東京地方裁判所 昭和37年(ワ)4241号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕原告は訴外東亜工業株式会社に対し、昭和三七年五月四日学校法人慈恵大学より譲渡を受けた一、一二四万円の損害賠償債権をもつていたが、一方東亜工業は訴外清水建設株式会社に対し昭和三六年一〇月三日当時一、三九九万円の請負工事残代金債権をもつていて、これを被告に譲渡した。原告は、当時東亜工業は債務がかさみ支払停滞の状態にあつて、清水建設に対する右債権が唯一の財産であつたにかかわらず、債権者を害することを知りながら被告に右債権を無償で譲渡したものであり、被告も東亜工業の手形不渡の事実を知りながら自己の債権確保のため右債権譲渡を要求したもので悪意であつたと主張して、右債権譲渡を詐害行為なりとして原告の債権の限度でその取消を求めた。被告は、東亜工業から工事代金につき債権譲渡を受けたとはいつても、すでに従前から代理受領の委任を受けており、しかもこの委任は東亜工業から一方的に解除できない約であつたから、工事代金が清水建設から被告に直接支払われるという関係に変更を来さず、従つて東亜工業の資産状態に変動を及ぼすものではないから、詐害行為の要件を欠くと争つた。
判決は、被告の右主張を容れて、次のように認定判断して、詐害行為の成立を否定した。曰く、
「……によれば、東亜工業、被告間において、昭和三六年三月一四日、東亜工業の清水建設に対する長崎精洋亭ホテル冷暖房衛生設備の工事代金の未収金五千六百万円の領収に関し、被告を代理受領者に指定し、代理受領の委任をし、その委任は東亜工業から一方的に解除できず、且つ代理受領者のみに支払われるべき旨の特約が付いており、右事項は登録され、現実にも代理受領の約定以前から被告が代金支払のための手形の指定振込銀行とされており、東亜工事が仲に入らず直接被告に入金されていた等の各事実を認めることができ、他に右認定を覆すに足る証拠はない。そうすると、東亜工業が清水建設に対して有する前記債権は一応東亜工業の財産とみられるものであるが、被告が直接それを清水建設から受領する権限を有し、現実にそのような支払方法がとられていたものであるから、東亜工業の財産であつても、同社がこれを自由に受領処分し得る性質のものではなく、実質上の右権限は被告にあると言わねばならない。従つて代理受領を債権譲渡に切りかえた本件の場合、現実には東亜工業の資産状態に別段変動を及ぼすものではなく、東亜工業が被告に前記債権を譲渡した行為は、東亜工業の一般債権者を害することにはならないものと解するのが相当である。」