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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)1737号 判決 1964年11月14日

原告

朝日石綿工業株式会社

右訴訟代理人

梶谷丈夫

磯辺和男

板井一龍

被告

株式会社大阪パツキング製造所

右訴訟代理人

佐藤庄市郎

松井元一

色川幸太郎

林藤之輔

中山晴久

石井通洋

右補佐人弁理士

三枝八郎

主文

原告の請求は、いずれも棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

原告訴訟代理人は、「一 被告は、業として、別紙第一目録記載の方法を使用し、又はその方法により生産した珪酸カルシウム保温材を譲渡してはならない。二 被告は、大阪市西成区千本通七丁目四番地及び岐阜県本巣郡穂積町所在の被告方各工場に存する被告所有の前項の保温材を廃棄せよ。三 被告は、別紙第二目録記載の攪拌熟成槽を除却せよ。四 被告は、原告に対し、金二千八百五十万円及びこれに対する昭和三十七年三月十七日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被告訴訟代理人は、主文第一項同旨の判決を求めた。

第二  当事者の主張

(請求の原因等)

原告訴訟代理人は、請求の原因等として、次のとおり述べた。

一  原告は、次の特許権を設定の登録により取得した。

発明の名称 軽量保温材並びに耐火壁材の製造法

出  願 昭和二十七年六月十日

出願公告 昭和三十年六月十四日

登  録 昭和三十一年一月三十一日

特許番号 第二一九、四五三号

二  本件特許発明の願書に添附した明細書の特許請求の範囲の記載は、別紙第三目録の「特許請求の範囲」の項記載のとおりである。

三  本件特許発明の要部及び作用効果

(一) 本件特許発明は、軽量保温材並びに耐火壁材の製造方法に関するものであり、その要部は、

(1) 原料として、珪藻土、消石灰及び石綿繊維を使用すること、

(2) 右原料を水中で煮沸混合して、珪酸と消石灰とを反応させ、珪酸カルシウムの第一次反応物を造ること、

(3) 右反応物を濾過脱水して、成型すること、

(4) 成型物を加圧水蒸気中で加熱硬化反応させて、第二次反応物を造つたのち、乾燥して製品とすること、

にある。

なお、右(2)にいう煮沸とは、沸騰と同意義ではなく、加温を意味するものであり、このことは明細書中の「特許の請求の範囲」の項に用いられている「煮沸混合し」という表現と、「発明の詳細なる説明」の項に用いられている「加温反応させた混合物を……」という記載とが対応していること、及び煮沸という言葉には温度的要素はなく、単に物を煮るという外観的現象を表現するにすぎないことから明らかである。また、前記(3)にいう成型は「特許請求の範囲」の項に単に「成形し」とのみ記載され、何らの限定がないから、成型方法については出願当時の技術水準によるべきものと解すべきであるところ、当時、保温材の成型方法には、鋳型成型法と圧縮成型法(プレス成型法)とがあり、この二方法は広く利用されていたもので、本件特許発明もこれらの公知の成型方法を利用したにすぎないから、被告主張のように鋳型成型のみに限定されるべきものではない。

(二) 本件特許発明の作用効果は

(1) 珪酸を主成分とする珪藻土と石灰と水で混合し、その乳濁液を攪拌しつつ加熱反応させる第一次反応工程において、珪酸カルシウムが生成し、この珪酸カルシウムが水と作用して凝膠体を形成し、その結果、全体が膨潤して嵩の大きいものとなること、

(2) 第一次反応生成物を脱水成型し、これを加圧水蒸気中で加熱硬化反応させる前記(3)、(4)の工程において、凝膠状の珪酸カルシウムは結晶化して珪酸カルシウム結晶となり、強度が増大すること、

(3) 前記(4)の工程において、第二次反応物を完全乾燥して含有水分を蒸発させることにより、見かけ比重及び熱伝導率の小さい多孔性の保温材が得られること、

(4) 原料として添加される石綿繊維が珪酸カルシウム結晶間の連絡の役をし、製品の届曲強度を増大させること、にある。

なお、従来、この種軽量保温材等の製造は、珪酸土、カルシウム及び石綿類を単に常温水で混合したものを鋳型に注入するか、又は、八十パーセント以上の可溶性珪酸分を含む高珪酸珪藻土にカルシウムを加えて乾式混合し、これを加圧成型したものを離型し、その後これを加熱硬化乾燥させる方法によつていたものであるが、この製造方法によつて、その製品の強度、重量及び熱伝導率のいずれの点からも軽量保温材としての特性を総合充足するものが得られなかつたばかりでなく、原料に良質の珪藻土を要し、製造工程も煩雑で、工業的生産に不適当であつたところ、本件特許発明によれば、加熱硬化反応以前に第一次反応として、珪藻土中の珪酸と石灰とを予め十分反応させて珪酸カルシウム水和物とし、その結果、嵩高の珪酸カルシウムを得るとこができるため、可溶性珪酸分の量の如何は問題でなく、可溶性珪酸分の少ない如何なる珪藻土をも使用することができ、かつ、見かけ比重及び熱伝導率ともに小さく、良質で量産に適する経済的製造が可能となつたものであり、したがつて、本件特許発明の主要素は、前記第一次反応を生起させる点にあるものである。

四  被告の製造方法

被告の製造方法は、別紙第一目録記載のとおりである。

五  被告の製造方法の特徴及び作用効果

(一) 被告の製造方法の特徴は、次のとおりである。

(1) 原料として、珪藻土、生石灰石綿繊維及び「結合珪酸及び結合酸化アルミニウムが反応性に富み活性のある礬土珪酸塩を主成分とする粘土」を使用すること。

(2) 原料を摂氏百度に満たない温度(通常摂氏八十度以上)の温水中に投入して、数十分攪拌混合すること。

(3) 攪拌後、これをそのまま混合時の温度を保ちつつ、一、二時間静置熟成すること。

(4) 生成物をプレス成型すること

(5) 成型物を加熱硬化反応させた後、乾燥して製品とすること。

(二) 被告の製造方法の作用効果は、本件特許発明と同一である。

六  本件特許発明と被告の製造方法との比較

本件特許発明と被告の製造方法とを比較すると、次のとおりである。

(生石灰の使用について)

(一)  被告の製造方法は、アルカリ原料として本件特許発明が消石灰を使用しているに対し、生石灰を使用している点において相違するが、生石灰に水を加えれば、消石灰となるのであるから、アルカリ原料としては、両者は全く同一物質である。

(粘土の使用について)

(二) 被告の製造方法においては、本件特許発明と異なり、原料として前記のとおり粘土を使用しており、右の粘土の使用により、被告主張のとおり粘土の膨潤性を利用してゲルの嵩高を助長させることがあつたとしても、珪藻土中の珪酸と石灰とを反応させて珪酸カルシウムの水和物を形成させ、ゲル化させるのでなければ、加熱硬化反応により珪酸カルシウム水和物を結晶化させ、規格に合致する軽い保温材を得ることはできない。珪藻土と石灰とを水中で加温反応させれば、珪酸カルシウム水和物となり、それがゲル化して嵩高のものとなるのであり、そこにそれ自体膨潤性のある粘土を加えれば、それだけ膨潤度が増大し、嵩が大きくなるのは当然であるが、これはあくまでも珪酸と石灰との反応及び生成物のゲル化を前提とし、これれ利用するものであり、したがつて、粘土の利用は嵩高を助長させるという附加的なものにすぎない。

(静置熟成について)

(三) 被告の製造方法は、珪酸と石灰とを加温反応させる第一次反応に際し、加温攪拌に附加して静置熟成という手段を行なつている点で本件特許発明と異なるが、右置熟成は珪酸カルシウムの膨潤を進行させて、第一次反応を完成させるためのもの、すなわち、加温攪拌と相まつて珪酸カルシウムの水和物の生成並びにゲル化を完成せしめるものであるから、結局本件特許発明における第一次反応を行なわせることに帰着する。なお、本件特許発明における「煮沸」の語義は、前記のとおり温度の限定を示すものでないから、水の沸点における温度に限定されるものでなく、被告の製造方法における加温攪拌及び静置熟成も、珪酸と石灰とを反応させて珪酸カルシウム水和物を形成させるものであるから、特定の温度は問題ではなく、予め加温反応するという本件特許発明の方法そのままを包含している。

(成型方法について)

(四) 本件特許発明における成型方法は、前記のとおり、加圧成型法と鋳型成型法の双方を意味するから、被告の製造方法における加圧成型法は、前者の成型法に包含される。

(生産物について)

(五) 被告の製造方法により生産した物は、含水珪酸カルシウムを主体とする珪酸カルシウム保温材であり、本件特許発明の方法により生産した物と同一性があるから、両者の製造方法は技術的に同一であると推認できる。

なお、被告は被告の方法により生産した物は、珪酸カルシウムの含アルミナトベルモライトの板状結晶を主成分とすると主張するが、被告のいう含アルミナトベルモライト結晶は、自然界に存在しない。トベルモライト結晶は、含水珪酸カルシウムの結晶学的分類であり、本件特許発明の方法により得られる物も、被告の方法により得られる物も、結晶学的にはトベルモライト結晶を主成分とするものである。

仮に、被告の製造方法が粘土を使用することにより、珪酸、石灰及び酸化アルミニウムが反応して含水珪酸カルシウムとは別の物を形成することがあつても、それはわずかに珪酸カルシウム保温材中に混在するものにすぎず、本件特許発明の方法により生産した物に比較し同一性を阻却するものではない。本件特許発明の方法により生産した物と被告の方法による製品とは、保温材としての性能において、何ら相違なく、ともに珪酸カルシウム保温材日本工業規格に合致させているものである。したがつて、被告の製造方法は、本件特許発明の技術的範囲に属する。

以上のとおりであるからら、被告の製造方法は、本件特許発明と同一の技術思想に基づくものであり、その技術、工程及び作用効果のいずれの点からみても、本件特許発明のそれと何ら異なるところはなく、その技術的範囲に属するものである。

七 差止請求

被告は、大阪及び岐阜の両工場において、業として、本件特許発明の技術的範囲に属する別紙第一目録記載の方法を使用し、その方法により生産した珪酸カルシウム保温材を他に譲渡して、原告の本件特許権を侵害しているから、原告は被告に対し、右特許権に基づき、前記侵害行為の差止め及び両工場に存する被告所有の珪酸カルシウム保温材の廃棄を求めるとともに、別紙第二目録記載の占有所有に係る攪拌熟成装置は、被告が岐阜工場において前記侵害行為に供した設備であるから、その設備の除却を求める。

八 損害賠償請求

被告は、前記珪酸カルシウム保温材の製造方法が本件特許権を侵害するものであることを知り、又は知りえたにかかわらず過失によりこれを知らないで、業として、昭和三十三年一月一日から被告方大阪工場において珪酸カルシウム保温材の製造販売を開始し、次いで、昭和三十五年六月一日からは被告方岐阜工場においても、その製造販売を開始し、昭和三十七年二月末日までに、次の数量の保温材を製造販売した。

大阪工場において

昭和三十三年一月一日から

昭和三十六年四月末日まで

四十万キログラム

(月当り一万キログラム)

昭和三十六年五月一日から

昭和三十七年二月末日まで

十万キログラム

(月当り一万キログラム)

岐阜工場において

昭三十五年六月一日から

昭和三十七年二月末日まで

二百十万キログラム

(月当り十万キログラム)

しかして、原告は被告の前記侵害行為により、次のとおりの損害を蒙つたものである。

(一)  本件特許発明の実施に対し、通常受けるべき金銭の額は、製品一キログラム当り金八円を相当とするから、原告は昭和三十三年一月一日から昭和三十六年四月末日までの間に被告の製造販売した前記保温材百十万キログラムに対する相当実施料額金千二百万円の得べかりし利益を喪失し、同額の損害を蒙つた。

(二)  また、原告の製品千キログラム当りの販売価格は金十二万五千円であり、その純利益の額は販売価格の十二パーセントに当る金一万五千円であるところ、昭和三十六年五月一日から昭和三十七年二月末日までの間において、被告は、前記のとおり、百十万キログラムの製品を製造販売したものであり、右侵害行為がなかつたならば、原告は被告の販売したと同数量の製品を前記金額で販売しえたものであるから、原告はこれによる得べかりし利益金千六百五十万円を喪失し、同額の損害を蒙つたものである。

(三)  仮に、前記(二)の主張が理由がないとしても、被告製品の販売による利益は原告と同様千キログラム当り金一万五千円であるから、被告は右期間中に前記保温材の製造販売により金千六百五十万円の利益を挙げたものであり、同期間に原告の受けた損害の額は右被告の受けた利益の額と推定される。

(四)  仮に、右主張が理由がないとしても、原告は右期間中被告の侵害行為により、本件特許発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する金八百八十万円の損害を蒙つたものである。

よつて、原告は、被告に対し右損害金合計金二千八百五十万円及びこれに対する不法行為の後である昭和三十七年三月十七日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

九 被告の主張に対する答弁

被告主張の第七、第八項及び第十項の事実のうち、被告主張の米国特許の存在すること、及び原告が被告主張の期間、その主張の金額の被告製品を被告から購入したことは、いずれも認めるが、その余は否認する。なお、珪酸カルシウム保温材は製品としてありふれた公知の物質であり、その製造方法も種々あるから、その製造方法が如何なる方法に基づくかは判別できないのが通常であり、原告が被告製品の製造方法を当時から知つていたというようなことはない。

(答弁等)

被告訴訟代理人は、答弁等として、次のとおり述べた。

一  請求原因等第一項及び第二項の事実はいずれも認める。

二  同第三項の事実について。

(一) 同項(一)の事実は、なお書きの部を除き認める。

本件特許発明における「煮沸」とは、単なる加温ではなく、その気圧下で沸点まで加温すること、すなわち、沸騰させることを意味し、これによつて、本件発明においては、原料はその気圧下で最高の温度を加えられ、かつ、連続的に攪拌されるのである。このことは、従来の「煮沸」の用語例からいつても、また、本件特許公報中の「特許請求の範囲」及び「発明の詳細なる説明」の各項に「煮沸混合し」と記載され、かつ、その実施の一例にも「摂氏一〇〇度に加温しながら……」と明記されていること、しかも、出願当初、これらの記載は、特許請求の範囲については、「摂氏一〇〇度にて一乃至五時間煮沸混合し」と、また、実施例については、「摂氏八〇乃至一〇〇度に加温しつつ……」とそれぞれ記載されていたのを、後に至りわざわざ前記のように訂正して特許された経過に徴し、明らかである。

また、本件特許発明においては、成型前にまず濾過脱水することが必須不可欠であり、かつ、その成型法は鋳型成型に限定される。成型前の濾過脱水工程を必須とすることは、本件特許発明にあつては、煮沸混合によつて生成された珪酸カルシウムは粒子間にある程度の水を包含する膠状沈澱となるが、煮沸混合による攪拌作用のため沈澱が微細で少量の水しか包含せず、残りの多量の水は上澄液となるため、これを除かなければ到底成型できないことに徴し明らかであり、また鋳型成型に限られることは、右のとおり生成された珪酸カルシウムはある程度水を包含する膠状沈澱となつても溶媒たる水と一体をなすに至らないから、所期の見かけ比重の製品を得るためにはプレス成型の余地がないこと、本件特許公報中の「発明の詳細なる説明」の項に、「この発明は加温反応させた混合物を型に注入しこれを其の儘高圧蒸気中で反応硬化させるために途中の破損が全くなく」と鋳型法によることを明記していること、また、同項中には、「反応硬化時に起る膨張を利用する」と記載されているが、かような現象は、プレス法では考えられないこと等から明らかである。

(二) 同項(二)の本文の事実は、いずれも認める。

なお、原告主張の凝膠体とは、前記のとおり珪酸カルシウムの微細な粒子間にある程度の水を包含した状態で集まつた膠状沈澱であり、乳濁液全体が溶媒たる水を分離することなく一体となつて固まるものではない。

(三) 同項(二)のなお書きの事実のうち、従来の製造方法の主なものが、原告主張のようなものであつたことは認める。

しかしながら、これらの方法にあつても、水と熱の存在下で、珪藻土と石灰とを反応させることにより、珪酸カルシウムの膠状沈澱が生成されていたのであるから、珪藻土中の珪酸と石灰を水の存在下で反応させれば水を包含した嵩高な珪酸カルシウムとなること自体は公知の技術思想というべく、したがつて、本件特許発明の特徴は、右以外の点、すなわち、原料を水中で「煮沸混合」することによつて、その気圧下で最高の温度に加熱し、かつ、連続的に強く攪拌し、珪酸カルシウムの膠状沈澱を短時間により多く生成させる点に求めるほかはない。その結果、可溶性珪酸分の比較的少ない珪藻土を使用してもある程度見かけ比重の小さい製品が得られるが、よりよい製品を得るためにはやはり可溶性珪酸分の多い珪藻土を使用する必要がある。

三  同第四項の事実は、認める。

四  同第五項の事実について。

(一) 同項(一)の事実は、認める。

なお、ここに「反応性に富む」とは、結合珪酸及び結合酸化アルミニウムがアルカリによつて解体され易く、かつ、解体された珪酸は石灰と反応し易く、同じく解体された酸化アルミニウムは珪酸塩中の珪酸と置換し易い性質を有することを意味し、「活性ある」とは、膨潤性があり、化学的にも物理的にも反応し易いことを意味する、

また、原料を数十分攪拌混合するとあるのは、一実施例にすぎず、要は温水が沸騰しない程度に加温しながら、原料が均一に分散するまで攪拌混合することにあり、この時間は使用する粘土の特性の程度、その時の気温、水温、気圧等の諸条件によつて異なるものである。また、被告の製造方法においては、本件特許発明と異なり、成型と同時に生成物を加圧脱水する。

(二) 同項(二)の事実は否認する。

被告の製造方法は、後記(第五項の(五))のとおり、本件特許発明と異なつた作用効果がある。

五  同第六項の事実について。

(一) 同項(一)の事実は認める。

(二) 同項(二)の事実のうち、原告主張の相違点があることは認めるが、その余は、否認する。

被告の使用する粘土の攪拌混合時における作用は、次のとおりである。すなわち、被告使用の粘土は親水性があり、水を吸収して膨潤し、さらに崩壊し、極めて微細な粒子になり、攪拌の作用を加えなくても沈降しない安定した状態で液中に分散浮遊し、膠質液となる。この液体は、粘度が大きく、しかも、粘土の粒子は陰電荷を持つているので、他の原料である石灰の溶解によつて生成する水酸イオンの陰電荷と相反発し合つて液中に懸濁分散し、一層安定した状態となる。なお、この際、粘土中に含まれている反応性に富む結合珪酸は、液中のカルシウムと反応して珪酸カルシウムを生成し、また、反応性に富む結合酸化アルミニウムはアルカリ溶液中に溶出し、これが一部の粘土粒子中の珪酸や珪藻土と石灰の反応によつて生成した含水珪酸カルシウム中の珪酸と塩基交換して珪酸の溶出を助長する。しかも、生成された結晶の外に出た珪酸は未反応のまま残留している石灰と反応してさらに珪酸カルシウムを生成する。しかして、珪酸カルシウムの一部の珪酸が酸化アルミニウムと置換したものは、酸化アルミニウムを含んでいて、しかも結合の状態が珪酸カルシウムと同様な含アルミナ珪酸カルシウムともいうべきものとなる。したがつて、被告の製造方法においては、粘土は珪酸原料として利用されるとともに、原料の攪拌混合液全体を、珪酸カルシウムの膠状沈澱と粘土の膠質液の混在したものとし、後記の静置熟成の工程を経て全体を溶媒である水を分離することなく一体となつて固まつた凝膠体とするものであり、しかも、その過程において、粘土の作用により珪酸カルシウムの生成反応を加速せしめ、沸点未満の恒温で静置するという穏やかな反応条件において、なおかつ十分に珪酸カルシウムの生成を可能ならしめうるのであり、原告主張のように、単に珪酸カルシウムの膠状沈澱を助長させるものではない。のみならず、この結果、後記のとおり、目的物の諸性能においても本件特許発明のそれと本質的に異なる作用効果を招来するものである。

(三) 同項(三)の事実のうち原告主張の相違点があることは認めるが、その余は否認する。

被告の方法における静置熟成工程においては、前記のとおり、原料の混合液中の粘土粒子が繊維状に不規則に成長し、その間隙に稀薄な粘土の膠質液が充満し、これに珪酸カルシウムの膠状沈澱がからみ、原料の混合液全体が溶媒である水を分離することなく一体となつて固まり、凝膠体(ゲル)となり、その過程において、粘土の作用により珪酸カルシウムの生成反応が促進されるのである。この場合、攪拌等によつて外力を加えると、凝膠体の一部は破壊され、溶媒である水をある程度分離し、それだけ容積が小さくなるから、被告の方法にあつては、原料を均一に分散させるためにのみ短時間攪拌し、その後は右のとおり静置し、かつ、沸点未満の恒温に保つのであり、本件特許発明の方法におけるように煮沸混合による外力を加えることは、かえつて珪酸カルシウムの凝集を妨げ、珪酸カルシシムの粒子間に包含する水を少量とする結果となり、有害となるのである。また、前記の静置熟成により原料の混合液全体が溶媒である水と一体となつて固まるので、生の製品は極めて嵩高であり、本件特許発明の方法におけるように成型する前に濾過する必要がなく、前記のとおり、繊維状に成長した粘土粒子が珪酸カルシウムの膠状沈澱とからみあつているため、加圧することにより、反応物から水のみを分離することが容易であるとともに、加熱硬化させることなく離型して一定の型を保つことが可能である。

以上のとおり、被告の行なう静置熟成工程は、本件特許発明の第一次反応のように単なる珪酸カルシウムの膠状沈澱を生成するものではなく、粘土の特性を利用し、珪酸カルシウムの凝膠体を生成するためのものであり、原告主張のように本件特許発明に包含されるものではない。なお、静置熟成工程が本件特許発明の煮沸混合工程と全く異なる技術思想に属することは、米国特許第一、五二〇、八九三号と同第二、六九九、〇九七号を比較することにより明白である。

(四) 同項(四)の事実は否認する。

本件特許発明の成型法は、前記のとおり、鋳型法に限られ、成型前に濾過脱水を必須とするが、被告の成型方法はプレス(加圧成型)法であり、加圧脱水と同時に成型するものである。このため被告の製造方法は、鋳型法のように多数の鋳型を必要とせず、かつ、離型及び鋳型洗滌等の操作を必要としない利点がある。

(五) 同項(五)の事実は、否認する。もつとも、被告の製造方法が本件特許発明と同じく珪酸カルシウム保温材の製造方法であることは争わないが、生成物は、次のとおり本件特許発明のそれと差異があるものである。すなわち、

本件特許発明によつて生産した物は、結晶度の低い珪酸カルシウムのプロムビエライトを主成分とするものであるに対し、被告の方法により生産した物は、珪酸カルシウムの含アルミナトベルモライトの板状結晶を主成分とする保温材であり、しかも、本件特許発明におけるよりも見かけ比重が小さい製品が得られるのみならず、右トベルモライトは板状構造にまで発達しているので、粘着力又は硬化力が強く、また、粘土より生成した膠質為質が前記含アルミナトベルモライトの結晶間に分散しているため、各結晶間の結合力を強化し、強度を増しているから、本件特許発明の方法により生産した物に比し、曲げ強度が高い製品が得られるほか、振動、衝撃、摩擦に対して抗張力があり、装着時に切断加工しても切れ目がくずれず、加工が容易であり、さらに、表面が、滑らかで、ほこりつぽくないから、作業過程における粉塵を少なくし、かつ、装着した機械等に害を及ぼすことが少ない。

また、本件特許発明による製品は、日時の経過とともに製品中の石灰分が空気中の炭酸ガスを吸収し、炭酸カルシウムを生成して変質し、抗張力が低下し、保温材としての効力を失うに至るに対し、被告の方法による製品は、結晶度がより発達しており、未反応のまま遊離している石灰が少なく、そのため製品が空気中の炭酸ガスを吸収して炭酸カルシウムを生成することも少なく、耐久性が大である。

叙上のとおり、被告の製造方法は、本件特許発明の企図していない目的物を得るために、本件特許発明と異なる原料を用い、その原料の特異な作用をよりよく発揮させるために、本件特許発明と異なる製造工程をとるものであるから、本件特許発明の技術的範囲に属しないものである。

六  同第七項の事実のうち、被告が業として、その大阪工場及び岐阜工場において、原告主張の製造方法を使用して、保温材を製造し、これを販売していること、及び岐阜工場において原告主張の設備を所有占有していることは認めるが、その余は否認する。

七  仮に、被告の製造方法が本件特許発明の技術的範囲に属するとしても、原告は本件特許発明がその出願日前に特許庁資料室に公報が受け入れられている米国特許第一、五二〇、八九三号に包含され、又はこれと同一であるため、特許無効審判の請求がされることを恐れ、登録の日から右審判請求の除斥期間の五年間を経過するまでの間、みずからの製品に特許表示を附することなく、本件特許権の存在について専ら沈黙を守つていたばかりでなく、かえつて、昭和三十四年十一月二十日から昭和三十六年四月二十八日までの間に、被告の製造方法を知つていたにかかわらず、二十数回にわたり、合計金千三百九十八万八千七百七十六円相当の大量の被告製品を被告から購入しこれを利用して収益を挙げてきたものであり、この事実から原告は意識的に被告に対し、本訴のような請求を受けることがないだろうと信頼愛を醸成するに努めてきたものといえる。しかるに、原告は右除斥期間が経過するや、にわかに本訴請求をするに至つたもので、これはみずから形成した前記の信頼関係を破壊するものであり、禁反言の原則に反するから、原告の本訴差止請求は権利の乱用として許されないというべきである。

八  仮に、右主張が理由がないとしても、原告は前記のような事情に基づき、被告に対し約五年間本件特許権を行使しなかつたのであるから、少なくとも被告に対しては権利失効の原則により本件特許権に基づく差止請求権を行使しえないものである。

九  同第八項の事実のうち、被告の月当りの製造販売数量が原告主張のとおりであることは認めるが、大阪工場における製造販売の開始は、昭和三十三年七月一日であり、その余は否認する。

なお、被告の製造方法が本件特許権を侵害するものであるとしても、被告はその製造方法が理論上絶対に本件特許権に牴触しないものと確信していたし、このことは、原告がその製品に特許の表示を全くつけなかつたこと、及び前記のとおり原告が被告から大量の製品を購入していたこと等の事実によつて一層強められていたものである。

また、特許法第百二条第一項の規定にいう利益とは、生産に用いた機械、施設装置の償却費、廃棄請求を受けている場合には廃棄によつて蒙るべき損害の償却、広告、宣伝等の営業費、人件費等の諸経費を差し引いた絶対利潤のみを指称するものと解すべきであるところ、被告はその製品販売高から右の諸経費を差し引いた場合赤字であり、利益を得ていない。

十  仮に、被告の製造方法が本件特許権を侵害するものであるとしても、前記(第七項)のとおり、原告は被告と大量の取引をし、これにより、被告に対し、少なくとも原告の発注した右取引分に関する限り、黙示的に本件特許発明に対する実施を許諾したものということができるから、右取引に係る保温材についての損害賠償請求は理由がない。

また、右の取引分以外の分に対する損害賠償請求及び前記実施許諾の主張が理由がない場合には、これに対する損害賠償請求も、前記第七項及び第八項に主張したところから、権利乱用又は権利失効の原則により許されないというべきである。

第三  証拠関係<省略>

理由

(争いのない事実)

一  原告が昭和三十一年一月三十一日本件特許権を設定の登録により取得したこと、本件特許発明の特許請求の範囲の記載が別紙第三目録の「特許請求の範囲」の項記載のとおりであること、及び被告が別紙第一目録記載の製造方法を使用して、珪酸カルシウム保温材を生産し、これを販売していることは、当事者間に争いがない。

(本件特許発明の要部等)

二 前記当事者間に争いのない特許請求の範囲の記載に、成立に争いのない甲第一号証の二(本件特許公報)の記載を総合すると、本件特許発明は、軽量保温材及び耐火壁材の製造方法に関するもので、その要部は、

(一)  珪藻土、硝石灰及石綿織維を水中煮沸混合すること、

(二)  これを脱水し、のち成形すること、

(三)  さらに、これを蒸気中で加熱硬化反応させ、その後乾燥すること、

にあるものと解せられる。

しかして、前記甲一号証の二の「発明の詳細なる説明」の項には、従来のこの種軽量保温材の製法に関し、「従来軽量保温材及耐火材の製造法の主なものは珪藻土カルシウム及繊維質石綿類を単に常温水で混合したものを鋳型に注入してこれを加熱硬化乾燥させる方法と八〇パーセント以上の可溶性珪酸分を含む高珪酸珪藻土にカルシウムを加えて乾式混合しこれを加圧成型したものを離型しその後加熱硬化乾燥させる方法にして両者共混合時に珪酸カルシウムの反応を行わないで後の加熱時に硬化反応させている。後者の乾式方法では乾燥状態で加圧成型してこれを加熱硬化させるから可溶性珪酸分を八〇パーセント以上含む高珪酸珪藻土で且つ見掛比重の小さい珪藻土を使用しなければ離型時の操作が不可能である」と記載され、続いて、本件特許発明の特徴及びその作用効果に関し、「この発明は珪藻土と消石灰及石綿繊維を水中で煮沸混合しこれを濾過脱水して後成型更にこれを蒸気中で加熱硬化させその後乾燥する事を特徴とする軽量保温材並耐火壁材の製造法である。従つてこの発明は加温反応させた混合物を型に注入しこれを其の儘高圧蒸気中で反応硬化させるために途中の破損が全くなく又反応硬化時に起る膨脹を利用するから珪藻土は比重の如何に拘らず強度の大きいしかも軽量の保温材を経済的に製造することができる」との記載があり、その実施例として、可溶性珪酸分七十五パーセント以下の珪藻土を原料として用いた場合の例が記載されており、叙上の各記載事実に、鑑定人小松秀岳、同田辺義一の鑑定の各結果を合わせ考えると、本件特許発明の主眼点は、従来の製法のように、珪藻土、カルシウム及び繊維質石綿類を単に常温水中混合するだけでは、保温材として有用な珪酸カルシウムを生成することが皆無か、あるいは少量に過ぎず、したがつて、優良な製品を得るためには、必然的に可溶性珪酸分を多量に含む高珪酸珪藻土を、原料として、使用する必要があつたところから、この欠陥を克服し、可溶性珪酸七十五パーセント以下の珪藻土を使用しても十分に従来と同程度の品位の製品が得られるよう、前段認定の(一)の第一次反応工程を設け、珪藻土と消石灰とを水中で煮沸混合することにより、珪藻土中の可溶性珪酸と消石灰とを反応し易くし、珪酸カルシウムの生成を促進せしめるようにした点(なお、石綿繊維は、珪藻土と消石灰とを水中で加熱することにより生成される珪酸カルシウムのコロイド性の反応物の保持体であると同時に保温材の充填材としての役を果たすもので、生成反応には直接の関係はない。)にあるものと認めるのが相当である。

(被告の製造方法は本件特許発明の技術的範囲に属するか。)

三 被告の製造方法の特徴が

(一)  原料として、珪藻土、生石灰、石綿繊維及び「結合珪酸及び結合酸化アルミニウムが反応性に富み活性のある礬土珪酸塩を主成分とする粘土」を使用すること、

(二)  原料を摂氏百度に満たない温度(通常摂氏八十度以上)の温水中に投入して、数十分攪拌混合すること、

(三)  攪拌後、これをそのまま混合時の温度を保ちつつ、一、二時間静置熟成すること、

(四)  生成物をプレス成型すること、

(五)  成型物を加熱硬化反応させてのち、乾燥して製品とすること、

にあることは、当事者間に争いがない。

しかして、右被告の製造方法の特徴と前記認定の本件特許発明の要部とを対比するに、被告の製造方法は、原料として、本件特許発明における消石灰の代わりに生石灰を使用するほか、前記のとおりの、特殊粘土を使用する点において、また、本件特許発明が原料を水中において煮沸混合するに対し、被告の製造方法においては、原料を摂氏百度に満たない温度(通常摂氏八十度以上)の温水中に投入して、数十分攪拌するほかに、これをそのまま混合時の温度を保ちつつ、一、二時間静置熟成する工程がある点において明らかに相違するもの(なお、被告はこのほか成型方法についての差異をも主張するが、この点はしばらく措く。)があるから、以下これらの相違点について、審究する。

まず、前記のとおり、被告の製造方法は、本件特許発明が消石灰を原料として使用するに対し、生石灰を使用する点で相違するが、生石灰は水中処理する場合には発熱して、消石灰に変化するものであるから、原料としての両者に格別の差異があるものとは認められない(なお、鑑定人小松秀岳の鑑定の結果は、右と見解を異にするが、にわかに賛同し難い。)

次に、被告の製造方法が、本件特許発明の使用原料のほかに、前記のとおり、特殊粘土を使用し、また、前記(二)、(三)の加温攪拌及び静置熟成の工程を置いた点について、考察するに、(証拠―省略)を総合すると、粘土とは、一般に結合珪酸及び結合酸化アルミニウムを含有する礬土珪酸基を主成分とするものであるが、被告の使用する粘土は、その含有する結合珪酸と結合酸化アルミニウムが反応性に富み、かつ、活性のある粘土であり、一般に知られている普通の粘土とは性質を異にするものであり、この粘土は、これを他の原料とともに前記(二)、(三)の加温攪拌及び静置熟成の工程を経ることにより、粘土中の珪酸が消石灰と反応し、珪酸カルシウムに変成するほか、粘土中の酸化アルミニウムもこの反応に関与し、珪酸、酸化カルシウム、酸化アルミニウムよりなる複合体を形成し、特殊の珪酸塩に変じ(この場合、静置熟成の工程は、とくに右の反応を十分に行なわせるためのものである。)、その結果、被告の製造方法による製品には、本件特許発明による製品の主成分である珪酸カルシウムと石綿繊維のほかに、耐火性のある特殊珪酸塩が混在し、このため、製品の性能においても、製品の未反応のカルシウムが空気中の炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムを生成することが少なく、ために製品が脆くなつたり、ほこりつぽくなることがない等本件特許発明による製品と異なるものがあることを肯認できる。しかるに、被告の右工程に対応する本件特許発明の要部(一)の工程は、前記のとおり、珪酸カルシウムの生成を促進せしめることを目的とするから、被告の製造方法における前記加温攪拌及びこれに続く静置熟成工程と対比するとき、両者はその目的である反応生成物を異にするものというべく、また、原料を異にすることにより、被告の製法においては、本件特許発明にない静置熟成工程を必須とし、製品においても、前記のとおり異なるものがあるから、被告の製造方法における珪藻土、生石灰、石綿繊維のほかに特殊粘土を原料とし、加温攪拌及び静置熟成の工程を置く点をもつて、本件特許発明の要部(一)の要件と同視することはもちろん、これと利用関係があるものもいうことができず(もとより、粘土の混入をもつて原告主張のように、単なる附加的要素とは、認めえない。)、したがつて、被告の製造方法は、その余の点を検討するまでもなく、右要部(一)の必須要件を欠く点からいつて、本件特許発明の技術的範囲に属しないものといわざるをえない。甲第二十三号証から第二十五号証は、被告の製造した製品そのものについての分析試験結果を示したものではなく、原告において被告使用の特殊粘土を想定し、原料の調合比については被告製品の分析値から逆算した割合を用い、被告の製造方法(ただし、反応工程の時間、温度等の条件は原告において適宜選択)によつて製造した試作製品について分析試験した結果を示したものであり、しかも、証人田村英雄の証言及び被告代表者柿木克己本人尋問の結果によると、被告の製造方法は、粘土の特性の程度が異なるに従い(なお、粘土の特性を産地、商品名によつて一定し難いことは、上叙の証拠から明らかである。)、加温攪拌及び静置熟成工程における時間、温度等の条件を異にするというのであるから、前記甲号各証の記載をもつて、にわかに被告製品そのものの分析結果と同一のものとは認め難く、したがつて、これらの記載は、前段認定を動かす資料とすることはできない。また、証人山本久吉及び同小松原将の各証言中の前段認定に反する部分も、前記認定に供した各証拠に照らして、にわかに措信できない。しかして、他に前記認定を覆し、被告の製造方法が本件特許発明の技術的範囲に属することを認めしめるに足る証拠はない。

(むすび)

四 上叙説示の理由から、被告の製造方法は、本件特許発明の技術的範囲に属するものとはいえないから、これが技術的範囲に属することを前提とする原告の本訴請求は、進んでその余の点につき判断を加えるまでもなく、すべて失当として、棄却するほかはない。

よつて、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第九十五条、第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官三宅正雄 裁判官武居二郎 佐久間重吉)

第一目録

珪藻土、生石灰、石綿並びに「結合珪酸及び結合酸化アルミニウムが反応性に富み活性のある珪藻土珪酸塩を主成分とする粘土」を原料として使用し、これらを(1)水中に分散させて摂氏百度に満たない温度(通常摂氏八十度以上)で数十分間攪拌混合させたのち、(2)これをなお一、二時間静置熟成し、(3)この生成物をプレス成型機によつて脱水するとともに成型し(4)これを加圧蒸気中で硬化反応させたのち、(5)乾燥して製品とする珪酸カルシウム保温材の製造方法。

第二目録

岐阜県本巣郡穂積町所在被告岐阜工場内珪酸カルシウム保温材製造用建物内に設置されている図面記載の鋼鉄製円錐型攪拌熟成槽二基。

特許庁 特許公報特許出願公告昭三〇―四〇四〇(公告昭三〇・六・一四 出願昭二七・六・一〇 特願昭二七―九〇二一)

軽量保温材並耐火壁材の製造法

発明の詳細なる説明<省略>

特許請求の範囲

珪藻土と消灰及び石綿繊維を水中で煮沸混合しこれを濾過脱水し後成形し更にこれを蒸気中で加熱硬化反応させその後乾燥する事を特徴とする軽量保温材並耐火壁材の製造法。

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