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東京地方裁判所 昭和34年(むのイ)620号 判決 1959年9月08日

被疑者 清水幸次郎

決  定

(申立人氏名略)

右の者等から、被疑者清水幸次郎に対する公務執行妨害、傷害被疑事件について東京地方裁判所刑事第十四部裁判官篠清を忌避する旨の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件忌避申立は、これを却下する。

理由

本件忌避申立の趣旨並びにその理由は昭和三四年九月七日付申立人等作成の忌避申立書に記載してあるとおりであるから、これをここに引用する。

よつて以下申立人等主張の各論点について順次考察する。

第一点について、

本件被疑事実が裁判官篠清のさきに関与した鈴木孝明外三名の被疑者等に対する勾留並びに勾留延長の裁判の被疑事実と同一のものであるとしても勾留の裁判は個々の具体的被疑者毎にその理由の有無を決すべきものであるから、単に同一の被疑事実につき別異の者に対しさきに勾留に関する裁判をなしたことがあるからといつて、その点をとらえて裁判官篠清が不公平な裁判をする虞があるとは言い難い。

第二点について、

申立人等主張のとおり仮に裁判官篠清が勾留の必要性等につき事情を説明すべく面会を求めた申立人等に対し面会を拒絶した事実があつたとしても、勾留の裁判をなすに当り裁判官が右の如き面会に応じなければならない何らの根拠も存しないのであつて、右面会拒絶を以て裁判官篠清が不公平な裁判をする虞がある理由とはなし難い。

第三点について、

申立人等主張の如く裁判官篠清が裁判官飯守重任、同玉置久弥と合議の上、裁判官飯守重任を通じて面会拒絶をしたことがあつたとしても、面会拒絶そのものが何ら不公平な裁判をする虞がある理由となり難いことは前述のとおりであるし、また裁判官篠清が以前他の被疑者に対する同一の被疑事件の勾留裁判に当り、裁判官飯守重任、同玉置久弥と全く同一の被疑事実の認定並に勾留の必要性の判断を行つたとしても、右事件と本件被疑事件とは全く別個な事件なのであるから、単に右の事実あるを以て本件について不公平な裁判をする虞があると言うことは出来ない。

以上の如く本件忌避申立はその疎明をまつまでもなく主張自体において何ら理由なきものと言うのほかなく、右申立は勾留裁判官に対する不当な予断と偏見の上に立つて忌避の権利を濫用し、勾留の手続を遅延させる目的のみでなされたことの明らかな申立ではないかとの疑念すら生ずるのであつて、とうてい採用するに足らない。

よつて刑事訴訟法第二十三条により、主文のとおり決定する。

(裁判官 江里口清雄 柳瀬隆次 小林充)

忌避申立書

被疑者 清水幸次郎

申立の趣旨

右の者に対する公務執行妨害等被疑事件につき勾留裁判官篠清は左記理由により不公平な裁判をするおそれがあるから忌避を申立る。

申立の理由

一、裁判官篠清は先に鈴木孝明他三名について勾留並にその延長に関与しているが、本件被疑事件は所謂成光電機労働争議に対する不当弾圧事件であつて、右鈴木孝明等の被疑事件と同一被疑事件である。

二、裁判官篠清は本件勾留裁判について弁護人が勾留の必要性等について説明するため面会を求めたところ何らの理由を示さずこれを拒否した。

三、裁判官篠清は、同一被疑事件の他の被疑者の勾留裁判をなすべき裁判官飯守重任、同玉置久弥と合議をした上、前記面会拒否を裁判官飯守重任を通じて行つた。

以前同一被疑事件被疑者の勾留裁判に当り、裁判官篠清は異つた被疑者であるにも拘らず被疑事実の認定及び勾留の必要性の判断について裁判官飯守重任、同玉置久弥がなした認定及び判断と全く同一の認定及び判断を行つた。

右事実は裁判官篠清は独立して裁判を行つていないことを示すものである。

四、以上の理由により裁判官篠清は本件裁判について著しく予断と偏見を持ち不公平な裁判をするおそれが顕著である。

よつて忌避の申立をする。

昭和三四年九月七日

右申立人 弁護人 福島等

同        柴田茲行

東京地方裁判所 御中

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