東京地方裁判所 昭和36年(ワ)3138号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕………してみれば、本件土地の所有者は渡辺正義であつて、原告は単なる登記名義人にすぎないから、原告の本件土地所有権に基く抹消登記請求は理由がないことになる。
しかしながら、実体関係と一致しない登記の抹消請求は、その不動産の所有者でなければできないわけのものではない。不動産登記法は不動産について登記簿上現在の権利関係を明らかにするとともに、これに先行する権利変動の過程をも登記簿上如実に表現することを目的とするものであるから、その権利変動の当事者となつた者は、その権利変動の過程と符合しない無効の登記あるときはたとえ既にその物権を他に移転し、従つて現在においては不動産の実質上の権利者でないとしても、その登記の是正に関し利害関係を有するかぎり現在の実質上の権利者と同じくその是正について登記名義人に協力を求めるいわゆる登記請求権を有するものと解すべきである。そして、登記簿上不動産の所有名義人である者は、自己の有する登記名義が何らの実体上の原因なく他に移転されたときには、その登記は真実の権利変動と一致しないのであるから、たとえその不動産の実質上の権利者でなかつたとしても、右にいわゆる登記請求権を有するものと解すべきである。そして原告は、本件土地の登記名義人であり、かつ渡辺正義に対してその要求あり次第いつでも登記名義を同人に移転すべき義務を負担しているものであるから、もし被告飯田の有する登記が実体関係に符合しない無効なものである場合には、その抹消を請求することができると解するのが相当である。(岡松行雄 石崎政男 今井功)