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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)9122号 判決 1962年6月05日

原告 陸運機材工業株式会社

右代表者代表取締役 岩下泰造

右訴訟代理人弁護士 吉井規矩雄

被告 山田金五

右訴訟代理人弁護士 霧生昇

主文

被告は原告に対し金一、四三五万七、九八〇円及びこれに対する昭和三六年一二月八日から支払済まで年六分の割合による損害金を支払うこと。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮りに執行できる。

事実

≪省略≫

理由

原告が本件手形二七通の所持人であること、被告が右各手形の表面に署名押印したことは当事者間に争がない。

そして、関谷証人及び原告代表者の供述及びこれらによつてその成立の認められる甲第二八号証によると、被告は昭和三四年二月七日原告方において本件各手形につき個人保証をする趣旨で右の署名押印をしたものであることが明らかである。奥井証人及び被告本人は被告の主張に合うような供述をしているが、右供述は前記証拠に対比してにわかに採容できない。他にこの認定を左右するに足りる資料はない。ところで、本件手形のうち別紙手形目録23及び27の二通の手形以外の手形は昭和三四年二月七日当時にはすでに拒絶証書の作成期間を経過していたものであるが、手形保証については保証をなし得べき期間についての定めがなく拒絶証書作成期間経過後も手形が手形たることには変りがないのであるから、保証の趣旨で手形の表面に署名押印した者は拒絶証書作成期間経過後の手形についても手形保証の責任を免かれないものといわなければならない。

なお、被告は悪意取得の抗弁を言々し、山岡、奥井両証人及び被告本人はこれに合致するかのような供述をしているが、これらの供述は、井上証人及び原告代表者の供述に対比して採容できずかえつて、右供述によると、原告は本件手形が融通手形であることは全く知らず商業手形であると信じて訴外の株式会社東京ケミカルスから裏書譲渡をうけ、これを株式会社白木屋に差し入れていたものであつて、不渡後振出人会社の責任者である被告に対してその責任を問い被告の個人保証を求めて前記の手形保証を得たものであることが認められる。したがつて、仮りに期間後の手形保証の場合には保証人において主債務者たる振出人の有する抗弁を援用できるとみても、本件の場合には悪意取得の抗弁を問題にする余地がない。

右のとおりであるから、被告は手形保証人として手形金合計一、四三五万七、九八〇円及びこれに対する訴状送達の翌日(昭和三六年一二月八日)から支払済まで年六分の割合による損害金を支払うべき義務がある。

よつて、原告の請求を理由ありと認め、主文のとおり判決する。

(裁判官 石井良三)

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