめたものではなく、債権者は、代位訴訟の提起には、債務者に対する執行名義を要せず、かつ、債務者が、自己の権利を行使することを拒否するか、それを怠つていることを、要件とすると説明する。

飜つて、大審院判例を見るに、昭和一四年五月一六日(民集第一八巻五五七頁)は、次のように、判示している。「債権者が、民法第四二三条第一項に依り、適法に代位権の行使に着手したときは、債務者は、その権利を処分することができないものであつて、債権者の代位後は、債務者は、代位せられる権利を消滅せしめるべき、一切の行為を為すことができないのは勿論、自らその権利を行使することを得ないものと解するのを、相当とする。(中略。)故に、債権者が、訴を以て、代位権を行使した後にあつては、債務者は、第三債務者に対し、処分行為と目すべき訴を提起することを得ないと同時に、それが為、先に債権者が提起した訴が、理由なきに帰するものではない。(中略。)そうすると、債務者が、債権者から、代位権行使に着手した事実につき、通知を受けた後、又は受けないでも、その事実を了知した上、殊更に、右訴を提起したものとすれば、その訴は理由のないものとなると共に、債権者の本訴の運命は、この訴の為、何らの影響を受けるべきものではない。」

この判例について兼子一博士は、代位権を行使する債権者は、債務者の代理人ではなく、自己の名を以て、当事者として、訴訟を為し、債務者の権利について、管理処分の権能を取得し、これに基き、訴訟を追行するのは、恰も破産管財人が、破産財団に関する訴訟を追行し、或は取立命令を得た債権者が、債務者の債権の取立を為す場合と同様、他人の権利利益に関し、その為に、当事者となる、いわゆる訴訟信託の場合として、その判決の効力は、常に、権利の帰属主体である債務者に及ぶとみなければならぬ(民事訴訟法第二〇一条第二項)。(中略)。即ち、債権者の為した訴訟は、債務者自身が為したと、同様の結果をもたらすものであるから、訴訟後に於て、債務者は相手方に対し、その確定判決に反する主張を為し得ない(中略)。この既判力の先駆としての訴訟係属の効果は、民事訴訟法第二三一条の二重訴訟の禁止の原則に現われている。二重訴訟の禁止は、単に同一当事者間の訴訟に限らず、実質上、同一事件と目すべき場合、即ち前訴の当事者が、後者の当事者の訴訟物たる権利について管理権、従つて又訴訟追行権を有し、為に前訴の判決が、後訴の当事者間にも及ぶべき場合をも、包含すべきであると評釈される(判例民事法昭和一四年度三八事件評釈参照。)

雉本朗造博士も、これより先、「間接訴権の研究」(民事訴訟法論文集一〇八九頁以下)に於て、「代位訴権に基いて、訴訟をなす債権者は、訴訟を為す権能に基いて、自己の名に於て、債務者に属する権利を、訴訟物として、訴訟を為すものであり、決して債権者を代表、若しくは代理して訴訟を為すものでない」と説かれる。

尤も、債権者代位権を、民事訴訟法上の訴訟追行権と解するについては、次のような大審院判例-例えば、競売開始決定に対する異議権は、債権者代位権の目的とならない。-昭和五年七月一九日、民集九巻九号六九九頁。

換価命令に対する民事訴訟法第五五八条の抗告権は、債権者代位権の目的とならない。-昭和七年六月三日、民集一一巻一二号一一五七頁。

民事訴訟法第七四四条の仮差押決定に対する異議権は、代位の目的とならない。-昭和一三年四月二〇日、民集一七巻八号七二六頁。

等、債権者代位権を、訴訟法上の異議権、抗告権に拡張することを否定する一連の判例があるけれども、本件に於ては、債権者代位の対象となるものは、被告デイフイエスタの被告アメリカンに対する、五、〇〇〇弗(日本貨にして一八〇万円)の保険金請求権そのものであるから、右大審院判例の解釈によつても、被告デイフイエスタの右請求権が、債権者代位権の目的となり得ることは、疑を容れない。

当裁判所は、以上の理由により、債権者代位権に関する規定は、債権者に、債務者の第三債務者に対する、直接の実体法上の請求権を付与する規定ではなく、債権者が、自己の名に於て、債務者に属する権利を、訴訟上追行し得る権限を付与する、訴訟法上の規定と解釈する。

その見解が正しいとすれば、訴訟法上、何人が訴訟実施権を有するかの問題の解駅の基準については、法廷地法を適用すべきであると考えられるから、(尤も訴訟実施権の存否は、実体法により決すべき場合がある。)、原告らが、被告デイフイエスタの被告アメリカンに対する保険金請求権を代位行使することが、許されるか否かについては、法廷地法たる日本民法が適用せられると謂わなければならぬ。そうすると、本件に於て、原告らが、被告デイフイエス夕の被告アメリカンに対する保険金請求権を代位行使することは、民法第四二三条第一項本文の規定に基き適法であると謂わなければならない。換言すれば、この解釈は、亜米利加合衆国人が、日本に於て、破産宣告をうけ、破産管財人が選任せられたとき、その破産管財人が、右破産者の亜米利加合衆国人に対する債権を行使するにつき、訴訟実施権を有するのと、理論上区別すべき理由はなく、亜米利加合衆国に於ても、破産者の属する州の法律によつて、破産管財人が、任命せられたときは、当該破産管財人は、破産財団に関する訴について、訴訟実施権を有するのと、全く揆を一にするものである。

実方正雄教授は、債権者代位権は、債権の効力に関する問題であるからこれを行うが為に、先ず債権者の準拠法により、代位権が認められることを要する。然るに、代位権行使の物体は、債務者の権利であるから、債務者の権利の準拠法によつても、代位権が認められる場合でなければ、これを行使することが許されない。蓋し、権利を、その準拠法が認める以外の、法律的運命に服せしめることは、許さる可きではないからとされる。

亜米利加合衆国に於て、債権者代位権なる制度が存在しないことは、前述の通りである。しかしながら、自動車損害賠償責任保険(日本に於ける自動車損害賠償保険法第一一条の規定するもの。-以下責任保険という。)について、鑑定人田中和夫教授は、次のように鑑定せられる。即ち、亜米利加合衆国に於ては、制定法又は、契約によつて、特別の定めが為されていない限り、一般的には、被害者が、保険会社に対して、直接請求することは許されていない。しかしニユーヨーク州の一九三九年に制定せられた保険法は、同法第一六七条第一項B号に於て、すべての責任保険について、「被害者から、被保険者に対する訴訟に於て、被保険者に対し、損害賠償を命ずる判決が為され、その登録をする通知を、被保険者及び保険者に送達してから、三〇日以内に、その判決が満足せられない(弁済せられない)ときは、その判決に基く執行が、停止されている間を除き、被害者は、保険者に対して、保険証券に基いて、保険金額を超えない範囲に於て、判決に於て給付が命ぜられた金額を請求する訴を、提起することができる」という趣旨の定めをしていない保険証券は、ニユーヨーク州に於て、発行することができないと規定し、

カンサス州の一九三七年七〇P、2α2Oに引用されているステート・ハイウエイ・コンミツシヨン対アメリカン・ミユウチユアル・ライアビリテイ・インシユアランス・カンパニーの事件に於て、同州制定法(ジユラル・スタチユート。一九三五年六六-一、一二八)は、「自動車責任保険は、債務者(即ち、保険者)に、その自動車の過失による、運行から生ずる損害に対して、補償を支払う義務を負わせるという規定は、被害者は、先ず、被保険者を訴えることなしに、直接に、保険会社を訴えることができるという趣旨である。と判示している。」と鑑定される。

そうすると、亜米利加合衆国に於ても、責任保険の場合には、被害者は、前記のような条件が満たされた場合には、直接、保険者に対し保険金の範囲内に於て、自己の蒙つた損害を、訴求し得るということができる。

しかしながら、当裁判所は、上段判示の理由により、我が国に於ては、債権者代位権の制度を、訴訟法規の適用をうける制度であると解するが故に、この種の制度が、亜米利加合衆国内にあると否とに拘らず、法廷地法たる日本民法を適用し、原告らが、被告デイフイエスタに代位して、被告アメリカンに対して行使する保険金支払の請求は、適法であると、判断する。

最後に、被告アメリカンの抗弁について、判断する。

被告アメリカン及び被告デイフイエスタは、昭和三一年四月九日、締結された保険契約に於ていわゆるノー・アクシヨン・クローズが合意されているから、原告らの被告アメリカンに対する保険金の各請求は、失当である。と主張する。成立に争のない丙第一号証の記載によれば、被告デイフイエスタ及び被告アメリカンの前記保険契約の「条件」の第一三項に於て、

「会社に対する訴は、被保険者の支払義務が、現実の審理を経てなされた、被保険者敗訴の判決により、又は被保険者、被害者及び会社の三者の合意によつて、最終的に決定された後でないと、提起することができず、又、いかなる場合にも、その訴は、右の判決又は合意の後、一二カ月以内に提起しなければならない。」「何人も、被保険者の責任を決定する為に、被保険者に対して提起する訴に於て、会社を共同被告とする権利を持たない。」と規定していることが認められる。

この条項は、「ノーアクシヨン・クローズ」と呼ばれるだけに、被害者の告訴権、或は、出訴に対する制限を規定したものと見られるが故に、その意味に於て、訴訟法に関する合意と解釈すべきであると考えられる。もしそうだとすれば、かような告訴権又は出訴の制限に関する、訴訟法上の合意は、法廷地法たる我が国の民事訴訟法に照らし、無効であると謂わなければならない。

仮りに一歩を譲つて、それが実体法上の合意と解釈するとき、その条項の効力は、いかなるものであろうか。

記録中の亜米利加合衆国陸軍東京駐屯部隊砲兵隊々長ローソン・デ・フランクリン大尉が当裁判所にあてた、被告デイフイエスタに対する本件訴状副本が不送達となつたことを報告する文書によれば、同被告は、事故発生(昭和三一年八月九日)から、約半年を経過した、昭和三二年一月三〇日、同合衆国カンサス州に帰還したことが明であり、当裁判所が、昭和三六年二月二一日の口頭弁論期日に於て、被告アメリカン訴訟代理人林田耕臣に対し、被告デイフイエスタの所在を訊ねたところ、同被告訴訟代理人は、その所在は不明であり、その所在を探すことは、不可能であると答えた。(かような場合、仮りに原告らが被告デイフイエスタに対し、勝訴判決を得たとしても、同被告の所在地を探し、その所在地に於ける財産等について、その強制執行を為すことが、殆ど不可能に属することは、多言を要しないであろう。)

当裁判所は、亜米利加合衆国に於て、公示送達の制度があるのか、仮りに、その制度があるとして、公示送達により、被告に対する口頭弁論期日の呼出が為されその期日に於て為された口頭弁論及び証拠調に基いて為された判決が、右約款にいわゆる「現実の審理を経て為された、被保険者敗訴の判決」に該当するか否かを、詳らかにすることを得ないが、もしそれに該当せず、本件に於て、被告デイフイエスタに対する敗訴判決が、「現実の審理を経て為された、被保険者敗訴の判決」に該当しないとすれば、同被告に対する訴状副本及び口頭弁論期日の呼出が、公示送達の方法、換言すれば、一種の法律上の擬制によつて為された場合には、保険会社は、それが、公示送達の方法に依つたことに藉口して、被害者の保険会社に対する保険金の請求を、失当として棄却する旨の判決を求め得ることになる。

日本民法第一三三条第一項前段は、「不能の停止条件を附した法律行為を無効」とする旨規定しているが、かような規定は、ローマ法に於てもフランス民法第一一七二条に於ても、採用せられている。当裁判所は、近代文明諸国の実体法に於ては、同様な解釈が為されているのではないかと、臆測する。

そうすると、前記ノーアクシヨンの条項は、恐らく、いかなる国にも適用せられるべき、右法理に従い、不能の停止条件を附した合意として、その約款に限り、実体法上無効と解釈せざるを得ない。鑑定人田中和夫教授は前記被告両名間の保険契約中のノーアクシヨン・クローズは、被害者保護の見地から言つて、無効であると判断される。これを要するに、原告らの再抗弁は、理由がある。

被告アメリカンは、再々抗弁として、右約款(ノーアクシヨン・クローズ)は、被告アメリカンに於て、昭和二五年一二月一二日附蔵銀第二、一五三号により、大蔵大臣の免許をうけているから、有効である。と主張する。この事実を認めるに足りる証拠資料は、全くないけれども、仮りにそのような免許がなされたとしても、それは、被告アメリカンが、我国に於て、保険業を営むに際し採用すべき保険約款について、大蔵大臣が免許を与えたに止まり、その保険約款が適用せられるべき総ての場合が、大蔵大臣の免許が与えられたことによつて、適法有効となるものではないと、解釈すべきである。当裁判所は、上来説示の理由により、案件に於て、ノーアクシヨン・クローズを、無効と判断するが故に、大蔵大臣の免許があつたことにより、その判断を二、三にする必要を認めない。被告アメリカンの再々抗弁は、これを採用することができない。

そうすると、原告らの被告デイフイエスタに対する各請求を、すべて認容した以上、同被告に対する前記請求額の範囲に於て、原告らが、被告アメリカンに対し、前記保険金一八〇万円から、原告らが支払を求める損害賠償及び慰藉料の各請求も、すべて正当であるから、これを認容する。

訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を適用して、主文の通り、判決する。

(裁判官 鉅鹿義明)

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