東京地方裁判所 昭和34年(ワ)5062号 判決
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〔事実と判断〕原告は昭和二四年二月一日本件建物を被告会社に期間二〇年の約で賃貸し、賃料は当初一カ月三二、〇〇〇円毎月末日払の約定であつたが、その後再三改定されて、昭和三二年四月分からは一カ月一一五、〇〇〇円とされた。そして原告は、被告が昭和三三年九、一〇月分の賃料を滞納したことを理由に、同年一一月四日着の内容証明郵便で、同月六日までに延滞賃料合計二三〇、〇〇〇円を支払うよう催告したが、被告がその期間内に支払をしなかつたので、更に同月八日着の書面で賃貸借解除の意思表示をして、本件建物の明渡を求めた。被告は抗弁の一つとして、本件賃貸借契約においては、賃料を三カ月分以上滞ると原告は契約解除ができる旨の過怠約款があるが、それは、賃料を三カ月分以上遅滞しないかぎり賃貸人がみだりに契約を解除しないことを持約したのであり、これを無視して通常の契約解除ができるとするとかような過怠約款を規定する理由がないことになるから、二カ月分の賃料の延滞を理由とする原告の契約解除の意思表示は無効である旨主張した。
判決は、被告の右抗弁について次のように判示してこれを排斥した。曰く、
「本件賃貸借契約第二項によれば、賃借人が賃料の支払を三箇月分以上怠つたときは、賃貸人は何等の催告を要しないで賃貸借契約を解除することができる旨の定めがあり、又その第三項によれば賃借人は賃借期間内賃借物を他に転貸し又は賃借権を他に譲渡することができる旨の定めがあるが、特に被告ら主張の如く三箇月分以上賃料の支払を遅滞しない限り賃貸人において契約解除をしない旨の明文はないし、かかる特約がなされたとの証拠はない。而して右契約書第二項の記載は他に特段の反証がないかぎり、賃借人が賃料の支払を三箇月分以上遅滞したときは、賃貸人が催告なしに契約解除をなし得る旨の特則を定めたものであつて、賃借人が約定期限に賃料の支払を怠つた場合(たとい一箇月分でも)、賃貸人が民法第五百四十一条の規定に従い相当の期間を定めてその支払を催告し、これに応じなかつた場合、賃借人に対しその債務不履行を理由として賃貸借契約を解除する旨の意思表示をすることを許さないとする趣旨であると解すべきではない。原告の自認するように、本件賃貸借契約成立に際し、賃貸人たる原告が権利金三百五十万円を徴したとの事実があつても、右条項の定めをもつて二箇月分の賃料延滞をもつてしては原告にその解除権がないと解すべき証左とはならない。」