東京地方裁判所 昭和36年(特わ)530号・昭36年(特わ)491号 判決
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〔判決理由〕
(弁護人の主張に対する判断) 弁護人の主張の要旨は、……公訴事実に示された被告会社の所得金額および法人税の逋脱額については、これをそのまま認めることは出来ない。検察官は、被告会社の所得金額を決定するのに推定計算の方法によつているけれども、課税所得の決定にあたつて推定計算が許されるのは、飽くまで税務行政の面に限られるのであつて、これを厳格な証拠が要求される刑事訴訟にまで拡げるのは不当である。仮に百歩を譲り、税法違反事件については、その特殊性にかんがみ、推定計算が許されるとしてもその範囲は最少限度に限定されるべきである。しかるに、本件公訴事実における被告会社の所得金額の認定は、右の限度を超えていて、到底容認し難いものである。……というのである。
よつて、(判断するに)……裁判所が事実を認定するについては、適法な証拠調手続を経由した資料のみによつてこれをなすべきで、その他の資料によつて事実の存否をみだりに臆測することが許されないことは言う迄もないが、しかし証拠調を経由した資料そのものから直接に犯罪事実を認定することができない場合に、このような資料によつて認定することができた諸事実を総合して、それによつて間接的に犯罪事実を推認することは、いささかも刑事訴訟の証拠法則に違背するものではない。従つて、問題はその推認が合理的であるか否かにかかるである。被告人横山の手帳の記載により算出された売上脱漏率が、起訴にかかる事業年度の後の年度であること、および昭和三四年一〇月分および翌一月一日から同月一七日までの短期間の関係分であることは明らかであるが、この期間には、賞与等にあてる年末支払資金やスカウト料を必要とする特別の事情があつたとする弁護人の主張については、これを認めるに足る証拠がないのみでなく、下北沢オデオン座の事務員南雲十四士の手帳の記載によれば、同映画館の売上脱漏率は同年の九月分についても三一%と算出され、且つこれらの事業年度と起訴事業年度との間に、脱漏率を異にする別段の事情を認めないのであるから、これらを根拠として、検察官が、起訴にかかる事業年度についても、少くても映画館の入場料収入について三〇%、ホールオデオンおよびバーの売上収入について三五%の売上脱漏があつたと推認したのは、充分合理性があるものといわなければならない。≪以下略≫(四ツ谷巌)