東京地方裁判所 昭和33年(行)123号 判決 1958年12月18日
千葉県山武郡横芝町横芝六百三十一番地
原告
合資会社 丸二商店
右代表者無限責任社員
内田源太郎
東京都千代田区大手町一丁目七番地
被告
東京国税局長
中西泰男
右指定代理人
真鍋薫
同
久保田衛
同
河合昭五
同
中島康
右当事者間の昭和三三年(行)第一二三号差押財産公売取消、並に解除請求事件につき、当裁判所は昭和三十三年十一月六日終結した口頭弁論の結果に基き、左の通り判決する。
主文
本件訴はこれを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告は最初になすべき口頭弁論期日に出頭しないので、その提出にかかる訴状を陳述したものと看做し、被告指定代理人に弁論を命じた。
原告提出にかかる訴状には「被告が昭和三十三年九月二日になした原告の資産(建物及び土地)の公売処分を取消し、かつ、被告が現に原告の資産に対して為している差押処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決を求め、その請求の原因として、「原告会社は乾物食料品雑貨の小売を営業とするものであるが、昭和二十四年以降営業不振となり、同三十年十二月九日休業するに至り、現在整理中のものである。原告会社の国税の所轄庁は当初千葉県の東金税務署であつたが、その後東京国税局に移轄された。原告会社の所得税に関しては、右東金税務署長をはじめ、被告においても、何等適確な資料に基くことなく、不当な課税処分を為して来たので、原告は書面、又は、口頭により数十回にわたり異議の申立を為したが、それ又、何ら首肯すべき理由なくして取上げられず、遂に、被告は、昭和二十七年十月十一日原告会社の無限責任社員内田源太郎所有の不動産を差押え、同三十三年八月二十五日付にて、右不動産を同年九月二日公売に付する旨の通知をして来た。しかしながら、原告会社は前記の通り収益はないのであるから、被告の為した前記、差押、或は、公売処分はいれづも違法なものであるから、これが取消しを求める。」旨の記載がある。
被告指定代理人は主文同旨の判決を求め、その理由として、本件差押処分取消請求については、すでに訴却下の確定判決(千葉地方裁判所昭和三十三年(行)第三号、同年五月三十一日言渡)があるものであり、かつ、本訴は訴願前置の要件を欠き、又、公売処分も未だ行われておらず、しかのみならず、原告会社は本件不動産の所有権者でもないのであるから、原告適格を欠くものでありいずれの点よりするも、本件訴は不適法なものである、旨陳述し、証拠として乙第一号証を提出した。
理由
原告の本件訴は、請求の趣旨、原因ともに明確を欠くが、結局全体の趣旨からして、原告会社の滞納国税につき、被告が原告会社代表者無限責任社員内田源太郎の資産(不動産)に対し、国税徴収法に基いて為した差押処分、及び、公売処分の違法を主張し、これが取消を求めるものと解せられるが、公売処分については公売の期日の通知があつただけでまだ公売処分がなされていないことが弁論の全趣旨から窺えるので、そうだとすれば右請求については訴訟の対象となるべき行政処分が存在しないのであるから却下を免れず、仮に、公売処分がなされていたとしてもこのような差押、又は、公売処分に対し不服のあるものは、国税徴収法の規定に基き再調査、或は、審査の請求をなし、これに対する裁決を経た後はじめて裁判所に出訴し得るものであることは、同法第三十一条の四第一項の規定上明らかである。
しかるに、原告は、たゞ、被告又は東金税務署長に対し、異議を申立てたと主張するのみで、前記のような各訴願を経たことは、これを認めるべき何等の証拠も提出しないし、又、右の各訴願を経ずに出訴したことにつき正当な事由があつたことについても、何らの主張立証もない。従つて、本訴は訴願前置の要件を欠く不適法なものと言わなければならない。
よつて、その余の点については判断するまでもなく、本件訴はこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。
(裁判長裁判官 石田哲一 裁判官 地京武人 裁判官 石井玄)