大判例

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東京地方裁判所 昭和35年(ワ)5485号・昭37年(ワ)7918号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕ところで、原告が、昭和二八年四月六日、訴外平野晴己に対し、本件賃貸借契約の目的たる本件(一)(1)ないし(3)の土地を、債権担保の目的で、いわゆる譲渡担保に供し、その後昭和三三年一一月二四日債務を弁済して、その所有権を取戻したことは、当事者間に争いがなく、被告らは、原告が前記賃貸借契約解除の意思表示をなした当時、賃貸人たる地位を失つており、従つて、右解除の効力を生じない旨主張するので判断する。賃貸借の目的となつている土地が譲渡担保に供されるに際し、譲渡担保契約当事者間に、右賃貸借契約上の賃貸人たる地位は、譲渡担保権設定者がこれを保有することとする旨の合意がなされた場合において、賃借人が右合意を承認したときには、譲渡担保契約当事者は、右合意の効力を賃貸人に対しても主張することができるものと解するのが相当である。ところで、……を総合すると、原告は、昭和二八年四月六日、平野に対し、本件(一)(1)ないし(3)の土地を債権担保の目的で譲渡した(この点は当事者間に争いがない)が、その際平野は原告に対し、右土地の使用収益および他への賃貸はもつぱら原告の権限に属することとし、平野は右土地に対する使用収益権を有しないこととする旨、従つて、原告、被告粕谷宇三郎間の本件賃貸借契約上の賃貸人たる地位は、これを原告に保留させ、平野には、これを移転させないこととする旨の合意がなされたこと、被告粕谷宇三郎は、昭和三一年一月ごろ、本件(一)(1)ないし(3)の土地の所有者が原告から平野に変つたことを知つたが、原告に対し、その間の事情を質すこともなく、また平野に対し本件賃貸借契約にかかる賃料の支払いをした事実もないこと、その後原告からなされた前記賃料支払いの催告に対し、前記催告到達のころ原告に対し、手元不如意であるから地代の支払いはできない旨を述べ、さらに、昭和三一年七月三日付書面で原告に対し、昭和三一年六月末日までに金員の調達ができなかつたことを理由に四、五日間の猶予を与えるように求めたが、原告が本件賃貸借契約上の賃貸人たる地位を有することを争つた事実はないことが認められ、右認定を覆す証拠はない。

右事実によると、原告、平野間の本件譲渡担保契約においては、原告、被告粕谷宇三郎間の本件賃貸借契約上の賃貸人たる地位は、右譲渡担保契約締結にかかわらず、原告に留保する旨の合意がなされたものであり、かつ被告粕谷宇三郎は、本件賃貸借契約の目的たる本件(一)(1)ないし(3)の土地所有権が原告から平野に移転されたことを知りながら、依然原告が本件賃貸借契約上の賃貸人たる地位を有することを前提として、原告に対し、その催告にかかる賃料の支払い猶予を求め、これを争つた事実はないのであるから、格別の事情の認められない本件においては、被告粕谷宇三郎は原告に対し、原告、平野間においてなされた右合意を少くとも黙示的に承認したものと解するのが相当である。(矢口洪一 井田友吉 中根茂)

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