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東京地方裁判所 昭和35年(行モ)2号 決定 1960年4月13日

申立人 中央労働委員会

被申立人 十和田観光電鉄株式会社

主文

被申立人を原告とし、申立人を被告とする当庁昭和三四年(行)第一四七号不当労働行為救済命令取消事件の判決が確定するまで、被申立人は、申立人が中労委昭和三三年不再第二八号事件についてした命令中、若宮三吉、岡山安太郎、松田義美、柴山与三郎、佐藤義隆、及び中渡伊佐美にかかる部分に従わなければならない。

(裁判官 桑原正憲 駒田駿太郎 北川弘治)

【参考資料】

緊急命令申立書

申立の趣旨

右当事者間の御庁昭和三十四年(行)第一四七号行政処分取消請求事件の判決が確定するまで、

一、被申立人会社は若宮三吉に対する昭和三十三年七月二十三日付人事異動(別表(一))を取消し原職に復帰させなければならない。但し原職復帰に代えて原職と同格の職種に就かしめることが出来る。

二、被申立人会社は岡山安太郎、松田義美、柴山与三郎、佐藤義隆、東大野喜三郎、中渡伊佐美および川原博美に対する昭和三十三年七月二十三日付人事異動(別表(二))を取消し夫々原職に復帰させなければならない。

との決定を求める。

人事異動表(一)

発令年月日

辞令文

氏名

三三・七・二三

観光課勤務を命ずる

若宮三吉

人事異動表(二)

発令年月日

辞令文

氏名

三三・七・二三

企画室勤務を命ずる

岡山安太郎

松田義美

柴山与三郎

佐藤義隆

東大野喜三郎

中渡伊佐美

川原博美

申立の理由

一、申立外若宮三吉、同沢井栄助、同北上健一、同岡山安太郎、同松田義美、同柴山与三郎、同佐藤義隆、同東大野喜三郎、同中渡伊佐美、同川原博美、同小野武夫、同角田与作、同奥端武美、同深沢口寅三、同松田末喜、同荒町俊夫、同大池政清、同白鳥良夫、同畑山五三郎、同三浦幸雄、同森国夫、同原田卓司、同沼山金助以上二十三名は、いずれも十和田観光電鉄株式会社(以下会社という)の従業員であつたが(その後一部は退職した)、会社が昭和三十三年七月二十三日行なつた人事異動により、若宮は三本木駅助役から観光課勤務に、沢井は古間木助役から中央停留所出札係に、北上は電車区技工長から技工に、その他の岡山外十九名はそれぞれ現場業務から企画室勤務に配置換えになつた。

右はいずれも十和田観光電鉄労働組合(以下第一組合という)の組合員であり、当時第一組合と会社との間に激しい対立抗争が行われ、かつ会社は第一組合の脱退者をもつて十和田観光電鉄従業員組合(以下第二組合という。)を結成せしめ、組合員数の対比は第二組合は第一組合の二倍以上であつたところから、第一組合は、この配置転換は同人らがすべて第一組合員であることを理由とするもので労働組合法第七条第一号違反の不当労働行為であるとして、昭和三十三年八月十九日青森県地方労働委員会(以下青森地労委という)に救済申立を行なつた。

請求する救済内容はつぎのとおりである。

「(一) 若宮三吉に対し原職に復し手当を従来通り月額壱千弐百円を支給すること。

(二) 沢井栄助の中央停留所出札係を取消し、原職である古間木駅助役に復し手当を従来通り月額壱千弐百円を支給すること。

(三) 北上健市の格下げを取り消し従来通り技工長として月額七百円の手当を支給すること。

(四) 大池政清外十九名の企画室勤務を取り消し、それぞれ原職に復帰させること。」

その後組合は北上、大池、白鳥、畑山、三浦、森、原田、沼山について、同人らが、第二組合に加入し、または退職した等の理由で取下げた。

青森地労委は右申立について審査の結果、昭和三十三年十月二十五日付でつぎのとおりの命令を発した。

「(一) 被申立人会社は若宮三吉及び沢井栄助に対する昭和三十三年七月二十三日付人事異動(別表(一))を取消し夫々原職に復帰させなければならない。但し原職復帰に代えて原職と同格の職種に就かしめることができる。

(二) 被申立人会社は岡山安太郎、小野武夫、佐藤義隆、柴山与三郎、松田義美、角田与作、奥端武美、東大野喜三郎、中渡伊佐美、川原博美、深沢口寅三に対する昭和三十三年七月二十三日付人事異動(別表(二))を取消し夫々原職に復帰させなければならない。

(三) 第一項の命令は昭和三十四年三月三十一日迄、第二項の命令は昭和三十三年十一月三十日迄に履行しなければならない。

(四) 申立人組合その余の請求は棄却する。((注)別表略)」

しかしてこの命令は昭和三十三年十一月五日両当事者に送達された。

この命令に対し、会社は之を不服として昭和三十三年十一月十日、本件申立人中央労働委員会(以下中労委という)に再審査の申立をなし、一方組合も初審で棄却された松田末喜、荒町俊夫の両名について不服ありとして同じく再審査申立を行つた。中労委係属中に、会社は小野、角田、奥端、深沢口、沢井の五名に関する部分の申立につき取下げ、組合も昭和三十三年十二月十一日付で再審査申立を取下げた。

中労委は右会社の再審査申立に対し、昭和三十四年十月七日付で「本件再審査申立を棄却する。」旨の命令を発し、命令書は十月十七日両当事者に交付された。

二、右棄却命令に対し本件被申立人十和田観光電鉄株式会社は、昭和三十四年十一月十三日再審命令の取消を求める行政訴訟を提起し、右事件は御庁昭和三十四年(行)第一四七号事件として目下審理中である。

三、昭和三十三年七月の配置転換以来若宮三吉外七名の者は、本来の専門的あるいは技能的職務に従事せしめられず、多大の精神的圧迫をうけている。また疏甲第二号証によれば経済的にも肉体的にも苦痛をうけている状況にあることが窺われる。

一方、会社は第一組合からの脱退者は原職に復せしめる等依然として第一組合員に対する差別的取扱を継続しており、昭和三十四年十二月十日現在では第一組合は組合員僅か三十名を数えるのみとなつた。

以上の事情に鑑み、もし御庁係属の昭和三十四年十一月三十日提起の行政訴訟事件の解決するまで、申立人委員会の発した前記命令の内容が実現されず、そのまま放置されるならば、右の救済を受けた労働者に加えられる精神的肉体的圧迫が継続されることになり、このことが第一組合からの組合員の脱落を促すことも当然予想されるのみならず、ひいては第一組合の存立さえ危ぶまれ、その結果労働組合法の立法精神が全く没却されるおそれが大きいので、昭和三十四年十二月十六日第三百五十六回公益委員会議において労働組合法第二十七条第七項の規定による申立をなすことを決議した。

よつてここに本申立に及んだ次第である。

(注、主文掲記の被救済者以外の者についての緊急命令申立は、決定前取り下げられた。)

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