東京地方裁判所 昭和36年(ワ)1177号 判決
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〔判決要旨〕抵当権の設定に附随して代物弁済予約がされた場合、被担保債権の相当額が弁済により消滅したときは、債権者は代物弁済予約完結権を失い、抵当権の実行のみで満足する趣旨と解すべきである。
〔事実と争点〕原告は被告に対し、第一、昭和三四年一月一七日金五〇万円を弁済期同年四月一五日、利息及び期限後の損害金月六分と定めて貸与し、第二、同年八月四日金二〇万円を弁済期同年一一月三日、利息損害金前同様、第三、昭和三四年九月二一日金二〇万円を弁済期間年一二月二〇日、利息損害金前同様の定めで貸与し、被告は右各債務担保のため本件土地建物に抵当権を設定し、かつこれに附随して右各債務を弁済期日に弁済しないときは弁済に代えて本件物件の所有権を原告に移転すべき旨の代物弁済の予約をした。右第一の貸金については三万円、第二、第三の貸金については各一二、〇〇〇円が天引されており、他に各貸金について被告は順次一部ずつの弁済をした。原告のした代物弁済予約完結の意思表示の効力について、判決は次のように判示する。
〔判決理由〕右によると、右三認定の原告が代物弁済の予約完結の意思表示をした当時、第一の貸金については元本の約三分の二が、第二、第三の貸金についてはその約三分の一が弁済されており、また右貸金を全体としてみると元本の約二分の一が内入弁済されたことになる。当裁判所はかかる場合、右完結の意思表示はその効力を生じないものと判断する。何となれば、本件のように抵当権の設定に附随して代物弁済の予約がなされた場合、当事者の意思は、特段の事情がない限り、被担保債権のうちの相当額が後日弁済により消滅したときは、債権者は代物弁済予約完結権を喪い、抵当権の実行のみで満足する趣旨と解するのを条理上相当とするところ、既に認定したところから明らかなように、第二、第三の貸金は第一の貸金の弁済期日後しかも第一の貸金について内入弁済がなされつつある際になされたものであること及び被告の内入弁済は各貸金の弁済期日の後相当長い期間継続していたこと、しかもその間原告においては右予約完結を被告に通告しながら、被告から内入弁済があるとこれを猶予していることから考えると、右認定の内入弁済があつたことを以て債権者たる原告が右予約完結権を喪い、抵当権の実行のみで満足すべき相当額の弁済があつたものと認めるのを相当とするからである。(川上泉)