大判例

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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)492号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕組合員たる地位の譲渡契約については、組合契約に特段の定めがないかぎり、譲渡人を除く全組合員の同意が効力発生要件となる。

〔事実と争点〕本件建物は上野アメヤ横丁の一角にあるマーケツト形式の建物であつて、昭和二五年三月頃当時の上野商店街組合の組合員が費用を分担して建築したものであるが、完成と同時に特約により訴外箱守半之助の所有とされた。そして箱守が訴外組合に本件建物を賃貸することとし、訴外組合は組合員に店舗を割当て使用させて、賃料に充てるための店舗使用料を徴収して来た。原告は昭和三三年九月八日本件建物を買い受けて所有権を取得し、所有権に基いて本件店舗部分を占有中の被告金永祚に明渡を求めたに対し、被告金は当初からの組合員であつた訴外鳥塚栄一から本件店舗部分を転借し、かつその後鳥塚の組合員たる地位を譲り受けているから、賃貸人たる地位を承継した原告に対し、右転借権をもつて対抗しうるとの抗弁を主張した。判決は、組合員の本件各店舗部分の使用権限を賃借権とは認定せず、組合員たる地位に対して与えられた一種の受益権であるとしたが、鳥塚栄一はすでに昭和三二、三年頃から本件店舗部分を被告金に賃貸する旨契約し、かつ昭和三七年末頃組合員の地位そのものを譲渡するとして、右の店舗使用権限および組合財産の一である本件建物敷地の一部六九坪八勺に対する持分五二分の二を被告金に売渡したことを認定したうえで、かような組合員たる地位の譲渡を目的とする契約の効力について、次のように判示している。

〔判決理由〕(一)我が民法には組合員の地位の譲渡についてはもとより加入に関する規定さえ欠けているけれども、少くとも全組合員との間で加入契約を締結し出資義務を負担することによつて組合員の地位を取得(加入)できることについては今日異論を見ないところであり、また民法は明文をもつて組合から脱退を許容しているのであるから、民法の解釈としては、組合員たる地位の取得が加入という形式をとるにせよ、地位の譲受という形式をとるにせよ、要するに組合の人的要素に増減変更があつたからといつて当然には組合の同一性が破られるわけではなく、斯る人的変動の前後を通じて組合契約の同一性は保たれているものと解するのが正当である。そうであれば、地位譲渡の効果が発生するためにはどのような要件を具備すべきかは別論として、一般に組合員たる地位の譲渡を目的とする契約が有効に成立し得ることは肯定できる。

(二)そしてこのような譲渡契約は、組合契約によつて特段の定めをすれば格別、そうでないかぎり譲渡人を除く全組合員の同意が効力発生要件となるものと解するのが相当である。それは、実質的には、組合については商法第八〇条にみられるような出資者の責任に関する制限がなく、組合員の交替が他の組合員の利害に及ぼす影響が多大であること、また個々の組合員に解散請求権が与えられていること(民法第六八三条)にも窺われるように、組合結合体は組合員相互の人的信頼関係に依存するところが極めて大きいこと等に鑑み、現に存在する組合という結合体(法律関係)を維持するために組合員に認められた権利であつて、つまるところ組合契約の本質から導き出される権利(したがつて組合契約で格別の定めをすればそれに従うことになる)と解するのが相当であり、形式的には、加入契約が全組合員を相手方として締結されるべきこととの権衡および一般に権利と義務とを包括したいわゆる地位の譲渡は当該権利義務関係の相手方の承詰を要するものと解されることから理由づけられるものと考えられる。

(三)訴外組合の場合に、組合契約上この点についていかなる規定を設けていたかは詳らかでないが、……を総合すると、被告金が地位の譲渡を受けるまでにも、二、三地位の譲渡があつたが、その場合は組合役員が地位の譲渡に対し承認を与えるのが通例であつたこと、被告金が鳥塚からその組合員たるの地位を譲受けるについて訴外組合の組合員から格別異議を唱えられた形跡はないことが認定でき、上掲各証拠を総合すれば同被告はこの後正当な組合員として組合から処遇されていることが推認され、これらの点について反対の証拠はないから、同被告が鳥塚からその組合員たる地位を譲受けるについて他の組合員の同意があつたものと認めるのが相当である。そうすると、被告金も被告桜井と同じく、組合員たるの地位に基づいて本件青斜線部分の店舗を占有するのであるから、被告桜井の場合と同じく正当な占有権原を有するものと認むべきである。(石田哲一 滝田薫 山本和敏)

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