東京地方裁判所 昭和35年(ワ)6678号 判決 1963年7月18日
判 決
東京都千代田区霞ケ関一丁目一番地
原告
国
右代表者法務大臣
中垣国男
右指定代理人
館忠彦
同
加納昂
同
岩佐善己
同
礎貝保
同都北区東十条三丁目一番地
被告
川畑喜積
右訟訟代理人弁護士
中島正起
右当事者間の昭和三五年(ワ)第六、六七八号労働者災害補償保険法第二〇条に基く求償請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者双方の求める裁判
原告指定代理人は、「被告は原告に対し、金七二四、八五一円及びうち金七一九、二九六円について昭和三四年四月七日から、うち金一、一八〇円について同月九日から、うち金四、三七五円について同年五月一日から、各完済にいたるまで、年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。
第二 請求の原因
一、被告は、昭和三三年一一月二三日午後七時五分頃、小型乗用車(神第五―は五八二八号)(以下、本件自動車という。)を運転して、横浜市中区海岸通り一丁目一番地大桟橋A号岸壁路上を、同桟橋突端方面から同桟橋入口方面に向い、制限速度毎時二〇粁をこえ、毎時約二五粁の速度で進行中、前方約一九米の進路右側の二号上屋附近から左側岸壁に繋留中の白馬山丸に向い横断歩行中の渡辺順康(当時三七年)を認めたが、このような場合、自動車運転者としては、直ちに警音器を吹鳴して、警戒を与えるとともに、前方を注視してその動静に注意し、いつでも急停車できるように減速して進行し、もつて危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、不注意にもこれを怠り、同人が本件自動車の通過を待つため、立ち止つたものと誤認し、警音器を吹鳴せず、漫然と同一の速度で進行したため、同路上を横断歩行中の同人に、本件自動車前部中央附近を接触させて、同人を路上に転倒させ、よつて、同人をして、同月二四日午前四時五〇分同市南区日枝町一丁目二二番地大仁病院において、脳損傷により死亡するにいたらしめた。
二、右のように、本件事故は、被告の過失に基因するものであるから、被告は渡辺順康に対し、同人の被つた次の損害を賠償する義務がある。
1 診療費金四、三七五円及び付添看護料金一、一八〇円
渡辺順康が本件事故による負傷治療のため、本件事故直後から死亡まで、大仁病院において手当を受けた際の費用
2 喪失した得べかりし利益金三、四二三、四五〇円
渡辺順康の本件事故当時の一日当り平均賃金額金九六一円六〇銭、厚生省発表の第九回生命表による三七歳の男子の平均余命年数三一・九六年、統計法第二条に基く指定統計第五六号「世帯人員数別平均一カ月の支出額((東京都の場合の勤労者世帯))」及び同指定統計第三五号「東京に対する各都市小売物価地域差指数」による横浜市における四人家族のうち、一人の一年の平均生活費金七二、六九四円七七銭を基礎に、ホフマン式計算法により算出した額
そして、渡辺順康の相続人は、妻すい、長男昇及び長女久子であるから、妻すいは右損害額合計金三、四二九、〇〇五円の三分の一に当る金一、一四三、〇〇一円につき、渡辺順康が被告に対して有した右損害賠償請求権を相続により取得した。
三、しかして、渡辺順康は沖仲仕として、宇徳運輸株式会社(以下、宇徳運輸という。)に雇傭され、本件事故当日、前記白馬山丸の積荷岸壁作業に従事していたが、同船内での作業中の宮野班長に呼ばれ、仕事上の打合せのため、二号上屋附近から同船に向い、A号岸壁路上を横断中、本件事故に遭遇したのであるから、同人の死亡は、業務上の事由によるものであり、また、宇徳運輸は、労働者災害補償保険法(以下、労災法という。)による労災保険加入事業場であるため、原告は、同法第一二条、第一五条により、渡辺順康の遺族であつて、同人の葬祭を行つた同人の妻すいに対し、次のような保険給付をした。
1 療養補償費金五、五五五円
前記二1の診療費金四、三七五円及び付添看護料金一、一八〇円の合算額。
原告は、右金員のうち金一、一八〇円を昭和三四年四月八日に、残金四、三七五円を同月三〇日に支払つた。
2 遺族補償費金六六一、六〇〇円渡辺すいは被告から、損害賠償として、自動車損害賠償責任保険金(以下自動車保険金という)三〇万円を受領することになつていたため、法定の遺族補償費である渡辺順康の平均賃金一、〇〇〇日分から、右金三〇万円を控除した残額
原告は、右金員を同月六日に支払つた。
3 葬祭料金五七、六九六円
原告は、右金員を前同日に支払つた。
四、よつて、原告は、労災法第二〇条第一項により、前記三の保険給付支払額合計金七二四、八五一円を限度として、保険給付を受けた渡辺すいの被告に対する損害賠償請求権を取得したので、右保険給付支払額に相当する金七二四、八五一円及びうち金七一九、二九六円(遺族補償費金六六一、六〇〇円及び葬祭料金五七、六九六円の合算額相当)につき、その支払日の翌日である昭和三四年四月七日から、うち金一、一八〇円(療養補償費のうち、付添看護料相当)につき、その支払日の翌日である同月九日から、うち金四、三七五円(療養補償費のうち、診療費相当)につき、その支払日の翌日である同年五月一日から、それぞれ民法所定の利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため、本訴に及んだ。
第三 請求の原因に対する被告の主張
一 請求の原因一の1の事実のうち、原告主張の日時、場所において、被告の運転する本件自動車が渡辺順康に接触したため、同人が転倒し、脳損傷により死亡したことは認めるが、その余の事実は否認する、同二の事実のうち、渡辺順康の相続人が原告主張の三名であることは認めるが、その余の事実は不知。同三の事実のうち、渡辺順康が宇徳運輸の従業員であつたことは認めるが、その余の事実は不知。
二1 被告は、本件自動車を運転して、A号岸壁中央やや左側を進行中、約二〇米前方の進行方向右側に停車していた運搬車の向側に渡辺順康を発見したので、直ちに、時速二〇粁に減速した。同人も本件自動車を認め、いつたんは、横断を躊躇したようであつたが、直ぐ白馬山丸の方に走り出し、本件自動車が右運搬車の手前附近にさしかかつたときには、同人は、岸壁の道路を半分以上を横断していた。そこで、被告は、同人の後方を十分通過しうるものと認めて、進行したところ、突然、同人が後戻りしたので、被告は急制動の措置をとつて急停車したが、間に合わず、道路中央附近において、本件自動車の前部が同人に接触するにいたつた。このように、被告は、前方注視等運転者としての義務を尽したのであるから、本件事故について、被告には、過失がなく、損害賠償の義務はない。
2 仮に、本件事故について、被告になんらかの過失があつたとしても、本件事故は、いつたん、本件自動車の前を通過した渡辺順康が、突然、後退するという予期しない行動に出たことによるものである。通常、横断歩行者の習性として、進行中、その場に立ち止ることはあつて、後退するということは考えられず、運転者に対し、かかることを予期して運転する注意義務を期待することは不可能である。従つて、本件事故については、横断歩行中、特異な行動に出た渡辺順康にも、重大な過失があつたことは明らかであるから、本件事故による損害賠償の額を定めるについては、被害者である渡辺順康の右過失も当然斟酌さるべきであり、その額は、この過失相殺により、金三〇万円を超えることはないといわなければならない。ところで渡辺順康の相続人らは、昭和三四年五月二七日被告から前記自動車保険金三〇万円を受取つたのであるから、被告の右損害賠償債務は既に消滅した。
3 仮に、右過失相殺の主張が認められないとしても、被告と渡辺順康の相続人の一人であり、かつ、他の相続人の代理人である渡辺すいとの間で、大垣徳三を立会人として、昭和三四年一月七日右相続人らの被告に対する本件事故による損害賠償請求権に関し、次のような示談が成立した。
(一) 被告は、渡辺すいに対し、渡辺順康の死亡による損害金を、自動車保険金(金三〇万円)で支払うこと。
(二) 渡辺順康の相続人らは、被告に対する損害賠償請求権のうち、右自動車保険金額を越える部分を放棄すること。被告は、右示談の趣旨に従い、昭和三四年五月二七日渡辺すいに対し、自動車保険金三〇万円を支払つたのであるから、被告の損害賠償債務は、すべて、既に消滅した。
4 ところで、労災法第二〇条第一項に基き、政府が、被災労働者又はその遺族(以下、被災労働者らという。)に保険給付をすることにより、その者が第三者(加害者)に対し有する損害賠償請求権を取得する関係は、通常の法定代位の法理に基く求償関係で、その損害賠償請求権の存続を前提とするものであり、右損害賠償請求権が消滅したかどうかにかかわりなく、同法条により、原告と第三者の間に設定された特別の求償関係ではない。ところで、本件において、渡辺順康の相続人である渡辺すいの被告に対する損害賠償請求権は、既に述べたように、発生せず、又は原告が保険給付をする以前に消滅しているから、原告は、保険給付をしても、渡辺すいの賠償請求権を取得するいわれがない。
第四 被告の主張に対する原告の反論
一、被告主張のような示談が成立したことは否認する。もつとも、被告と渡辺すいとの間で示談書(以下、本件示談書という。)が作成され、これには、大垣徳三立会の下に、右当事者間に、本件事故につき、「渡辺順康の死亡に対する償金は自動車損害賠償保険金にて支払う事」を示談内容とする示談が成立した旨の記載があるが、被告は、大垣徳三の立会もなく、ひとりで、渡辺すい方を訪れ、三〇万円を受取るのに必要であるからと称して、印刷された警察署長あての届書と一体をなしている示談書の用紙三通を示し、これに同人の署名押印を得た後、被告において、右用紙の示談内容欄に前記文言を記入するなどして、これを横浜水上署長に提出したのである。このような本件示談書の内容、体裁及びその作成の経緯からみれば、本件示談書は、当時、同署において、業務上過失致死被疑事件として捜査されてた本件事故における被告の罪責を軽減する目的で、同署に提出するため、作成されたものであつて、渡辺すいが、母子三名を一瞬のうち路頭に迷わせる結果となつた本事故による同人らの全損害の填補を僅か金三〇万円をもつて満足し、その余の損害賠償請求権をすべて放棄したものとするような示談が成立したために、作成されたものではない。
二 仮に、渡辺すいが被告に対するに害賠償請求権を放棄したとしても、被告は右放棄の効果を原告に対抗することはできない。けだし、労災法第二〇条第一項の趣旨は、政府が、保険給付をした限度において、被災労働者らの第三者に対して有する損害賠償請求権を当然に取得することにより、労災保険制度の円滑、公正な運用をはかろうとするにあるから、保険給付を受けようとする被災労働者らは、将来保険給付を受けることにより、原告に帰属すべき第三者に対する自己の損害賠償請求権を保全すべき公法上の義務を負うものである。従つて、保険給付受領の意思を有していた渡辺すいが、労災保険制度の利用に伴う公法上の義務に違反し、被告に対する損害賠償請求権を放棄したとしても、同規定の趣旨に照らし、右放棄の当事者である被告は、その効果を原告に対抗し得ないと解するのが相当であるからである。
第五 証拠(省略)
理由
一 本件事故の発生及び保険給付
原告主張の日時、場所において、被告の運転する本件自動車が、宇徳運輸の従業員渡辺順康に接触し、そのため、同人が転倒し、脳損傷により死亡したことは当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない乙第七号証の一の一、四、同号証の二の一、三、乙第八号証の一二によれば、原告は、渡辺順康の本件事故による死亡を業務上の事由によるものと認め、労災法第一二条、第一五条により、同人の遺族であり、又その葬祭を行つた同人の妻渡辺すいに対し、昭和三四年四月六日、遺族補償費として金六六一、六〇〇円(渡辺順康の平均賃金一、〇〇〇日分から、渡辺すいが被告から損害賠償として受領することになつていた金三〇万円を控除した額)、葬祭料として金五七、六九六円、同月八日療養補償費として金一、一八〇円(渡辺順康が本件事故直後から死亡まで大仁病院に入院した期間の付添看護料)、同月三〇日、療養補償費として金四、三七五円(同病院に入院した期間の診療費)(以上保険給付合計金七二四、八五一円)を支払つたことが認められる。
二 渡辺すいの被告に対する損害賠償請求権の放棄と原告の被告に対する労災法第二〇条による代位
原告は、本件事故は被告の過失に基くものであり、従つて、渡辺順康の相続人渡辺すいは被告に対し損害賠償請求権を有するところ、原告は渡辺すいに対し前記保険給付をしたので、労災法第二〇条により、その給付の価額の限度で、同人の被告に対する損害賠償請求権を取得したとして、これに基き、本訴請求をするのであるが、これに対し、被告は、仮に、本件事故が被告の過失に基くものであり、従つて、渡辺すいが被告に対し損害賠償請求権を有するとしても、渡辺すいは、右損害賠償請求権(前記金三〇万円を越える部分)を、前記保険給付を受ける以前に、放棄したから、原告は右損害賠償請求権を取得することがない旨を主張するので、結論的に、右損害賠償請求権の放棄と労災法第二〇条による代位との関係について、判断する。
(証拠―省略)によれば、次の事実が認められる。
被告(本件事故当時、東京大学医学部附属病院分院産婦人科に研究生として勤務する医師であつたが、年令三〇歳、資力は少かつた。)は、渡辺順康の死亡後、数回にわたり、渡辺すい方を訪れ、本件事故による損害賠償債務につき、示談の交渉をした結果、昭和三四年一月七日渡辺順康の相続人の一人(妻)であり、かつ、他の相続人(当時九歳の長男昇及び当時六歳の長女久子)の代理人としての渡辺すいとの間に、(1)被告は、渡辺すいに対し、本件事故による渡辺順康の相続人らの損害金を自動車保険金三〇万円で、支払うこと、(2)自動車保険金の支払額が金三〇万円に達しないときは、被告がその不足額を支払うこと、(3)渡辺順康の相続人らは、被告に対する損害賠償請求権を、金三〇万円を越える部分について、放棄すること、とする旨の示談が成立し、被告は同年五月二七日渡辺すいに対し、右示談による損害金として、金三〇万円を支払つた。以上の事実が認められ、右認定に反する証人(省略)の証言部分は信用することができない。
もつとも、成立に争のない甲第一号証の一ないし六、前掲乙第六号証及び証人(省略)の証言によると、被告と渡辺すいとの間に、昭和三四年一月七日本件示談書(乙第六号証)が作成されているが、その示談書は、被告が、渡辺すいに対して、印刷された警察署長あての届書と一体をなしている示談書の用紙三通を示し、その「当事者」欄に、渡辺すいの署名捺印を得た後、「、立会人」欄に、大垣徳三の署名捺印を求め、「示談の内容」欄に、「渡辺順康氏死亡に対する償金は、自動車損害賠償保険金にて支払う事」と記入した外、「目的」、「場所」、「事故原因竝に状況」その他の欄に、所要事項を記入して、(実際上、被告が記入したか、又は他人をして記入させたかは、証拠上明らかでない。)作成したもので、被告はこれを横浜水上警察署長に届出たこと、当時、被告は、横浜水上警察署において、本件事故に関する業務上過失致死被疑事件の被疑者として、取調を受けていたことが認められ、従つて、本件示談書は被告が刑事上の罪責を軽減する目的で、作成されたものであることが認められるのであるが、(被告本人尋問の結果中、右の認定に反する部分は信用することができない。)、証人(省略)の証言によつて明らかなように、本件示談書が前記示談成立後に作成されたものであることに徴すると、本件示談書の内容及び体裁竝びにその作成の目的及び経緯はなんら前記示談成立の事実認定の妨げとならない。また、証人(省略)の証言によると、渡辺順康の生前、その一家四人の生計は、もつぱら、同人が宇徳運輸から得る賃金収入のみによつて、ささえられていたことが認められるから、本件示談による損害金として金三〇万円は、本件事故により、一家生計の支柱を失つた渡辺すいら親子三人の被つた全損害を填補する金額としては、決して多額とはいえないが、(省略)の証言によれば、同人は、被告と示談する以前に、渡辺順康の死亡により、労災保険金として約九六万円が支給される旨を聞かされていたことが認められるので、同人らの被告に対する損害賠償請求権を、金三〇万円を越える額について、放棄することとした示談成立の事実を否定しなければならないほど、過少な額とは認められない。
以上の次第であるから、仮に、本件事故について、被告に過失があり、従つて、渡辺順康が被告に対し原告主張のような損害賠償請求権を有し、同人の妻である渡辺すいが、相続により、その三分の一の損害賠償請求権を承継したものとしても、渡辺すいは、原告から保険給付(法定の保険給付額から金三〇万円を控除した残額)を受ける以前に、既に、前記示談により、同人らの被告に対する損害賠償請求権のうち、金三〇万円を越える部分は、これを放棄したものといわなければならない。
そして、労災保険制度は、被災労働者等の被つた損害を補償することを目的とするものであるから、補償の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合に、被災労働者らが第三者に対する損害賠償請求権を放棄し、その損害賠償請求権が消滅したときは、政府は、その限度において、保険給付をする義務を免れるものと解するのが相当である(労災法第二条第二項参照)。従つて、政府がその後に保険給付をしても、右損害賠償請求権が存続することを前提とする労災保険法第二〇条第一項による法定代位権が発生するいわれがない。被告は、被災労働者らは、保険給付を受けることにより、政府に帰属すべき第三者に対する損害賠償請求権を保全すべき公法上の義務があるから、右請求権を放棄しても、これをもつて政府に対抗できない旨を主張する。しかし、被災労働者らの第三者に対する損害賠償請求権は通常の不法行為上の債権であり、被災労働者らはこれを放棄する自由を有するのであつて、被災労働者らがこれを放棄すれば、右損害賠償請求権は消滅し、政府は保険給付をする義務を免れ、政府の労災法第二〇条第一項による法定代位権は発生しないのであるから、被災労働者らがこれを保全すべき義務を負うはずがなく、その義務があることを前提とする被告の右主張は理由がない。
本件の場合、渡辺すいは、本件事故による同人の被告に対する前記範囲の損害賠償請求権を放棄し、その限度において、既にその請求権は消滅しているのであるから、原告は、その後、渡辺すいに対し保険給付をしても、労災法第二〇条第一項により、渡辺すいの被告に対する右損害賠償権を取得し得ないものといわなければならない。
三、よつて、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、失当であるから、これを棄却し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第一九部
裁判長裁判官 吉 田 豊
裁判官 西 岡 悌 次
裁判官 松 野 嘉 貞