東京地方裁判所 昭和33年(特わ)348号 判決 1958年12月10日
被告人 大内新興化学工業株式会社 右代表者代表取締役社長 大内隼人 外一名
主文
被告大内新興化学工業株式会社を罰金百万円に
被告人大内隼人を罰金二十万円に
それぞれ処する
被告人大内が右の罰金を完納することができないときは金千円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する
理由
被告会社は東京都中央区日本橋堀留町一丁目十四番地三に本店を置き、ゴム硫化促進剤、ゴム老化防止剤等の製造販売を営業目的とする資本金百十五万の株式会社であり、被告人大内隼人は右会社の代表取締役として、その業務全般を掌理していたものであるが、被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、架空仕入の計上等の不正な方法により、昭和二十九年十二月一日より同三十年五月三十一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が二千十八万七千百四十二円であつたのに拘らず、同年七月二十八日所轄日本橋税務署長に対し、所得金額が四百四十二万九千六百六十六円である旨虚偽の確定申告書を提出し、もつて同会社の右事務年度の正規の法人税額八百四十七万八千五百八十円と右申告税額百八十六万四百三十円との差額六百六十一万八千百五十円を逋脱したものである。
(証拠の標目)(略)
(法律の適用)
法律に照らすと被告会社の判示所為は法人税法第五十一条第四十八条に該当するから所定の罰金額の範囲内において、被告人大内の判示所為は法人税法第四十八条に該当するところ、所定の罰金刑を選択しその金額の範囲内において、それぞれ主文第一項掲記のとおり量定処断し、被告人大内が右の罰金を完納することができないときは刑法第十八条により金千円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置すべきものとする。
なお弁護人は被告会社は本件につき、すでに追徴税、重加算税、利子税等をも納入しており、更にこれに罰金を科するが如きは憲法第三十九条の趣旨に違反するものであると主張するけれども、前者は、いずれも課税庁によつて租税法上の手続により賦課徴収される一種の行政上の秩序罰であつて、法人税法第四十八条第五十一条所定の刑罰とはその性質、目的を異にするから、これらが併科されたとしても固より憲法第三十九条に違反するものではないこと明らかであり、所論は到底採用できない。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 鈴木重光)